〜第2部 9人の決戦〜
   〜第5話 新たなる敵2〜
    早速修行を開始する12人のレイヴン達。修行役は先輩陣のユウト達であった。
   ウィンが指摘するには、翌日辺りには全軍で攻めてくるとの事。それまで出来る限りのレベル
   アップを図った。

ウィン「似ていますね、ライア様に。」
ライア「ありがとうございます・・・。」
    自分の子供を褒められ、頬を赤く染めて俯くライア。ウィンの腕の中ではユウとアイが静か
   に眠っている。
   ライアは出産してから日が浅いので、大事を取って戦闘には参加はしなかった。
   相変わらず修行を行いだした面々以外の女性陣は、病室で雑談を行っている。
レイス姉「こちらはターリュ様とミュック様ですか。」
レイス妹「はい・・・。」
    堂々としているレイス姉に対し、レイス妹はどこか暗めである。
   それもその筈。オリジナルである自分が現れたのだ。自分の存在意義が失いかけているからで
   ある。
    デュウバ姉とレイシェムは自分達の役割をしっかりと受け止めており、その一念は既に吹っ
   切れていた。
   デュウバ姉妹は揃って愛機のメンテナンスに取りかかっている。
   またレイシェムもシェガーヴァと共に他のレイヴンの愛機を調整していた。

    レイス妹の腕の中でもターリュとミュックが同じく暗そうにしている。それはレイス妹の
   一念を自然と感じ取っている証拠である。
    また2人も新しく誕生したユウとアイばかり可愛がられる事を怖れているにすぎなかった。
   その心中の思いを察知してか、ウィンは徐に話しだす。
ウィン「怖いですか。ここにいる事がいいことなのかが。」
レイス妹「ど・・・どうしてそれを・・・。」
ウィン「ウインド様に嘘が付けないのと同じなように、私に嘘偽りな姿は通じません。レイス様の
    オリジナルの方がここに来て、自分の居所がなくなってしまう。それが怖くてたまらないの
    でしょう?」
   悩んでいる事を鋭く指摘され、レイス妹は黙って俯く。それと同じくターリュとミュックも
   暗い表情を浮かべている。
ウィン「私達がここに来た時、デュウバ様のクローンとレイシェム様も同じ感情になったそうです。
    ですが2人は直ぐに吹っ切れましたよ。自分の行う事は何なのか。原点に戻った時、迷いは
    自然と消えたそうです。現に一緒に行動しているではありませんか。」
レイス妹「・・・デュウバ姉さんは強い女性です。私はそこまで強くはありません・・・。」
レイス姉「それはないですよ。」
   顕然と言い放つレイス姉。その発言の真意がレイス妹には理解が出来なかった。
レイス妹「どうして・・・そう言い切れるのですか・・・。」
レイス姉「貴女は私なのですよ。私がこのように生きている。なら同じ者の貴女も絶対にできる。」
   その発言を聞いた時、レイス妹は身体に電気が走る気分になる。
    そう今の彼女は、オリジナルの自分とは他人だと区別していたのだ。だからデュウバ姉が
   自分のクローン体を妹と認める事と同じ事ができなかったのである。
レイス姉「クローンだから妹と決めつけるのはよくない事です。同じ自分自身なのですから。ですが
     同じ容姿をしている、この場合は双子と取れると思います。そう取れば姉妹と言い切れる
     筈です。」
    クローンだから妹、オリジナルだから姉。この概念をレイス妹は無意識に嫌っていた。
   そうアマギ達と共に戦った時から、オリジナルの自分を心のどこかで差別していたのである。
   これがレイス妹がこの場にいられなくなってしまうと思う原因だったのであった。
   それを改めて気づかされたレイス妹は、自分自身が恥ずかしくなった。
    多くの人と接し助け合っていこう。ウインドと共に行動し始めた時、彼女はこう決意した。
   しかしそれを忘れていたのである。
    特に鏡の存在であるレイス姉を否定する事は、自分自身を否定する事に繋がる。レイス妹は
   自分自身を否定していたから、この場にいられなくなると思ってしまったのであった。
レイス姉「貴女は自分が思うほど、弱い人間ではありません。むしろ私の方が弱い人間です。私は
     自分のエゴに負け、大切な夫と息子と娘を殺したのですよ。これがどれだけ重い罪か。
     それに比べ貴女はまだそこまで至っていない。それに私の愚かな過ちを、自分の過ちだと
     受け止めてくれたではありませんか。」
   頬に涙が流れるレイス姉。それは悲しみもあったが、歓喜の涙でもあった。
レイス姉「お父様と共に果てしなき永遠の闘争に扮してくれた。私だったらそこまでの決意は決して
     固まりません。貴女だったから今の貴女がいるのです。それに私自身もこの場にいられる
     のです。私より断然強いです、もっと自信を持って下さい。」
   同じく涙を流しながら俯くレイス妹。
    そう彼女はオリジナルの罪も一緒に背負って生きていく事も決意していた。それは紛れも
   ない事実。
   これこそオリジナルであるレイス姉には到底真似できないものであった。
レイス妹「・・・バカですよね。大切な事をすっかり忘れていた。姉さんの分まで、私がお父さんと
     一緒に戦うと決意した。それを・・・忘れるなんて・・・。」
レイス姉「大丈夫ですよ。今思い出したじゃないですか。要はそれを忘れずに生きられるかです。
     もし・・・私が自分のエゴに負けそうになったら・・・止めて下さい。その代わり貴女が
     原点たる思いを忘れてしまった時、再び思い出させた上げますから。」
レイス妹「・・・はいっ、姉さん!」
   自分自身によって迷いが吹っ切れた自分自身。何とも言えない不思議なものだ。
   しかしこれによってレイス姉妹は吹っ切れ、自分自身を見つめ直す事ができたのである。
ウィン「いいですね、姉妹というのは。」
レイス姉「何を仰いますお母様。レイシェム様がいらっしゃるじゃないですか。ですが・・・何だか
     姉である貴女より、ある意味レイシェム様の方がしっかりしていると思いますが。」
ウィン「こらぁ〜!」
   ウィンはレイス姉をどつき返す。それに悲鳴を上げて応対するレイス姉であった。それを見た
   レイス妹は小さく笑った。
    自分には姉がいる・母となる人物がいる。それでいいではないか。それを無理矢理否定し、
   自分だけが世界で唯一の存在だとは思う事もあるまい。
   レイス妹はこの時心に新たに決意した。

