〜第5話 ロストナンバーレイヴンズ〜 それから数日が過ぎ、俺は5人やメカニック長達を守りながら過ごした。もっとも5人は 一応レイヴンであるため、お互いを守り合っての生活をしている。メカニック長達も彼女達の 経緯を話したら、自分の事の様に気遣ってくれた。同じ消される側の人間、心の心境は同じ ものである。それゆえお互いすぐ打ち解けて、仲間意識が以前より一層強まった。 ユキヤ「ちゃんとACのチェックはしておけよ。」 ミュナ「分かってますって。」 ミュナがコクピットハッチから顔を覗かせて俺に反応してきた。ミュナとティムは自分らの 専用ガレージを売り払い、俺達のガレージへと移動して来た。それもその筈、勧めたのは俺 自身だ。個人で行動するよりも、団体で行動した方が少しは安全である。お互い守りあえる からな。 ティム「こっちはOKよ。」 ティムはAC直下のシステムコンソールで、愛機のシステムチェックを行っている。慣れた 手付きでコンピューターのキーボードを操作していた。 メカニック長「大体は終わった、後は個人で最終チェックをしてくれ。」 ユキヤ「分かった。」 俺は愛機を徹底チェック、エラーがないか再確認した。今回の出撃はかなり高度な仕事だ、 と言うより自分達の個人的な活動ではあるが。丁度1時間前である。アイザック・シティ周辺 にある吉倉財閥にレイヴンズ・ネストの軍勢と破壊神軍団が進攻する事を知ったのは。吉倉 財閥には俺の古い友人がいる。俺の弟的存在。その名は吉倉天城、現アリーナのトップに君臨 する若きランカーである。だが今はランカーではない、何故ならばネストを敵に回している からだ。彼らの行動は全世界で活動しているレイヴン達に失われたものを思い出させている。 それは友情・希望・勇気、そして使命感である。だが何の因からは知らないが、ネストに とってはイレギュラー的存在となっている。彼らの行動理念は、間違った事には徹底して抵抗 する事。世界をレールに引かれたの如く裏から再生しようとしているネストの機械的思考は、 それこそ彼等や人類にとって大いにイレギュラー的存在である。それらを徹底的に完全壊滅 するべく、アマギ達は交戦を繰り返している。ネスト以外にも敵はおり、アマギのクローンが 率いる軍勢は世界を破壊するべく動く集団がそれ。この思考はネストの秩序ある再生とは完全 にかけ離れているもので、ネスト自身そちらも完全にイレギュラーとして排除の対象として いる。まさに三つ巴決戦である。もちろん俺はアマギを信じている。何故なら彼らの行動は、 世界が注目しているからだ。他人を敬い、弱者を守る。更に他人とのコミュニケーションを 大事にし、人との付き合いを多く行っている。この行動は今までのレイヴン達にはなかった 思考で、世界中の人々も彼らに期待の視線を送っている。それにネストの考えは秩序ある世界 の再生と謳っているが、それには肝心の人の心の温かさというものは微塵も感じ取る事が できない。またアマギのクローン軍勢の方は世界を破壊する事を目的としている、これは ネストの秩序的再生とは全く異なる。人類にとって正しく有害のなにものでもない。アマギ達 には人類の命を護る使命がある、俺は出来る限りそれを守り通したい。それが俺に出来る 精一杯の誠意である。 エリシェ「完了しました、いつでも出撃できます。」 テュルム「こっちも大丈夫よ。」 ルディス「それにしてもユキヤがあの最強レイヴン、吉倉天城さんの先輩だったとはね。」 メカニック長「俺も驚いたよ、あの吉倉天城の先輩とは。人は見かけによらないな。」 ミュナ・ティム「まったくですね。」 ユキヤ「あんまり嬉しくないな。」 メカニック長「まあそう言うなよ、これでも褒めているんだからな。」 メカニック長が笑顔でそう答える。今ではメカニック長の存在は俺達の父親と同じであった。 ルディス「でもさ、何でユキヤが表で活躍しないの?」 ユキヤ「表で活躍しているのはアマギ達だ。俺は裏で彼らが安全に活躍できるように行動する つもりだ。」 ルディス「つまりアマギさんが光で、ユキヤが闇という訳ね。」 ミュナ「なんか昔のファンタジーみたいね。」 メカニック員「親方、動きがあったようです!」 