〜第1部 18人の決断〜 〜第8話 決戦〜 トーベナス社外。地上は晴天に恵まれ、太陽光が眩しい。 だがそれを打ち消すかのごとく、上空を旋回し続ける大型MTグレイクラウド。その轟音は 見る者を威圧し、精神的に追い詰めようとする。 しかし23人にはそのような感情は微塵も感じられず、財閥の前に終結していた。 前方にはデア・ルボラを含む、破壊神が待ち構えている。その左右には6鬼神がそれぞれ待機 しており、グレイクラウドを含めると7鬼神になる。 デア「時間だ。」 ライディル「そうだな。」 どこか声が震えるデア。おそらくイレギュラーであるウインド達が加勢している事に恐怖感 を持っているのであろう。 破壊が全てな割には、死ぬ事を恐れている。所詮この戦いは、弱者の強者に対しての当てつけ にしか過ぎないのである。 ルボラ「皆殺しにしてやる・・・。」 ライア「貴女にできますかね。」 デア「・・・作戦を開始する。」 デアがそう話した直後、7鬼神は徐に動き出す。 ユウト・ライア・アマギを抜かした20体のAC群は、7鬼神を相手に猛攻を加えだした。 それはロストナンバーレイヴンズが最後に戦った、あの伝説の財閥決戦に匹敵する。 あの当時は人工知能マシンが総勢2000体以上を超えており、今の彼らにはとても想像も できないものである。 だがそれは人工知能レベルとマシン性能が低かったため、アマギ達が楽勝に勝利できたので ある。 今回の7鬼神は当時のそれとは比べ物にならないほど強力である。この決戦は今後の彼らの 腕試しでもあろう。 皮肉な言い方だが、ウインドはそう心中で呟いていた。 ルボラ「ガキが相手か。」 ユウト「相手を見下していると、痛い目を見ますよ。」 相手を見下すのがこの上なく好きなルボラ。 人としては壊れかけているが、レイヴンとしての強さはかなり高い。こういった極端すぎる 正確が戦闘力を発揮すると言ってもよい。 ルボラ「私を殺そうとするのは10年早いんだよ!」 ユウト「では10年後まで待ちますか。その間に自分はもっと強くなります。貴様なんか軽く捻り 倒せるぐらいにね。」 皮肉さを込めて、ユウトはそう話す。流石に後手に回り出しているのは疲れてきたようで、 そろそろ彼のボルテージは最高潮を向かえようとしていた。 案の定これを聞いたルボラは完全に逆上し、すぐ戦いを始めると決意する。 ルボラ「・・・この場で決着を着けてやる、明日の日を拝めると思うなよっ!」 ユウト「やってみろ、イレギュラーが!」 ユウトは激怒した口調で叫び返した。今までの怒りが爆発し、怒髪天を向かえた。普段温厚な 彼がここまで叫んだのは、おそらく初めてであろう。 ルボラのACヴァンダースウェイリアはブースターを咆哮、ユウトのACエアーファントム へ突撃していく。 エアーファントムはブースターダッシュを行い、右平行移動を開始する。その間に左肩装備 のマルチミサイルランチャーを発射し相手を迎撃した。 ヴァンダースウェイリアは右腕のマシンガンを連射しながら、放たれたマルチミサイルを 回避する。流石やり手のレイヴンだけあって、簡単にミサイルを避けた。 そして徐々にユウトを追い詰めていく。 ルボラ「おらどうしたっ、さっきまでの勢いはっ!」 ユウト「人間としてはできていませんが、レイヴンとしてはやり手ですね。」 皮肉を込めてユウトはそう話す。実際はまだ全力を出し切っておらず、相手の出方を待って いるだけである。 だがルボラは逆上せず、逆に自分を励ますものと捉えたていた。 都合のいい事だけ善智識に捉え、都合の悪い事は悪知識と捉える。どんなに強く破壊神を演じ ようが、ルボラも1人の人間である事には変わりはない。 ルボラ「このまま消させてもらう!」 アマギ「できますか?」 直後ヴァンダースウェイリアの機体が大きく揺れる。 