〜第2部 9人の決戦〜
   〜第2話 意外な襲撃者2〜
ウインド「待たせたな。」
    財閥内からウインドブレイドがゆっくりと登場する。
   既に7人は臨戦状態であり、いつでもウインドを攻撃できるように武装を向けていた。
ウインド「戦う前に、誰だか分かるように自己紹介をしよう。俺はエアー。ここの専属レイヴンだ。
     愛機はエアーブレード。」
   ウインドを知る者はこれも演じだと思った。先にウインドやウインドブレイドと名乗っては、
   明らかに威圧する事になる。機転溢れるウインドの行動に、他の仲間達は感銘を受けた。
レイヴン4「如月悠太だ。ユウタとでも呼びな。俺の愛機はシャッターウォーリアーだ。」
レイヴン7「高嶋フィヴという。ディールックヴェイナームに搭乗している。」
レイヴン2「水紀シュリヌよ。シャドウ・オブ・ナイトがあんたを蹴散らしてくれるわ。」
レイヴン6「高嶋美奈。ジャイアントハンド。」
レイヴン3「石川那美です。オルグレインユームがあなたの対戦相手です。」
レイヴン5「凛亜美と申します。機体はビィルクトーナです。よろしく。」
レイヴン1「ディーン=ディヴディールクだ。ハルヴェールグルヴで決着を付ける。」
ウインド「了解。始めよう。」
   どのレイヴンも怒りの念が込められている。それは言葉を聞けば明らかであろう。またそれら
   怒りの念は相手を威圧し、行動を制限させるように話したようである。
   しかしその威圧には、200年以上生き続けているウインドには全く通用していなかった。

    その後一瞬沈黙が当たりを支配する。
   7体のACは静止した状態で、落ち着いた雰囲気をだしている。だがコクピット内部では相手
   の落ち着いた雰囲気や言動に戦闘力が読めず、徐々に焦りが出ているのである。
    閉め忘れたガレージの一般通行用扉が突風により勢いよく閉まった。それは外部スピーカー
   から取り込まれ、8人のレイヴンの耳に聞こえた。
    これを合図に8体のACは戦闘を開始しだした。
   直後ウインドは今までとは違う雰囲気の闘気を出す。それは仲間内で特にクローンファイター
   なら直ぐ様感じ取れた。そして久方振りにウインドの本気が見れると心を躍らせる。
   ウインドは怒濤の如く相手に突進しだした。

    まず最初に相手となったのは、ナミが駆るオルグレインユームであった。
   4脚をベースに装甲を強化した機体である。しかし脚部積載量の関係上、武装はマシンガンと
   レーザーブレードのみであった。つまりは近接戦闘向けの機体構成である。
    ウインドブレイドはブースターダッシュを繰り出し、右腕武器のレーザーライフルを射撃。
   放たれたレーザー弾はオルグレインユームの左腕に直撃し、レーザーブレード発生器が粉々に
   砕け散る。
    間隔空けずにたじろぐナミに接近する。唯一の武装である右腕マシンガンを乱射し段幕を
   張り続ける。
    だが既にその場に跳躍していたウインドブレイド、間隔空けずにレーザーライフルを射撃。
   レーザー弾はオルグレインユームのヘッドパーツの真上を過ぎ去る。
    誤射だと思ったナミは、追撃を開始しようとする。だが目の前のモニターは真っ白になって
   おり、外部の状況を取り入れていなかった。
   そうウインドが放ったのは誤射ではない。レーザー弾特有の光性質と弾速を生かし、頭部工学
   ユニットを機能させなくしたのだ。
    突然の出来事に対処できなくなった彼女の前にウインドブレイドが着地する。そして左腕の
   レーザーブレードを繰り出しヘッドパーツを切り落とした。
   一瞬の隙を付いた行動に、ナミは戦闘開始後直ぐに沈黙した。

