〜第2部 9人の決戦〜 〜第4話 新しい命2〜 トーベナス全社員がクーデターを勃発、レイヴン達は平西財閥に移動せざろう得なかった。 一同が平西財閥に移ってから2時間が経過。ウインド及びその他のレイヴン達は、医務室の 前でオロオロしながら待っている。 ライアの陣痛が始まってから3時間、子供は今だ生まれて来ない。 立会人は夫のユウトをはじめ、マイア・レイス・デュウバの4人である。出産作業には一番 経験があるメルアや、医師免許を持つナイラが担当をしていた。 エルディルの膝に座るターリュとミュック。心配しているのであろう、言葉にならない声で 安否を気遣う。 エルディル「もう少しの辛抱だからね。」 自分達を誘拐したエルディル達。普通から考えれば直ぐには許せないものだ。 だがターリュとミュックは自然と3人に懐く。それは彼らが正義の心を持っている事に他なら ない。善人を確信する2人の試験に突破したと言えよう。 キュービヌ「・・・・・。」 アマギ「そう緊張しないで下さいキュービヌさん。普段の貴女のままでいいのですよ。」 キュービヌ「だ・・だってよ・・・う・・生まれんだぜ・・・。あ・・あたいの・・甥が・・・。」 いつも以上に葉巻をふかしながら、震える声で答えるキュービヌ。どうやら一同の中で相当 緊張しているようだ。 ウインド「何も心配する事はない、全て上手くいく。」 壁により掛かりゆっくり煙草を吸うウインド。ボイスチェンジャーを外した事から、本来の 彼に戻っている。 ミナ「大丈夫ですか?」 ウインド「心配ない。」 だがやはり緊張しているのだろう。どこか落ち着かない様子のウインド。ミナは彼の隣に腰を かけ、同じく待ち続けた。 暫くした後である。待合室に響かんばかりに、2つの産声が輝かしく聞こえてきた。 どうやらライアは無事双子の赤ちゃんを出産したようであった。 それを聞いた一同は大叫びで喜び、新しい生命の誕生を祝い合った。 アマギ「やりましたねキュービヌさん。」 キュービヌ「ラ・イアさ・ん・・・がん・ばっ・たな・・・。」 大泣きしながら感動するキュービヌ。アマギはその見かけよりも大きな肩を軽く叩く。 アマギも涙を流し、感動を味わっていた。 アマギはオリジナルアマギのクローンである。つまりは自分にとって孫であるのだ。これは 肉親でしか分からない感動が、アマギには心の底から理解できた。 ミナ「よかった・・よかった・・・。」 ウインド(マイア)「・・・ああ。」 ミナも貰い泣きをし、その場で泣き続ける。ウインドはただ一言そう話すと、煙草を吸った。 だがその頬には涙が流れている。 ゆっくりと病室に移動する一同。大勢で移動しては生まれた子供に影響があるからだ。 それは前もって出産経験があるメルアから諭されている。 病室内には今し方女でしか分からない死闘を勝利したライアが、ベッドの上で横になって いる。 ベッドは45度の角度に上がっており、ライアの胸の中では2人の実に可愛らしい赤ちゃん が眠っている。 彼女の近くでは今も目を真っ赤にしたレイス・デュウバ・マイアがいた。 ユウタ「おめでとうございますっ!!!」 ナミ「おめでと〜っ!!!」 一同に歓迎され、ライアは頬を赤く染める。だが戦い切ったという表情をし、その顔は清々 しいものであった。 ライア「ありがとうございますユウタ様・ナミ様。」 キュービヌ「それでライアちゃん。男かい、それとも女かい?」 ライア「2人とも女の子です。」 それを聞いた男性陣はどこか嬉しそうな表情を浮かべる。まあそれは男の性であろう。 しかし心から嬉しがっているのは、陰から支えたウインドであった。 賑わう病室から退散すると、1人財閥の外へと出た。 ウインド「レイス・・・。お前のひ孫は女の子だったぞ・・・。」 再び煙草を吸い、大空を見つめる。2人の子供の誕生を祝福してか、空は雲一つない青空で あった。 レイス「どうしたんですか、突然いなくなって。」 そこにレイス・デュウバ・マイア・レイシェムが駆け付けてくる。その表情はライア負けじ の清々しいものであった。 レイシェムもオリジナルレイスの意思を受け継いでいる。つまりは生まれた子供達はひ孫に 当たるのだ。 ウインド「生まれたばかりの子供には、煙草の煙は毒だ。外に煙草を吸いに来た。」 マイア「フフッ、お父さんらしい。」 5人はその場に座ると、深い溜め息をつく。まるで自分達もライアと共に戦った気分であった からだ。 