ただ見守って待機しているだけであったアマギの愛機ロストナンバー・リバースが、左肩装備 のレーザーキャノンを放ってきた。ユウトを護衛する援護射撃だ。 またそれはユウトがルボラと違い、1人ではない事を表す行動でもある。 アマギ「彼は殺させはしませんよ。」 ルボラ「き・・・貴様っ!」 再び逆上し、ルボラは怒りの矛先をアマギへと向ける。だがそれは彼の戦略であった。 ユウトはこのチャンスを逃さず、オーバードブーストを発動。エアーファントムは凄まじい 勢いでヴァンダースウェイリアに接近する。その最中に右腕装備のレーザーライフルを構えて である。 オーバードブーストの火力を纏いながら、エアーファントムはこちらに背後を見せるルボラ のACにレーザーライフルを突き刺した。それは槍を勢いよく突き刺したのと同じであった。 銃身はコクピットに座るルボラに直撃、彼女はハッチと銃身に挟まれ身動きが取れなくなる。 ルボラ「ぐうっ・・・。」 ユウト「破壊神に情けは無用ですね。消えなイレギュラー!」 ユウトはトリガーを引き、レーザーライフルを放つ。放たれたレーザー弾はルボラを直撃し、 コクピットハッチ共々吹き飛ばした。悪女の呆気ない最後である。 ヴァンダースウェイリアはコア部分に大きな穴を開け、物言わぬ巨人へと姿を変えた。 その後ユウトは左腕装備のレーザーブレードを一閃し、容赦なく物言わぬ巨人を破壊する。 破壊の悪女は彼女より強い者によって葬られた。 ライア「この日を夢見ていた・・・。貴様のようなクズをこの手で消すその日を。」 デア「フンッ、貴様に何ができる。俺様を殺す事など不可能だ。」 念願の対決、因縁の対決とも言うべきか。ライア駆るダークネスハウンドは一定距離を保持 したまま、デアのACヴュイクーレヌと対峙している。 既に怒髪天を通り越したライアは、普段より物静かな発言をしている。しかし心中では核融合 を起こしているかの如く、ボルテージはユウトを超えていた。 ユウト「貴様はルボラより強いのか?」 ライアとデアの元にユウトが駆け付けてくる。どうやらヴァンダースウェイリアの爆発音 すら聞こえないぐらい、目の前のライアに釘付けだったようである。 当然ながら彼を目の当たりにしたデアは、ルボラが死んだ事を悟った。 デア「ユウト・・・貴様・・・。」 ユウト「貴様はルボラより弱いだろう。あいつはどうしようもない悪女だったが、レイヴンとしての 腕はかなり強かった。」 ライア「シェガーヴァさんが手を下されなかったとして、ゴリアッグも貴様より強かったと思う。」 2人の意見は率直なものである。 デアとルボラの戦闘力。ルボラは逆上さえしなければ、おそらく彼女の方が強いであろう。 そしてシェガーヴァに瞬殺されたゴリアッグも、卑怯な事などせず正々堂々と戦っていれば ルボラより強いかも知れなかった。 もっともそれを伺い知る事など、もう不可能であるが。 デアはただ纏め役なだけの存在であり、レイヴンとしての腕も低級クラスであった。 デア「いい加減にしろっ!!!」 挑発じみた発言に逆上したデアはヴュイクーレヌを突撃させる。全武装をそれぞれ構え、 突撃を開始した。 だが案の定これを待っていたユウトとライアであった。 2機のACは同時にオーバードブーストを発動。それぞれのACは凄まじい火力を纏い、 こちらに突撃して来るヴュイクーレヌに突撃した。その最中左腕武器のレーザーブレードを 繰り出す。 デアは迫り来る両者のどちらを攻めていいのか分からなくなり、何とその場に立ち止まる。 これはある意味絶対の敗北だ、目の前まで迫るACを待機して考える事は有り得ない。 エアーファントムとダークネスハウンドは、それぞれのレーザーブレードをヴュイクーレヌ 目掛けて一閃させた。 それはコアユニットを十字に切り裂き、2人が後方へと移動した瞬間大爆発して飛散した。 