俺らが会話している最中、メカニック長の弟子がコンピューターで情報を入手したらしい。 俺達は弟子の側へ集まり、モニターを黙視した。 ティム「吉倉財閥でアマギさん達と敵勢力が交戦を開始か。」 ユキヤ「どうやらアマギ達はここで最後の戦いをするらしいな。」 エリシェ「どうするのですか?」 ユキヤ「もちろん加勢に行く、何だか胸騒ぎがするんでな。」 俺は地下水脈で使用した機体構成を変更、元のウインドブレイドに戻す。もっとも戻したのは 先程の整備中である。俺は胸の高鳴りを覚えつつ、愛機に乗り込みガレージを出発した。 5人も愛機に乗り込み、俺の後を続く。その後俺を含めた6体のACは吉倉財閥を目指す。 ミュナ「どんな人だろう、アマギさんって。」 ユキヤ「強い男だ。自分を見失っても必ず立ち上がり、正しき道を突き進む。」 ティム「何故レイヴンになったんだろう、ユキヤさんはご存知ですか?」 ユキヤ「彼の家族はある男に殺されてな、それが切っ掛けでレイヴンになった。」 エリシェ「辛い過去を背負っているのですね・・・。」 ユキヤ「だがその出来事がなければ今の奴はいないし、世界はネストの思うがままの世界に創り あげられていただろう。奴は思っているだろうよ、家族にありがとうとな。」 俺の発言に5人は驚いているようだ。もっともそのような発言は、今の世の中では無用の考え 方に近い。自分さえよければそれでいい、今の世の中はそのような考え方が当たり前である。 それゆえに俺の発言は、ある意味珍しいといった考え方をされるのだろうな。 エリシェ「・・・凄いなぁ〜、そこまで相手の事を思えるのは。」 テュルム「尊敬しますよ、ユキヤさんと出会えてよかったわ。」 ユキヤ「フフッ、ありがとよ。」 会話しながらも急ぐ事を忘れない、俺達は全速力で吉倉財閥へ向かった。それでも俺は彼等が 襲撃を受けたとしても、大丈夫だと直感していた。それは彼等の戦い方を聞く所によると、 かなりのやり手だという事が分かったからだ。問題は奇襲等には対処できるかだ。それだけが 俺の唯一の心配事であった。 同じ頃吉倉財閥では最後の決戦が早くも終わり、友人達は宇宙に向かったアマギとアマギの 弟を待つだけであった。 トム「カエデとジャスティスが爆発ねぇ〜。」 スミス「アマギとアマギ君の仕業ですよ。」 レイス「スミスさん、その言い方はないと思います。」 マッシュ「まあまあレイス嬢、いいでなないですか。何はともあれ完全勝利したのですからね。」 俺達が駆け付けた時にはアマギの友人レイヴン達が、雑談をして2人の帰りを待っている姿が あった。俺達もアマギ達が帰還して来るのを岩山の影で待つ。 ・・・待つ事数十分後、友人レイヴン達が慌ただしく動き出す。どうやらアマギ達が帰って 来たらしい。直後、俺は何とも言い切れない不安に襲われた。 ザーディン「あっ、帰って来ましたよ!」 友人レイヴンの一人が帰還して来たアマギ達を見つけたらしい。一行がアマギ達の所に 近付こうとした時、俺のAC内に聞こえるとばかりの銃声が2連続で起きた。俺はアマギの 方をモニターを通して見る。アマギは何者かに右腕と右肩を撃たれ、地面に転倒していた。 直後、彼らの前にACが現れる。どうやら敵の生き残りがいたらしい。生き残りはコクピット ハッチから身を乗り出し、アマギに拳銃の銃口を向けている。 アマギ「ゼラエルか・・・残念だったな、お前の野望は潰えたぜ・・・。」 ゼラエル「お前を殺す・・・お前ら全員殺す・・・。」 アマギ「仲間は殺すな、俺だけ殺せ・・・。」 ゼラエル「お前ら全員・・・死ねっ!!!」 俺はゼラエルがアマギへ向けて拳銃を発砲する前、5人にその場で待機するように告げる。 そしてメカニック長がカスタマイズしたブースターの火力を解放、もの凄い勢いで俺の愛機は アマギ達とゼラエルの間に踊り出た。その速さは今まで体感した事のないもので、2・3秒で 目標に辿り着いた。だが不思議とそのような急加速が加わったのに、体の方は何ともない。 さすがメカニック長、いい仕事しているな。ゼラエルが激怒した後、アマギに向けて拳銃を 発砲する。だがウインドブレイドは間一髪に間に合い、放たれた弾丸は愛機の脚部に命中。 跳弾となり地面へめり込む。無防備のアマギ達を何とか守り通した。 