〜第1部 18人の決断〜
   〜第7話 決断1〜
    イレギュラーのシェガーヴァが、完全なるイレギュラーのゴリアッグを倒してから6日。
   考える時間が必要と財閥を出て行ったレイヴン達は戻ってこなかった。
   トーベナス社ではユウトを中心にライア・キュービヌ・ガードック、イレギュラーメンバーの
   ウインド・シェガーヴァ・レイス・デュウバ・アマギが待機していた。

    昨日デア達から予告状が届き、明日の正午に攻めて来るとの事であった。
   シェガーヴァが相手の戦力を計算すると、ウインドが予測した過去の遺物が登場するとの事で
   ある。
    デアとルボラの機体を中心に遺物が7体。
   デヴァステイター・ナインボール・ヴィクセン・ファンタズマ・ナインボール=セラフ・
   M−9・グレイクラウドの7鬼神であった。
   デアとルボラは別として、今のユウト達にとって一番の脅威は7鬼神であろう。
ガードック「7鬼神か・・・皮肉だが、十分頷けるな。」
レイス「私達9人でどう対処するかですね。」
ウインド「そうだな。」
   珍しい事を話す伝説のレイヴン達。それは自分達はイレギュラーである為、手を貸す事は絶対
   あってはならないと言い切っていた。
   だが今の発言は完全に共に戦う事を意味している。
ユウト「お力をお貸しして貰えるのですか?」
シェガーヴァ「あの時手を貸さないと言ったのは、お前達の決断力を確認したかっただけだ。これ
       だけの決意があるのであれば、喜んで我々も力を貸そう。」
ウインド「主役のお前達が死んでは元もこうもないからな。」
   流石やり手達だと4人は思った。
    自分達がいるのはあくまでも士気を高めるに過ぎない。それが確認できたのであれば、当然
   死なせる訳にはいかなくなるという事。
   5人が共に戦う事はごく自然的で当たり前なものであった。
ウインド「デアとルボラは任せる。俺達はイレギュラーな存在の、7鬼神を破壊する。敵さんの事
     だから、7鬼神には人工知能を搭載するだろう。」
キュービヌ「それはまた何でですか?」
ウインド「あれだけこちらを殺したがっている。人工知能は戦力を低下させるだけの手駒で、本人
     達が殺さなければ納得しないだろう。そういうものだ、狂戦者や殺人鬼は。」
ライア「つまり・・・デアとルボラを倒せば、7鬼神は戦わなくなるという事ですね?」
   少し安心した口調でライアがそう話す。
   だがそれを跳ね除けるような発言をデュウバが語る。
デュウバ「そう甘くはないでしょう。操作する人物がいなくなった場合、全てのものを破壊する事が
     インプットされていると思われます。デアとルボラ、そして7鬼神全てを倒さなければ
     確実に負けます。」
アマギ「こちらがやられたとしても、次の目標を全ての人類に向けるだけです。何としても勝つ事が
    最優先ですね。」
   重苦しい雰囲気がブリーフィングルームに流れる。
   勝つ事が最低かつ最重要である事が、今回の決戦であった。これほどプレッシャーを感じる事
   は他にはないであろう。

