第3部 9人の勇士 36人の猛将
   〜第2話 地球と火星と3〜
    火星チーム側が目的を達成した同じ頃、地球チーム側では敵と交戦中であった。
   しかし相手はディソーダーではなく、失われた大地という名に相応しい機械であった。
ディーレアヌ「まさかファンタズマタイプが出現するとは・・・。」
    ディーレアヌは2年前の決戦でファンタズマを目撃していた。またレイス姉も過去において
   別のものであるが対戦している。
   他の面々は初めて見る過去の遺物に、どう対処していいのか不安の顔を隠しきれなかった。

    出現したファンタズマタイプは全部で3体。ディーレアヌやレイス姉には対処できても、
   他の面々には厳しい戦闘となる。
    ディソーダーと違い一撃必殺を帯びるその攻撃、それらが容赦なく一同を襲う。
   高々度からレーザー砲による援護射撃を行う航空機2機。どれも直撃はするものの、大した
   ダメージは与えていない。
   むしろ地上の面々に夥しいミサイルやプラズマ弾の攻撃が向けられ、慣れないレイヴンはただ
   逃げ惑うだけであった。
ユウタ「畜生・・・どうすればいいんだっ!!!」
ディーレアヌ「対処法は簡単よ。もっと楽な方法があるけど、ちょっと危険かな・・・。」
    猛攻を加える1機のファンタズマタイプにオーバードブーストによる接近を試みる。
   急接近するヴィーナススターラインへの対処は甘く、簡単に接近を許してしまう。
    ディーレアヌは相手の様子を窺いつつ、その巨体の真上へと着地する。
   その後真上から両肩デュアルチェインガンを連射しだした。
    真上からという不測の攻撃を受け出し、慌てて迎撃を開始するファンタズマタイプ。しかし
   垂直発射ミサイルは直上へと発射するも、直下へ向かっては来なかった。
    暫く無駄な攻撃を繰り返した後、ファンタズマ究極の兵器である全方位レーザーを作動。
   それを見たディーレアヌは再びオーバードブーストを発動させ、七色の光がファンタズマに
   収束しだす直前に真上から離脱した。
    直後夥しいレーザーが全方位に向けて発射される。
   味方ACは遠距離からの攻撃可能な距離で行動していたため、放たれたレーザー弾は届かな
   かった。
   だが遺産のファンタズマの攻撃を目の当たりにした一同は、その火力の凄まじさに驚愕の表情
   を浮かべていた。
ユウタ「ふぇ〜・・・そんなやり方があるんだ・・・。」
ディーレアヌ「条件が厳しいけどね。相手の動きを見ていればダメージを受けずに済むわ。」
ウェイリン「了解、参考にします。」
    しかし低レベル人工知能が搭載されているとはいえ、伝説になりつつあるファンタズマ。
   ヴィーナススターラインの攻撃を受けても無傷に近かった。
レイス姉「2年前の決戦には参戦していませんが、今の様子を見る限りには装甲が強化されています
     ね。ゼロ距離射撃でも致命傷を与える事は無理かも知れません。」
エリディム「なら相手の武装を無力化するまでです。」
    エリディムは愛機にオーバードブーストを発動、今ディーレアヌが攻撃したファンタズマ
   目掛けて突撃を開始した。
    当然2度目の接近を許すまいと、ファンタズマタイプは今まで以上に猛攻を開始する。
   しかしエリディムはダンサー故の直感を生かし、まるで踊っているかの如く接近していく。
   ブースターを利用した小ジャンプ移動も駆使し、瞬く間にファンタズマタイプの側面へと躍り
   でた。そしてレーザーブレードを発生させ斬撃を見舞う。
    ブレードは垂直発射ミサイル装置をいとも簡単に切り落とす。
   そしてディーレアヌと同じように真上へと移動し、もう片方の垂直発射ミサイル装置を斬撃で
   切り落とした。
   更にブレードをプラズマキャノンへと突き刺し、ファンタズマの機首諸共破壊した。
    あっという間にファンタズマの武装を全方位レーザーのみとしたエリディム。武装を無力化
   した後オーバードブーストにより離脱していった。
エリディム「全方位レーザーのみ残して破壊しました。動きながら接近すればレーザーを放たれても
      回避できるでしょう。」
   そう言うと再びオーバードブーストを発動、臆せずに別のファンタズマへと向かっていく。
アニー「姉さんやるねぇ。」
    そのエリディムの行動に火を付けられたアニーも同様、愛機にオーバードブーストを発動
   させ別のファンタズマに突撃する。
   エリディム同様踊りながら接近し、同じくミサイルから無力化していった。
   機転溢れまた大胆な行動に、新米レイヴン達はただ回避行動を取っているだけであった。