ゼラエル「貴様は・・あの時の・・・水色のAC・・・。」 アスカ「ウインドブレイド!」 エリシェと出会う前に、俺はゼラエルの行動が破壊神となりかけている事を彼らに告げた。 その時エンブレムでも見たのだろう、ハッキリと俺の愛機の名を叫んだ。その後ゼラエルと 対峙し、挑発を仕掛けた。それをご丁寧にゼラエルは覚えていたようである。 ユキヤ「娯楽を邪魔された腹癒せがこれか、子供の考える事だな。ここにいるアマギや彼の家族の 方が、貴様より大人っぽく見える。」 ゼラエル「・・・貴様は本当にカンの障る奴だな・・・。」 ゼラエルの声はもの凄く凄みがあり、アマギ達はその声に驚いているようである。だが俺から してみればそんなのは日常茶飯事であり、全く威圧にもならなかった。 ユキヤ「貴様の方がカンに障る、生きている事自体無意味なんだよ。」 俺の話にアマギ達は更に驚いているようだ、ゼラエルにもかなり効いているみたいである。 ゼラエル「アマギの前に・・・先に殺してやる・・・。」 ユキヤ「その言葉、そっくり返してやる。アマギ達は今回の戦いで自由になったんだ、俺こそが ロストナンバーと呼ばれるべき存在、アマギ達の代わりに俺がお前を消す。汚れ役は 俺一人で充分だ。」 柄にもない事を言ったなと思った。“これ以上手を汚れる必要はない”、俺も人が良すぎる。 他のレイヴンには考え付かない言葉だろうな・・・。 ゼラエルは愛機に乗り込むと、ブースターを使い機体をジャンプさせた。俺は相手がジャンプ するのを確認すると、ブースターダッシュを使い愛機を前方へ進ませる。ゼラエルは俺の ACが自分の死角に入ったのに気付き、後方へ愛機を進ませた。と同時に対空限界が近付き、 愛機を着地させようとする。俺はその間再び相手の背後側へ回りこむと見せかけて、機雷弾を 前方10時・12時・2時方向へ放つ。俺が再び背後に回る事に気付いたゼラエルは、愛機を 後方から前方へ移動させ着地に入ろうとしている。見事罠にかかったゼラエル側は直下にある 機雷弾の事に全く気付いていない、俺は即座にレーザーライフルを機雷弾目掛けて発射した。 放たれたレーザー弾は中央の機雷弾に命中し、左右にある機雷弾を巻き込み爆発する。そこに ゼラエルは堂々と着地して来た、当然機雷弾の爆風により機体の体勢を大きく崩す。 ゼラエル「ク・クソッ・・・。」 ユキヤ「消えな。」 俺はこのチャンスを狙っていた。相手が体勢を崩したと同時にレーザーブレードを発生、青く 輝くビームで構成された剣が機体の左腕から出現する。普通のレイヴンならこれ位の行動では 相手を倒せないと思う所だが、この発生したレーザーブレードは違かった。メカニック長が カスタマイズした強力仕様、最強ブレードの5倍の出力を誇る。そのままゼラエルの愛機まで 突撃し、相手目掛けてレーザーブレードを一閃。ゼラエルの愛機ダークエンペラーを左腹部分 から右肩部分を真っ二つに切断、直後大爆発と共に破壊神は粉々に砕け散った。 スミス「ス・スゲェ・・・。」 ザーディン「あのゼラエルを・・・アマギさんに匹敵する相手を一撃の下に破壊しましたよ!」 俺の行動が相当迫力があったらしい、アマギ以外の35人は熱心に今の出来事を興奮気味に 話している。まあ何はともあれアマギとアマギの家族達を救う事が出来た、良しとしよう。 俺は興奮冷めやらぬアマギ達の下へ愛機を向かわせる。こちらが近付くにつれてアマギ以外の レイヴン達は、恐々と俺のACを見つめた。相当俺の事を怖がっているようである。 ユキヤ「まったく無茶しやがって、要らぬ挑発はするなよ。駆け付けるのが遅かったら、お前達は 殺されていた所だったぞ。」 アマギ「すまない、俺はともかく仲間も一緒に助けてくれて。」 家族に撃たれた身体を支えられ、アマギは俺にそう礼を述べる。俺の声を外部スピーカーから 聞いて、家族達は安堵の笑みを浮かべた。彼らの中で俺という人物像を、怖い人物から少しは 人の心を理解する人物と取ってくれた事が分かる。 ユキヤ「仲間ではなく家族だろう、数々の死闘を共に乗り越えて来た者達。」 アマギ「・・・ありがとう。」 俺がアマギ達と会話している所に、エリシェ達が駆け付けて来た。アマギ達は新たに現れた 敵の増援ではないかと不安そうに見つめている。 