第3部 9人の勇士 36人の猛将 〜第4話 起動する駒1〜 それから3日後。財閥の外に有り得ないものが存在していた。 レイヴン達はそれを見て驚き、はたして動かせるのかどうか悩んでいる。 ユウト達が決戦時に撃破した、ナインボール=セラフ・ヴィクセン・ファンタズマ。 その完全アレンジ型が一同の目の前に待機してあった。 レイシェム「起動実験は行いましたが、実戦テストは行っていません。どなたかこの機体を操り、 完全に復元されているかどうか確認をお願いします。」 レイシェムは語るが、どの面々もその遺産を進んで操ろうとはしなかった。 自分達が激戦を繰り広げ、やられそうになったマシン。レプリカに近いが正にそのものだ。 その機体には違和感を感じずにはいられない。 レイス姉「ファンタズマとセラフは強化人間専用ですか?」 レイシェム「人間も強化人間でも操れます。しかし今までの機体以上に重力が掛かるのは覚悟して 下さい。」 レイス姉「了解。セラフを試します。」 今のレイス姉は進んで物事をこなしている。 一同を代表して漆黒の魔女が待機中の赤い悪魔に乗り込んだ。 ナインボール=セラフ。 コクピット内部は従来のACと何ら変わらないものであったが、変形システムを採用している 事により多少操作が異なる。 またセラフのみ旧式AC同様、レーザーブレードが両腕に内蔵されている。しかし内蔵兵器 を搭載する故に、外部での武装追加は不可能であった。 レイス姉は徐にセラフを操作する。普通の機体同様に動き出すが、反応が今までより断然 速い。それに強化人間であるレイスにとって、本来は強化人間に合わせて作られたセラフは 直ぐ様一体感の感覚を掴む事が可能だった。 正しくセラフは強化人間専用機体であると言ってもおかしくない。 ライディル「すげ〜動いてるよ・・・。」 ナイラ「倒すのに苦労したのに・・・。」 操作に慣れるまでのレイス姉とセラフを見つめる一同。驚きの表情で見続けた。 そんな中ライディルが質問をしだす。 ライディル「レイシェム嬢、ファンタズマは人間でも可能ですよね?」 レイシェム「はい。ですが私も操作させていない身、何とも言えません。申し訳ありません。」 ライディル「いやいや、それだけ分かればいいですよ。」 両腕を振り回し、デンジャラスガンナーがファンタズマに歩み寄る。どうやらその高火力に 引かれたのか、ファンタズマに興味を抱いたようであった。 シェガーヴァ指導の元、慣れない動きでファンタズマのコクピットへと搭乗する。 巨大MTファンタズマ。 本来は強化人間が搭乗し、脳と機体を接続し向上を図るのが元祖である。それ故に強化人間 以外のパイロットには操作は難しいとされている。 シェガーヴァが復元したアレンジ型は人間でも操作が可能であるが、強化人間とファンタズマ とが同化する事によって真価を発揮するのが事実である。 生身の人間がその機体を操れるか、一同は黙って見守っていた。 ホバー音を響かせながら、ファンタズマが浮上。レイス姉同様、ライディルとファンタズマ は操作に慣れようとしだす。 ヴィクセン。 この機体はヴェノムというACを、スティンガーというレイヴンがカスタマイズした機体。 言うなれば今のACと何ら変わらない。 しかしそれは1世紀も前の話であり、ヴィクセン自体遺産の一部に位置付けされていよう。 セラフやファンタズマとは異なり、人間でも十分に操作可能なものであった。だが遺産という 言葉が一同の行動を抑制させていた。 ライア「何だかワクワクしてきちゃった。私がヴィクセン動かします。」 足早にヴィクセンへと駆け寄るライア。レイス姉とライディルの行動に火が付き、今もなお 好奇心旺盛な性格が彼女を押し進めた。 ヴィクセンの武装は外部パーツ2点のみ。レーザーライフルとグレネードライフルを合わ せた特殊兵器と、まるで中世の大盾をイメージさせるかのような盾にブレード発振器を2基 取り付けたもの。 武装は限られてはいたが、その機体は残存のACよりも遥かに高性能であった。 何も話さず真剣に操作に慣れようとするレイス姉とライディル。恐らく2人はレイヴンに なり立ての頃を思い浮かべているだろう。ぎこちない動作が物語っている。 そんな後手に回る2人を尻目に、ライアは遺産を動かせた事に大感激していた。 ライア「うわー、反応速度がダークネスハウンドより全然違う。