    交戦中の戦場に航空機2機が接近してくる。
   1機は様子を見ながら援護射撃する2機と共同戦線を張り、もう1機は待機中の航空機の側へ
   着陸する。
    着陸と同時に内部から3機のACが出てきた。
   増援として派遣されてレイス妹・ライディル・メルアであった。
ライディル「ありゃ・・・この様子だと増援は意味なかったかな。」
メルア「不測の事態もありますので様子を見ましょう。」
    無限軌道であるキャタピラ音を響かせながら、ライディルの愛機マスターヴァルディルグが
   一同の元へ到着する。
   ブースターダッシュによる移動でメルアの機体、ライアット・ムーンも近付いて来た。

レイス妹「姉さん。」
    同じくブースターダッシュによる移動でレイス姉の機体に接近するレイス妹。お互いの機体
   は酷使しており、見間違えば同型と思うであろう。
レイス姉「子供達は大丈夫?」
レイス妹「はい。」
    かつてアマギ達が活躍していた時代で見た漆黒の魔女。老いた姿とはいえ自分の目の前に
   いるとレイス妹は思った。
   今までの姉とは違う。闘気むき出しのその姿は恐怖を覚え、そして立ち直った彼女への安心感
   もある。
    3人が到着した頃、エリディムとアニーは別のファンタズマの武装を無力化させた。
   また2人の行動に火がついたユウタとミナ、機動力や高火力を駆使して攻撃を開始。
    最初にエリディムが斬撃にてほぼ無力化したファンタズマに集中砲火を浴びせだした。
   ユウタが斬撃にてその深紅の機体を斬りつけた後、ミナがヒットアンドアウェイでレーザー弾
   を撃ち込む。
   その繰り返しをしていくうちに、ついに機体各所から火花を出し始めた。
    もうそろそろかと思ったユウタは、愛機をファンタズマの真上に移動させる。そして両腕の
   レーザーブレードを発生させ、深紅の機体に突き刺し十字に薙ぎ払った。
    シャッターウォーリアーが頭上から離脱した直後、ファンタズマは激しいスパークを迸らせ
   大爆発。木っ端微塵に飛散した。
    4人の行動で更に火がついた一同は、持ち前の機動力や連携を駆使し突撃を開始する。
   残り2体のファンタズマに猛攻を加えだした。
   相手側の出方が分からない故に行動を押さえてはいたが、連携ともなるとどの者よりも凄ま
   じいレイヴンズ。一度見た戦術を己の中で変革させ、自分なりの戦法で行動をした。
    9人の凄まじい連携による猛攻に為す術が無く、ファンタズマ2機は呆気なく破壊された。
   今まで後手に回っていた一同は燃え上がり、先手を打つようになったのは言うまでもない。
   それは今後の彼等の戦闘にも当てはまる事である。

