〜第1部 18人の決断〜 〜第3話 火星の地1〜 アリーナでの騒動から約二週間後、火星に飛んだユウトはまず情報収集を開始する。 地球の地ではナイラが情報収集の役を買って出てくれていた。火星の地での情報収集はユウト が単独ながら行動に出ている。双方とも現段階では困難を極める収集活動であった。 辛うじてデアやそれら敵勢力を検索する事ができたが、その中で一番の得をしたものがある。 それはライアの実の妹、マイア=トーベナスである。 女性レイヴン「兄貴〜、いましたよ〜。」 ユウト「ありがとうございます。」 ユウトは火星へ渡った直後、とあるミッションの依頼を受けた。それはレイヴン直々の依頼 であり、しかも戦闘中からのものだった。 企業側から不必要とされた彼女は、排除対象と共に消されそうだったのである。つまりは依頼 主から裏切られたという訳だ。 ユウトはその切なる願いを感じ取り即座に依頼を受諾する。依頼場所からの依頼という前代 未聞な事ではあるが、人命が掛かっている以上余計な詮索は後回しだった。 その後休む暇なく救出へ向かい、相手レイヴンと共闘で排除対象と共に追撃者も撃破した。 このレイヴンは秋坂クレス、アリーナでは低順位に位置する初心者であった。 彼女を助けたユウトはすっかり気に入られ、兄貴として慕われるようになる。臨時ではあるが 良きパートナーであり、またライア以上のじゃじゃ馬娘でもあった。 クレス「しかし兄貴も物好きですよね、他人を気にするなんて。私なんか裏切られたから、人なんか 信じられません。」 ユウト「その割りには僕と一緒にいるじゃないですか。」 クレス「ふふ〜っ、命の恩人だし。」 ユウトは心中で思う、ライアに何度もどつかれていた方が気が楽だと。 クレスの場合、行動が極端過ぎた。それは要所要所にて180度変わるようなものである。 だが残酷や卑怯といった人間ではなく、単に人を信じられなくなっていると直感していた。 クレスの情報通り、ライアの妹マイアは火星のアリーナに所属していた。しかもナイラと 同様、若いながらも第2位に君臨している。 他のレイヴンから紅の魔女と恐れられ、その豪快な行動はナイラとは正反対の動きであろう。 2人は今の住居としている居住区から愛機と共に出発。マイアがいるとされる火星アリーナ 場へと向かう。 クレスのACはレイヴンに分け与えられる初期型機体を改良した、何とも初心者的な構成。 だが見定める所はしっかりしており、機動力と火力の面はユウトの愛機に勝るとも劣らない。 褐色に染まったそのACは、一撃必殺の力を秘めている。 クレス「ここがアリーナ場・・・。」 ユウト「懐かしいですね、以前はここを何回も利用していました。今から5年前です。」 ユウトは懐かしそうにもう一つの故郷である火星のアリーナ場を見渡した。 約5年前とは多少変わっているものの、地球とは違い殺伐とした赤い惑星の如く殺気が満ちた 場所でもある。 クレス「ところで、これからどうなさるんで?」 ユウト「マイアさんと直接交渉したい所ですが、第2位の人物にはなかなか近づけないでしょう。」 クレス「でもユウトさんはナインブレイカーなんでしょう。ならその力を使えば・・・。」 ユウト「大破壊後の世界の最強の称号、マスターオブアリーナと違います。今のナインブレイカーは 全レイヴンの憧れの的、その自分がここに現れたら混乱を巻き起こしますよ。」 ナインブレイカーも大変なのだと、初心者のクレスに教える先輩のユウト。それをマジマジと 聞き入る彼女であった。 クレス「ではどうするんです?」 ユウト「直接対戦し、こちらに気付いて貰います。機体構成を変えて、突如の乱入者で対戦を試み ますよ。」 またとんでもない事を言い出したなと、クレスは驚きの表情を隠せない。 ユウトと出会ってから、彼の驚く発言を目の当たりにしている彼女。毎日が新鮮で、また驚き の日々でもある。 ユウトはクレスの機体構成を拝借し、エアーファントムを改良する。武装も大きく変更し、 その機体構成から初心者的雰囲気をかもし出した。 そしてユウト自身も変装し、名前を別名のホイルと名乗る。 ホイル「これでよし。」 クレス「・・・面白い人ですね、ユウトさんは。」 ホイル「俺はホイル。荒くれ者のしかない賞金稼ぎさ。」 役所もしっかりとなり切る所が凄い、行動でそう訴えるクレスであった。