ルボラ同様デアも目の前の恐怖感に駆られ、どうしたらいいのか分からなくなった事から 敗北したのだ。 破壊神の再来と位置付けていたデア・ゴリアッグ・ルボラは、自分達より心強き者達によって 葬られたのだった。 ガードック「うぉりゃぁ〜!!!」 ガードックが駆るガーディアンフォートレスは、両肩コンテナミサイルポッドを全弾発射。 発射された4発のコンテナは動きの遅いデヴァステイターの脚部近くまで進む。 その後分裂し中から大量のミサイルが飛び出す。合計48発のミサイルが巨体の足下から コア部分を狙い撃ちする。凄まじい閃光と爆発音が鳴り響き、辺りに爆炎が巻き起こった。 機体全体が殆ど武装であるデヴァステイターは、今の攻撃でその殆どが大破。完全に無力化に 近かった。 ライディル「ガードック君下がって!」 ガーディアンフォートレスが後方に下がると、ライディルの愛機マスターヴァルディルグが 前へと進みでる。そして全武装を一斉に発射した。 グレネード弾2発と超大型ミサイルがたじろぐデヴァステイターに直撃する。 アマギ達ロストナンバーレイヴンズが対決したオリジナルのデヴァステイターなら、この 攻撃で確実に仕留められていたであろう。 だがユウト達が対戦している相手はオリジナルより全く違う。ライディルの渾身の一撃とも 言える攻撃でも、デヴァステイターは外装の装甲板を吹き飛ばしただけであった。 ライディル「クソッ、硬いな・・・。」 ライアン「諦めてはいけません!」 今度はライアン駆るロックガルガイレムが2人の間に進みでる。 特殊腕のマシンガンを連射しながら、左肩装備の軽量型グレネードランチャーを発射した。 それらはライディルが攻撃した場所を正確に狙う。 一度攻撃された場所はどう考えても弱くなる。同じ場所のみを狙えば効果があるというもの。 ディーレアヌ「くらえ〜っ!!!」 ミサイルロックを完了したディーレアヌの愛機ヴィーナススターライン。ライアンの後方 から素速く進み出てきた。 両肩連装ガトリングキャノンを放ちながら、ロックオンを終えた特殊腕ミサイルランチャーを 全て放つ。 それらもライディルとライアンが攻撃した個所を狙い撃ちし、3人の攻撃で完全に装甲版が 吹き飛んだ。 ライディル「止めだ。」 マスターヴァルディルグは装甲版が吹き飛んだ個所へ間隔空けずにグレネード弾を放った。 放たれたグレネード弾は完全に穴が開いている胸部部分へ着弾。直後大爆発を巻き起こす。 その爆発で電気系統がショートし、大轟音とともにデヴァステイターは粉々に飛散した。 ディーレアヌ「やったぁ〜!!!」 ガードック「ふぅ〜・・・。先輩方はこんなのを楽勝に勝っていたんだ、さすがですよ。」 ライディル「弾薬がなくなった機体は補給に向かってくれ。継続できる者はそのまま次の目標に向か おう。」 3人「了解!」 主力武器の残弾が底をついたガードックは補給に戻り、それ以外の3人は戦闘を継続した。 7鬼神は残り6体になる。 マイア「クッ、こいつ速いっ!」 マイアの機体ブロークンブレイダーにマシンガンの雨が降り注ぐ。初めて目の当たりにする ナインボール=セラフの機動力と火力に圧倒された。 これもロストナンバーレイヴンズが対決した時より格段に性能が上がっており、今の彼らには 厳しい相手でもある。 だが彼女のサポートに回っているデュウバはその動きを正確に追えていた。 デュウバ「マイア様、目で追ってはいけません。レーダーに映る点を知ったうえで、相手の着地する 瞬間を狙うのです。」 サポートしながらも凄まじい行動を繰り出すアドゥークファオレイン。 空中から左肩武器のレーザーキャノンを発射する。強化人間でしか行えない特殊な行動だ。 放たれたレーザー弾は直撃はしないものの、相手をブロークンブレイダーの視界に誘う役目は していた。 