〜第1部 18人の決断〜
   〜第5話 ウインドブレイド2〜
    ユウト達は愛機をブースターダッシュにて進ませる。
   目指すはオールド・アヴァロン近郊の廃棄宇宙船跡地。そこはかつて火星から緊急着陸した、
   輸送船の残骸である。
   今は誰も使用しておらず、テロリストの絶好の隠れ家になっていた。

    今の世界に生き抜くならず者達。彼らは彼らなりの精一杯の生き様が、殺人や強盗・破壊
   などである。それか彼らの絶対的の正義でもあった。
   しかし時代は彼らならず者を許さず、排除対象にしている。
   秩序が喪失した今の世界で、正義や悪は存在しない。己の信念を貫き通す事が、自分にとって
   の正義であるからだ。
    だがアマギ達ロストナンバーレイヴンズはタブーとされていたコミュニケーションなどを
   優先し、今の世界に必要不可欠な人との係わり合いを貫き通した。
   それこそが人類繁栄の最優先事項であるからだ。
   それを受け継ぐのが、ユウト達リターン・トゥ・ザ・ロストナンバーレイヴンズである。

サーベン「しかし不思議な話だよな。レイヴンがレイヴンと組むなんて。」
ジェイン「そうそう。他人と干渉しないのが当たり前の今の世界には、メチャ異種な存在ですよ。」
    サーベンとジェインがユウト達の行動を評価した。自分達では考え付かないものだからだ。
ライディル「だが、人は1人では生きてはいけない。誰かしらの力なくして、人の生は在り得ない。
      師匠が口癖のように言っていた。それこそが真実なのだと。裏切られてもそれは相手の
      行動。用は自分がどうするか、それが自由なのだと。他人がそうしているから、自分も
      そうするのは単なる真似事だ。」
   殆ど無口なライディルが熱弁する。それを聞いた一同は、コクピット内で驚きの表情をする。
   この発言にユウトは間隔空けずに、その話に同意の決意を述べだす。
ユウト「ライディルさんの言う通りです。自分は人々を助ける為に生きてきました。両親や祖父から
    そう生きろと教えられましたが、これは決して間違ってはいません。むしろ感謝します。
    今のこのご時世に生きてこられたのは、皆さんのおかげなのですから。絶対に諦めず、戦い
    続けます。」
   彼の心中の決意を聞いたジェイン達は黙ってしまう。
    自分より年下の人物が、これほどの決意を胸に秘めているからだ。そしてそれは全ての人を
   助けるという一念である。私利私欲ではない。これほど尊い行いが他にあるだろうか。
ライア「・・・些細な事で怒る自分が情けないです。感情だけで行動してしまうのが、今の私の唯一
    の欠点です。ですが・・・正してくれる人がいる事は、非常に恵まれていますね。私一人で
    行動していたら、この命はとっくに消え失せていたでしょう。」
ユウト「己の信念を貫き通す事は間違ってはいません。それが自分の絶対的信念ですから。ですが
    それが過ちだった場合、正す人がいないのは悲しい事です。もしかしたら・・・デア達も
    そうだったのかも知れませんね・・・。」
ライディル「仲間がいないのは虚しいものだ。頼れる仲間がいるからこそ、強くなれる。間違った
      事をすれば正してくれる。ウインドさんの存在は、俺達にとってとても貴重な存在。
      彼こそが唯一の真実だろう。」
   ウインドの存在、それこそが彼らの真実。アマギ達も彼を見習い、共に戦ってきたのである。
   彼の今までの行いが、今の自分達が存在する理由でもあった。
   ユウト・ライア・ナイラはそれを心の底から感謝するのであった。

アレナ「ユウトさん。爆弾解除部隊はこの辺で別れますか?」
ユウト「そうしたい所ですが、爆弾設置場所が把握できていません。まずはデアに会ってから考えま
    しょう。」
ライディル「了解した。」
    ユウトは心中で思った。もしかしたら爆弾の件は相手が呼び寄せるためについた嘘なのかも
   知れないと。
   相手側がライアを付け狙う以上、他の地域を破壊しても何の意味がない。完全な破壊神人物で
   あればそういった行動を行うだろう。
   しかし人の苦しむ姿をこよなく好むのがデア達である。一番苦しませたい人物に行動するのが
   普通ではないだろうか。
   それを考えた時、ユウトは何ともいえない気分になる。そしてライア並に心の底から怒りが
   吹き出るのであった。