レイス「あなたが言っていた立ち合えというその真意、しっかり確信しました。」 デュウバ「生んだ事はないですが、ライアさんの産みの苦しみが痛いほど理解できましたよ。」 マイア「戦ってた・・・姉さん戦ってたよ。」 語り出すと涙を流し出すマイア。それに気づいたウインドは、彼の肩を軽く叩く。 ウインド「これでお前達も立派な真の女性だ、胸を張っていい。それに生命の大切さがよく分かった だろ?」 レイス・デュウバ・マイア「はいっ!」 声を揃えて叫ぶ3人。その発言から、ウインドは安心した。 生命の大切さを知れば、もっと困っている人々を助けたくなる。それを確信した3人を見て、 安堵の笑みを見せるのだった。 レイシェム「今度はマイア様ですね。丈夫なお子様をお産み下さい。」 マイア「も・・・もうっ・・・レイシェムさんったら・・・。」 赤面しながら恥じらうマイア。そんな彼女を見つめ、4人は微笑ましい気分になる。 ライアの出産を立ち会った3人の女性。彼女達はこの瞬間、ウインドに匹敵するぐらいの 力を身につけたのである。 マイア自身はまだまだ未熟な部分があるが、レイスとデュウバは殆どウインドと互角に近い 力を身に付けた。 またレイシェムも人工知能ではあるが、シェガーヴァに匹敵するぐらいの生命の尊さを誕生 後初めて学んだのである。 キュービヌ「さ〜て、名前を考えなくちゃね〜。」 病室にそのまま居続ける一同。 出産後の母親は絶対安静を余儀なくされるが、ライア自身は病気ではないので会話は通常通り 行えた。 生まれた双子は移動ケースの中に移されており、そのまま眠りについている。その何とも 可愛らしい姿は心が温かくなり、一同は微笑ましい視線で2人を見守った。 ライア「そうですね。」 キュービヌ「何て名前にすんの?」 ライア「う〜ん・・・、どうしましょうか・・・。」 ライアは首を傾げて考える。その隣では真剣に考えているユウトの姿があった。これには他の 面々は口を出せなかった。 ウインド「このショートヘアの方がユウ、こっちの可愛らしい方がアイ。」 移動ケースを見つめるウインドが、呟くように話す。それを聞いたユウトとライアはいい 名前だと直感し、彼の名前を頂く事にした。 ユウト「いいじゃないですかそれ!」 ライア「お父様のそのお名前、使わさせて頂きます。」 ウインド「おいおい・・・、自分達で考えなよ・・・。」 そこにシェガーヴァが近づき、同じく生まれた双子の赤ちゃんを見つめる。 シェガーヴァ「なるほど。ショートヘアの方は実に活発になりそうだ。未来に勇気を与える人物と なるだろうな。可愛らしい方は優しく包んでくれる人物となるだろう。ウインドが 決めた名前、ユウにアイ。ユウは勇気の意味が、アイは愛の意味が込められている。 私はそう確信した。」 詳しい意味をシェガーヴァが話し、それを聞いた一同は再び赤ちゃんを見つめる。そしてその 意味が理解できた。 ナイラ「なるほど。」 メルア「さすがウインド様。」 ライア「ねっ・ねっ、使わせて貰いますね。」 かつてのライアに戻り、まるで子供のように同意を求める。それを見たウインドは呆れたが、 彼女らしいと思った。 ウインド「直接出産したライアに決定権があるだろう、任せるよ。ユウトはどうなんだ?」 ユウト「構いませんよ。ライアさんには脱帽の連続ですから。妻に全て任せます。」 ライア「よっしゃぁ〜、ユウにアイに決まり〜っ!」 これが素体のライアなのかと、本当のライアを知らない者達はそう思った。だがこれはこれで 明るくていいだろうと、納得せざろうえなかった。 ウインド「ターリュ・ミュック。お前達に妹ができたぞ。」 移動ケースを見たがっているターリュとミュックを抱き上げ、2人にユウとアイを見せる。 2人を見たターリュとミュックはまるで笑い喜んでいるかのように、ユウとアイを見つめた。 ライア「改めて。初めましてエルディル様・バレヴ様・チェブレ様。ライア=トーベナスアイグと 申します。」 ベッドに横になったままだが、出産前よりスマートになった彼女は実に大人の女性に仕立て 上がっていた。これは彼女が母親になった何よりの証拠であろう。 それを見た3人は心を高鳴らせる。自分達より若いこの女性がしっかり応対している事と、 ついさっき双子の子供を産んだ事に心から驚いた。 エルディル「エルディル=デスヴェイグといいます。」 バレヴ「バレヴ=ウォイウォレイトです。その節は申し訳ありませんでした。」 