それを逃さず、マイアは右腕武器のレーザーライフルを射撃する。当然止まってではなく、 回避行動を踏まえながらである。 放たれたレーザー弾は着地に入ろうとしているセラフの左脚部に直撃する。一瞬バランスを 崩すが、そのままの状態で着地するセラフ。 案の定、重力と機体重量に耐え切れなくなっていた左脚部がグニャと折れ曲がった。完全に バランスを崩した機体はうつ伏せの格好に倒れ込んだ。 デュウバ「今です!」 デュウバの叫びに合わせ、クレス・ノルム・インシェアが突撃する。 遠方からインシェアが駆るエリンヴァーエリミネイトが右腕主力武器のバスーカ砲を放ち、 セラフのブースター推進装置攻撃。 耐久力自体は弱かったため、バズーカ弾はブースター推進装置に着弾し爆発を起こす。 次はクレスが駆るフェイス・オブ・シャドウが右腕主力武器のプラズマライフルを射撃。 放たれた数発のプラズマ弾はセラフのヘッド・両アームを撃ち抜く。これで視界と主力兵器を 完全に破壊された。 最後にノルムが駆るブレードカッターがセラフの上へと思いっきり着地する。上からの勢い で機体が地面へとめり込む。 間隔空けずに左腕武器のショートレンジレーザーブレードを繰り出し、ジェネレーターがある 部分へブレードを突き刺した。ジェネレーターを貫かれたセラフは、機体各所から火を噴出し 始める。 ブレードカッターが離脱後、大爆発を巻き起こし飛散した。 クレス「ふぅ〜っ。」 インシェア「半端じゃないですよこれ・・・。」 マイア「でもやらなきゃやられるだけです。さあ次に行きましょう。」 飛散したナインボール=セラフの破片を一瞥し、5人は他の仲間達の元へ向かった。 7鬼神、残り5体。 ナイラ「はぁっ!」 ナイラ駆るトゥルース・ロードがオーバードブーストを発動、ナインボールへと突撃する。 同時に後方からは弾丸とパルス弾が並進する。 左側からはアキナ駆るレンジャー・アイの実弾スナイパーライフル、右側からはアレナ駆る フェザーアローのパルスライフルがそれぞれ援護射撃として放っていた。 ナインボールはその場にジャンプし、それぞれの弾丸を突撃を回避した。そして左肩武器の グレネードランチャーを展開する。 だがそれを察知していたかのように、再びアキナが右腕武器のスナイパーライフルを射撃。 ピンポイントに放たれた弾丸は、発射寸前のグレネード弾へ着弾。直後グレネードランチャー は大爆発を巻き起こし飛散する。 これはアキナの集中力と技術が合わさったから繰り出せた。 アレナ「空中に誘い出します。そこを斬撃で叩いてください!」 アキナとアレナがそれぞれの主力武装でナインボールを空中へと誘い出す。巧みに武器を 使用し、ナイラがいる場所へと誘っていく。 ナイラは丁度いい場所まで来るのを待ちつつ、回避行動を行った。 暫くしてナインボールが着地を試みようとする。それはトゥルース・ロードの前方である。 ナイラはオーバードブーストを発動させ、相手目掛けて突撃した。 その後ナインボールが目の前へと着地、そこに間隔空けずにトゥルース・ロードが突撃して くる。 人間であればその行動を目の当たりにすれば、何らかの行動を行う所であろう。だが相手は 人工知能、突然の出来事に対処し切れなかった。 ナイラはナインボールと擦れ違い様にレーザーブレードを一閃。繰り出された斬撃はコアと レッグのジョイント部分を真っ二つに切断する。 シェガーヴァが発端となりウインドに受け継がれた、突撃型のカウンター斬りである。 トゥルース・ロードが相手の背後に着地した瞬間、ナインボールは大爆発を巻き起こし飛散 した。 今回のナインボールはオリジナルより強く、単独制圧用プログラムを強化してあった。 だが過去のものよりカスタマイズされたその機体は、逆に弱体化しているといってよい。 更には複数のレイヴンに対処し切れなかったのも頷けよう。 