〜第2部 9人の決戦〜
   〜第5話 新たなる敵1〜
    翌日。ガレージにてシュイルとエルディルが愛機のメンテナンスを行っている。
   メルアが予測した通り、ウインドはあの後レイスとデュウバに再び求められたようだった。
   一番早起きである彼やレイスとデュウバが一番に大食堂へ現れなかったからだ。
   食事の当直当番を専門に担うようになったメルアはそう直感した。
    一番早く起きてきたのは、以外にもエルディルであった。
   ウインドから子守を任された彼女は、早く起きターリュとミュックの面倒を見出している。
   ウインドが直感した通り、決断力に劣るが実行力や持続力は誰よりも凄まじいエルディル。
   それが自ずと伺えよう。

エルディル「おはようございます。」
メルア「おはようございますエルディル様。」
    大食堂のテーブル近くで遊んでいるターリュとミュックを抱きかかえ、そのままメルアの
   側へ向かった。2人はエルディルに懐き、大人しく抱かれていた。
メルア「フフッ、2人にすっかり懐かれましたね。」
エルディル「そうですね。頼まれたからには、命を懸けて育てます。」
   メルアは思った。エルディルはかなり厳しい環境下で育ったと。
    普通の人間なら、頼まれた事は誠心誠意尽くすという返しをする。しかし彼女の場合、命を
   懸けて育てると話した。
   つまりは依頼された事が正しいものであった場合、彼女は命を懸けて守り突き通す事を肝に
   命じているという事になる。
   エルディルの師匠がデア。そのデアから教えられたのだろうと、メルアは心中でそう思った。
メルア「別に命を懸けてまで行わなくてもいいのですよ。」
エルディル「そんな生半可な考えでこの子達を育てたくはありません。本当の母親でなくても、我が
      子は自分の命に代えても守り通すべきだと思います。」
メルア「命を懸けて・・・。」
   メルアはその言葉の意味が深く痛感できた。エルディルの考えこそが母親なのだろう。
    今まで自分が考えていたのは、ただ単に2人を育てるという事しか考えていなかった。
   しかしエルディルの発言を聞き、自分の考えが弱いものだった事に気づいた。
   自分より強くしっかりしているウインド達が2人の面倒を見ていてくれている。これなら自分
   は安心だなと無意識に思ってしまっていたのだ。
エルディル「母親という存在。私は幼少の思い出はありません。いたであろう家族の温もりすら、
      全く分かりません。しかし私自身も母親になれます。誰かを命を懸けて守り通す。私の
      恩人であるウインド様に、そう教えられた気がします。」
メルア「・・・私は母親失格ですね。エルディル様のような堅い決断がなかった。ただ育てればいい
    という曖昧な考えで育ててきた。・・・情けないです。」
エルディル「そんな事はありません。メルアさんはしっかりしていらっしゃいます。幼子を抱え、
      レイヴンとして生きる。私には到底出来そうにもありません。自分はレイヴンですが、
      実際に子供を持ったとすればレイヴンを引退し母親の道を生きるしかないでしょう。
      母親とレイヴンとその他の雑務をこなしていらっしゃるメルアさんこそ、真の母親と
      言うべき人です。」
   メルアは涙を流しながら俯いている。母親でもないエルディルに、まるで母親のような発言で
   擁護してくれる。今メルアは生まれて初めて感動した。
メルア「・・・分かりました、貫き通します。母親も、レイヴンも。一生涯戦い抜き、己の壁を一歩
    また一歩乗り越えていきます。」
   メルアの発言に、エルディルは驚いた。
    ほんの僅か前まではどこか抜けているような雰囲気のメルアであった。しかし今発言した
   時の彼女は、まるで闘士を思わせるほどの気迫がある。
    また発言に確信さが込められており、これは彼女の本音だと直感できたのである。
   メルア=シェイレイック。
   この時を境に、彼女はデェルダ以上の母親として目覚めたのだ。
メルア「さ〜て、朝食作りをしなくちゃね。エルディル様は2人をよろしくお願いします。私は今の
    現実を戦いきりますから。」
   そう言うと凄まじい勢いで朝食を作っていく。今のメルアは完全に悩みが晴れ、爽快に物事を
   行っていると直感するエルディルであった。
   それを祝っているのであろう。ターリュとミュックは嬉しそうに騒いでいた。