    休む間もなくロストフィールド中心地から再びファンタズマが6体出現。
   今戦闘を終えた彼等にとって倍になるその数に圧倒されるも、今度こそはと決意新たに行動を
   開始する。
   相手人工知能のロジックを読みつつ、動きを読んだ後に猛攻を開始した。
レイス姉「フフッ、どうやら心配は要らなさそう。」
レイス妹「嫌な予感もしませんし、デヴィルも追加の人工知能を投入する事はないでしょう。」
メルア「護衛役に回っているのですが・・・、・・・う〜・・・やはり戦いたいっ!!!」
    我慢しきれなくなったメルアはオーバードブーストを発動。ライアット・ムーンは凄まじい
   勢いで戦場へと突入していった。
   メルアにとって今回の戦いがレイヴンとしての初陣。しかし操作技術は新米レイヴンを超えて
   おり、調整も兼ねて戦闘を開始したのであった。
    まるでライアみたいな発言をしながら突撃したメルアを見てレイス姉妹は呆気に取られる。
   しかしこれが彼女の真の強さなのだなと痛感した。

ライディル「メルア嬢の言う通りだな。俺も久々に暴れるか。」
    ライディルも我慢しきれずに突撃を開始し、オーバードブーストを発動後味方がいない場所
   へグレネード弾を発射する。
   それを見たメルアは態とファンタズマに接近、相手を指定の場所に誘った。
    案の定機械のセオリー通り誘われるがままに動き、その場所にグレネード弾が着弾する。
   レイヴン歴1年だが洞察力はクローンファイターズの実力を持つ。故にライディルが行った
   攻撃に素速く反応し、連携を取る事が出来たのだ。
   その機転溢れる行動に新米レイヴン達は負けられないと心中で自分を叱咤する。
    凄まじい連携で相手を圧倒するメルアとライディル。その戦闘を見つつレイス姉妹は念の
   ための護衛側に回った。
   シェガーヴァが言った通り、自分達はクローンファイター。1年前の決戦に告げられた陰の
   戦いに徹せという事を肝に銘じ、戦いたい気分を押し殺して護衛に付いた。

    火星チームが地球へと帰還してきた。ラプチャーを使用し短時間で地球へと到着する。
   また同時刻にはシェガーヴァや運営陣が開発・量産した、人工知能ヴァスタール部隊200体
   を火星平西財閥本社に警備護衛として向かわせた。
    配置に関してはシェガーヴァとレイシェムが火星へ向かい、現地で配置調整を行うようで
   ある。
    今回新たに作成した人工知能は自立支援ユニットの機能があり、守るべき存在を身を挺して
   守り抜く。
    また相手の人工知能ジャマーなどによる妨害工作を全く受け付けないプログラミング仕様。
   シェガーヴァはこれを風の盾と命名した。
    時間差でナイラ達が戻ってきた頃、ロストフィールドではミナ達がファンタズマ軍団と交戦
   の真っ最中であった。
    それを聞いたナイラ達は別部隊として5人を増援に向かわせた。
   火星で大活躍をしたサーベンを筆頭にシュイル・アリナス・デュウバ姉妹である。
    当然デュウバ姉妹は不測の事態の駒としての派遣であり、メインメンバーは3人であった。

    地球チーム奮闘中のロストフォールド。
   残るファンタズマは2体になり、一同臆せずに猛攻を加えていた。
   レイス姉妹はやはりはやる気持ちを抑えつつも、一同の妨害要素となるものに対して牙を研ぎ
   澄ましていた。
    それから数分後、残り2体のファンタズマタイプも撃破される。戦闘慣れしだした一同には
   過去の遺産となる兵器は敵わなかった。
    そこに追加増援のシュイル達が到着したが、時既に敵はいなく休んでいる一同を目にする。
デュウバ妹「あれま、もう終わってるし。」
ディーレアヌ「遅いおそい。」
   ディーレアヌの意地悪じみた発言に苦笑いを浮かべる一同。しかし何事もないというのはある
   意味、増援の者達にとっては安心の何ものでもない。
ミナ「火星はどうでしたか?」
アリナス「凄かったよ、まるでウジ虫。」
サーベン「倒しても倒しても湧いて出てくるディソーダーが相手だった。」
シュイル「サーベンさんが勇猛果敢に攻めまくってましたけどね。」
   恐縮じみた顔をするサーベン。
    今やロストフィールドは穏やかな時間が過ぎていた。
   増援をとまで考えた不測の事態であるイレギュラー要素、それも出る気配はまるでない。
    一同が沈黙し、心中では同じ事を考えている。徐にミナが代表として切り出してきた。
ミナ「・・・戻りますか。」
   一同同時に頷く。敵側の真意は定かではないが、これ以上の追撃はないと断言できた。
   徐に起き上がる面々は愛機に乗り、航空機の格納庫へと機体を進ませた。
   戦闘を終えた一同は7機の航空機にそれぞれ搭乗し、地球平西財閥本社へと帰還していった。