ウインド「全く・・・サボってないで手伝え。お前達が意味深な会話をするから、ライアや4人の
     美女達が呆気に取られているぞ。」
    ウインドが機体のメンテナンスを終え、ガレージから駆け付けてくる出てくる。隣には清潔
   な身なりで整えたシェガーヴァが一緒にいた。
ライア「え・・いえ・・・お父様、感動しましたよ。ここまで信念があれば、絶対に正しき道を外さ
    ないでしょう。改めて皆様の偉大さには脱帽です。」
ウィン「それはないですよライア様。貴女は私が叶わなかった母となる事ができたのですから。」
ライア「・・・今からでも遅くはないと思いますけど。」
ウィン「クローンだからダメだという概念に囚われるという事はしたくはありません。ですがこれ
    ばかりは絶対に行ってはいけない行為です。それによって生まれてきた子供が悲惨な目に
    会います。それだけは絶対に行いません。」
レイス妹「姉さんが羨ましいです。私はお父さんと一つになれたぐらいですから。」
   レイス妹の発言を聞いたウィンとレイス姉は未だかつてないほどの驚いた表情を浮かべる。
   それを見たレイス妹は、その意味が理解できなかった。
ウィン・レイス姉「・・・・・。」
レイス妹「どうなされたのですか?」
ウィン「・・・ビィルナ様・・。その・・・ウインド様と・・・一つになったと・・・。」
レイス妹「はい・・。それが何か・・?」
レイス姉「それこそ私達が叶わぬ夢だと思っていた事。貴女が羨ましい・・・、実に羨ましい。別に
     結婚した夫を差別するつもりはありませんが、苦楽を共にしたウインド様と一つになれる
     なんて・・・。」
   どうやら2人はウインドとレイス妹が一つになった事に、非常にヤキモチを焼いていた。
   しかも様子を窺うと、相当のものである。