シュイル「相変わらず難しいですね・・・。」
デュウバ「しかし何事もトライですよ。」
シュイル「そうですね。皆さんの行動を見ているとそれがよく分かります。」
    愛機のメンテナンスをコンピューターによる遠隔操作で行うシュイル。彼の専属講師である
   デュウバが熱心に教えていた。
   その他にはナイラ・バレヴ・ミナ・マイアが、その初めて扱う全自動遠隔操作システムを使い
   愛機のメンテナンスを行っている。
バレヴ「凄いですね、遠隔操作でメンテナンスが行えるのですから。」
ナイラ「我が財閥が試行錯誤の末に完成させたプログラムです。もっともシェガーヴァ様にお力を
    お借りして完成させたにすぎませんが。」
マイア「殆どの作業がインプット一つで全て行ってくれますよ。」
    それぞれの面々が遠隔操作で作業を行う中、ウインドだけが己の腕で愛機のメンテナンスを
   行っている。その油まみれになっている彼は、完全なメカニックそのものである。
    その側ではキュービヌが同じく愛機レイヴァーレイをメンテナンスしていた。
   今では彼女の腕はライディルに匹敵するまでに至り、ロストナンバーレイヴンズの中で最高峰
   となる専属メカニックとなった。
   メカニック長からメカニック総統括者になり、財閥内部の修理や改良などは全て彼女が担って
   いる。

キュービヌ「ふぅ〜・・・。」
ウインド「ユウとアイが生まれてから、ますます腕に磨きがかかっているな。」
キュービヌ「そりゃそうですよ。甥が生まれたんですから、しっかりしないとね。」
ウインド「今度はお前の番かもな。」
キュービヌ「も・・もう、何言うんですか。」
    ウインドの意外な発言で、キュービヌは頬を赤く染めて俯く。
   しかし彼は何故年相応の彼女が今まで独身であったのか、それをしっかりと理解しての発言で
   あった。
ウインド「ユウトが独立するまで自分の幸せは後回し、そう思っていたんだろ。だがあいつはライア
     と結ばれ、家庭を持った。もう自分の事を考えてもいいのではないか?」
キュービヌ「・・・ご存じだったのですか。」
ウインド「お前の言動を見れば大体は見当が付く。それにライディルやトムがそうだった。自分の
     身内に近い人物が幸せになるまで、自分の幸せは後回し。師匠が師匠なら、弟子も弟子。
     お前は2人によく似ている。」
キュービヌ「しかし残念ながら、相手がいませんよ。」
   そう言いながらもどこか声が詰まる発言をするキュービヌ。しかしウインドには既に気になる
   相手がいる事を察知していた。
ウインド「しっかりいるクセに。お前と同じ考えでライアが独立するまで自分の幸せを留めていた、
     ガードックが気になるんだろ。」
キュービヌ「・・・ウインドさん。」
   図星だと言わんばかりに、今までに見せた事がないような赤面をするキュービヌ。
    ウインドは過去にガードックと酒を飲んた時、彼の心中を聞いていた。
   ユウトを見ている目が自分と同じであると、ガードックはキュービヌを気になってはいた。
   しかし当の2人が幸せになるまでは、そういった私情は出さない事に決めていたのである。
ウインド「彼もお前の事を気にしている。女だてらにメカニック長を勤め、男みたいな行動をして
     いるお前を気にしていたようだ。女性らしい行動をすればもっと楽しく生きられるのに、
     彼がよく口にしていた。お前と出会って、彼は妹ができたみたいだと言っていたよ。」
   意外な事を聞かされ、驚きと歓喜の表情を顕わにしているキュービヌ。それが自分が心から
   気になっている人物なのだ、驚かないわけがない。
ウインド「イレギュラーな俺が恋愛感情などを持つのはタブーに近い。しかしお前達は今を生きる
     人間なんだ。もっと自分に素直になってみな。」
キュービヌ「・・・そうですね、分かりました。」
ウインド「あと付け加えるとしたら、あんまり無理はしない事だな。」
   冗談を踏まえてそう話すウインド。それを聞いたキュービヌは再び赤面し、その場に俯く。
   ユウトとライア以外に、新たに公認カップルが誕生した瞬間であった。

オペレーター「敵AC接近、敵AC接近。各レイヴンは迎撃に向かって下さい。」
    暫くしてガレージ内にオペレーターの声が響き渡る。敵襲来を告げるアナウンスである。
   ガレージに待機していた直ぐに動けるメンバーは愛機に乗り込み、財閥外へと出て行った。
    愛機を完全に分解していたウインド・キュービヌ・マイア・ナイラは、戦闘オペレーター役
   に名乗りを挙げた。
   戦闘に参加したのはレイス・デュウバ・レイシェム・シェガーヴァ・シュイルの5人である。
マイア「敵ACは全部で3体。移動速度から標準2足ACと思われます。相手の詳細が分からない
    以上、慎重に対処して下さい。」
5人「了解。」
    マイアも何度かオペレーターを行った事があり、その手際の良さは折り紙付きである。丁度
   ライアが産休により休んでいた時に、偶然にも行っていたものなのだ。
   経験は何者にも勝る、かつて育ててもらった火星での仲間達の声が脳裏に過ぎっていた。

