フリーダムハート 自由なる勇将ヴィアラシュア 暗黒皇帝ディーラの野望 〜第2話 ルッド港襲撃3〜 それから14時間が経過、カシス達は仮眠を取りながら交代で警備に当たっていた。 港町は海賊の襲撃から身構えるべく、どこの商店も完全臨戦態勢に移っている。後は海賊が 強襲して来るのを待つだけであった。 ゼラン「ふぁ〜あ・・・眠みぃな〜・・・。」 桟橋付近の壁に寄りかかりながらゼランは呟く。隣にはメイが彼の左肩を枕代わりに寝息を 立てて眠っている。 ゼラン「メイさん・・・気持ちよさそうだな〜・・・。」 イザルス「もう少しの辛抱ですよゼラン君。」 海を見つめるイザルスがゼランをあやす。反対の壁にはカシスとアシリアが待機していた。 だがアシリアもメイと同じく眠っており、カシスだけが真剣な表情で海を見つめている。 ゼラン「なぁ、イザルスさんよ。メイちゃんとはどこで知り合ったんだ?」 イザルス「4日前に盗賊に襲われそうになっていた所を助けたんです。」 ゼラン「メイちゃんの話を聞いていると、相当あんたを気に入っているぜ。」 イザルス「そうでしょうね、彼女の会話や行動を見るとそう感じます。ですが・・・彼女はエルフ、 合成人の私からすると・・・。」 2人の会話を聞き、カシスが近づいてくる。敵が攻めてきたのかと2人は思った。 ゼラン「敵が攻めてきたのか?!」 カシス「いや違う。イザルスの話しを聞いて言う事があってな。」 2人の側にカシスは座る。イザルスはインスタントコーヒーを入れ、カシスに手渡した。 カシス「すまない。」 イザルス「何でしょうか、話す事とは?」 カシス「さっきの話だ。メイはエルフ、お前は合成人。恋愛等は後々厄介になると思っているのか。 世間から冷たい視線を浴びるのが怖くて。」 イザルス「・・・確かに冷たい視線を浴びるのは嫌です。でも・・・私はメイを愛している、できる 事なら一緒になって守ってやりたい・・・。」 カシス「ならばその道に進みなよ。お前達の未来なんだから、誰がどうのではない。自分達がどう 生きるかだ。そんなちっぽけな種族間の壁なんて蹴散らしてしまいな。」 コーヒーを啜りながら力強くカシスは語る。まるで子供が父親に悩みを打ち明け、それの解決 方法を話しているかのようであった。 イザルス「ありがとうございますカシスさん。何だか勇気が沸いてきましたよ。」 カシス「だがその夢が実現するには、あと7・8年かかりそうだな。」 可愛い寝顔をしているメイを見つめ、カシスはそう話す。メイは8歳前後の女の子、2人も それを見つめ納得する。 今の世の中、低年齢で結婚する者もいる。だがそれは最低でも15歳以上の男女である。 まあエルフは人間とは違い、流れる時が早い。メイの8歳というのは、人間の20歳前後に 当たるであろう。だがやはり8歳はどう考えても子供であった。 またそういった概念に捉われるのはどうかと思う。それこそ種族間の避け難い壁でもあると 断言できるだろう。 カシス達が会話を終えた直後、打ち上げ花火が立て続けに発射される。それは海賊達が来たら 合図するようにとグレス達に渡した物である。 カシスはアシリアとメイを起こし、戦いの準備を始めた。 ゼラン「来やがったな、派手に暴れてやろうぜっ!」 アシリア「ゼランさんその言葉・・・、どっちかというと海賊風ですよ。」 ゼラン「それもそうだな。」 どっと笑うカシス達。援護の攻撃が始まり、カシス達も桟橋の中央まで進み出る。 イザルス「奴等はどうだ?」 グレス「船は一隻ですが、かなりの人員を乗せているようですよ。」 話しながら海を見つめるグレス。前方には商船らしき姿が見えてきだした。 カシス「町の方は大丈夫だよな?」 イザルス「大丈夫です。町民達にはしっかり隠れるようにと言いましたから。」 カシス「よし、始めるとするか。」 それを聞いたカシスは安心する。全力で攻められるからであった。 カシスは桟橋の手前まで駆け付けると、魔法を唱えだす。