    そこにメンテナンスを終えたデュウバ姉妹とレイシェムが駆け付けてくる。
   後から改めてその会話の内容を聞き、デュウバは率直に真相を話しだした。
デュウバ姉「ウインド様ね、レイスとウィンさんを助けられなかった事を気にしていたの。私達が
      ウインド様に慰めて貰おうと言った時、快く引き受けてくれた。本来はタブーである
      行為なのに。その後なの、ウインド様が悪夢に魘されたのは。それは今まで見てきた
      この人じゃなかったわ。私達が何もできないぐらいに怯えていた。ただ寄り添う事しか
      できなかった。でも・・・その後ウインド様はこう言ってくれた。お前達と一緒になれ
      たから、悪夢と戦えたって。いずれ決別しなければいけない悪夢と一緒に戦えたって
      言っていた。」
   真意を聞いたウィンとレイス姉は納得する。その現実味溢れるデュウバ姉の発言を聞き、2人
   はその悪夢が自分達が発端だった事に気付いたからだ。
レイス妹「2人には悪かったけど、私達はよかった。お父さんを助ける事ができた。もし私達が思い
     切って行動しなかったら、お父さんの迷いは晴れる事がなかったから。」
ウインド「2人には感謝している、俺1人じゃどうしようもなかった。命の恩人だよ。」
   ウィンとレイス姉は自分達に代わって大切な人を守ってくれたレイス妹とデュウバ姉に深く
   感謝した。
   その場に自分達がいれば同じ行動をしたであろうが、そもそも発端は自分達だ。これ以上何も
   言えなかったのである。
シェガーヴァ「人間としての行動ができるのは、実に素晴らしい事だ。自分が1人の人間である事を
       忘れてしまえば、デアやデヴィルと同じになってしまう。これだけは道が曲がらない
       ように注意していかねばな。」
   色々な意味を込めて、シェガーヴァが話した。それを聞いた一同は改めて自分達が生きている
   事に実感が湧いたのである。
デュウバ妹「私にはどうも羨ましいのかどうかよく分かりません。別に思っている人がいる訳でも
      ないし。」
デュウバ姉「あら、さっきウインド様の事好きだと言っていたのは?」
デュウバ妹「あ・・・あれは先輩としてよ・・・。個人的には別に・・・。」
ウィン「満更でもないですね。頬が赤くなっています。」
   それを指摘されたデュウバ妹は更に赤面し、その場に俯く。
    彼女がどの様な一念でウインドを見ているかは分からない。彼女がクローンとして生まれた
   時点の記憶は、アマギ達の時のものなのか。それとも今現在いるデュウバ姉の記憶なのか。
    だが言える事は現に表現に出ている事から、デュウバ妹は今のデュウバ姉の意志を受け継い
   だ者だという事である。
ウインド「お前が思っていなくても、俺はお前が好きだ。妹として・女として・パートナーとして。
     別に恥ずかしがる事じゃないよ。」
シェガーヴァ「そうだな。それこそが人間であり、生きている証拠でもある。私は恋愛感情という
       ものは分からない。こんな身体なんでな。しかしお前達は私の大切な息子や娘達だ。
       それはハッキリ断言しよう。命をかけて守る、それが私の使命だ。」
ライア「頼りにしていますお父様、なんてね。」
   ライアの発言で一同は大笑いする。さすが新妻で母親であり、それにレイスの孫である。
   殆ど表に出さないユーモラスな点は、しっかりと受け継がれている。
   またレイス妹の迷いが吹っ切れたのが影響してなのか、ターリュとミュックもワイワイ騒いで
   いた。

ウインド「落とすなよ。」
デュウバ妹「分かってますって。」
    デュウバ妹がユウとアイを抱きかかえ、2人の顔をマジマジと見つめる。今やユウとアイは
   財閥のアイドル的存在になりつつあった。
デュウバ妹「レイスさんのお孫さんだってね〜、可愛いね〜。」
   デュウバ姉と全く違う方法であやすデュウバ妹。これは彼女独特の性格なのであろう。その
   がさつに近いがユーモラス溢れる行動に、ユウとアイは笑顔で彼女を見つめ返す。
レイス姉「メルアさんと同じく育児はお手の物ですよ。」
デュウバ姉「母親だったしね。」
ウインド「・・・そうだな、こうしよう。ユウとアイはお前達4人で育てな。ライアはこれから財閥
     などの運営に携わる。その間の子守はお前達に任せる。いいよなライア?」
ライア「構いませんよ、お父様がそう仰るのであれば。それに・・・また、近い内に面倒が見られ
    なくなるかも知れませんし・・・。」
ウインド「フフッ、そうだったな。」
   今のライアは健在そのもの。しかし動けなくなると本人の口から告げられ、4人は不思議に
   思った。
レイス妹「どうしてですか?」
ウインド「まだ物足りないらしい、後継者を持つには。ユウト自身の後継者が生まれない限り、2人
     は心配で仕方がないと言う事だ。」
デュウバ妹「え・・・まさか・・・。」
ウインド「そのまさかだ。」
   4人は驚愕せざろう得なかった。
    ユウトとライアは再び小作りに専念すると考えているという事であったからだ。これには
   先輩格の4人は唖然するしかなかった。
レイス妹「本当ですか?!」
ライア「その・・・ユウトさんは男の子も欲しいらしくて・・・。かく言う私も・・・。」
レイス姉「フフッ、その気持ち分かりますよ。私も生まれてくる子供が男の子ならいいなと思って
     いました。現実には息子が生まれましたけどね。」
デュウバ妹「それを行う2人も凄いわよ。流石若さ故のパワーかしらね。」
   うんうんと首を立てに振り納得しだす4人。
    後継者はやはり男児の方が相応しい。もっとも子供が生まれてくれる事こそ後継者が出来た
   と言える。
   しかし昔から男児が家系の中心者となるので、本格的に思っている両親はこう思う者が多い
   らしい。
    それに今のご時世、人は簡単に生まれ簡単に死ぬ。子供の数自体が減ってきているのが現実
   でもある。
   子供の数が多ければ、未来の人材になる人物も多くなるのが世の道理である。
レイス姉「分かりました、孫の面倒はしっかり見ます。愛しいユウとアイが立派な人材になる為に
     育てますよ。私の命を掛けて。」
ライア「すみません。ありがとうございます、お婆様。」
   ウインドは思った。レイス姉にとってこの子育てが執念で行われる事と。
   過去に自分の子供を自らの手で殺害した彼女だ。この行動は罪滅ぼしの一つなのであろう。
デュウバ姉「しかし・・・大変ですねライアさんも。」
ライア「ヘヘッ、頑張らなくちゃね。」
ウインド「全くだな・・・。」
   ライアの対応を見てウインドはどこか呆れ気味である。しかし彼女の行動は正しいと、彼は
   心中で思った。
   ワイワイ騒いでいる彼女達を見つめ、ウインドは微笑ましい視線で見つめた。