    地球平西財閥本社。
   ミナ達地球チームが帰還してから早1ヶ月が過ぎ去ろうとしている。
    あれからデヴィル等は何の音沙汰もない。地球も火星も一同も、まるで束の間の休息を過ご
   しているかのようであった。
    地球と火星の不振な輩の騒動。あれは敵側の時間稼ぎと戦力調査なのではと、新米レイヴン
   のミュリナルが語る。
   依頼を失敗した事のない彼にとって戦力分析はお手のもの。また先輩格のシェガーヴァも同じ
   考えを持っていた。
    丁度半月前、突如と陣痛に見舞われたライア。ユウトや女性陣付添の中、無事2人の赤ん坊
   を産み落とした。
    2人の赤ん坊もユウとアイ同様に双子で、待望の跡継ぎである男児は末っ子。
   一男三女の両親となったユウトとライアは満足そうな表情をしている。
    またこれから向かえるであろう子育てなどの死闘も、2人なら乗り越えられるとより一層
   夫婦の結束を固めていた。

ウィン「流石にこれで満足でしょう。」
ライア「ですね。待望の跡継ぎが生まれましたし。」
マイア「そんな事言って、姉さんが動いている間の面倒見る身にもなってよね。」
    最近ライアは財閥の副社長として類を見ないほどの勇猛振りを発揮する。
   それは社長であるナイラをも圧倒させるものである。出産で動けなかった分だけ、猛烈に行動
   を開始しだしたと言っていいだろう。
    ライアが行動中はマイアが、マイアが行動中はライアが。代わる代わる6人の子供の面倒を
   見ていた。
    当然レイス姉妹やデュウバ姉妹も、エルディル・ミナもウインドから頼まれた子育てを貫き
   通していた。
    だが彼女ら女傑をもってしても、6人の子供のやんちゃ振りには手を焼かされていたので
   ある。
   時には2人係で1人をあやすものの、それでさえレイヴン以上の死闘を行っていたかのような
   疲労感。
    未婚の男性陣も未出産の女性陣もこれが親になる者の戦いだと改めて思い知らされた。

    地球平西財閥本社。6人の子供を抱える事により、新しい生命を守り育てる事を学ぶ。
   それはレイヴン達社員達全て。そんな姿をウインドやシェガーヴァは優しく見守っていた。
ライディル「そういえば新しく生まれたお子さんの名前は何て言うんだい?」
    火星の人工知能部隊ヴァスタールの調整に進んで名乗り上げたライディル。またウインドや
   シェガーヴァも火星へと飛んでおり、今し方彼等は帰還し束の間の休息を取っていた。
   つまりライアの出産を知ってはいたが、実際に赤ん坊を見たのは今が初めてであった。
ユウト「女の子の方はレイア、男の子の方はリュムです。」
ライディル「・・・なんだかなぁ・・・。」
   バツが悪そうに頭を掻くライディル。不服なのかとライアとマイアは睨み付ける。凄まじい
   剣幕に周りは引くが、全く動じない彼もまた凄い。
ライディル「ユウちゃんとアイちゃんみたいさ、何らかの希望溢れる名前にした方が俺はよかったと
      思うが。」
   それは言えてると一同頷いた。
    しかしこの名前はユウトがライアに名前を任された時、あれから何日も考え抜いた末の名前
   だった。それを知ったライディルは申し訳なさそうな顔で彼に詫びる。
ライディル「そうか・・・半月考えてたのか。」
ユウト「自分はどうも・・・こういった名前というものには縁がないようです。散々考えた末にこの
    名前にしました。」
   ユウトもバツが悪そうに頭を掻く。