かつては管理者としての立場であった赤い悪魔は、やはり過去の遺物として葬られたのだ。 その後ナイラ・アキナ・アレナは他の仲間達の元へ向かう。 7鬼神、残り4体。 レーザー弾が立て続けに射撃される。ヴィクセンから放たれた3連装レーザーライフルだ。 その直撃を受けたマイアは、機体の右肩を被弾する。 だがマイアも負けじと同じく右腕武器レーザーライフルを射撃。だが放たれたレーザー弾は ヴィクセンの大型シールドによって弾かれた。 マイア「クソッ。」 マイアは舌を鳴らす。相手の機動力も耐久力も現存するACでは到底敵わない。 過去の遺産であるだけに、それ相応の火力は保持してはいる。軽装装備のヴィクセンではある が、甘く見ていると手痛いしっぺ返しを受ける事になろう。 だが予備動作が大きいシールドを使用した攻守の行動。その隙を突いてレーザー弾が着弾。 直撃したエネルギー弾は肩の装甲を一瞬にして吹き飛ばす。 ダークネスレディが支援にとブロークンブレイダーの後方上空からの狙撃だ。 レイス「あのシールドは厄介ですが、そこが弱点です。私が相手を引き付けますので、マイアさんは 敵の装甲以外の部分を狙って下さい。」 マイア「了解。」 ダークネスレディがマイアの前から進み出る。今度は狙いをレイスに定めたヴィクセン。 その機敏な動きと、高火力のグレネード弾と3連レーザー弾が的確に放たれる。当然レイスも 無事では済まされず、着弾はせずとも爆風や掠りが機体を傷付けた。 だが囮としての役割は十分になっており、隙を見てのレーザー弾がヴィクセンの装甲以外の 部分に着弾する。 ナインボール同様、機動力を重視したため装甲は弱い。ヴィクセンは何度も弱点ともいえる 非装甲部分を狙われ、ついに機体旋回時にレッグのジョイントがもげた。そのまま転倒する ヴィクセン。 それを見たマイアは、オーバードブーストを発動。ブロークンブレイダーは相手目掛けて 突撃する。 当然ヴィクセン側からも反撃が行われるが、機体が転倒しているため思うように命中が定まら ない。射撃したレーザー弾はどれもブロークンブレイダーには命中しなかった。 マイアは愛機をヴィクセンまで接近させると、相手の頭上にACを着地させる。オーバード ブーストと機体重量を乗せた押し潰しで、相手を地面へとめり込ませる。 そのまま間隔を空けずにレーザーブレードを繰り出し、コクピットに向けてブレードを突き 刺した。 その後相手から離れると、コクピットを貫かれたヴィクセンは爆発し飛散した。 機動力と火力は高いヴィクセン。しかし機体各パーツが軽量化されていたため、耐久力は 通常ACより低かった。 マイアとレイスが行った行動は、相手を翻弄し無理な動きをさせるためであった。 1体1ではヴィクセンに分がある。だがナインボール同様複数のACに攻められ、更に頭脳 プレイをされると人工知能は対処が出来ない。人間同士の連携と智慧が機械に勝ったのだ。 マイアとレイスは一旦弾薬を補給しに財閥へ戻り、その後仲間達の援護に向かって行く。 7鬼神、残り3体。 地上をホバー推進にて進むファンタズマ。機種のプラズマキャノンと背部搭載の垂直発射 ミサイルランチャーを展開し攻撃を開始する。 他の遺産機体より動きが遅いが、火力・装甲などの全てがとても高い。 ユウトとナイラは相手の周りを旋回しつつ、拡散ミサイルランチャーを発射。的確に攻撃 していく。 遅れて遠方からはトーマス・サーベン・ガルバードが2人の援護射撃を行う。 トーマスのACゴールデンバードからは、特殊腕発熱量重視デュアルミサイルが火を噴く。 どれも動きの遅いファンタズマに対しては有効な手である。 サーベンの機体クウェイナイトアルオーンは搭載武装の全マシンガンを一斉射撃する。 トーマス同様動きの遅いファンタズマに対してはその全てが必中を表していた。 