ロストナンバーレイヴンズ 番外編 避けられぬ運命・大破壊への足音
   〜第4話 執念の償い〜
    それから数十年後のある日、レイスはクローンファイターとして舞い戻ってきた。
   己の罪の重さからそれは今世では死ねないという未練となり、転生へと至る道標となった。
レイス姉「・・・私の心の弱さによって、息子と娘を殺してしまった・・・。許されない大罪です。
     この業・・・永遠に生き続け、罪滅ぼしを行います。」
   この瞬間からレイスの償いが始まった。ウインド同様、永遠に苦しみ続ける境涯に。

    再会を果たしたレイスはある発言を聞き驚愕する。
   自分が倒されてから今までの間、ウインドは毎晩のようにその悪夢を見続けていたという。
   これには罪悪感を抱かない方がおかしい。今まで以上に罪悪感を感じたレイスだった。

    その後レイスは自分の心と身体を支えて欲しいと、ウインドに切なる願いを接げる。それに
   応じる彼、蟠りを超えての行動であった。
    それでも過去の宿業からは逃れられず、彼女は毎日苦悩し続ける。周りにも迷惑を掛ける
   程の悩みようで、それは気丈な彼女故に周りは心配でならない。

    だがその彼女を助けた人物がいた。同じ母親とレイヴンとして活躍するメルアである。

    彼女は心の内を既に察知しており、レイスの悩みを親身に聞いた。そして解決策も語った。
   それは過去のレイス自身が行っていた行動であり、原点回帰でもあったのだ。

    “我武者羅に突き進め”、ただこの一言だけである。

    それを振り返り、彼女は目覚めた。内気な自分・許せない自分が嘘のようで、今はやるべき
   事を行うまでだと吹っ切れたのだ。
    現にこの行動の最中、ロングヘアーからショートカットヘアーになっているのが決意の現れ
   であろう。
レイス姉「父に仰っておいて下さい。動けない分は自分が皆さんの護衛に回りますと。」
    ライアの娘達のお守りも任された彼女。それは過去において自分の夫と息子夫婦を殺害した
   罪滅ぼし。彼女達が死ぬまで守護する事は言うまでもない。

メルア「尊敬します、南村レイスさんを。あの方こそ敏田デェルダさんの再来と言うべきでしょう。
    皆さんは私が母親やレイヴンとして生きている事に敬意を表されますが、自分はそうは思い
    ません。私以前に母親とレイヴンの道を歩み・一度挫折し・再度立ち直ったレイスさんこそ
    敬意を表します。私など足下にも及ばないぐらい悩み苦しみ生き続ける女傑です。」

    今だから言える話であろうが、こうも感じ取れる。
   レイス姉は実演したのであろう。自分という生命体を実験台とし、こうなるまいと周りに諭す
   存在に自らなったのだ。

    そう。忘恩の輩には絶対なるな、と。

    原点回帰を成した彼女は迷いを感じさせない。あったとしてもそれを表に出さない。
   心中では震えているだろうが、それは心中でのみあるもの。外見に出す事は一切なくなった。

    レイスは再び全盛期の漆黒の魔女に舞い戻った。強さはさることながら、心の強さまでも
   勝ち得た。
   そして決意する。今後絶対に己を見失わず突き進む、と。

レイス(一緒に悩み苦しみましょう。私にとっては絶対的な幸せの時でもあります)

レイス(決して弱音は吐きません。今度は私が支え続けていきます)

    完全に自分を取り戻したレイス姉を見て、ウインドは嬉しく思っている。我が子を見守る
   父親の如く、暖かい視線で陰から支えていた。

ライア「・・・おじいさん、レイスさんはどんな人だったのですか?」
    過去にライアがレイスの事を聞きだしていた。今までは辛い過去と向き合っての語り部で
   あったが、今ではこう言い切れるだろう。

   “俺以上に素晴らしい、しっかりとした女傑だよ”と・・・。
                               完

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