    マイアが的確に指示を出し、別の行動に移ろうとした。
   だが直後ウインドは激しい頭痛を訴えその場に倒れ込んだ。それに気付いたナイラは、彼の
   安否を気にかけ側に駆け付ける。
ナイラ「だ・大丈夫ですか?!」
ウインド「・・・ああ。・・・突然激しい頭痛が来た。これは・・・懐かしい・・・感じがする。」
キュービヌ「誰か知り合いが相手なの?」
ウインド「・・・分からん。だが・・・過去に会った人物の感じだ・・・。」
   普段見せない彼の意外な素顔に、3人は心中から驚く。そして相手がかなりのやり手である
   事を確信した。
マイア「しかしお父さんの知人というと、一体誰なのですか?」
ナイラ「味方でもあれば、敵の可能性もあります。一応皆さんに呼びかけておいた方がいいかも知れ
    ません。」

    その直後だった。内部通信を通して、レイス・デュウバ・レイシェムが驚愕とも言える声を
   叫んだ。
   その声に驚いた4人は、3人の安否を気にかけた。
マイア「どうしましたか?!」
   マイアの問い掛けに、3人は次々と恐ろしいものを見たような声で問い返す。
レイス「そ・・・そんな・・・。」
デュウバ「あり得ません・・・。」
レイシェム「オリジナルの方が出てくるなんて・・・。」
   それを聞いたウインドは直感と洞察力、そして今の頭痛とを連想させ誰が現れたか瞬時に理解
   した。
    そのままガレージから生身の体で財閥外へと出る。そこには対峙する3体のAC。
   そのうちの2機のシルエットは、レイスとデュウバに機体と似ていたのである。
ウインド「・・・レイス、お前なのか・・・。それに・・・ウィン・・・。」
    その言葉に一同は驚愕する。今目の前にいる機体に搭乗するのは、オリジナルのレイスと
   レイシェムのオリジナルであるウィンであると聞いたからだ。
    初めてこの名前を聞いても何が何だか分からないだろう。しかしロストナンバーレイヴンズ
   の面々にとっては、それは驚愕せざろう得ないものであったのだ。
ウインド「・・・シェガーヴァ。これはデヴィル=オグエル・シェンヴェルンの仕業なのか?」
シェガーヴァ「そうとしか言えない。奴らが何でこんな事をしたのか、私でも理解不能だ。」
   一定位置を保ち沈黙する3機のAC。ウインドとシェガーヴァでさえ相手の動きが詠めない。
   緊張した雰囲気が辺りを包む。永遠とも言える沈黙だった。

    その後3機のACは武装を解除し、その場に佇む巨人と化した。
   その後一同に聞こえるように、AC搭載の外部・内部両スピーカーから音声が聞こえるように
   した。
ウィン「私達はまだやる事があります。無念にも病気でこの世を去りましたが、人々を救うという
    事を行わない限りには・・・死んでも死に切れません。それに・・・愛しい貴男だけに、
    この苦しさを味わって欲しくはありません。私も一緒に苦しみます。」
レイス姉「・・・私の心の弱さによって、息子と娘を殺してしまった・・・。許されない大罪です。
     この業・・・永遠に生き続け、罪滅ぼしを行います。」
デュウバ妹「お2人みたいな断固たる決意はありません。しかし姉が苦しんで戦っているのに、妹の
      私はただ黙って見ているなんてできませんから。及ばずながら、影の剣士となる私も
      共に戦います。」
    一同驚愕するしかないだろう。いやそれ以外の行動が思い付かなかった。
   目の前にいるのは、オリジナルのウィン・レイス姉・デュウバ妹。クローンではあるがその
   威圧感は目の前にいるオリジナルやコピーよりも遥かに強い。
ウインド「・・・・・。」
シェガーヴァ「1つだけ質問がある。何故クローン体として転生した?」
ウィン「戦うべき時に戦わない者は敗者です。私は今戦うべきだからこそ、このご時世に転生したの
    です。」
レイス姉「転生させた人物はシェンヴェルン。彼は完全な悪ではありません。しかしデヴィルの影響
     が強すぎて、悪になっているにすぎないのです。」
デュウバ妹「私達を転生した後、シェンヴェルンはデヴィルに捕まりました。彼は極秘に私達を転生
      させ、貴方達の元へ行くように促したのです。」
ウインド「・・・了解した。お前達の決意はよく分かる、それに悪心がない事も確信が持てる。」
   懐から煙草を取り出し、徐に火を付ける。
   つい最近から一区切り付く時に行う彼のクセである。これを知らぬ3人は彼の行動に驚いた。
ウインド「おかえり・・・、ウィン・レイス・デュウバ。」
   その発言を聞いた3人、徐にコクピット内で涙を流す。
    自分達が生まれてきたのは間違っていると思っていた。だが彼の発言を聞いた時、その迷い
   は一瞬にして消え去る。タブーである再会に彼は快く応じたのであった。
    だがこの瞬間コピーたる存在のビィルナとレイシェム。そしてオリジナルのデュウバは心の
   中に自分の居所がなくなってしまったと思ってしまった。