    そんな中2人の子供を見てウインドが名前の由来を語りだした。
ウインド「ライアとマイアを掛け合わせたみたいな顔だな。レイアのレは華麗から、イアは2人から
     拝借したようだな。」
   驚愕した表情をするユウト、正にその通りだった。そして・・・。
ウインド「シェガーヴァから聞いている、まるで竜の鳴くような声で泣くと。そして自分達夫婦の
     後継者としての夢を託して。リュは竜、ムは夢。故にリュムか・・・。」
   目を丸くして驚くユウト。生まれた子供達の名前には、しっかり彼なりの希望が込められて
   いたのだ。
   またそれを知らなかったライアとマイアも、今の発言で納得がしたのである。
ウインド「リュムの泣き声に当てられて3人も火が出たように泣き出すと。レイスから何度も聞かさ
     れていたっけ。」
レイス姉「私の息子と同じぐらいに泣いてますよ。いい思い出です。」
    約1ヶ月、レイス姉は悩みを表に出さなくなっていた。辛い思い出である子供の話も笑顔で
   話す事からその心中が窺えよう。
    レイス姉が漆黒の魔女に戻った事が切っ掛けで、クローンファイターズも当てられたように
   本来の姿を取り戻していった。
   笑う時は笑う、悲しむ時は悲しむ。そして怒る時は怒る。
   それは子供がいる事により本来の姿に戻っていったようである。
レイス妹「最近6人とも姉さんばかりに懐くのよ。」
レイス姉「でも手が焼くのは相変わらずよ。」
   羨ましそうに語るレイス妹。そんな彼女を屈託のない笑顔で見つめるレイス姉。
   ウインドは心中で、もう心配要らないなと心中で呟いた。

    それから数日後。財閥の大型ガレージにて一同は愛機のメンテナンスに没頭していた。
   そんな中アリーナ対戦表を見つめ、物思いに耽るアマギ。
    いつもは明るく動き回っている彼だけに、オリジナルアマギみたいな暗い表情をしている
   のが一段と目立つ。
   そんな彼を発見し心配そうに見つめるレイス姉。
レイス姉「どうなされたのですか?」
アマギ「あ、いえ。このサブアリーナ対戦データなのですが・・・。」
   コンピューターのモニターをレイス姉に見せる。丁度点滅している部分の名前を見て、彼女は
   驚いた表情をする。
レイス姉「・・・マキ=ヨシクラ・・・。」
アマギ「これは兄の血縁の方なのでしょうか。自分が知る限りには、兄はユリコさんと結婚。そして
    娘さんをご出産。ユウト君の母であるアキさんです。それ以外には生んでいません。また
    兄の従兄弟であるユウジさんにはお子さんはいません。自分もユキナさんのパートナーと
    なって一生を尽くした兄も。」
レイス姉「別の方という事はないのですか?」
アマギ「これを見ると別の人だと言い切れないのです。」
   別の画面を映し出し、マキ=ヨシクラに関しての情報を映し出す。それをレイス姉はゆっくり
   目を通した。
レイス姉「・・・サブアリーナ全勝、依頼遂行率100%・・・。」
アマギ「アリーナとサブアリーナのレベルはレイスさんもご存じですが、全勝しているレイヴンは
    殆どいません。それに依頼遂行率も100%。自分が思うにはですよ、まるで自分を知って
    欲しいと戦績を打ち出しているかのようです。」
   腕を組み考えるアマギ。またレイス姉も腕を組み、同じく考え込む。
   最近明るくなってきたレイス姉、そして普段明るいアマギが2人して暗いのだ。これは当然
   周りの注意を引くには十分すぎるものであった。
    何事かと駆け付けるレイス妹とウィン。隠し通すつもりはなかったので、2人は事の次第を
   語り出した。
レイス妹「ふむ・・・。」
ウィン「詳しくは分かりませんが、この方もレイヴンズの一員と考えていいのでしょうか?」
レイス妹「どうなんだろ・・・。」
アマギ「直接会ってみるしかないですね。」
    しかし4人は思った。
   自分達で調べたいと思ってはいたが、出撃は許可されていない。例のクローンファイターズは
   監督役に回れというのがウインドとシェガーヴァの意見だ。
   自分達が動いては他の新米レイヴン達が育たない。それでは自分達がいる意味もないのだと。
    かといって誰かに押しつけて動かす事はしたくない。望まない行動などを無理に勧めては
   己にとってマイナス要素になるからだ。
   己自身が進んで行う事がより一層、己の血となり肉となる。
    だがあともかくにも自分達が動きたいという決意になっている事は事実。その目標が亡き
   恩人の子孫であるかも知れない事が、彼等を突き動かす原動力となっていた。