    沈黙が続く中、ブリーフィングルームに入室して来る人物がいた。
   トーマスの家族を助けた時に一緒に行動した、ライディル=クルヴェイアである。
ライディル「お久し振りです先輩方。」
キュービヌ「親方っ!」
ウインド「フフッ、ライディルらしいな。」
   ウインドは作戦会議前に、ライディルがここに訪れる事をメカニック達から聞かされていた。
   他のレイヴンとは違い、ライディルは正義感が人一倍強い。それに悪と定められた者は根絶
   やしにするまで戦い続ける。そういった猪突猛進タイプの中年男性であった。
ライディル「私も共に戦います、悪は絶対に栄えさせてはいけません。これは師匠の遺言です。」
シェガーヴァ「そうか・・・トムは亡くなったか。」
ユウト「アマギさんとユリコさんも同じです。」
   間隔空けずにユウトが話す。
    ユウトが10歳の時、アマギとユリコは同じ日・同じ時に息を引き取る。
   最後までお互いを愛し合い、助け合った彼らは本当の夫婦であっただろう。それはユウトの
   両親や、ユウト・キュービヌがよく知っている。
ライディル「皆さんには感謝しています。再びこのようにして戦える事を夢見ていました。」
ウインド「そうだったな。ツルギ・アキと共に戦ったのだったな。」
ユウト「父さんと母さんとですか?」
ライディル「そうだよ。自分がユウト君と同じぐらいの時だった。今でもあの戦いは忘れない、君の
      両親は立派なレイヴンだった。」
   遠い目で語るライディル。だがライアは別の事が脳裏を過ぎる。
   遠い目という事は懐かしい思い出。つまりその人物がこの世にはいないという事になる。
ライア「ま・・・まさか・・・お亡くなりになったのですか・・・。」
ライディル「まさか、ピンピンしているよ。現役は退いたがね。だが少しでも弱音を吐こうものなら
      殺されちまう。あの2人は本当に強い。」
   ライディルの登場でブリーフィングルームは活気に満ちだした。
   仲間は勇気をもたらす、4人はそれを身を以って体験した。
ライディル「俺が言うのも何だが、あえて言わせてもらうよ。ユウト君はルボラ、ライア君はデアを
      叩くといい。私とキュービヌ・ガードック君は7体を相手しよう。先輩方も一緒に
      願えますか?」
ウインド「お前が仕切る所を初めて見るな。望む所だ、お前達を陰からバックアップする。」
アマギ「自分はバックアップをしつつ、ユウトさんとライアさんを見守ります。何かあった場合、
    すぐ加勢しますから。」
ライア「よ〜し・・・デアの野郎をぶっ倒すか!」
   両手の握り拳を叩き、ライアが気合ある発言をする。これは女性には見られない言動だ。
ユウト「今までのツケを払うとしますか。」
   6日ですっかり皮膚が回復したユウト。その笑顔ある表情はこの激戦をものともしていない。
   それを見たウインドは、今回の決戦の勝利を確信した。

    その後トーベナス社内及び社員全ては一時撤退を行う。
   敵がここに攻めて来るとなれば、財閥は確実に破壊されるだろう。それを見据えての行動で
   あった。
    必要な物を纏めると、社員達は子会社へと移動していく。
   当然ユウト達はここに残り、本社は前線基地及び補給場所として使用する事に決めていた。
   いつもは人が大勢いた社内だが、今はレイヴンだけしかいない寂しい場所となる。

ライア「寂しいですね・・・。」
    ユウトの身体に巻かれている包帯を取りながら、ライアがそう呟く。
   彼が怪我を負ってから、ライアは毎日こういった行動をしている。もういっぱしの看護士で
   あった。
ユウト「奴等に勝てば、再び活気が戻りますよ。それまでの辛抱です。」
   人工皮膚の移植は完全に成功しており、ユウトの外見は怪我を負う前の時と全く変わらない。
   それは今の医学のレベルを指し示し、ユウト自身の回復ぶりも言い表していた。
ライア「・・・不思議ですね。最初・・ユウトさんとは敵同士だったのですよ。それが今では協力
    するまでに至った。それに・・・貴方を愛してしまった・・・。」
ユウト「ありがとうライア。俺もできる限り君を守っていくよ。どんな困難があろうとも、必ず乗り
    越えていこう。」
ライア「・・・はい。」
   お互いを見つめ、沈黙を以て応え返す。いいムードが医務室に漂う。