    次にウインドと対峙したのは、フィヴが駆るディールックヴェイナーム。
   ナミと同じ4脚機体で装甲も同様である。違う点は武装の充実さ。パルスライフル・リニア
   キャノン・デュアルミサイルという重装備であった。
   またインサイドにはムービングダミー、エクステンションはバックブースターが装備されて
   いる。
   しかし攻撃が無限にできるレーザーブレードの換わりに、広範囲シールドが装備されていた。
   つまりは長期戦には向かないという事である。
    リニアキャノンで弾幕を張りながら、左腕のシールドを展開する。円を描くように動き、
   相手を寄せ付けないフィヴ。
    しかしウインドはフィヴが未来位置に来るだろうという場所に小型ミサイルを数発放ち、
   その場所の地面に着弾させる。
    爆炎により発生した煙に見事突入したディールックヴェイナーム。視界は煙により遮られ、
   慌てふためくフィヴ。
    ようやく煙から脱出した彼の目の前に、突然ウインドブレイドが出現する。左腕のレーザー
   ブレードを繰り出し、ヘッドパーツを切り落とす。
   ヘッドパーツを失ったディールックヴェイナームは完全に沈黙した。

    フィヴを倒したのも束の間、ウインドにシュリヌ・ユウタ・アミが突撃してきた。
   シュリヌは愛機の右腕武器のハンドガンを放ち・ユウタは愛機の両肩武器のデュアルマルチ
   ミサイルを放つ。それらに護衛されるように、アミが突撃し特殊腕デュアルミサイルを一斉
   発射する。
    三箇所からの同時攻撃に為す術がないだろうと思った3人。しかしウインドは恐れる事なく、
   一番攻撃が激しいアミのビィルクトーナに接近しだす。
   紙一重による回避の仕方により、その殆どのミサイルがウインドブレイドを過ぎ去っていく。
    遠距離から中距離にかけての行動を目的とされたアミのビィルクトーナ。
   その殆どの武装がミサイルと自立小型支援兵器のオービットキャノンのみ。つまりは接近戦は
   不得意であったのである。
    ミサイルを放ちながら牽制をするが、為す術がなく接近を許してしまう。目の前にウインド
   が出現した瞬間には、既に彼が繰り出したレーザーブレードによってヘッドパーツが切り落と
   されていた。
   アミは一瞬で沈黙してしまった。

    肩に軽量型チェインガン、右腕にはハンドガン。そしてミサイル誘導装置のデコイを装備
   したシュリヌの愛機シャドウ・オブ・ナイト。
   しかしハンドガンは近接戦闘サポート兵器で、主力武器は肩のチェインガンである。
   フィヴと同様にレーザーブレードの換わりにシールドを装備しているシュリヌにとって、接近
   戦は非常に苦手であった。
   また彼女の機体は逆関節型。威力のあるキャノン系を放つには、構えの姿勢を取らなければ
   ならなかった。
    とにかく攻撃しなくてはという焦りからか、右肩装備の軽量型チェインガンを展開する。
   当然逆関節故に構えの姿勢を行う。その場に動けなくなりつつも、チェインガンをウインドに
   向けて放ち続ける。
   だがこの時点で勝敗は決まってしまった。
    ウインドは愛機をその場に跳躍させ、相手の死角ギリギリの部分をブースターによる浮遊で
   接近。当然攻撃ができるシュリヌにとっては、そのまま攻撃を続ける。
    その後ウインドブレイドはシャドウ・オブ・ナイトの真上に着地し、チェインガンの銃口を
   下げる。また着地の勢いで彼女の機体は、地面に大きくめり込む。
    その場に完全に動けなくなったシャドウ・オブ・ナイトに容赦なく斬撃が見舞われた。
   繰り出された斬撃は相手のヘッドパーツを切り落とし、シュリヌは完全に沈黙した。

