〜第1部 18人の執念〜 〜第1話 戦場へ2〜 元レイヴン「雑魚共が。レイヴン、私が相手だ。」 残り3体のディギーになった直後、元レイヴンらしき人物から通信が入る。廃棄工場の後方 ゲートが開き、中からギボンが出現する。左腕にAC用のレーザーブレードを装備した、近接 戦闘型のMTだ。ギボンに元レイヴンが乗っている事から、今のミッドには辛い相手だなと リュウルは思った。 ミッド「よく言う、雑魚MTが!」 またもや先走りながら、ミッドはダブルブレイダーを突き進ませる。だが以外にも機敏に動く ギボンに、ミッドは翻弄され続ける。 元レイヴン「フンッ、口だけ達者な奴だな。」 ギボンはその場からジャンプし、左腕武器のレーザーブレードを繰り出す。ダブルブレイダー に一閃させる。繰り出されたブレードはダブルブレイダーのコアの第1装甲を引き裂く。 そのまま間隔空けずにパンチを繰り出すギボン。装甲が薄くなった部分にパンチを受けた ダブルブレイダーはそのまま後方へと吹き飛ばされた。 ミッド「クソッ!」 ミッドは機体を立て直そうとするが、ギボンは追撃の手を休めない。右腕武器のエネルギー ショットガンを放ちダブルブレイダーを攻撃する。リュウルはミッドに加勢しようとするが、 ミサイルを放ちライジングストームを迎撃した。 元レイヴン「死ねっ!」 再びブレードを繰り出し、ダブルブレイダーへ攻撃しようとする。だがそこになぎ入るように 漆黒のACが現れ、ギボンの左腕を同じレーザーブレードにて切り落とした。 元レイヴン「何だ貴様はっ!」 レイヴン「貴様を殺す死神だ。」 その声を聞き、リュウルは驚きの表情を浮かべる。だがその詮索をする前に漆黒のACは右腕 武器の射突型ブレードを繰り出し、ギボンのコクピット部分を貫いた。更に左腕のレーザー ブレードでジェネレーターを突くと、そのまま機体を真っ二つに切り裂いた。直後ギボンは 元レイヴン共々粉々に吹き飛ぶ。突如参戦した漆黒のACによって、2人は助けられた。 ミッド「あんたは誰だ?」 愛機を起こしながら、ミッドは漆黒のACに内部通信を入れる。だが本人からではなく、 リュウルが相手の紹介をしだした。 リュウル「・・・漆黒の魔女、レイト=ウィンッツだ。」 ミッド「あの死神とうたわれた女性レイヴンか!」 レイト「・・・久し振りね、リュウル。」 殺気の込められた発言をするレイト。それを聞いたリュウルは心が重たくなる。やはり今も 彼女の家族を殺した事を根に持っていると感じ取ったからだ。 ミッド「と・・とにかく、ここでは話もなんだ。一旦引き上げようぜ。」 レイト「・・・了解。」 ミッドには殺気の込められた発言をせず、普通に応対する。それを聞いたリュウルは再び心が 重くなる。 その後3人は任務を終え、ガレージへと帰還していった。その最中レイトは相変わらず殺気を リュウルに向けていた。 依頼を終え、ガレージまで帰還した3人。リュウルはミッドとレイトのACメンテナンスを メカニックに依頼すると、2人を連れてブリーフィングルームへと向かう。もっともガレージ にはブリーフィングルームといえる場所はなく、リュウルが普段使用している飲食店である。 ミッド「えっと・・・俺はミッド=レイレリア。よろしく。」 レイト「レイト=ウィンッツです。よろしくミッド。」 殺気は相変わらず放ち続けられ、リュウルはただ黙ってその場にいた。これ以上の重苦しい 場はない。リュウルは自分が犯した罪を、新たに考えさせられた。 ミッド「・・・兄貴、俺少し外すわ。レイトさんと話す事があるんじゃないか?」 ルーキーレイヴンのミッドもその場の雰囲気を飲み込む。彼はガレージへ行くとリュウルに 告げ、2人の元から去っていった。リュウルとレイト、2人になったその場は重苦しい雰囲気 になる。 