    だが2人はどこからか視線を感じた。どうも誰かに覗かれている感じがしたのである。
   徐に2人同時に入り口付近を見つめると、そこには懐かしい面々が覗いていた。
   それはマイア・クレス・ディーレアヌ・ナイラ・メルアであった。
ライア「な・・な・なんですか・・・。」
ユウト「み・・みなさん・・そろって・・・。」
   今だ羨ましい視線で見つめる女性陣。その殆どが今後の発展にニヤケ顔で見つめる者ばかり。
   だが2人は戻って来てくれた事に感謝で一杯であった。
    その後ドアが開き、5人の女性が入室して来る。
クレス「暫く留守をしていたら・・・いいムードになっちゃって。」
メルア「フフッ、青春真っ盛りですね。」
ディーレアヌ「あ〜あ・・・ユウちゃんの事、好きだったのになぁ〜・・・。」
   2人の若いカップルをからかう女性陣。どの表情も去っていった時の曇り顔ではなく、笑顔が
   光っていた。一度社を去った時と違い、今の彼女達は活き活きしている。
ユウト「戻って来てくれたんですね。」
マイア「戻ってくるも何も、私はレベルアップに励んでいただけよ。今の私では奴等には勝てない。
    今必要なのは考える時間ではなく、修行する大切な時間。」
ナイラ「その通りです。死にたくなければ、強くなればいいだけですから。それが生きる術です。」
メルア「皆さんガレージにいますよ。ACのメンテナンスを行っています。」
   どこか落ち込んでいた雰囲気が一気に晴れ渡るライア。そして確信ある発言をする。
ライア「これなら・・・絶対に勝てる、白いキャンバスを守り通す事ができる!」
   力強く発言するライア。それに6人は力強く頷いた。
   後にも先にも目的はただ一つ。それは攻め来る愚者を排除する事である。

    ユウトの治療を終えると、7人はガレージへと向かっていった。その最中彼らの明るい会話
   が絶える事はなかった。
    ガレージでは23体のACが所狭しと並んでいる。
   18人のレイヴン達、そして5人の伝説のレイヴン達。その勇士は正しく英雄と言うべきか。
    ユウトとライアはそれぞれのレイヴン達に挨拶を交わす。どの仲間達もマイア達と同じく、
   この6日間修行に明け暮れていたという。
   今の世界、力こそが全て。だが彼らは優しさや他人を敬う気持ちがある。これが彼ら23人の
   最大の武器であった。

ユウト「ウインドさん、皆さん戻って来てくれましたよ・・・。」
    ガレージの片隅で、ターリュとミュックをあやしているウインド。その場所にユウト達が
   駆け付ける。
ウインド「よかったな。お前の生き様が皆に届いたようだ。」
   彼はそう話すが、ユウトは全て知っていたのではと思った。故にあえて何もせず、自分達を
   見守っていたのだと。
   胸に抱いている2人の子供を見つめ、徐に語りだすウインド。
ウインド「今回の戦いは、ターリュとミュックの未来を勝ち取る戦いだ。彼女達を生かすも殺すも、
     俺達次第という事。それに・・・可愛い女性を死なしちゃあ可哀想だし、男として惨め
     そのものだしな。」
   冗談半分を交えて笑顔で語る。それに感謝しているのであろう、ターリュとミュックは彼の
   頬を優しく撫でる。
メルア「ウインド様も生まれる時が違かったのであれば、立派な父親になっていたでしょうに。」
   メルアは悲しい表情でそう話す。
    彼女は思った。ウインドはこういった女性や男性を、どの位見つめてきたのかと。そして
   何人の死と直面したのだろうと。
   長く生きれば生きるほど、辛い現実を多く見る事になる。それもまた彼の持つ定めなのかと、
   メルアは心中でそう思った。
ウインド「そうかもな。だが俺は後悔や投げ出したいといった感情は、殆ど思った事はない。」
ナイラ「殆どという事は・・・思った事もあったのですか?」
ウインド「クローンではあるが、俺も一人の人間だ。そういった感情がないのは絶対にありえない。
     その多くの悩みや苦しみを乗り越えたからこそ、今の俺がいる。波乱の人生そのものと
     言ってもおかしくはないな。」
    彼等は以前、シェガーヴァがレイヴンやACを創り上げた事に大きく驚く。大破壊以前の
   人物など、そういる訳ではない。
   そんなシェガーヴァよりなぜウインドの方が偉大かと、彼らは出会ってから問い続けていた。
   その答えが今解かったのだ。
    ウインドは多くの人の生や死を見届けてきた。それが彼を大物の人物にさせたといっていい
   であろう。
   辛く悲しい現実を多く向き合ったからこそ、悪であったシェガーヴァを助け・多勢に無勢な
   自分達と共に戦っているのだ。
   ユウト達は彼の人間としての偉大さが、この時身に染みるほど理解するのであった。