これなら敵が10体いても軽く撃破 可能ですよ。」 まるで操った事があるかの如く、何の違和感もなさそうに動かしていた。 シェガーヴァと対戦した時の動作を、脳裏で思い浮かべイメージトレーニングをしているの だろう。機体をブースターダッシュで切り返しを行い、連装レーザーブレードを繰り出す。 その動作には不安はおろか焦りも感じられない。 彼女と対戦したシェガーヴァは簡単に操るだろうと思っていたらしく、小さく笑いながら 流石だなと脱帽していた。 シェガーヴァ「そういうだろうと思ったよ。だから私も完全に仕上がったヴァスタールを30体用意 した。火星へ配置してあるものよりも断然強い。」 ライア「ほほぉ〜、それはそれは。」 発言を聞けば彼女のニヤケた表情が窺えるのか、一同は苦笑いで3人を見つめている。 遅くなりつつも、レイス姉とライディルの2人も大分操作に慣れた様子。ライアを含め3体の 遺産は普通の動きを繰り返していた。 シェガーヴァ「レイシェム。ヴァスタールを出してくれ。」 レイシェム「了解です。」 シェガーヴァの発言に3人は動きを止め、教えられた通りにそれぞれの武装を構える。 一同は絶対に有り得ないであろうこれからの戦いを、黙って見つめるだけであった。 財閥の大型ガレージから続々と出現するヴァスタール30機。どれも異なった機体構成で、 汎用性は大きい。故に遺産を持った3人のこれからの腕が試されるだろう。 レイヴン達を巻き込まないようにするため、3人は更に遠方へと離れていく。 3人を追いかけるかのように、30体の多種多用形態のヴァスタールが向かって行った。 一定距離を保ちつつ3人を取り囲み、いつでも動ける姿勢を見せるヴァスタール隊。 シェガーヴァ「合図はどうする?」 レイス姉「ちょっと待って下さい・・・。」 合図を模索するレイス姉。しかしライアは一言付け加えて、それを開戦の合図とした。 ライア「先手必勝っ!!!」 不意を付きライア駆るヴィクセンは凄まじい勢いで動き出す。その速度は通常のブースター ダッシュより速い。 瞬く間に身近のヴァスタールに接近し、近距離からグレネードライフルを放った。 コクピットを一発で貫かれたヴァスタールは大爆発し、爆風でヴィクセンを巻き込む。 爆炎が収まるまで他の2人とヴァスタール29機は様子を見る。 しかし次の瞬間、爆炎から踊り出るかの如くヴィクセンが出現。近くにいた別のヴァスタール に連装レーザーブレードを一閃させた。 2本のブレードはヴァスタールをいとも簡単に引き裂き、機体は即座に爆発飛散する。 ライアが動き出してまだ10秒も経過していない。それなのにたった2回の行動で、一気に 2機の機体を撃破した。 その勇猛振りにレイス姉とライディルも動かされた。 ブースターを咆吼させ、レイス姉駆るセラフが動き出す。 まずは挨拶代わりと言わんばかりにレーザーブレードを一閃。剣先から青白い光波が発生し、 ヴァスタールを襲った。 光波は相手機体のレッグに直撃、前面の装甲が粉々に砕け散る。レッグパーツのバランスを 失ったヴァスタールは地面へと倒れ込む。 だがそのままやられる訳にはいかないとばかりに反撃を試みる。右腕武器を掲げ、攻撃して きたセラフを狙った。 しかし武器を掲げた先に相手はおらず、次の瞬間機体は蜂の巣の如く撃ち抜かれ爆発する。 光波を放った後、セラフは飛行形態へと変形。相手の頭上へと進みでる際に内蔵マシンガンを 撃ち込んでいたのだ。 その後猛スピードで縦横無尽に飛び回るセラフ。その姿を見たユウトは、かつてアレンジと ロストフィールドで対戦した模様が脳裏に浮かぶ。そして無意識のうちに身体が震えていた。 飛行しながらマシンガンや垂直発射ミサイルを連射するレイス姉ことセラフ。その彼女に 9機の機動力重視のヴァスタールが追撃を開始しだした。 重火器を一斉に放つ10体のヴァスタール。夥しい火砲がファンタズマに向かっていった。 高火力機体だけがライディルを狙い、他の機動力重視の機体はライアとレイス姉へと向かって いた。 放たれた弾丸は、バズーカ弾やグレネード弾・レーザー弾・プラズマ弾・複数のミサイルと いったものばかり。どれも並のACでは致命傷になるものだ。 それらはライディル駆るファンタズマに直撃、大爆発を巻き起こした。 爆炎がファンタズマを包み、止むまで10機は攻撃を止める。 