仕草までも中年男性 そのものだ。 ユウト改めホイルはエアーファントム改めキラーハウンドに乗り込み、アリーナのガレージ を通り一旦表へと出る。その後アリーナ受付中央付近へと向かい、強引に侵入を開始した。 当然見も知らずのACが現れたのだから、係員達は大騒ぎになる。 アリーナ係員1「そこのAC、直ちに止まれ!」 アリーナ係員は内部スピーカーを使い、キラーハウンドに対して停止するよう警告する。 ホイル「アリーナ第2位の紅の魔女に決闘を申し込みに来た。それまでは帰らんぜ。」 しかしホイルも外部スピーカーを通して、殺気の入った発言をする。それを聞いた係員達は 恐怖し、本来タブーであるレイヴンへの連絡をするのであった。 マイアは同階の北側で待機中らしく、直ぐさま本人がACと共に彼の元へ駆けつけて来た。 ホイルはACをアリーナ闘技場へ移動し、マイアのACを見下しているかのように出迎える。 マイア「誰だ貴様は・・・。」 マイアも殺気の込められた発言で、ホイルに話し返す。だがホイルの殺気を感じた途端、彼女 は今自分の立場がどのようなものなのかを目の当たりにする。 ホイル「貴様に決闘を申し込む。まさか紅の魔女ともあろうものが、決闘を拒否し逃げる気じゃある まいな。」 先程の係員達に話し掛けた時とマイアに話し掛けた時、ホイルはボイスチェンジャーを使用し その肉声を青年声から中年声へと変えている。 このボイスチェンジャーは相手の心境を逆立てするような代物を使用し、通常以上に相手を 挑発し続けた。 マイア「・・・いいだろう。後で後悔するなよ。」 ホイル「フッ、では始めるぞ。」 ホイルはACを使い、手短にあるアナウンス用のスピーカーをもぎ取る。それを左手に持つと 空中へと放り投げた。 マイアはこれが彼なりの戦闘開始合図なのだと思った。しかし心中ではスピーカーが落ちる前 に攻撃するのではと要らぬ疑念が脳裏を過ぎる。それ故に今の直感はホイルを超えていた。 スピーカーが地面へと落ちる刹那の思考、僅か5秒足らずである。 轟音と共にスピーカーが落ちた瞬間、真っ先にマイアのACが動き出した。 マイアのACブロークンブレイダーは右腕主力武器のレーザーライフルを射撃する。と同時に ブースターダッシュを用い左側に動き出した。 ホイルはキラーハウンドをその場にジャンプさせ、放たれたレーザー弾を回避。同じくして 左肩装備の2連装小型ミサイルランチャーを発射する。 放たれたミサイルは相手機体の右側に着弾、反動で体勢か崩れる。そこにキラーハウンドは 右腕主力武器のプラズマライフルを射撃、高圧縮のプラズマ弾はブロークンブレイダーの右肩 を貫いた。 マイア「クソッ・・・レーザーライフルは使えないか・・・。」 マイアが武装を変更し一瞬間を置いたその時、再びホイルのプラズマライフルが火を吹いた。 プラズマ弾はブロークンブレイダーのコアパーツとレッグパーツのジョイント部分を貫き、 そのまま仰向けに倒れ込む。 ホイル「チェックメイト。」 颯爽とキラーハウンドが近付き、コアユニットにプラズマライフルを押し当てる。マイアは 今の現状を目の当たりにして、相手の言動から己の死を覚悟した。 だがそこにアリーナ係員達が駆け付け、彼女を擁護する発言をしだした。 アリーナ係員1「待ってください、彼女の命を奪うのだけはやめてください!」 アリーナ係員2「彼女は我々アリーナ係員の華なんだ、華の芽を摘む事だけはしないでくれ。」 ホイル改めユウトは思った。 ライアの生き別れの妹がいるとナイラから聞いた時、その彼女が孤独な生活をしているのかと 心配になったのである。 だがアリーナ係員達の言動を見ると、守られている事に気が付いたのだ。 キラーハウンドは武装を解除し、ブロークンブレイダーを担ぎ出した。それを見た係員達は 再び慌てふためく。 ホイル「安心して下さい、彼女をガレージまで運びます。」 今まで殺気が込められたり相手を見下した発言をしていた。その相手がそのような敬語を話し 出したのだ。それを聞いたマイアや係員達は驚きの表情をそれぞれ浮かべる。 キラーハウンドはブロークンブレイダーを担いだまま、ガレージへと向かって行った。 ガレージのハンガーにブロークンブレイダーが固定され、コクピット内部からマイアが徐に 降りてくる。