    ACを進ませる事数時間後、目の前に廃棄宇宙船跡らしき建造物が見えてきた。いかにも
   ならず者達のアジトのような雰囲気をかもし出している。
ユウト「ライアさん、出番ですよ。」
ライア「了解です。絶対自分を見失いませんから。」
アレナ「気を付けて。」
    ライアはダークネスハウンドを進ませると、廃棄宇宙船跡と一定距離を保ち停止した。
   他の面々は後方から何時でも攻められるようにと、臨戦態勢で見守ったいる。

    そこにネオ・アイザックのアリーナ場で目撃した、デアのACヴュイクーレヌが現れる。
   そして彼のACの隣に装甲車が到着する。どうやらその内部にはトーマスの家族が捕縛されて
   いるようだ。
   ライアはACの生体センサーを起動し、装甲車の内部を透視した。完全ではないが3つの点が
   映し出されている。偽りではない事にライアはホッと胸を撫で下ろした。
トーマス「メルアは無事なのだろうな?!」
    トーマスが内部通信を使い相手側に叫ぶ。自分の家族が捕縛されているのだ、怒らない訳が
   ないだろう。
デア「貴様の連れか、さぞ悔しかろうな。」
   憎たらしいほどの発言をするデア。それを聞いたユウトとライディル以外のレイヴンは、心の
   底から怒りが吹き出てきた。
ライア「その人達には何の関係もないだろ、人質なら私にしろっ!」
   案の定ライアは激怒する。猪突猛進な彼女の闘志に火が付いた。
   だがユウトは正しい判断だと思った。それはデアにとって快楽の何ものでもなかったからだ。
   逆に相手を天狗状態に刺せればボロを出すかも知れない。彼なりの一種の作戦でもある。
デア「それはできんな。第一・・・。」
ライア「人の苦しむ姿が楽しい・・・か。貴様のような奴はクズ以外の何ものでもないっ!!!」
トーマス「私の家族を人質に取り、挙句の果てにはオールド・アヴァロン一帯に核爆弾を仕掛けて
     全てを消そうとするとはな!」
   トーマスの発言を聞いたデアは大笑いをする。おそらくコクピット内では憎たらしいほどの
   笑みを浮かべているだろうと、ライアを始めどのレイヴンもそう直感した。
デア「フフッ・・・。その爆弾の件は嘘だ、真に受けおって。」
   ユウトの予感は当たった、爆弾の件は彼等がでっち上げた嘘なのだと。
    しかしこの発言を聞いた彼は別の意味で安心する。それは罪のない人々を無差別に殺されず
   に済んだからだ。
   まあたとえ爆弾が本当だとしても、何がなんでも解体して助けようとまで考えていたユウトで
   ある。1つの肩の荷が下りたのは言うまでもない。
ライア「・・・イレギュラーが、貴様らは生きる資格などないっ!!!」
ゴリアッグ「そういう貴様はどうなのだ。」
    ヴュイクーレヌの背後から、ゴリアッグのACウィントネアーが現れる。その重量級のAC
   が歩行する度に、トーマスの家族が乗る装甲車が大きく揺れた。
レイヴン「人間なんか小物に過ぎないんだよ。」
    2人の後方から足軽に現れるもう1体のAC。その紫色に着色された機体は、まるで悪魔の
   ようであった。
レイヴン「小物なんか始末しちまえばいいんだよ、このバカが。」
   その声は女性のものであった。だがその発言はとても女性から発せられるものではない。デア
   やゴリアッグの方がまだ優しいといった感じであった。
デア「そう急かすなルボラ、楽しみは最後まで取っておくものだぞ。」
ルボラ「早くそいつらの断末魔を聞きたいものだ。」
   それを聞いたライアとトーマスは完全に激怒し、愛機を突進させようとする。
    だが無口であるライディルが今までにない発言で、2人を制止させた。
ライディル「馬鹿野郎、先走るなと言っただろうが。」
   その発言はルボラに匹敵する発言だった。すぐさまライアとトーマスは愛機を止め、大人しく
   なる。
デア「なかなか威勢のいい奴がいるじゃないか。」
ライディル「何とでも言え。」
   ライディルの発言を聞き、ユウト達は思った。一番激怒しているのはライディルなのだと。
   作戦会議中で聞いた彼の発言より、数段トーンダウンしている。これが何よりの証拠である。