    黙り込んだユウト達。ウインドは彼らを見つめ、激励の言葉を話そうとした。
   だがまた慰めの一念からかターリュが彼の唇を引っ張り、ミュックはジャケットの襟部分を
   強く引っ張る。
ウインド「こ・・こら〜・・・やめろっての。」
   今まで話した事のない優しい発言に、ユウト達は重苦しさが吹き飛んだ。
   ウインドや幼いこの双子は相手の心境を簡単に変える事ができるのだと、ユウト達は再度思う
   のであった。
ユウト「フフッ、自分もウインドさんみたいなお父さんになりたいです。」
ウインド「俺は未婚だぞ。」
ユウト「知っています。お父さんになるのであれば、貴方のような人になりたい。」
メルア「相手はライアさんですよね。」
ライア「な・・・なにを言いだすのですかメルアさん!」
   茶化し半分にメルアがそう話すと、ライアは今までに見せた事のないような赤面をする。
ウインド「やきもち焼いて、ユウトを殴り飛ばすなよ。まあレイスの孫だからな、仕方がないか。」
ライア「おじいさんまで・・・もうっ!」
   耳まで赤くなるライア。だが心中は嬉しさで一杯であった。それはユウトも同様である。
ウインド「明日の決戦は必ず勝つ。奴等は殺しや破壊しか考えていない。生きる事・優しさ・敬い、
     これらの感情はどれにも勝る。そして生きる意志は何ものよりも強い。今のお前達と、
     奴等とでは大きく違うしな。勝敗は目に見えている。」
   力強く発言するウインド。それを聞いたユウト達は、笑顔で頷いた。
   その彼らに賛同して、ターリュとミュックが彼の頬を引っ張りだす。それに軽い悲鳴をあげる
   ウインドであった。

メルア「ではよろしくお願い致します。」
ウインド「了解、よく寝ておけよ。」
    メルアがターリュとミュックをウインドに預け、一足早く就寝に入る。彼女が部屋を退室
   すると、2人は小さなあくびをした。実に可愛らしいとウインドは心中で呟く。
   現在時刻、深夜12時を回った頃。子供にとっては夢の中の時間であろう。
    何故メルアがウインドに子供を預け一足先に就寝したのには訳がある。
   それはトーベナス社員一同が今夜完全に子会社に撤収した時、専属コック達も共に撤収したの
   である。つまりは食事を作る者がいなくなった訳であった。
    それを知ったメルアが臨時のコックとして名乗りを挙げてくれたのだ。メルアは26人分の
   朝食を作らなくてはいけなく、そのために早く就寝に入ったのである。
   その他の面々も愛機のメンテナンスを仕上げ早い就寝に入る。それは明日の決戦は今までに
   ない死闘になるとウインドが助言し、充分な睡眠を取るように促したのである。
   
    育児用の背負い紐で2人の子供を背中におぶさり、ガレージへ向かおうとした。
   だが直後自室の扉が開きライアが入室してきた。
ライア「ウインドさん・・・。」
ウインド「どうした、深刻そうな顔して。」
   自室の扉が閉まるのを確認してからか、ライアが徐に心の内を話しだす。その表情は今までの
   彼女のものではない。まるで何かに怯えているようである。
ライア「・・・怖いんです、明日の事が。もしかしたら・・・死ぬかも知れない・・・。」
ウインド「漆黒の女傑が何を言っている、もっとしっかりしな。どんな事があろうと、絶対に死なせ
     はしない。俺が命に懸けて誓う。」
ライア「でも・・・怖いものは怖いんです・・・。」
   泣きながら訴えるライア。ウインドは思った、精神的にかなり参っていると。
    以前ユウトが悪役を演じライアを正した事があった。だが今回は別物だ。明日の死闘を前に
   小さき勇者は怯えているのである。
   ウインドは彼女の側に近づき、その震える身体を抱きしめる。そして頭を優しく撫でてあげ、
   出来る限りの慰めをしてあげた。
ライア「・・・ありがとうございます。」
ウインド「俺にはこれぐらいしかできない。これ以上を望むのであれば、それは俺の役目ではない。
     適任はこの世にあいつしかいないだろう。」
   ライアはただ黙って聞き入る。彼女の心境、本音はそれを望んでいたのかも知れない。
ウインド「自室に戻りな。後で適任を向かわせるから。」
ライア「・・・何から何まですみません。」
ウインド「フフッ、極度のお節介焼きだな。」
   その後ライアは徐に自室へと戻る。自室の前まではウインドが同行した。歩き方からもかなり
   不安定であり、何をしでかすか分からない様子である。
   ライアを部屋に送り届けた後、彼と2人の子供は今は誰もいないガレージへと向かった。