ウインド「いいんじゃないか。動いてみなよ。」
    突然背後で声がして、4人は飛び上がらんばかりに驚く。またその声を掛けた存在が自分達
   の行動を止める存在である事から尚更バツが悪い。
    背後を向く4人の目に映ったのは、生まれたばかりのレイアとリュムを腕に抱くウインドの
   姿。そしてその背中にはユウとアイが、両脇にはターリュとミュックが。
   まるで大所帯の女将さんな出で立ちをしている姿に、4人は見るなり笑い出した。
レイス姉「フフフッ、全然似合いませんよ。」
レイス妹「確かに。」
ウインド「ライアもマイアも愛機のメンテナンスや、ブランクを補うための修行とかしだしたよ。
     他の面々も愛機のメンテに追われて誰も面倒見なくなったから俺が引き取った。」
   苦笑いを浮かべるウインドの姿を見たレイス妹とウィン。
   その姿を見て叶わぬ未来、いや過去であろうか。自分達が彼と家庭を持った時の姿を想像し、
   何とも言えない気分になる。
ウインド「行動制限を掛けるのは俺やシェガーヴァが該当だ。大破壊以前の記憶を持つ者などいない
     からな。お前達なら動いても構わない。しかし間違っても突っ走る事はするなよ。」
   会話を終えるや否や大泣きしだすリュム。それに当てられたレイア・ユウ・アイも泣き出し、
   突如と修羅場と化した。
   しかしターリュとミュックは流石年輩だ、4人の大泣きにも動じなく逆に不思議そうに首を
   傾げている。
    泣き続ける4人と落ち着く2人をあやしながら、4人に目配りをする。
   その後大型ガレージの別コンピューター端末側にあるソファーへと向かった。
ウィン「タフだねぇ・・・。」
   溜め息混じりな言葉と口にするウィン。幼馴染みとして感心する反面、どこか嫉妬感を抱く。
   しかし自分の愛する人が苦労する姿に心を躍らせる。それはレイス姉妹も同様であった。
アマギ「とにかく、動きますか。」
   最近日増しに恋愛感情に鋭くなった3人に、アマギが今後の行動を促した。
   動ける時は動く、それが一番楽な事である。動けなくなってからでは遅いのだ。それは自分達
   が日頃から促し続けている事である。
    自分達の先輩格が動くなと言ったから動かない。それは間違いだと先輩自身が告げたのだ。
   彼の発言で火がついた4人は出撃準備に移ったのだった。
                               第3話へ続く

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