デア「さて・・・ライア、ACから降りてもらおうか。」
    ルボラのACヴァンダースウェイリアが、右腕主力武器のマシンガンの銃口を素早く装甲車
   に向ける。
   それを見たライアはコクピットハッチをオープンさせ、仕方なく外に出るのであった。
ライア「それで、何をしたいのかな?」
   彼女なりの精一杯の強がりだろう。だが声は震え上がっていた。
デア「あの時より変わったな。だが・・・弱者には変わりない。貴様は他人の手を借りなければ、
   生きてはいけないのだからな。」
ゴリアッグ「貴様らもそう思うだろ。こんな小娘が頑張った所で、世界は変えられない。」
ルボラ「愚者とは貴様等の方だ。」
   ライアは怒りと悔しさの余り泣きだす。今までに受けた事のない侮辱と屈辱である。
   だが今下手な行動をすれば、トーマスの家族は殺される。怒りで心を震え立たせながら、今は
   ただ我慢するのであった。
デア「目障りなんだよ、貴様の存在が。弱者は弱者らしく、暗闇で生きてりゃいいんだよ。」
    その発言の後、ヴァンダースウェイリアがマシンガンの安全装置を解除する。それは射撃を
   意味していた。つまりは相手を貶すだけけなし、大切な人を奪う事であった。
    そうはさせまいとトーマスはゴールデンバードをブースターダッシュで進ませ、家族を助け
   ようとする。
   だがそこにグレネード弾が着弾。機体は後方へ飛ばされ、後ろ側にいたジェインの機体に激突
   した。
   ウィントネアーが放った、グレネード弾であった。
ゴリアッグ「外野はすっこんでろ、これからショータイムの始まりだ。」
   ヴァンダースウェイリアが構えるマシンガンの銃口から弾丸が射出されようとした。一同は
   どうしようもないと諦め掛けていた。

    しかし弾丸が装甲車を襲おうとする刹那、ユウトの後方から一筋のレーザー弾がマシンガン
   のマガジンを貫く。直後マシンガンは弾薬の誘爆と共に爆発する。
   総弾数が最多を誇る武器であたっため、その爆発は右腕をも巻き込み肘から先が粉々に砕け
   散った。
ルボラ「な・・・なんだこれはっ!」
   ルボラが何が何だか分からないと叫ぶ。不意の攻撃にライア達を凝視したが、誰一人と攻撃を
   仕掛けた形跡はない。ルボラをはじめデアとゴリアッグも状況を把握できていなかった。
   それはユウト達もそうであった。
    だが相手がたじろいでいる最中、自分の隣を何かが過ぎ去っていったと錯覚するユウト。
   そして今いる全員は顔の当たりに小さな風を感じた。そう、それは錯覚ではなかった。
   人質として囚われていた装甲車が瞬時に消え失せ、デア・ゴリアッグ・ルボラの機体に軽い
   衝撃が走る。
   相手側の機体のコクピットハッチにレーザーブレードによる斬撃の跡が残った。
ウインド「殺されなかっただけありがたく思え。」
   この発言にルボラも脅威する殺気を一同は感じる。今までにないウインドの殺気が、彼らを
   精神面から威圧した。