ユウト「眠ってしまいましたか。」
    ガレージに到着したウインドは、メンバーの全ACの最終チェックを行いだした。明日の
   決戦に支障がないように、最善を尽くしだしたのだ。
   そんな彼の心境を知るよしもなく、背中ではターリュとミュックが心地よい寝息をたてて寝て
   いる。
   そこにユウトが駆け付けてくる。既に深夜2時を回った頃であった。
ウインド「ああ。」
   遠隔操作で全ACを隅々までチェックしていく。その作業はメカニック以上のスキルが必要な
   ものであり、彼はそれを難なくこなす。長年のレイヴン歴が物語っていよう。
ユウト「お疲れでしたら代わりましょうか?」
ウインド「休んでいると逆に疲れるからな。動いている時が一番楽だ。」
ユウト「フフッ、ウインドさんらしい。」
   ユウトは彼の側にある、予備の椅子へ腰をかける。
   ウインドは徐に遠隔操作で暖房を起動させる。今夜は何時になく冷え込んでいた。それに彼が
   軽く震えているのを見てでもある。
   その後デスク上にあるコーヒーメーカーを使い、コップにコーヒーを注ぐ。それをユウトに
   手渡すウインドであった。
ユウト「ありがとうございます。」
   ユウトは徐にコーヒーを啜る。普段何気なく飲んでいるものが、今は一段と美味しく感じる。
ユウト「ウインドさんはこの戦いが終わったら旅立たれるのですか?」
ウインド「そうだな。だが困った事があれば何時でも言いな、すぐさま駆け付ける。」
ユウト「はい・・・。」
   なぜか胸が痛く感じるユウト。
   ウインドの存在感は男女問わず、心が安らぎ穏やかになる。これは彼独特の天性ともいえる
   ものであろう。
ウインド「心配するな。俺がいなくとも、お前達だけで十分やっていける。それにライアがしっかり
     しているからな。何かあれば彼女と共に乗り越えな。」
ユウト「・・・本当に何からなにまでありがとうございます。」
ウインド「フフッ、単なる極度のお節介焼きなだけだ。」
   彼を見つめ、涙を流すユウト。それに気付いたウインドは、彼の小さな肩を軽く叩き慰める。

ユウト「それと、話したい事とは?」
ウインド「俺の部屋にライアが来た。お前が悪役を演じていた時以上にかなり怯えている。ライアは
     今も膝を抱えて明日の事を思い震えているだろう。」
ユウト「それで、自分に何をしろと?」
ウインド「慰めてやりな。今までの礼と感謝を込めて。その役はこの世でお前しかできないから。」
ユウト「慰め・・・ですか。」
ウインド「あとはお前自身が考えな。俺は助言したまでだ。」
   その意味を知ったユウトは赤面しながらも、ライアの自室まで向かっていった。そんな彼を
   見つめ、ウインドは小さく微笑む。
    本当に愛し合っているのであれば、それなりの誠意な行動も必要だ。これは恋愛した者達
   なら誰もが通る道である。ユウトとライアの真の愛が問われる時でもあった。

    それを思いつつ、ウインドは年を取ったなと心中で呟く。
    外見は青年風だが、本人は200歳以上の爺さんである。つまりは彼はユウトやライアと
   同じ人物をどれだけ見つめてきたのかを指している。これは在り得ない行動だ。
    だがそのような行動も現実にて捻じ伏せるウインドである。
   不可能を出来る限り可能にする。それは彼の1つの行動理念でもあった。
   その後も永延と全ACのメンテナンスを続けるウインドであった。
                               第7話・2へ続く

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