アリーナ係員達は心配そうにマイアを見つめた。 アリーナ係員1「大丈夫でしたか?!」 マイア「はい、大丈夫です。」 マイアは愛機を見つめて驚いた。それは的確な場所しか攻撃されていなかったからだ。しかも ACの駆動系に関するパーツを機械のように破壊されている。これは並大抵のレイヴンには できない業物だと痛感した。 そこに変装とボイスチェンジャーを外したユウトが駆け付けて来た。また隣にはオドオド した仕草をするクレスが付いて来ている。 ユウト「無事で何よりです。まずはお詫びを。アリーナに強襲まがいな事をしてしまい、本当に申し 訳ありません。それとマイアさん。貴女に対する数々の暴言、申し訳ありませんでした。」 深々と頭を下げるユウト。その青年風の声を聞いたアリーナ係員達は、彼がナインブレイカー のユウトだと直感した。 アリーナ係員2「ま・・・まさか・・・貴方が小松崎優斗君?!」 マイア「えっ?!」 その場にいるマイアや係員達は驚愕し、そしてそれを聞いたガレージにいるメカニック達も 同じく驚愕した。 ナインブレイカーは絶対にアリーナなどに顔を見せない。それは挑戦や復讐などといった、 要らぬ感情を持つ者から身を守る為だ。 試合がある場合にのみアリーナへと姿を見せ、終わると颯爽と去っていくのが普通である。 これはどのレイヴンにも当てはまっているだろう。 そのナインブレイカーが目の前にいる。しかもその人物は中年ではなく、自分達より若い青年 である事。 これが驚きの表情を浮かべる何よりの要因となっていた。 ユウト「本当は名乗りを挙げれば応じてくれたと思いますが、今のご時世を考えるとこれが無難かと 思いまして。それにマイアさんの実力が解かりましたし。」 恐縮気味なユウトを見て、一同は呆気に取られる。それはどう考えても普通では起こさない 行動に見えるからだった。 アリーナ係員1「・・・な・なにはともあれ、マイアさんの命までは取らなかった事ですし。」 アリーナ係員2「今回の件は我々の娯楽イベントだったと他のレイヴン達には伝えておきます。」 ユウト「すみません。」 再び深く頭を下げるユウト。それを見たマイアは別に構わないといったジェスチャーをする。 その行動を見たユウトは、彼女の姿がライアにダブって見えた。 ユウト「あの、一つお願いが。マイアさんをお借りしてよろしいでしょうか?」 アリーナ係員1「え・・ええ、構いませんよ。」 ユウトはマイアとクレスを連れて、ブリーフィングルームへと向かう。 彼女の愛機やアリーナ場の破損箇所はユウトが自腹で修復費を出し、一連の詫びとしてもらう 事にした。 クレス「え・・・え〜と・・・、は・はじめまして・・・秋坂クレスと申します・・・。」 マイア「ご丁寧に。改めて、マイア=トーベナスアイグです。」 ユウト「小松崎優斗です、よろしくお願いします。」 クレスはマイアに上がり気味であり、マイアはユウトに上がり気味であった。 全くもって姉と同じ仕草をするマイアにユウトは苦笑する。そして再び地球にいるライアを 思い浮かべる。 マイア「あの・・・何か?」 ユウト「いえ、私事です。すみません。」 ユウトは思い悩んだ。今マイアに生き別れの姉がいると話すべきなのかと。だが言わないより はいいと思い、徐に話しだした。 ユウト「マイアさん。貴女は天涯孤独だと思いますか?」 マイア「・・・ええ。私の両親と姉はテロリストに殺されました。今は家族はいません・・・。」 今までの明るさが消え去り、暗い表情で応対しだす。彼女が今まで独りで過ごしてきた辛さが よく理解できるだろう。 ユウト「いきなりで申し訳ありませんが、ライア=トーベナスアイグは生きています。」 暗い表情を浮かべていたマイアだが、その発言を聞いた直後光が灯ったように笑顔になる。 そして大声で聞き返した。 マイア「ほ・ほんとうですか?!」 ユウト「はい。ライアさんは地球で生活しています。今はトーベナス社という小さな企業の社長を 務めており、世界を救うべく努力しています。」 マイア「・・・・・。」 マイアは涙を流しながらその場に俯く。ユウトは彼女の心境が手に取って分かる思いだった。 ユウト「彼女はレイヴンとしての道も歩みだしましたよ。まだ初心者ですが、その心意気は誰にも 負けない位です。」 