エリシェ「この方がアマギさんですか。」 ミュナ「けっこうカッコいい人ですね。」 アマギ達に聞こえるよう外部スピーカーで話すエリシェ達。その声を聞いて再びアマギ達は 安堵の笑みを浮かべた。彼らは相当疲れ果てているらしいな。その間にアマギの家族達は アマギ本人の右腕・右肩の傷を応急手当している。 アマギ「なんだ、あんたにも友人がいるんじゃないか。」 ユキヤ「5人は皆訳ありで集った者達だ、レイヴンズ・ネストのな。」 アマギ「ネスト・・・まだ奴ら諦めていないのか。」 ユキヤ「当たり前だろ、“力を持ち過ぎる者は全てを壊す”が奴らの絶対の正義だ。これに反する 俺達は確実に狙われるだろう。だからこれから一戦交えるつもりだ。」 俺の話を聞き、アマギ達の眼つきが変わる。先程とは違い、生きいきとしている。その決意を 代表してアマギが話しだした。 アマギ「今度は俺達が力を貸す番だな、ネスト相手なら俺達も黙って見過ごす訳にはいかない。」 ユキヤ「ネストはアマギ達に任せる。俺はその根元を叩くからな。」 アマギ「一人で大丈夫なのか?」 ユキヤ「こいつらがいる。お前に家族がいるように、俺にはこいつらが家族だ。」 アマギ「分かった、俺達はネスト本部や全世界の端末を破壊する。本体と思われるものはあんたに 任せるよ。」 今後の決意を仲間を代表してアマギが語る。俺はその決意さがよく分かった。 キュム「あ・あの・・・あなたのお名前は何と言うのですか?」 家族の一人が俺にそう話し掛けて来た。話し掛けて来た少女を見てある人物達と姿がダブる。 ユキヤ「名前などない、あえて言うなら・・・ウインドとでも言ってくれ。」 ザーディン「本当にありがとうございましたウインドさん。」 ユキヤ「構わんよ。それにしても強い絆だな、ここにいる36人は使命を持って集まっている。 俺達もその強い絆の力に引き寄せられたのかもな。」 エリナ「う〜カッコいい〜、本当に惚れちまいそうだよっ!」 アシェシル「そうね、一匹狼レイヴン・・・とは違うか。」 ユリカ「何にしてもカッコいいものはカッコいい、ウインドさんの友人さん達が羨ましい。」 3人の女性が俺の方を見てそう話す。そんなに俺の話は異性を引き付けやすいのだろうか、 非常に疑問だ・・・。 ユキヤ「あまり俺に関わらない方がいい、俺は死神・・・関われば不幸になるぞ。」 スミス「・・・もしかしてウインドさんよ、以前機体色を黒にしていなかったか?」 ユキヤ「アマギと出会う前は黒だった、そう・・・あの機体と同色だった時期があったな。」 俺はアマギ達の後方で待機しているACを、レーザーライフルを向けて示した。それを見た アマギ達は驚いた反応をする。 マッシュ「と言う事はあんたが死神だったんだ・・・。」 スミス「レイスさんの異名が死神と呼ばれていた訳が分かったよ。ウインドさんの機体と同色だった から死神と間違われたんだろう。」 レイス「そうだったのですか・・・。」 どうやらレイスという女性の機体と、俺の過去使用していた愛機の色が同色だったらしい。 その為に彼女は死神と恐れられていた事を知った。 ユキヤ「すまないレイス、あんたに辛い思いをさせちまって。」 レイス「と・とんでもない、私が機体色を黒にしたのがいけなかったのです。ウインドさんが悪い 訳ではありません。」 ユキヤ「・・・優しいなあんたは、そこまでして人を気遣う女性はそう滅多にいるものじゃない。 これからの世の中にレイスみたいな人物が必要なのかもな、改めて考えさせられる。」 レイス「あ・ありがとうございます・・・。」 ユリコ「優しいですねウインドさんは、人の幸せの為にそこまで考え行動するなんて。」 ユキヤ「ゼラエルと戦っている時に言っただろう、汚れ役は俺一人で充分だと。お前達は今回の 戦いで完全に過去の因縁と決別した。俺こそが汚れ役と言われるべき存在なんだよ。俺は 不器用だからな、それ位でしか人の為になれない。俺の連れにも汚れ役を背負わせたく ない、そんな悲しく辛い役は俺一人で充分だ。」 キュム「でも可哀想・・・、一緒に行動している方々も庇うなんて・・・。」 レイス「・・・出来る事なら変わってあげたい、ウインドさんがあまりにも可哀想です。」 