シェガーヴァ「人工知能量産機が必要かも知れない。」
ウインド「そうだな。いくら12人が束になって掛かったとしても、相手の兵力がそれ以上だったら
     大問題だ。サポート役に数体作成した方がいいだろう。」
レイシェム「了解しました。早速プログラムを組み上げます。」
    コンピューターの前に座りながら2人の意見に応じるレイシェム。
   その後キーボードを前に、目にも止まらぬ早技たるブラインドタッチで操作を開始する。
   流石は人工知能の本元。シェガーヴァも彼女もこういった事は大得意であった。

ディーン「まだ動いているのですか?」
ウインド「お前達を陰からサポートするための作戦だよ。」
    深夜2時半、既に財閥の内部は静まり返っている。
   パトロールから戻って来たディーンが彼らの行動を見つめ、驚きの表情を浮かべている。
   決戦が近くなると彼らは夜通しで行動する事が多い。ユウト達が戦った時もそうであった。
ディーン「ありがとうございます。」
ウインド「気にするな、お節介焼きなだけだから。」
   恐縮気味に頭を下げるディーン。それを見たシェガーヴァは以前に同じ光景を見た記憶が脳裏
   に浮かぶ。
シェガーヴァ「ディーンよ。お前はどこかで見た事があるな。」
ディーン「自分がですか?」
ウインド「そう言えばそうだな・・・。」
   一体誰に似ているのかと、ウインドとシェガーヴァは脳裏で詮索する。かなり長い間詮索して
   おり、レイシェムのブラインドタッチの音だけがガレージ内部に響いていた。
    その後ウインドの中ではディーンの姿がある人物とダブった。
ウインド「なるほど・・・。機体構成からその身なり、お前さんはスミス=サジェリーガによく似て
     いる。」
ディーン「・・・スミスは私の祖父です。」
   薄々気付いてはいたウインドであったが、事実と知ると小さく驚いた。
    ディーンはかつて実在した漆黒の黒豹、スミス=サジェリーガの孫であったのだ。
   愛機のアセンブリもそうだが、身なりや仕草など彼にそっくりだと思うウインド。またそれに
   気付いたシェガーヴァも同じく思った。
ウインド「なるほどな。よく似ているわけだ。」
ディーン「・・・祖父はどういった人物だったのですか?」
ウインド「スミス=サジェリーガ。ジェイズ・マッシュ・リルガス・ディーアの兄。アリーナでは
     漆黒の黒豹として君臨し、ランクは2位の座を揺るぎないものとしていた。アマギと対戦
     し敗れるまではマスターオブアリーナで、敵はいなかったそうだ。頼りがいのある兄貴の
     印象が強かった。師匠はライディルの師匠でもある、トム=ハイヴェンダーグ。伝説の
     レイヴン、デンジャラスガンナーを憧れてレイヴンになったそうだ。」
    祖父の過去を知り、ディーンは興味津々に聞き入る。
   こういった話は滅多に聞けるものではない。ウインドとシェガーヴァがそれ以前から生きて
   いたからこそ、歴史の生き証人になっているのである。いわば伝説の生きる語り部でもある。
ディーン「嬉しいです、祖父の話が聞けて。父は私が幼い頃に病気で死にました。女手一つで私を
     育ててくれた母も、レイヴンになる前にテロリストに殺されました。その後生きる為に
     レイヴンになり、独学でここまで技術を習得しました。」
ウインド「レイヴンの鏡だよお前は。どんな理由であれ、生きる者は強者だ。それが負けまいとする
     固い信念があれば尚更だ。」
   お互いに煙草を吸いながら、作業をするシェガーヴァとレイシェムの近くで会話を続ける。
   その姿は中年のオッサン同士の雑談に見える。
ディーン「孤児で困っている子供達が大勢いました。そこにテロリストが現れ、集団殺戮を行ったの
     です。ユウタやアミ達はその時助けた子供達です。その時は悪は徹底して滅すると思って