チェブレ「俺様はチェブレ=オグエアという。よろしくなライアさん。」 ライアの出産が効いたのか、3人は正義感溢れる表情で応対している。それを見たライアは、 3人は力になってくれると確信が持てた。 ライア「詳しいお話などは伺っております。どうでしょう。この際、私達と一緒に戦って頂けません でしょうか?」 チェブレ「もちろんよ。破壊しか能がなかった俺様が、あんたの姿を見てメチャ感動した。こんな 俺様でいいんなら、喜んで力を貸すぜっ!」 気合いある発言をするチェブレ。この発言を聞いた伝説のレイヴン達は、亡きトムに似ている と思った。 バレヴ「私も同じです。ここにいらっしゃる方々は活き活きとしていらっしゃいます。私は企業と いうものは好きにはなれませんが、貴方達は心から大好きです。不束な者ですがよろしく お願い致します。」 お淑やかに対応するバレヴ。その彼女の言動を見たレイスとデュウバは、デェルダとそっくり だと心中で呟く。 エルディル「私は・・・その・・・。」 ウインド「悩んでも埒があかない。要は人助けをするか人殺しをするか。この2つしかない。あんた だったらどうするよ?」 エルディル「もちろん人助けですが・・・。」 何か決断力を鈍らせる者があると、一同は思った。しかしその真意までは悟れずにいた。 だがウインドはそれを見抜き、気にするなと語りだす。 ウインド「師匠がデア達だったからという事なら気にするな。お前と奴とは違う、それは俺が責任を 持って保証する。」 この事がエルディルにとって決断力を鈍らせていた原因であった。 自分の師匠は恩人達の敵対する人物。それがエルディルにとって苦痛でもあったのだ。 心を和ませようと、ウインドは自慢の口説き文句を言い出した。 ウインド「それにそこまで見事な美貌を持って悪とは悲しすぎる。ライアや知人の女性陣を見習って しっかりとした女性として生きな。デアとは絶対に違うのだから。」 冗談を踏まえて発言するウインド。それを聞いたエルディルは頬を赤く染め、その場に俯く。 ウインドを知る者達は、彼は変わったなと思わざろうえなかった。 エルディル「・・・ウインド様がそう仰るのでしたら、お力になります。いや・・・私も一緒に戦わ させて下さい。」 鋭い直感を持つ者ならこう思う。今の彼女を擁護する発言で、エルディルはウインドに一目 惚れしたと。 本来はやきもちを焼くでだろうレイス・デュウバだが、彼らしいと心中で苦笑いで止めた。 そしてそのそそくさげな行動をするエルディル。レイスとデュウバはオリジナルのレイスに そっくりだと思った。 ライア「決まりですね。今後ともよろしくお願い致します。」 礼儀正しく頭を下げるライア。今の今までの素体の彼女を見た彼らは、今の言動などは作り だと思わざろうえない。 しかしここまで自分達の事を気遣ってくれる彼女に、3人は心中で共に戦おうという決意が 固まった。 9人のレイヴンと3人の意外な助っ人レイヴン。彼らはこの瞬間ロストナンバーレイヴンズ の一員となったのであった。 メルア「やはりそちらのお姿の方が似合っています。」 ウインド「そうだな、これの方が動きやすい。」 平西財閥本社大型ガレージで、メルアは愛機ライアット・ムーンを調整している。その隣の ケージでは、ウインドが愛機ウインドブレイドを分解調整をしていた。 ウインド「しかし・・・、まさかお前がレイヴンになるとはな。」 メルア「夫がレイヴンになった頃、私達は結婚しました。まだレイヴン歴は浅かったですが、夫の 力になれるよう勉強しましたよ。レイヴンやミッション・アリーナ・・・。そして伝説の レイヴンである貴男の事も。」 常に前向きになり学ぼうとする姿勢に、ウインドは脱帽していた。普通こういった行いをする 者はまずいない。 ウインド「秀才だよ。ここまで独学で勉強し、自らレイヴンとなりたいと決断した。お前には脱帽 する。」 メルア「とんでもない。まだまだ力不足です。それに、レイス様やデュウバ様みたいになれません。 夫や娘達を守る事が精一杯です。」 ウインド「フフッ。そのうちトーマスを追い越し、俺達の力量まで近づくさ。ここまで努力している んだ、必ず報われる。」 メルア「勿体ないお言葉です。」 大人の会話をしているウインドとメルア。 既にガレージにおり彼に話しかけたいと思っているエルディルは、遠目で自分の愛機を調整 していた。 とてもその会話に割って入る事ができない、彼女は心からそう思った。