しかし爆炎が収まる前に中から複数の垂直発射ミサイルが撃ち出された。その数は何と20発 前後。それらは周りを取り囲むヴァスタールへと向かっていく。 回避行動に移る10機、遅れる機体が2機いた。ミサイルは遅れた2機に容赦なく襲う。 ミサイルの直撃を受けた2機。片方は左腕が吹き飛び、もう片方はヘッドパーツを失った。 爆炎の中から深紅の機体が出現し、機首のプラズマキャノンを発射させる。正確に2発だけ 放たれた光弾は、ほぼ行動不能に陥っている2機に直撃する。 ジェネレーターを撃ち抜かれた2機は粉々に飛散した。 ユウタ「・・・マジかよ・・・。」 ミナ「ここまで強い機体を作られたのですか?」 マキ「装甲も従来の物とは異なるのですね。」 ライディル駆るファンタズマの火力と装甲の強さに一同は驚愕した。 かつてロストフィールドにて対戦したファンタズマタイプよりも強いと判断したためだ。 しかし作成したシェガーヴァ自身、物凄く驚愕した表情を浮かべている。 シェガーヴァ「無理言いなさんな。遺産は普通のACパーツを流用したもの。装甲も多少は強化して あるが、あれだけの攻撃を受ければダメージを食らう。」 物理的に無理があるとシェガーヴァは語る。 ファンタズマを含め、遺産のどれもは残存のACパーツを流用しての作成である。それ故に オリジナルよりは多少脆い部分があり、あれだけの高火力攻撃を受ければ機体が破壊される のは間違いない。 ライディルがどのようにしてあの猛攻を凌いだか、シェガーヴァは不思議で仕方がなかった。 しかし側で戦闘を眺めていたウインドは徐にその方法を語り出す。 ウインド「大型ミサイルを放ったんだろう。」 子供達をあやしながら、ウインドはそう語る。 かつて旧式ACを駆っていた時代、ウインドは機雷弾を前方に射出。それにミサイルや弾を 当てて誘爆させた。その原理と同じ事だと彼は語った。 ミナ「で・・では直撃する寸前、大型ミサイルを放ったと?」 ウインド「おそらく自分自身に放ったんだろうな。今現在のACパーツに大型ミサイルがあるだろ。 あれの高火力型がファンタズマの大型ミサイルだ。爆風はファンタズマぐらいの機体なら 軽く覆うもの。その爆風に近接信管が反応したグレネード弾やミサイルは爆発。火力が 高い故にレーザー弾なども巻き込まれたようだ。」 肩に乗ったミュックが両手を叩きはしゃいでいる。まるでライディルの行動を誉め称えている かのようである。 ウインド「まあ誘爆しないにしろ、レーザー弾は収束されなければ分厚い装甲を貫く事はできない。 簡易版だとしてもファンタズマの超装甲には傷が付かないと言う訳さ。」 一同はその解説に驚きながら聞き入ってる。特にシェガーヴァが驚いた表情で聞き入っている 姿が何とも言えない。 それを見たウインドは、3日前に彼が言った言葉を返した。 ウインド「フフッ、もっと観察力に洞察力を磨きなよ。」 シェガーヴァ「フッ、言ってくれる。」 苦笑いを浮かべ、してやられたと悔しがる。 戦闘に関しての彼の博識には脱帽したと、一同及びシェガーヴァは思わざろう得なかった。 特にシェガーヴァは改めて彼の戦術解析に、心の底から脱帽していた。 グレネード弾とレーザー弾を駆使し、更に連装レーザーブレードも繰り出すヴィクセン。 10機いたヴァスタールはあっという間に撃破されていた。 またセラフも変形と内蔵武装を織り交ぜられた行動、これに9機のヴァスタールは呆気なく 撃破された。 残る8機のヴァスタールはヒットアンドアウェイを繰り返し、ファンタズマに猛攻を加え 相手の行動を封じる。 ヴィクセンやセラフとは違い、タンクに近い行動しか取れないファンタズマ。いくら超装甲と いっても、回避できないのではいずれ破壊されてしまう。 しかしファンタズマには奥の手があった。そう内蔵兵器最強である広範囲拡散レーザーだ。 今までのお返しを言わんばかりにライディルはこれを起動。機体に複数のレーザーが集束、 機体中央に小さな光を蓄える。その光が巨大な光となり、夥しいレーザーが射出された。 レーザー弾は周辺で猛攻を加えている8機のヴァスタールを襲い、蜂の巣と言わんばかりに 撃ち抜いていった。それは爆発をする間もなく、完膚なきまでにバラバラに飛散したのだ。 この広範囲拡散レーザーを一度受けた事がある面々は、改めてその恐ろしさを思い知った。 