メルア「・・・・・瓜二つですね。」
    ライアにも話しがしたいとレイス姉が言い、一同は再び病室を訪れた。
   改めてオリジナルのレイスとクローンのレイスが並ぶ。一同は非現実的な現実を、ただ呆然と
   眺めていた。
    またオリジナルデュウバとクローンデュウバ、それにオリジナルウィンと人工知能クローン
   のレイシェム。
   その姿は殆ど酷使しており、双子のように感じられた。
シュイル「不思議な気分です。ですが・・・闘気は凄まじいものが感じ取れます。やはり伝説の
     レイヴンです。」
レイス姉「お褒めに頂き光栄です、シュイル様。」
   転生してデュウバ並にお淑やかになりつつあるレイス姉。その行動などは、まるでデュウバ姉
   そのものであった。

    その後レイス姉はライアのベッドの近くへ歩み寄り、隣にいるマイアの前で土下座をする。
   その行動に2人は呆気に取られた。
レイス姉「・・・詫びる言葉も浮かびません。私の息子と娘、それにライア様とマイア様の両親を
     殺したのは私。償いきれない大罪です。お父様が諭して下された時、怒りの余り家を飛び
     出しました・・・。その後再び強化人間手術を施してもらい、怒りの矛先を弱き者達に
     向けたのです。子供・年寄り・罪のない人々、そして・・・私の大切な夫と息子と娘。
     この手で・・・殺害しました。」
   大泣きしながらも、しっかりと自分の心中を伝えるレイス姉。それを聞いた2人は、やはり
   自分の祖母たる彼女に家族が殺されたのだなと理解した。
   本当は理解したくなかったのであろうか、その表情は彼女以上に暗いものである。
    そんな彼女の側にマイアが同じく跪き、ライアがするであろう行動を動けない彼女に代わり
   行う。
   震えるその肩に手を乗せた後、徐にライアが話し出した。
ライア「お祖母さん。もう忘れましょう。今こうやって貴女が戻ってきて下されたのが、私は一番
    嬉しいです。」
マイア「姉さんが結婚して子供ができたと聞いた時、やっと乗り越えられると思いました。お祖母
    さんの大罪は、直接私達にも通じるものがあります。だからこそ、私達がしっかりしないと
    いけませんから。」
ライア「一緒に戦いましょう。お祖母さんと一緒に戦えば心強いです。私達にとって、レイスさんは
    お母さんそのものなのですから。」
   レイス姉は再び大泣きをする。
   自分の孫達であるライアとマイアが自分の事を許してくれた。絶対に許されないであろうと
   思っていた事を。
    そしてこの時、レイス姉は心中に不動の決意をする。
   2人が生きている間、命に代えてでも守り抜く事を決意した。それは断固たるものであった。
ウインド「こいつは昔から深く考える性格でな。それがなければもっとしっかりしていたんだが。」
レイス姉「・・・そうですね、妹が羨ましいです。私が持っていない、楽観的観点を持っています。
     私には到底真似はできません。」
ウインド「今後のお前次第だな。」
レイス姉「心得ていますお父様。」
    レイス=ビィルナと違う点、それは瞬時に性格が変わる事だ。
   レイス姉は暗かった性格から、ウインドの発言で瞬時に決意溢れる性格へと変わる。
   これはビィルナやその他の者には決して真似ができない。ある意味長年ウインドと共に過ご
   してきた事から、こういった性格になったのであろう。彼女の特技でもあった。