リュウル「・・・俺を殺しに来たのか。」 単刀直入に切り出すリュウル。だがレイトは黙ったまま彼を見つめ返す。 レイト「・・・・・。」 リュウル「だが正直嬉しいぜ。お前がしっかり生きていてくれてな。俺を殺そうとする事でもいい。 生きる希望を持てば人間は生きられるからよ。」 リュウルは心が重苦しくも、レイトが生きていてくれた事に嬉しさを感じる。彼女と別れた のは4年前、幼き少女は今まであった事がない程の美しい女性へと変わった。リュウルはそう 思い、ジャケットから煙草を取り出し吸いだした。 レイト「・・・元気で何よりよ、兄さん。」 突如殺気を込めるのを止め、普通の会話をしだすレイト。今まで頑なな表情が明るい笑顔に 変わる。 リュウル「聞いたぜ、漆黒の魔女と呼ばれている事を。そしてアリーナ第10位の女傑になったとも 知っている。最短で上り詰めた女剣士。」 レイト「ありがと。」 先程注文したコーヒーをウェイトレスが持ってくる。レイトはコーヒーカップを手に取り、 徐にコーヒーを啜る。 リュウル「・・・さっきはありがとな。お前が来てくれなかったらミッド共々殺されていた。」 レイト「ライジングサンダーともあろう者が、あんな小物にやられる訳がない。もっと自信を持ちな さい。」 リュウル「フフッ、一端にものを言うようになったな。」 レイトの励ましともいえる発言を聞き、リュウルは苦笑いを浮かべる。だが会話が続かない リュウル。当然であろう、心中では彼女の家族を殺してしまった事に嘆いているのだから。 レイト「さて、そろそろ戻るわ。また会いましょう兄さん。」 コーヒーを飲み干すと、レイトはそのまま飲食店を後にした。ぶっきらぼうな行動に、彼は 再び苦笑いを浮かべる。しかしリュウルの心中では再びレイトが目の前へ現れる事を予感して いた。両親の仇を取るべく自分に剣を向ける時を。リュウルは煙草を吹かしながら、心中で そう呟くのであった。 ミッド「どうだった兄貴?」 リュウル「行っちまったよ。」 ガレージ控え室では、ミッドがリュウルを待っていた。直接ガレージにいた訳ではなく、その ためレイトとは入れ違いになった。リュウルはミッドの隣に座り、再び煙草を吹かしだす。 ミッド「なぁ〜兄貴、レイトさんと何があったんだい?」 リュウル「・・・因縁だよ。俺は彼女の両親を殺した。それを今も引きずっている。」 ミッド「・・・そうか。」 ミッドは辛そうな表情で俯く。復讐という観念は全く知らないが、大切な人が死んだ思いは 痛いほど知っていた。 ミッド「俺っちの家族もテロリストに殺された。俺っちがまだ2・3歳の時だ。レイトさんの思いも 分からなくはないよ。」 リュウル「レイトは優し過ぎるんだ。お前みたいに能天気な性格であれば、深く考える事もないもの なんだがな。」 ミッド「ヘヘッ、言えてらぁ。」 ミッド自信も己の能天気さを認めている。リュウルはそんなミッドの性格を羨ましく思った。 自分もそうであったらいいと痛感したからだ。だが現実は自分はレイト以上に生真面目すぎで あり、過去にあった事を深く考え込んでしまうタイプである。 リュウル「ミッドはこれからどうするんだ?」 ミッド「もっと腕を上げるため、暫くアリーナに出場しようと思ってる。あんたやレイトさん以上に なりたいもんだ。」 リュウル「フフッ、お前ならなれるさ。頑張れよ。それと報酬の件だが、全てお前にやるよ。 ミッド「い・いいのかい?」 リュウル「お前に会えた事がいい報酬だ。また縁があったらよろしくな。」 リュウルはミッドとガッチリ握手を交わす。その後ミッドは愛機が修理が完了するまでその場 で待ち続ける。リュウルは自分の部屋へと向かって行った。 第2話へ続く |
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