拡散レーザーが止み、8機のヴァスタールは煙すらでないほど木っ端微塵に破壊される。 僅か5分足らずで30機のヴァスタールは、見るも無惨なぐらい破壊されたのであった。 レイス姉「身体の震えが止まりませんよ・・・。」 ライア「私も震えが止まらない・・・。」 ライディル「情けない、俺もブルってる。」 遺産から降りた3人は震え上がっていた。自分が思い描く行動以上に動いた機体に、恐怖と 歓喜を覚えていた。 しかし確実に即戦力になるという事だけは、実験者の3人と見学側も十分理解できた。 シェガーヴァ「何だかなぁ・・・よくぞここまでやってくれたものだ。」 鉄屑と化したヴァスタール群を見て、嬉しいか悲しいかといった表情でシェガーヴァは見る。 ライディル「でも旦那。これは確実に力になりまっせ。正しく一騎当千よ。」 ライア「でも遺産に慣れすぎると今度愛機が操れなくなりますよ。」 ライディル「あ・・・そうだった・・・。」 まるで子供のように話すライディルに、ライアは小さく笑った。 生まれて初めて楽しい事に出会ったときのように、3人は歓喜冷めぬ表情をしている。 シェガーヴァ「とりあえず実験データは十分に取れた。相手側が遺産を大量に出してくるのなら、 こちらも遺産を出して対抗しよう。予備にあと9チーム作成し、半分は火星本社に 移動させておく。」 ウインド「まあ奥の手だからな。これはないものと思ってくれ。」 シェガーヴァ「一段落付いたらこれら全て破壊するぞ。本来あるべきものではないのだからな。」 ライア「了解です。」 その後他の面々も遺産を動かしたいと言いだし、順番に一連の動作に慣れた。不測の事態に 対応できるようにするために。 ライア「やはり反応が鈍いなぁ・・・。」 レイス姉「仕方がないですよ。」 ライアとレイス姉は財閥専用アリーナ場で戦闘をしていた。 先程の遺産を動かせた事により、2人のレイヴン魂に完全に火が灯る。かれこれ20回以上 戦闘を繰り返していた。 しかしそれだけでは留まらなかった。 遺産の動きを真似てか、ライアの操作技術はますます磨きが掛かる。レイス姉も完全に全盛期 の漆黒の魔女へと戻っていた。 その2人が永延と戦闘を繰り返し、勝率は五分五分であったのだ。 ライア「妊婦の時も生まれてくる子供達の姿を思い浮かべ、一時も落ち着く事なんてありません。 妊婦の時期が終わり母親として一レイヴンとして戦う今も、全く落ち着きませんね。」 戦闘を終え、ガレージのベンチにて休む2人。 ふとライアが話し出した内容、それはレイス姉にも理解できるものであった。 レイス姉「ですね。過去に色々とありましたが、足踏み状態で周りに迷惑かけるよりは動いた方が いいですし。」 ライア「今が楽しくて仕方がありません。育児もこれからの戦いも全て苦難の連続。しかしどれも 新鮮でワクワクします。」 この自分より若い美丈夫に、今もなお驚かされ続けるレイス姉だった。 かつて自分が通った道を、歓喜の大行進で突き進んでいる。恐れもなければ不安もない。 あるのはただ先に待ち続ける明るい未来。 レイス姉「・・・本当に貴女には頭が上がりません。女性の鏡です。」 ライア「何を仰いますか、お祖母様がいらっしゃったから私がいる。己の身を犠牲にしてまで模範と なる生き方をしっかり示してくれた。こうなるまいと強く諭された貴女にこそ、頭が上がり ません。」 レイス姉「・・・ありがとう。」 この祖母あってこの孫あり、お互い心中でそう痛感した。 そんな2人を遠巻きに、様子を窺うマイア。 2人の行動に感銘し続けられている。母親になるだけでここまで強くなれるのかと、心中で 母に対する憧れが芽生えだしていた。 自分は母親の存在を知らない。幼い頃に両親がレイス姉によって殺害され、ライアと生き 別れになった。母親の温もりを知る前に独り立ちしだしていたのだ。 マイア「母親かぁ・・・。」 小さく呟くライア。その姿は憧れてはいるものの、端から見れば悩んでいるように伺える。 そんな彼女を心配してか、珍しくアマギが声をかける。 彼もまたマキと一緒になった事により、クローンファイターとしてではなく人としての行動を し出していた。 アマギ「何かお悩みでも?」 マイア「あ・・いえ、何でもありません。」 悟られまいと心中に隠すが、相手はクローンであっても自分の祖父である。