マイア「・・・それを告げる為に、・・・態々私を尋ねて来られたのですか・・・。」 マイアはユウトの両手を掴み、静かに胸に抱く。この行動は過去にライアが行ったものと同様 であり、流石姉妹だなとユウトは思った。 マイア「ユウトさん、ライアに会わせて下さい。姉の姿を今一度見てみたいのです・・・。」 ユウト「そうしたいのですが、今は敵勢力の調査中でして・・・。それが終わり次第、地球に戻る つもりです。それまでは待って頂けないでしょうか?」 マイア「了解しました。ユウトさんに従います。貴方は私にとって恩人当然です、どこまでも一緒に 付いていきます。」 一途な一面も姉であるライアそっくりであると、ユウトはつくづく思った。 そしてこれから大変だなと、再び心中で溜め息を付くのであった。 一方地球のトーベナス社では、ライアがレイヴンとしてのレベルアップに日々挑んでいた。 彼女の指導役はナイラである。 アキナ・ライアン・ディーレアヌ・インシェア・ノルムの5名は、臨時の専属レイヴンの依頼 を受けた。 形はどうあれ一気に5人もの臨時専属レイヴンが増えたトーベナス社。ナイラ運営の平西財閥 のサポートも受け、急激にその業績を伸ばしていった。 ナイラ「上手いものですね。」 ライア「へへっ、ありがとう。」 ナイラ「この姿をユウトさんが見たら、きっと喜ばれるでしょうに・・・。」 笑顔のライアの表情が一気に強張った表情へと変わる。それを見たナイラはまだ彼の事が 許せないのだと直感した。 ライア「彼なんか帰ってこなくて嬉しいわよ・・・。」 だが約2週間前からのライアの表情から比べると、穏やかになりつつあるとナイラは思う。 それに同じ同性として、好いている異性を嫌う事がどれだけ辛い事であるか。彼女は痛いほど 分かるのであった。 ナイラ「・・・ユウトさんは本気で貴女を貶した訳ではありません。貴女に立ち上がって貰う為に、 態と悪役を買って出たのです。」 ナイラはユウトの行動の真意を話した。やはり彼が悪者でい続けるという事にも心が痛み、 間違って憎んでいるライアも可哀想であると思ったからだ。 ライア「・・・知っています、ユウトさんが悪態を付く人ではない事。・・・でも腹が立って仕方が ないんですよ・・・。多少なりと・・・言い過ぎたかもしれませんが・・・。こう・・・ まんまと騙されたみたいな気がして・・・。」 しかしライアは全てを理解していた。だがそれでも悔しいと思うのは、それだけ相手を思って いるからであろう。 ナイラ「フフッ、本当にユウトさんが好きなのですね。そこまで彼の事を思えるなんて。」 それを聞いたライアは、突如強い罪悪感に襲われた。 今までユウトの事を見返してやろうと思い、日々修行を積んだ。だが自分を成長させる為に あえて悪役を買った事に深く気付いた今、彼の事が憎めなくなっていた。むしろ謝りたいと いう一念が強かった。 ライア「・・・ナイラさん、私はどうすればいいのでしょうか・・・。・・・ユウトさんをこの手で 思いっきり殴ってしまいました・・・。・・・それに今まで憎い相手と思い続けた、これは 許されるのでしょうか・・・。」 ナイラ「絶対許してくれますよ。と言うかユウトさんの方が謝ると思います。ライアさんに酷い事を 言ってしまったと、あの時嘆いていましたから。」 ライア「・・・・・。」 ナイラ「とにかく今は強くなりましょう。女を怒らせるとどうなるのか、軽い気持ちで思い知らせて みましょうよ。」 明るくそう話すナイラ。ライアはそれを聞き、不安篭った笑顔で応えた。 その後再びACの修行を開始するライアとナイラ。とにかく今は強くなりたいという一念を 抱き、ライアは自己強化に励んだ。 キュービヌ「フフッ、立ち直ったね。」 ACのメンテナンスを行いつつ、遠目で2人を見つめるキュービヌ。若い同性は明るく輝いて いると、葉巻を吹かしながらそう思うのであった。 クレス「ふぁ〜っ・・・眠いなぁ〜・・・。」 ユウトの自室では、彼がコンピューターを使用し敵勢力の情報を探している。 マイアへの擬似襲撃から約12時間が過ぎた夜中、クレスが眠そうに大きな欠伸をする。 その隣ではマイアが自作のコンピューターを操作し、何やら熱心に作業を繰り返していた。 ユウト「眠いのでしたら先に寝て下さい。」 クレス「でもね〜・・・、ユウちゃんが頑張っているのにさ。