ガルバードの愛機ウィールシェネイットは特殊腕のデュアルグレネードキャノンと自律型 攻撃兵器を共に放つ。これも動きの遅い相手には致命傷になりかねないものであった。 凄まじい攻撃がファンタズマを直撃し続ける。だが今だその重装甲には傷が付かなかった。 ガルバード「何だよこいつは・・・。」 トーマス「装甲が固すぎる・・・。」 ユウト「しかし動きは遅いので、全ての弾を撃ち尽くすまで動き攻撃しましょう。」 ナイラ「了解。」 ガルバードは機体の機動力を最大限に生かし、ファンタズマの無駄弾を誘った。それに誘わ れた相手は、攻撃目標をウィールシェネイットに向ける。 その背後や上空から攻撃を開始する一同。ファンタズマは死角からの攻撃に成す術がない。 その後ナイラはファンタズマに接近し、レーザーブレードで攻撃を開始する。後方から繰り 出される斬撃が垂直発射ミサイルランチャーを斬り落とし、攻撃はプラズマキャノンのみと なった筈だった。 だがファンタズマは奥の手ともいえる攻撃を持っており、斬撃に集中していたナイラはその 行動を見ていなかった。 機体中央部にレーザーが収束する光線が見えだした。交戦経験があるユウトがそれに気付い た時は既に遅く、ファンタズマの全方位拡散レーザーを放ったのだ。 近距離にいたナイラ・ユウトはそれらを直撃し、中距離にいたトーマス・サーベンがかなり の被弾をする。 直撃に近かったトゥルース・ロードとエアーファントムはその攻撃で機体が完全に大破。 力無くその場に倒れ込む2機のAC。 機体中破に近いゴールデンバードとクウェイナイトアルオーンは、殆ど歩行が困難となる。 そしてナイラとユウト同様、その場に立ち止まってしまう。 相手の攻撃を油断した一瞬のミスが敗北に繋がってしまった。 そこに第2撃目が放たれようとしている。4人は離脱しようと機体を動かそうとするが、 思うような行動ができない。 今まさに放たれようとしている拡散レーザー弾を目の前にして、死を直感した。 シェガーヴァ「油断するなと言っただろうに。」 突然シェガーヴァの声が内部通信を通して聞こえてくる。 死を目の当たりにした一同は、彼の声が走馬燈の一片の如く錯覚かと感じる。だはそれは紛れ もない現実であった。 直後高圧縮の収束レーザー弾がファンタズマの機体中央部及び拡散レーザー砲を貫いた。 彼等の後方からゴースト・キャットが放った、シェガーヴァが得意としている攻撃である。 エネルギーを大量にチャージしていた拡散レーザー砲を貫かれたファンタズマ。大容量に 溜め込まれたエネルギーに収束レーザー弾が加わり、暴走を引き起こし始めた。 その前後にキュービヌ・ジェイン・ガルバードが大破と中破の4人の機体を遠方に下げる。 夥しいスパークを起こし始めたファンタズマは、直後眩い閃光と共に大爆発を巻き起こした。 当然機体中心に装備されていた拡散レーザー砲が大爆発したのだから、機体もろとも木っ端 微塵に吹き飛んだのである。 ファンタズマ最大級の攻撃力を誇った拡散レーザー砲。その爆発と共に機体名通りの亡霊は 消え去った。 キュービヌ「あらあら、機体修理し甲斐がありそうね。」 キュービヌが4人の機体を見つめそう話す。4人はコクピット内で渋々苦笑いを浮かべる。 しかし今の心境は相手の行動を見抜けなかった自分を恥じていた。 その後機体を財閥ガレージへと戻さずに、近くのクレーター状の場所に待機させる。 7鬼神も残り2体。シェガーヴァが4人の分まで戦うと言ったからだ。 また今の機体大破ないし中破により、4人はコクピット内部に身体を強打。擦り傷を負った 者や打撲を負った者もいた。それを直感で見抜いた彼が待機していろと言ったのである。 色々な意味で自分達を見定めている彼を目の当たりにし、やはり己の未熟さに心中から苛立ち を抱かずにはいられなかった。 