     いたのですが、後になると4人の孤児を抱えている自分がいました。資金面に困り、途方
     に暮れていたら・・・エルディルさん達に出会ったのです。」
ウインド「エルディルもデヴィル達から依頼を受けていたらしい。知っていると思うが、トーベナス
     社襲撃の件だ。」
ディーン「はい。報酬が魅力だったので、不本意だったのですが受けました。その資金を手に入れ
     たら、再び流浪の旅に出ようと思っていました。」
ウインド「だがシュイル達に出会った。それに自分達を心から心配してくれているライアに。」
   これも何かの運命かと、その場にいる一同は思わざろう得ない。全てはその場に導かれてくる
   かの如くにである。
ディーン「行動ではあのような行為をしましたが、心中では嬉しかったです。ここまで我々を心配
     してくれる人物がいるとは思いませんでした。しかし・・・別の観点からは馬鹿にされて
     いる気がしたんです。」
ウインド「それで俺が動いたわけだ。1対7の集団戦闘を展開し、お前達の迷いを断ち切った。ああ
     でもしないと理解しそうになかったからな。目には目を、力には力をというわけだ。」
ディーン「ですね、感謝しています。私達を救ってくれた恩人である貴男には、何とお礼を言ったら
     いいか。」
ウインド「礼なら俺にじゃなく、身重でも心配してくれたライアにしなよ。彼女の方が決意は固い。
     彼女の一念を察知して、俺は動いたまでに過ぎない。」
ディーン「そうですね。ライアさんの直属の護衛レイヴンになって、一生涯戦っていこうと思って
     います。」
   ディーンの決意は断固堅い、それを再認識したウインドであった。
   またその正しい事は何としても貫き通す、これはスミスが行っていた信念でもあった。
   流石はスミスの孫だなと、ウインドは痛感した。

ライディル「お久し振りです先輩。」
    会話が一区切り付いたところで、奥の扉からライディルが入室してくる。
   先ほど昼過ぎ辺りに彼から連絡があり、自分も共に戦いたいという事をウインドに告げた。
   トムの悪は滅するという信念を何よりも貫いている弟子のライディル。ディーンと信念が同じ
   者であった。
ウインド「元気そうで何よりだ。」
ライディル「また出たのですね、諸悪の根元が。」
ウインド「ああ、明確な敵が出た。だが今は奴らの手下が襲撃を企てている。まずはそれを叩く。」
ライディル「了解です。デンジャラスガンナーの再来と言われた自分、戦うべき時に戦わない戦士は
      死んだも同然です。この命燃え尽きるまで、悪を滅し続けます。」
ウインド「フフッ、お前らしいな。」
    その後ウインドは彼にディーンを紹介した。
   師匠の弟子の息子、それを知ったライディルは嬉しそうに応対をしている。
ライディル「改めて、ライディル=クルヴェイアという。」
ディーン「ディーン=ディヴディーグといいます。よろしくお願いします先輩。」
ライディル「よろしくディーン。」
   ガッチリ握手を交わすライディルとディーン。それはトムとスミスが握手を交わしているよう
   に、ウインドに目にはそう映った。
   それに性格上馬が合いそうだと痛感するウインド。正に類は友を呼ぶである。
   そしてディーンにとって師匠といえる人物との出会いであった。
    ウインドは徐に煙草に火を付け、意気投合する熱血野郎組を見つめた。彼にとって2人は
   息子同然の者達、そして悪を滅する自由の戦士である。
   一人また一人と覚醒していく戦士達を見つめ、ウインドは心中で嬉しく思った。
                               第6話へ続く

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