それを見たイザルス達は驚きの表情 を浮かべる。 イザルス「カシス殿は魔法を唱えられるのですか?!」 ゼラン「ああ。だがどこまでの数を覚えているかまでは分からないが。」 カシスは海賊船が桟橋に近づくのを見計らって、海面目掛けて凍結中級魔法レオルドを放つ。 放たれたレオルドは海面を凍結させ、擬似流氷に阻まれた海賊船は航行不能となる。 カシスは一時的に凍結した海面に降り、そのまま海賊船へ走っていく。それを見たゼランと アシリアも後に続く。いつの間にか海賊の襲撃はカシス達の強襲へと変わっていた。 海賊船に乗り移ったカシス達は海賊どもと思っていた連中を見て驚く、その殆どがモンスター だったからだ。 ゼラン「何なんだこれは?!」 アシリア「モンスターが海賊?」 カシス「ゼランとアシリアはモンスターどもを頼む、俺はこいつらの親玉を叩く。」 カシスは鞘から白銀の剣を抜き、立ちふさがるモンスター達を薙ぎ倒していった。ゼランと アシリアはカシスの指示通り、モンスター達を倒しにかかる。その後イザルス達も駆け付け、 船上での決戦となった。 イザルス「あんまり深追いするなよメイ!」 メイ「分かっています!」 小柄なメイだが戦闘能力は高く、近づくモンスター達を両手に持つダガーで斬り倒していく。 イザルスはフレイムソードによる斬撃で一体ずつ確実に倒していく。グレスは身長ほどある 鋼鉄の槍でモンスター達を迎撃、そこにアルビスが火炎初級魔法ミルズで倒していった。その 迫力ある行動にモンスター達は押されぎみである。 カシス「お前か、モンスターどもの親玉は。」 一方、カシスは海賊船の後方へ向かう。そしてそこにいるモンスター達を統括しているらしい 魔術師に話し掛けた。魔術師はカシスの姿を見て驚きの声をあげる。 魔術師「貴様は・・・流浪の勇剣士カシス、何故お前がここにいる?」 カシス「傭兵は依頼があれば何でも引き受ける。それが俺達の自由だ。」 魔術師「なら私が雇おう、奴等を殺せ。」 魔術師は右手を差し伸べ、カシスを雇おうと手招きした。カシスは躊躇った表情を浮かべ、 魔術師にサインを送る。だがそれはカシスの罠であった。 カシス「・・・分かった。だがその前にこちらの質問に答えろ、今回の襲撃目的は何だ?」 魔術師「いいだろう。近々北にある軍事国家グリーエに攻める。その為の前線基地を作るからだ。」 力強く発言する魔術師。だがカシスにはそれが本当の作戦には思えなかった。質問を続ける カシス。 カシス「貴様にこの襲撃を依頼した人物は?」 魔術師「ディーラという奴だ、後は知らんな。」 カシス「ディーラ・・・。」 魔術師から聞き出したディーラという名。どこかで聞いた名前だなとカシスは思った。 魔術師「話しは終わりだ、さあ奴等を殺せ・・・?!」 相手が話し終わる寸前、カシスは魔術師に白銀の剣で斬り付けた。白銀の剣の太刀筋は相手の 胸を切り裂き、魔術師は甲板へと倒れる。 魔術師「き・・貴様・・・。」 カシス「貴重なお話しありがとよ。」 魔術師は立とうとするが、傷が深く立つ体力も無いに等しかった。 魔術師「うう・・・卑怯な・・・、まんまと騙されるとは・・・。」 カシス「これから戦争を起こそうとしている奴等に卑怯もクソもあるか。読みが甘かったのは貴様。 初対面の奴にベラベラと秘密事項を話したのは間違いだったな。」 魔術師「・・・ならば貴様らもろとも殺すまでだっ!」 魔術師は刺し違えてでもカシス達を殺そうとした。 魔術師は破壊初級魔法バルラドを唱え、カシス達がいる海賊船に放った。放たれたバルラドは 船体を貫き、下層の弾薬庫に直撃する。弾薬庫の爆発により船体は大きく揺れだし、船体や 甲板各所から火を噴き出した。 魔術師はバルラドを唱えた影響で絶命し、甲板の爆発と共に海面へ落ちていく。 第2話・4へ続く |
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