ウインド「弾薬がなくなった。一旦補給に戻る。」 アマギ「了解。」 M−9が機敏な動きで上空を旋回する。ACとはかけ離れたMT型の機体。しかしMTとは 思い付かないほどトリッキーな動きに猛攻を加えてくる。 その最中ウインドは弾薬補給のため財閥へと戻っていく。 M−9と対戦している者は、アマギ・ライア・マイア・クレス・インシェアの5名である。 その後各個撃破を始めた5人は、散開し相手を撹乱させる。 ファンタズマや最強MTグレイクラウドよりは火力・耐久力はないにしろ、機動力の面では この2機よりもずば抜けて優れている。 突然方向転換をする機敏な動きに、アマギ以外のレイヴンは逆に翻弄され続けていた。 デュウバ「皆さん、相手の動きを止める事を心がけて下さい。」 直後4連装中型ミサイルがM−9の上空を掠める。それにより機体が下へとさがった。 5人の死角とも言え、更に相手より上空に待機しているアドゥークファオレイン。これには 人間はおろか機械にすら対処は不可能である。強化人間というイレギュラー的な強さを持って して可能な行動であった。 今の場所から下にさがったM−9は、待っていたかのようにミサイルやレーザー弾などの 攻撃を受ける。 こちらもヴィクセン同様機動力を重視していたため、装甲は軽量化となっていた。そこに立て 続けに攻撃を受けたM−9は、肩部分の大型ブースターを破壊されそのまま墜落した。 地面へと激突したM−9、そこに間隔空けずにブレードカッターが接近。 セラフの時と同じく、その巨体に乗り上げレーザーブレードを機体動力部に突き刺した。 ノルムがM−9から離脱後、スパークをあげながら爆発し飛散する。 所詮は人工知能が動かす手駒に過ぎず、人間が搭乗したM−9と戦ったユウトにとっては 弱い相手だと言えるだろう。 まあ当の本人は既に機体が大破しており、行動せず見つめるだけであったが。 7鬼神、残り1体。 7鬼神のうち6体を撃破した一同。 一行は小休止を取り、残る1体の鬼神に向けて息を整える。 しかし次の瞬間、トーベナス社が轟音と共に大爆発し飛散する。本社上空から連続に放た れたグレネード弾と垂直発射ミサイルが、本社を破壊したのだ。 これは先程補給を行いに向かったウインド、そしてトーマスの妻と子供の4人が巻き添えを 食らったという事になる。 トーマス「メ・・・メルア!!!」 炎上するトーベナス社。トーマスの悲痛の叫びもその轟音で掻き消される。燃え上がる本社 上空を旋回するグレイクラウドによるものだ。 他のレイヴンも迎撃を行うが、その巨体から繰り出される攻撃が他のACを簡単に薙ぎ倒し ていく。 ユウト「・・・ターリュさん・ミュックさんが・・・。」 ユウトは炎上する本社を見つめ、頭の中が真っ白になっていた。 残った者達は再びこちらへ向かって来るグレイクラウドを迎撃しだす。 デアやルボラ以上に厄介なグレイクラウド。だがそんな機敏溢れる行動が、はたして人工 知能にできるのであろうか。 ユウトはある事が脳裏に過ぎった。それはグレイクラウドに人間が乗っているという事だ。 それを見透かしたように、グレイクラウドに新たに装備された外部スピーカーから憎たら しく忘れられない人物の声が聞こえてきた。一同に聞こえるぐらいの大音量でである。 デア「そうだよ、我々が操作している。」 ルボラ「こいつはいいねぇ〜。」 ゴリアッグ「シェガーヴァ同様、我々も人格を1つのコンピューターに移植し人工知能化する事に 成功した。現に今こうして最強のMTを操っているのだからな。」 ルボラ「死になっ!」 ユウトが恐れていた事が現実になった。それはグレイクラウドに人が乗って動かす事である。 人工知能より人間が動かした方が断然強くなる。 伝説のレイヴン以外は絶望感に襲われた。どう考えても倒す事は不可能だと。 ウインド「お前がな。」 