自分とは格が違うと。 ウインド「それで、エルディルは何を話しかけたいんだ?」 だがそんな彼女の心中を見抜き、作業をしながら話しかけるウインド。話しかけられた事に 驚き、手に持っていた愛機のスペック表を床に落としてしまう。 エルディル「あ・・いえ・・・、何でもありません・・・。」 メルア「フフッ、若い頃の私を見ているみたいです。夫と出会うまでは、エルディル様のように内気 な性格でした。」 エルディル「そ・・そうだったのですか。」 メルア「しかし、いずれこうなります。」 自分を指し、ここまで変わると促すメルア。それを見たエルディルは痛感した。 暫く後、愛機のメンテナンスを終える3人。その後ガレージの隅にある椅子に腰をかける。 後からシュイルが駆け付けて来て、4人での座談会が始まった。 シュイル「・・・アリナスさんのお姉さんに似ていらっしゃいますね。」 エルディル「私が・・ですか?」 シュイル「はい。お姉さんは私を庇って亡くなられました。今度は自分が妹さんのアリナスさんを 守る番、そう決意しています。」 エルディル「立派ですね・・・。」 シュイル「エルディルさんも立派です。師匠が破壊神的な人物でも、貴女は同じにはならなかった。 自分は師匠からの影響は結構受けていますから。貴女は信念が強い方です。」 その話し方などを聞き、シュイルの師匠はユウトだと直感するエルディルだった。ユウト自身 も彼と全く同じ応対をしてくれており、好印象を持っている。 メルア「シュイル様の師匠がユウト様。ユウト様の祖父であるアマギ様、アマギ様の師匠がウインド 様。何とも不思議な巡り合わせですね。」 ウインド「言えてる。」 煙草を吸いながら、ウインドはそう答える。 ウインド自身、一体どれだけのレイヴンの師匠となっているか分からない。 少なからずロストナンバーレイヴンズの一員は、全員彼の意思を受け継いでいると言っていい だろう。 エルディル「・・・私は本当にこのような場所にいてもよろしいのでしょうか。」 暫くして不安そうにエルディルが答える。それを間隔空けずにメルアが諭す。 メルア「何を仰いますエルディル様。ウインド様が認めて下されたのですよ。貴女は既に自由の戦士 であり、正義の使者でもある。もっと堂々として下さい。」 エルディル「勿体ないお言葉ですが・・・。」 やはり一歩前に出る勇気がないのだとメルアは直感する。だがウインドが意外な提案を切り 出した。 ウインド「こうしよう。ターリュとミュックをお前に預ける。2人の面倒を見てやってくれ。」 エルディル「わ・・私が・・ですか?!」 ウインドの発言を聞き、メルアは一瞬驚いた。 だがエルディルにここにいてもいいという自覚を持たせるために、この子守を任せたのだと 瞬時に直感した。流石は新米だが秀才レイヴンである。 メルア「エルディル様、娘達の面倒をお願いします。」 エルディル「・・・分かりました。任されたからには、責任を持って面倒を見ます。」 決断力に欠けるエルディルだが、一度決意した事は徹底的に貫き通す。ウインドはそう確信が 持てた。 ウインド「ライアがここの経営を手伝うようになったら、ユウとアイは俺が面倒を見る事にする。 さすがに4人の子供はパワフルすぎて、俺1人では面倒を見きれない。」 シュイル「なるほど。」 ウインドは保父だと心中で呟くメルアとエルディル。だが今時珍しいく貴重な存在だと、心の 中で賛嘆した。 またここまで子供好きであるから、相手から懐かれるのだと確信が持てた。 ウインド「さて、今日は早く寝るとしよう。さすがに連戦が続くと疲れる。」 メルア「ですがもしかしたら、レイス様とデュウバ様が寝させてくれないかも。」 ウインド「ハハハッ、それは十分あり得る。」 そう話しながらも、新しい自室へと向かっていく。 その後ろ姿を見た3人は何度となく思う。 この優男であるウインドがここまで立派な人物なのが、心から不思議がった。しかしこれが 彼の持って生まれた使命なのだと痛感もできた。 その後ガレージからブリーフィングルームへと移動した3人は、そこにいたディーン達と 再び座談会を開始する。 コミュニケーションが何より大切、ウインドが口癖のように言っている。それを無意識では あるが、実行しているメンバー達であった。 第5話へ続く |
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