隠し事が通用する 筈がなかった。 アマギ「母親ですか・・・、私は全く記憶にないですね。クローン生命体として生を受け、今まで 過ごしてきた。兄さんは妹さんと一緒に育ててもらったと聞いた事がありますよ。しかし ライアさんとマイアさん同様、両親と妹は殺害された。レイスさんみたいに殺人鬼と化した ブレナンさんに。」 聞いた事がなかった発言にマイアは驚く。自分の祖父も両親同様に殺された事に。 まあ彼女の両親がいない今、それを知るのは当時を生きていた者だけしか不可能である。 またそれも実際問題知る事は不可能。 彼女がそれを知れたのは、イレギュラーと言うべきだろう。 アマギ「しかし兄は許しました。自分の両親と妹を殺したブレナンさんを。ブレナンさんもその事に 対して己の転生を用い、罪滅ぼしをしました。」 マイア「その方はその後どうなされたのですか?」 アマギ「ある方と結ばれ、子供を残します。その子供の孫の方が私達の中にいますよ。」 その発言を聞き驚愕するマイア。 ウインドがタブーと言っていた、クローン転生者と普通の者との結ばれる事。既に過去に おいて蟠りを捨て結ばれた者達がいたのである。 そして何より、孫がいると言う事に驚きを示す。更にその孫が自分達の中にいるという。 これには驚かない方がおかしい。 虫の知らせか、その内容を察知したのか。会話中の2人に近付き、あたふたしながら中止を 促す人物がいた。 ライディル「旦那〜、その話は勘弁してくれといってるじゃないっすか〜。」 そう、ライディルこそブレナンの孫であったのだ。 マイア「ライディルさんも・・・クローンファイターになるのですか・・・。」 ライディル「まあ・・・そうなるかな。」 落ち着かない雰囲気を出すが、2人に抑制は効かないと判断する。そして諦め観念したのか、 マイアに詳しく話すようアマギに告げた。 アマギ「兄さんと同じ境遇になった方がいます。マイアさんが火星のトップに君臨する頃の年代と 同じですね。名前はキュム=エウァラーム。その方もブレナンさんにより、両親を亡くして います。」 その後の展開が読めたマイア。アマギとマキが結ばれたように、ブレナンとキュムも同じく 結ばれたのだ。 マイア「なるほど、大体は掴めました。アマギさんとマキさんと同じなのですね。」 合っていると示して苦笑いで応える。時間が経つにつれて2人の罪悪感は薄れ、殆ど夫婦と 同じ付き合いをしだしていた。 マイア「何だか最近カップルばかり多くて参ります。」 ライディル「ハハッ、いえてらぁ・・・。」 アマギ「確かに・・・。」 アマギはもちろんの事、ライディルもエルディルと関係を持っていた。またかねてから噂され ていたガードックとキュービヌも。 ユウトとライアの行動が少なからず、彼等の心中に変化を求めさせているのだろう。 マイア「皆さんどんどん強くなっていってる・・・。」 ライディル「そうでもないさ。確かに守る者がいるのは強くなると言える。しかしレイヴン家業から すれば足枷に近い。愛しい人がいてその人を守って生き続けなければいけない。決して 見捨てる行為はしてはならない。そうなるぐらいなら1人でいた方がまだマシだ。」 アマギ「マイアさんも年頃です。しかし今を自由に生きるのも悪くはありません。まだまだ若いの ですからね。」 マイア「分かりました。」 すっかり悩みが消えた様子のマイア。この点だけは姉ライアとは違う。そして自分に対して 非常に厳しいのであった。 マイアの心中にはライアの子供達が独り立ちするまで、自分の幸せは後回しと考えていた。 そう、キュービヌが演じていた姉という役を自ら買って出たのだ。 しかし周りがあまりにもカップルが多いので、女として動きたくなったのである。それを 多少なりに抑制出来た事により、キュービヌと何ら変わらない人物へと変わったのであった。 ライアとレイス姉、マイアとアマギ・ライディルの5人。それらを見つめ、シェガーヴァは 小さく微笑んだ。 生きる事がどれほど素晴らしい事か。それを己の身で体験し経験する。 一同の父親的存在、シェガーヴァことリュウジ=ヒラマ。サイボーグの体躯の心中で皆の成長 を諸手を挙げて喜んでいた。 第4話 2へ続く |
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