突如ウインドの声が辺り一面に響く。それはグレイクラウドに搭乗する3人にも聞こえた。 直後炎上し続けるトーベナス社から1体のACが飛び出していった。 オーバードブーストの火力を纏い、ブースターの火力で浮き上がりを開始する。そのまま正面 から突っ込んで来る相手目掛けて突撃を開始した。 ウインドのAC、ウインドブレイドである。 当然そこまで至るまでにはジェネレーターの総容量が持たず、エネルギーのチャージングに 移行する。 しかしウインドブレイドの両肩装備箇所には、見るからに特殊な大型の球体状のパーツが搭載 されていた。 これはシェガーヴァが決戦前夜に開発した新型パーツ、ジェネレーター内蔵バックウェポンで あった。 その球体状の中にはACに通常に使用されてるジェネレーター「HOY−B1000」が 別側として3基装備されており、実質上7基のジェネレーターが起動しているのだ。 これにより通常の6倍ものエネルギー使用継続時間という不可能な行動が可能となった。 当然ジェネレーター7個分と外装パーツの重量を考慮し、ウインドブレイドの脚部は2脚 最高積載量を誇るパーツに換装してあった。 ウインドブレイドはグレイクラウド目掛けて突撃。その最中左腕武器のレーザーブレードを 繰り出す。 この火力も通常のものとは違い、旧式ACに搭載されていた5倍出力モードから10倍出力 モードへ威力を上げたパーツであった。 蒼い刀剣が更に凝縮され、レイピア風の剣と化す。それを相手と擦れ違い様に一閃させた。 相手の向かって右側を縫うように入り、細長い機体に10倍出力のレーザーブレードを斬り 付けたのだ。 ウインドがグレイクラウドの後方へと出た瞬間、相手は機体を上下に分断されそのまま炎上 するトーベナス社の後方へと墜落。大質量であるグレイクラウドは地面へ激突したぐらいでは 止まらず、そのまま後方の崖に激突しやっと制止する。 直後大爆発を巻き起こし、巨体は粉々に飛散した。 一瞬とも思える攻撃に一同は唖然とする。これこそがウインドの真の実力なのかと、改めて 彼に恐怖感を抱いた。 ナイラ「・・・あれがウインドさんの真の実力・・・。」 ディーレアヌ「とにかくやったじゃん、これで敵はいなくなったし!」 ユウト「しかし・・・メルアさんターリュさんミュックさんが・・・。」 そう、デア達の攻撃により3人は殺されてしまったのだ。それに気付いた18人は改めて 愕然とする。 だがグレイクラウドを撃破したウインドブレイドがこちらに近付いて来て、信じられない光景 を一同に見せたのだ。 コクピットハッチを開き、その第1装甲版の上にはメルアが2人の子供を抱きかかえていたの である。 トーマス「メ・・メルアっ!」 ウインド「言わなかったか。後方支援の事は俺に任せなって。これには非戦闘員の救出も含まれて いるんだよ。」 アマギ「で・・・ではあの時弾薬補給に行くと言ったのは、この事だったのですか?」 ウインド「新型パーツと脚部換装作業もあったがな。」 ユウト「よかったぁ〜・・・。」 ユウトな泣きながらウインドを見つめる。彼なりに責任を感じていたようだ。しかしそれらが 消え去った事によって、彼は泣き出したのであろう。 しかし一同はこう思う。既に予測する行動をするウインドであると。 まるでデア達により本社が破壊されるのを予測しており、なおかつ自分達も動けなくなる事を 知り得た上での補給ではと。 何にせよ戦いが決着した今、疲労した彼らにこれ以上の詮索は無用であった。 ウインドの一方的な大逆転で、デア達再来する破壊神軍団を撃滅した。しかしこれは始まり でしかなかったのである。 そう・・・これから起きる戦いの序幕でもあった。 エピローグへ続く |
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