何だか自分だけ悪い気がしてさ。」 マイア「そうですよ。これだけ頑張っているのですから、私達も同じ立場に立たないと。」 ライアと同様に、マイアはユウトの事を気に入ってしまったようだ。だがライアほどの一途さ はない。単に恩人としての考え方であろう。それはクレスも同様である。 マイア「ユウトさんはどのぐらい戦い続けられているのですか?」 ブラインドタッチをしながら、言葉をユウトに投げかける。その業物はかなり速く、一端の オペレーターみたいであった。 ユウト「火星の事件がありましたよね。レオス=クライン率いるフライトナーズが反乱を起こした 5年前のやつです。」 マイア「知っていますよ。何たって火星育ちですから。」 ユウト「あの時期の少し前です。レイヴン歴は・・・6年になりますか。」 クレス「という事は・・・11歳の時ですか?」 クレスがユウトの年齢を見事的中させた。どうやら彼女はこういった事が得意のようである。 ユウト「そうですね、自分は今年で17ですから。」 マイア「・・・私より2歳年上か・・・。」 それを聞いたクレスは驚きの表情を浮かべる。それに気付いたマイアはその事に問いだした。 マイア「どうしたんですか?」 クレス「私より年下なんて気付きませんでした。私は今年で20です。」 今度はマイアが驚きの表情を浮かべる。自分より5歳も年上な彼女がまるで妹みたいな言動を するのだ。これには驚かざろうえないだろう。 マイア「一見すると13・4歳にしか見えませんが・・・。」 クレス「でしょう。身長もお2人より低いですし、妹と間違われます。」 苦笑いを浮かべるクレス。この苦笑いを浮かべる表情を見れば、どう考えたって自分達より 年上には到底思えない。 お互いに語り合いながらも作業は続いていった。その中で今度はマイアが話しだす。 マイア「私は13の時にレイヴンになりました。火星のクーデターを鎮圧したあるレイヴンに憧れて です。」 ユウト「そうですか。」 ユウトは彼女に気付かれたのだろうと思い、内心ドキリとする。 火星世界でのクーデターを鎮圧し、騒乱を終焉させたレイヴンこそユウト自身なのだ。これは ライアでも知らない事であり、唯一知っている人物といえばキュービヌとナイラであろう。 クレス「そうそう、風の剣士という人物を知っていますか?」 マイア「それはもちろん、最強のレイヴンですからね。ロストナンバーレイヴンズを陰ながら支え、 共に戦った青年でしょう。メチャ憧れますよ。」 だがクレスが別の話題を切り出したおかげで、詮索されずに済んだのである。内心ホッとする ユウト。 しかし補足をしだした事により、自ら墓穴を掘る事になる。 ユウト「通称ウインド、愛機はウインドブレイド。その卓越した斬撃や正確無比の射撃が光る、自分 と同世代のレイヴンだったと聞きます。祖父の師匠ですよ。」 これを聞いた2人は当然の如く驚愕する。 ウインドの弟子は吉倉天城をおいて他にはいない。その彼を祖父と話したのだ。この発言をし 2人の表情を見た瞬間、ユウトはしまったと思った。 だが時既に遅し、後の祭りである。 マイア「ま・・・まさか・・・吉倉天城さんのお孫さん?!」 クレス「マ・・マジっすかっ?!」 ユウト「え・・ええ、そうですけど・・・。」 この時を境に2人はユウトを見る目が変わった。ロストナンバーレイヴンズのリーダー格、 吉倉天城。その孫がユウトだと知って、今まで暴言がまいの発言をした事を恐れた。 マイア「も・・・申し訳ありませんでした。そうとは知らず・・・。」 クレス「普通のお坊ちゃまと思っていたけど、ホントにごめんね。」 ユウト「何も謝る事はありませんよ。人は見かけや過去の栄光で判断してはいけません。それは人を 見下した事に繋がります。気を付けて下さいね。」 2人「了解しました!」 声を揃えて発言するクレスとマイア。それだけユウトが大きな存在だという事が伺える。 その後今までの行いが変わり、彼を敬う視線で話しだす2人。それを感じたユウトは心中で 要らない事を話すのではなかったと後悔するのである。 だがそれとは別に祖父がどれだけの実績を残したのかを痛感するユウトであった。 第3話・2へ続く |
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