    そこに徐に歩み寄るウィン。その威圧感は女性陣を圧倒させた。
   女性としての彼女は事実上、最年長に当たる。ウインドと同年代の女性であった。
ウィン「この方がライア様にマイア様。レイス様にそっくりですね。それにレイヴンとしての素質も
    しっかり受け継がれていらっしゃいます。」
   凛々しく美しい表情のウィン。それは女性陣であっても頬が赤くなるほどの美しさだ。
   またしっかりしている点では、今現在のデェルダの後継者とも言えるメルアやデュウバより
   断然凄まじい。
   とにかくウィンに圧倒され続ける一同であった。
    その姿に小さく笑うシェガーヴァ。その笑い方は彼にしては珍しい自然と発したものだ。
シェガーヴァ「フフッ。変わらないな、あの時と。」
ウィン「リュウジ様。外見はサイボーグになられても、その温かみは以前と同じですね。」
シェガーヴァ「懐かしいな、その名前・・・。だがもう捨て去った名前だ。サイボーグになった時
       からな。」
ウィン「ユキヤ様もそうでしたね。私の意志を受け継いで、レイヴンとして自由の闘士として戦って
    くれました。」
ウインド「お前の為でもあるが、俺自身の為でもあるからな。」
ウィン「フフッ、相変わらず難癖付ける性格は変わりませんね。素直に認めればいいのに。」
ウインド「こいつ。」
   ウインドはウィンの頭を軽くどついた。その行動にウィンは小さく舌を出しはにかむ。この
   行動は知り合い同士でなければ行えないもの。
    ウインド・シェガーヴァ・ウィン。大破壊以前の人間だという事が理解できよう。

ウィン「それとウインド様、お話ししなければならない事があります。エルディル様・チェブレ様・
    バレヴ様のクローン体が存在します。デヴィルがシェンヴェルン様を操り、別に創り上げた
    人工生命体。」
エルディル「わ・・・私達のクローンですか?!」
ウィン「はい。」
   3人は驚愕した。自分達のクローンがいつの間にか創られていた事を知ったからである。
   その後詳しい内容をウィンから聞かされる一同。
ウィン「意識はありません。戦闘兵器として改造され、戦う事しか知らない兵器そのものです。感情
    といったものは持っていません。こちらを消すまで戦い続けます。」
レイス姉「レイヴンとしてのレベルも高いです。デヴィル自身が3人と戦ったところ、相打ちに近い
     結果になったそうです。」
デュウバ妹「ですがデヴィル自身のレベルがどの程度かは分かりません。お父様には到底敵わないと
      思いますが、今の貴方達よりは遥かに強いです。」
ウィン「決戦は近いです。3人のクローン体が量産機のダークネスを引き連れて、近い内にここに
    攻めてくるでしょう。」
   3人の女剣士は敵が攻めてくる事を一同に告げた。
   そのレベルはデア達以上だと言い切る。今の12人には苦しい相手になるだろうと、誰もが
   予測できた。

シュイル「ようやく自分も戦えますね。今までの修行の成果が発揮する時が来ました。師匠や皆さん
     から学んだ事、それを踏まえ全力で戦います。」
アリナス「私も同じよ。先輩方には到底敵わないけど、女レイヴンとしてのプライドはある。戦わず
     して逃げる道なんて選びたくない!」
ディーン「そうだな。皆さんに教わった生命を守る戦い、今度は俺自身も守る側になって戦うぞ。」
    だが12人の戦士達には恐怖という念は感じ取れなかった。
   特に若手のシュイルとアリナスが皆を引っ張っているようで、気合いは充分すぎる程のもので
   あった。
マイア「姉さん。私達も招集を呼びかけた方がいいかもね。」
ライア「いいえ、今回は12人の戦士達に任せましょう。他力本願に近いですが、これも人材育成
    です。危なくなったら全力でサポートすればいいのですから。」
ウインド「そうだな。ライアの意見に賛成だ。少し厳しいかも知れないが、俺達が死闘を演じてきた
     そのものを知るんだ。そうしなければ何の意味もない。お前達の手で勝利を掴み取れ。」
   顕然と言い切るウインドの発言に、12人の心中の決意が固まった。
   自分達がどこまで彼らに追い付けるのか。これは彼らの最初の挑戦でもあった。
ウインド「後方支援は任せな。お前達は戦いだけを集中しろ。」
12人「了解っ!」
   12人は叫び応対する。その決意さにはユウト達先輩陣が圧倒されるほどである。ユウト達が
   約1年前に戦った時の気迫とは、全く違うものであった。
   ウインド達伝説のレイヴンは心中で揺るぎない確信が持てた、彼らは必ず勝利すると。
                               第5話 2へ続く

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る