    シュリヌとアミとの連携攻撃により両肩のデュアルマルチミサイルを全て放ったユウタ。
   機体構成は重装甲パーツに撃ち尽くしたデュアルマルチミサイルとインサイドの爆雷。
   そして一番目立つ特殊腕の両腕レーザーブレード。
   つまりは今のユウタにとって遠距離攻撃能力は全くないのである。
   有効防御としてミサイル迎撃装置を装備している。これによりミサイル攻撃は辛うじて対処は
   できる。
   しかしレーザーライフルの射撃に切り替えた場合、為す術がないまま倒されるのは目に見えて
   いる。
    ユウタは思った。何としても相手に一泡吹かせないと気が済まないと。
   あれだけ言われれば、それなりの報いは受けさせたい。しかし有効な行動は自分が得意な接近
   戦の斬撃しかない。
    自分から相手を挑発し、相手が接近戦に応じるか。だがそのような行動はしたくないと、
   ユウタは頑なに否定した。
    だがそれを見透かしているかのように、ウインドは左腕のレーザーブレードを発生させる。
   そのまま一直線にユウタの元へ突撃していった。
    それを見たユウタは絶好のチャンスだと確信、同じく両腕のデュアルレーザーブレードを
   繰り出しそれに応じ、ユウタも相手に突撃していった。
    先に攻撃を仕掛けたのはユウタである。
   目の前に接近するウインドブレイドに斬撃を見舞う。それを紙一重で回避するウインド。
   だがユウタにはもう一度斬撃を繰り出せる。完全に相手をレーザーブレードの間合いに捉えた
   と思った。
    だが次の瞬間、目の前からウインドブレイドが消え去る。
   シャッターウォーリアーが繰り出した2回目の斬撃も虚しく空振りに終わる。
    その後ウインドが彼の後方に着地したと同時に、シャッターウォーリアーのヘッドパーツが
   見事に切断された。
   圧倒的な戦闘力で為す術がないままユウタは沈黙したのである。

    突如ウインドブレイドの目の前にレーザー弾が着弾する。
   ミナが駆るジャイアントハンドが右腕のウインドブレイド同様のレーザーライフルを射撃して
   きた。
   また彼女の機体はフロート型の脚部をベースに軽装甲、武装は右腕のレーザーライフルと左腕
   のショートレンジ型のレーザーブレードのみだった。
   しかし全脚部で最高速度を出せるフロートパーツを装備しているため、凄まじい機動力で相手
   を翻弄した。
   これがミナの得意とする戦術であった。
    機敏溢れる行動でウインドを翻弄し続けるミナ。死角からレーザーライフルの射撃により、
   直撃はしないもののウインドブレイドの行動は殺していた。
    このまま戦えば勝てると思ったミナ、今までの行動を止めて正面から相手に突撃していく。
   この速度なら相手は逃げられないと思ったからだ。
    だが彼女がその行動に移った時、ウインドは愛機にオーバードブーストを発動させる。
   そのまま相手目掛けて突撃していった。
   その最中左肩のミサイルランチャーを相手にロックオンする。
    同じ速度の機体が真っ正面から突撃していく。瞬く間に目の前にウインドブレイドが迫った
   事に、ミナは恐怖に震え上がった。そのような行動に出るとは、思っていなかったからだ。
    機体の突撃角度を若干反らし、相手との接触を回避するミナ。だがその行動に移った瞬間、
   ロック完了したミサイル4発とレーザーライフルを放つ。
    丁度ミナは右側に動いたため、それらはジャイアントハンドの左側に着弾し大爆発を巻き
   起こす。
   しかし着弾場所を上手く設定したので、左腕が吹き飛んだだけで済んだ。
   普通ならその爆発では、ジャイアントハンドは安定性を失い地面に激突。高速で動いていた為
   その力によって機体はバラバラに吹き飛んでいただろう。
    しかしウインドはレーザー弾をフロート脚部左側の推進装置を撃ち抜いており、スピードが
   落ちるだけで済んだのだ。
    そのまま直進するミナにウインドは接近、レーザーブレードでヘッドパーツを切り落とす。
   今の衝撃によりミナはコクピット内で気絶していたので、その後の対処ができなかった。
   その後前方で沈黙しているアミの機体にぶつかり、ジャイアントハンドは沈黙した。