    直後ダークネスハウンドの前に青いACが降り立つ。ウインドが駆るウインドブレイドだ。
   そして左腕には装甲車を掴んでいる。
   これを見たライアはウインドの今行って欲しい思考を理解し、即座に装甲車の中へと入る。
   そしてトーマスの家族を助け出した。
ライア「トーマスさん、ご家族の方は無事ですよ!」
   束縛から解放したトーマスの家族を、ダークネスハウンドへと乗せるライア。
   助け出したのはいいが、外にいたのではデア達の格好の獲物だ。今一番安全な場所は、ACの
   中であった。
ルボラ「だ・・誰だ貴様は・・・。」
ライア「へぇ〜・・・貴様等でも恐怖するんだぁ〜・・・。」
   立場逆転と、ライアがルボラに貶す発言をする。仲間達の今までの怒りの全て込めて。
   だが相手側は今だウインドの殺気に威圧され続けていた。
ウインド「本来は俺が手を貸す事ではない、彼らが主役なのでな。だが貴様等の行動は明らかに諸悪
     の根元そのものだ。イレギュラーは即刻排除する。」
ゴリアッグ「ま・・・まさか・・・風の剣士・なのか・・・。」
デア「か・・風の剣士・・・。」
ルボラ「・・・不利だ、一旦退却する。」
   まるで狼が獅子を見たかのように、一目散に退散していく。そう、まるで脱兎の如くである。
   これにユウト達は呆気に取られ、何も言い出せないまま彼らを見送る。それは真に一方的にで
   あった。
ライア「・・・そこまで逃げなくてもいいのに。」
   怒髪天を迎えていたライアだが、その行動を見た途端呆れ顔になる。この大きな差が何よりの
   証であろう。

    その後ウインドは愛機をダークネスハウンドに近づけ、コクピット内部から出る。それに
   気付いたライアはハッチを開き、同じく外に出た。
ライア「ありがとうございました、ウインドさん。」
ウインド「よく我慢したな、あれだけの罵声を浴びせられて。」
ライア「はい。激怒はしましたが・・・、・・我慢しま・した・よ・・・。」
   直後ライアは泣き出す。今まで我慢していた恐怖感が一気に湧き出し、彼女に襲ったのだ。
   ウインドは泣き続ける彼女をそっと抱きしめ、その胸の中で泣かせてあげた。
    ユウト達もACから降り、深く溜め息を付くのであった。そして我慢し続けたライアに心の
   底から感謝と敬意を表した。
   今一番強いのは、ライアであると。
    トーマスの家族の救出作戦とオールド・アヴァロン一帯に仕掛けられていた爆弾解除の作戦
   は幕を下ろした。もっとも爆弾解除の件はデア達のデマであったが、本題の救出は成功した。

    その後一旦ガレージに帰還した一同。
   到着後ウインドの計らいで、トーマスの家族の身体検査をしだした。デア達に何かしらの行為
   をされていないかをチェックするためだ。特に念入りにチェックされたのは、生まれて間も
   ない双子の女の子であった。
   医師の免許を取得しているナイラとアレナは、彼女達の身体検査を受け持つ。医師免許が無駄
   ではなかったと、ナイラとアレナはつくづく思う。
   その間、他の面々はブリーフィングルームで待機していた。
ライディル「よく頑張ったなライアさん。」
ライア「はい・・・。」
ユウト「今のライアさんは僕より立派です。」
    一同はライアの行動を褒め称える。あれだけの罵声には激怒せず反撃しない者はおかしい。
   それを耐え抜いた彼女は今の彼らより立派に見えた。
トーマス「本当にありがとうございましたライアさん!」
   ライアの両手を握りしめ、涙ながらに感謝するトーマス。それを見たライアは精一杯の笑顔で
   応えた。
    そこにトーマスの妻メルアと双子の子供がナイラ・アレナに抱きかかえられながら入室して
   来る。
ユウト「うわぁ〜・・・可愛いですね〜。」
   意外に子供好きなユウトは、2人を見るや否や輝かしい表情で見つめる。それに一同は驚きの
   表情を浮かべた。そして彼が本当にいい人物なのだと思った。子供好きの人間に悪人は絶対に
   いない。

    小さな天使達の礼を兼ねて、トーマスの妻が一同に感謝の意を表した。
メルア「皆様初めまして、トーマスの妻メルアと申します。この度は私はともかくこの子達を助けて
    頂いて、本当に感謝しています。ありがとうございました。」
   深々と頭を下げるメルア。その行動に女性陣は熱い視線で見つめた。それは母親になった女は
   強くなるという事に、心の底から感じ取ったからである。