俺の話した会話から、アマギ達は辛そうな目で俺を見つめる。さすが世界が認めるほどの 人物達だ、俺はそう痛感した。 ユキヤ「・・・本当にありがとよ。こういう奴らだからこそ、世界が注目するほどの使命を与えた のかもな。だからこそ俺という汚れ役も必要なんだ、お前達が安心して正しき行動に専念 出来るように。その為なら俺は喜んでこの役を買って出よう、それが俺なりの過去への 罪滅ぼしだ。」 トム「さすがだなウインドさん、それでこそアマギの先輩だ。憧れるぜ、こういう大物人物は。」 アマギの治療を行っている中年の男性が俺にそう話す、その顔に見覚えがあった。火気兵器を 使わせたら右に出るものがいない、デンジャラスガンナー・トム=ハイゼン。 ユキヤ「ありがとうデンジャーガンナ・・・いやトム=ハイゼン。」 スミス「さすがアマギの先輩、トム先輩の異名までご存知で。」 ユキヤ「俺の専属メカニック長が言っていたよ、デンジャラスガンナー・トム=ハイゼンほどの 最強のレイヴンはいないと。」 トム「・・・ま・まさか・・・、そのメカニック長はネストに排除対象になっていないか?」 ユキヤ「ああ、だから俺達と一緒に行動している。」 トム「・・・古い知人だ、名前は岡林剛。俺の先輩だ。」 驚く事を中年男性は話しだした。メカニック長とは古い知人らしく、彼の先輩らしい。 スミス「トム先輩にも先輩がいたんですか?!」 トム「当たり前だよ、俺の戦闘スタイルやACスタイルはみんな先輩からの影響だからな。」 俺は区切りのいい所で会話を中断する。本命の作業が残っているからな。 ユキヤ「そろそろ引き上げるとしよう。」 アマギ「何かあったら必ず呼んでくれ、すぐ駆け付けるからな。」 ユキヤ「分かった。アマギの家族達もアマギをよろしくな。」 アマギ達に見送られながら、俺達は吉倉財閥を後にした。アマギ達にはまだ敵側の企業や、 レイヴンズ・ネスト本部及び端末機関を壊滅させる作業が残っている。その事等はアマギ達に 任せるとしよう。 帰還途中、エリシェ達が内部通信で俺の今までの行動等を話してくる。 ルディス「大人の方でしたね、アマギさんは。」 テュルム「家族の方々もいい人ばかりで羨ましいですよ。」 ティム「私達もしっかりとした家族にならないとね、ユキヤさんが言っていたし。」 ルディス「アマギさんもしっかりしていたけど、やっぱユキヤも充分大人よ。なんせアマギさんの 先輩なんだからね。」 エリシェ「でも・・・汚れ役は俺一人で充分だ、ユキヤさんが可哀想・・・。」 ミュナ「感じ取れましたよ、罪滅ぼしの念が詰まっている事を・・・。」 やはりといったように、アマギ達と同じ考えをしていた。こいつらもしっかりしている、 さすが俺の信じ・護るべき女神達だ。 ユキヤ「あまり気にするな、俺が進んでやっている道だ。後悔はしないさ。辛かったらやめても 構わんぞ、俺に態々付き合う必要はない。自由な道に進みな、それが人生なんだから。」 エリシェ「何を言っているのですか、ユキヤさんがいたから私達が出会った。そして私も死なずに 今も生きている。死ぬまで一緒にいます、それが私の自由ですから。」 テュルム「そうね、一度命を救ってもらっているんだもの。」 ルディス「私達のわがままは突き通させてもらうわよ。」 ミュナ「私達もアマギさんの家族の方々と同じ、あなたに付いて行きます。」 ティム「お慕いしています、お兄様・・・なんてね。」 ユキヤ「・・・ありがとう・・・。」 妹達に感謝したい、今の自分の心の支えは他ならぬ彼女達だ。昔の俺は全てに恐かったのかも 知れない。人が嫌い・・・それは孤独になったから、自分自身から世界の全てから目や耳・ 心を閉ざしたから・・・。人が嫌いではなく、そう思う自分自身が嫌いだったから。全てを 拒否し、心を堅く閉ざした自分自身が何者よりも許せなかったから・・・。それを少しずつ 癒してくれたのは5人だ、5人と出会わなかったら俺はどうなっていたか分からない。本当に 感謝したい、俺の大切な妹達を・・・。この時を境に俺は自分自身の殻を破り、一歩前進した 事を確信した。 第6話へ続く |
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