    地上を進むミサイル。ディーンが放った地上型魚雷ミサイルである。
   それはウインドブレイドの死角を狙っており、ウインドに接近した直後4発のミサイルに分裂
   する。
    だがウインドはその場に愛機をジャンプさせ着地。この動作で一瞬上がった4発のミサイル
   は、相手が着地した時に下に向かい地面に着弾してしまう。
    上空分裂型ののマルチミサイルとは違い、地上分裂型魚雷ミサイルはこの手のデメリットを
   持っていた。
   地面にある障害物に当たるだけで4発ポッドが爆発してしまうのだ。また地上付近で分裂する
   ので、今のような回避方法が取れるのである。
   武器の特性を知った一番簡単な行動を、ウインドは瞬時で行ったのだ。
    ディーンの機体構成はウインドと同じ2足型の機体。
   左肩にロンググレネードランチャー・右肩に地上分裂型魚雷ミサイルランチャー・右腕には
   レーザーライフル・左腕には高効率型レーザーブレードを装備している。
   またインサイドにはミサイル誘導パーツのデコイ、エクステンションには低性能ではあるが
   ミサイル迎撃装置を装備していた。
   つまりはミサイル系の攻撃はまず相手に当たらないと考えていい。まあ相手の行動次第では、
   当てられる事も可能であるが。
    相手にミサイルが有効ではないと察知したディーンは、ブースターダッシュによる平行移動
   と共にレーザーライフルを射撃。相手の行動を伺った。
    ウインドも同じくブースターダッシュによる平行移動を繰り出し、相手には有効ではない
   ミサイル攻撃をしだす。
    放たれたミサイルはハルヴェールグルヴのミサイル迎撃装置から射出された迎撃ミサイルに
   より撃ち落とされる。
    しかしウインドは同じ行動を何度も続けた。しかも放たれるミサイルは1発ずつという曖昧
   なものであった。
    だがディーンは気づいてはいなかった。無意識にミサイルを回避し続ける行動を取っている
   事を。それは徐々にウインドブレイドに接近していたのである。
    接近しすぎているなと思った時には既に遅かった。
   その思考直後、ウインドブレイドのレーザーライフルの射撃によりハルヴェールグルヴの脚部
   が貫かれる。
   回避行動を行っていたディーンにとって、脚部を撃ち抜かれた事により勢いよく地面に転倒。
   その衝撃で左肩のロンググレネードランチャーがもげ落ちる。
   そこに素早くウインドは接近し、レーザーブレードでヘッドパーツを切り落とした。

    ディーン達は思っていた。自分達の方が圧倒的に有利だと。あんな優男にそれなりの行動を
   行える自分達7人のレイヴンを倒せる訳はないだろうと。
   しかし相手は実力でそれをねじ伏せた。
   殆ど全力で戦ったのに、相手には致命傷ともいえるダメージを与えていない。
   逆に自分達は必須パーツであるヘッドユニットを綺麗に切り落とされた。それもごく短時間で
   ある。
   これは相手がどれだけやり手なのかが身に染みる思いであった。
   そしてこれだけ強い力を持つレイヴンが大勢集まり、人を助ける行動をしている事。
   ディーン達は相手が正しいという事がよく理解できた。
    今の世界強い力が全て。それが強者の証である。しかしそのような強者が寄って集って襲撃
   を受けている事。これにディーンはようやく理解ができた。
   相手は強く正しい力を持つ彼らが怖いのだ。だから亡き者にしようと企てているのであると。
    ウインドに倒された後、ディーンは心中である決意を固めていた。
   もしライアが許してくれるのであれば、自分も彼らと共に戦おうと。
   それはこれほどまでに熱く戦った事が今までになかったのである。しかもそれが揺るぎない
   正義の心で動いているのであれば、絶対に信用ができると。
    それに今まで受けてきた依頼は破壊などの好まないものばかりであった。
   彼らと共にいれば、死闘にもなるかも知れないが活き活きとした生き方ができる。
   ディーンは沈黙しているハルヴェールグルヴ内でそう決意を固めた。
                               第3話へ続く

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