    その後彼女は自分と娘達を助けた本人のウインドの前に行き、改めて礼を述べだす。
   ウインドはブリーフィングルームの隅で、静かに一同を見守っていた。
メルア「初めまして、ウインド様。メルアと申します。この度は私や娘達を更には皆様をも助けて
    頂き、本当にありがとうございました。」
   再び深々と頭を下げるメルア。それを見たウインドは構わないといったジェスチャーをする。
ウインド「気にするな。これは動けないトーマスやライア、そして皆の代わりに助けただけだ。」
メルア「ですが貴方様の行動が私達を助けてくれました。本当にありがとうございます。」
   メルアのしっかりとした言動を見て、ウインドはある人物の事を呟きだした。
ウインド「・・・お前と同じ女性がいたな。アレナやアキナの祖母の母、敏田デェルダを。」
メルア「その方ならご存知です。レイヴンとして大活躍された、母親レイヴンとお聞きします。」
   自分達と同じレイヴンではないが、彼らの事をよく知っているメルア。一同は彼女の知識力に
   驚いた。
   特に驚いたのは子孫のアキナとアレナであろう。
ウインド「お前はデェルダの生まれ変わりかもな。」
メルア「お褒めに頂き光栄です、ウインド様。」
   メルアのその仕草から何から、ウインドはデェルダそっくりだと心中で思った。そしてこの
   ようなしっかり者に支えられるトーマスを羨ましく思う一同である。

ウインド「さて、役目も終えた事だ。退散するとしよう。」
    ウインドは徐にブリーフィングルームを後にする。その最中ユウトの側まで近付き、その
   小さな肩を軽く叩く。
ウインド「頑張れよ、若獅子。」
   そう話すと、ウインドはその場を後にした。一同はただ黙って彼を見送った。そう彼らは何も
   できなかったのだ。
   風が舞うように現れ、風の如く去る。そのウインドという名前がいかにも似合う行動をして
   いた。

ナイラ「また来ますよ。そんな感じがします。」
    珍しくナイラは彼の心配をしていた。殆ど異性には興味がなさそうな彼女、だが彼を見る
   目が出会った当初よりは変わっていた。
ライディル「俺も鉱山へ戻るとするよ。また何かあったら呼んでくれ、すぐに駆け付ける。」
   ライディルもウインド同様にその場を後にした。殆ど何もしていなかった彼だが、その存在感
   だけで励まされる思いであった。

    その後ユウト達は今後をどうするかを話し始めた。
ナイラ「トーマスさん、これからどうなされます?」
トーマス「ユウトさんにはお世話になりました。今度は私がお力になる番です。」
ユウト「ですが、奥さんと子供さん方はどうなされるのですか?」
   ユウトが2人の女の子を抱きかかえそう話す。
   他人には懐かないといわれる2人だが、彼には不思議と懐いてしまった。これにはトーマスと
   メルアが一番驚いている。
   ユウトの問いに、ライアが間隔空けずに答えを返す。
ライア「社にきて下さい。社なら多くのレイヴンがいるので、今回のような事はありません。それに
    自分がそんな事は絶対にさせませんから。」
   ライアの決意は固かった。それはあれだけの罵声を浴びせられたのだ、吹っ切れたと言って
   いいだろう。その決意の固さを一番先に見抜いたのはメルアである。
メルア「了解です。ライア様の仰る通りに致します。それに皆様のお手伝いもできそうですから。」
   まるでレイヴンのような口調で話すメルア。女性陣は再び母親のパワーを見せ付けられ、その
   偉大さに心から羨ましがる。
ユウト「よかったね〜2人とも〜、みんなといっしょにいられるよ〜。」
   赤ちゃん言葉で話すユウト、それに一同は苦笑した。そしてそれだけ子供に優しくなれる事に
   偉大さを感じた。偉大さというよりは、これが普通なのだなと痛感したといってよい。

    その後一同は自分達の生活道具を纏めてトーベナス社へと移動する。
    ユウトとライアが出かけた時は2人だけであった。だが今はそれ以上の戦力で舞い戻った。
   これは多大なる戦力アップといってよい。
   そしてこれがデア達にとって目障りの何ものでもなくなる事は、言うまでもなかった。
                               第6話へ続く

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