フリーダムハート 自由なる勇将ヴィアラシュア 暗黒皇帝ディーラの野望 〜第4話 理想の国への夢1〜 グリーエ城から東の大山脈と、そのふもとを流れる河を越えた場所に古城が残っている。 古城の名前はレルバルド城。ここは名将ニールが建国した国で、彼はイーグ・リオルの友人で あった。 イーグとリオルがグリーエ城を建国した後、彼は一人この地を訪れる。そして数人の人物と 共にレルバルド国を建国。当時はまだギズ村並の規模であったが、イーグとリオルの助けも あって中規模の王国になる。そしてニールが初代国王に選ばれ、レルバルドは晴れて王国と なったのである。 それから一度はグリーエ並に栄えたのだが、ニール死後王国は衰退してしまう。彼には後継者 はいなかったのだ。またグリーエへ豊かな生活を求めて旅立つ者が相次ぎ、建国後22年目で 廃墟と化したのである。 今は古城レルバルドはディーラの軍勢が待機していた。目的はもちろんグリーエ強襲である。 ・・・レルバルド城・・・ ディーラ「兵は整った、後はグリーエへ攻めるだけだな。」 大広間の中央に佇む男性、彼が首謀者とされるディーラであった。近くには彼の配下が4人。 大型のボウガンや弓を操るリーダー的存在の弓騎士ガードン。彼はグレス同様に獣の顔をして いるが、オーガ種族ではなく別の獣人種族である。 大きな槍を軽々と扱う一同のサポート役の黒騎士グランデス。彼もライル・ミウリス同様の ケンタウロス種族。額に大きな切り傷があるのが印象的である。 人の腕ほどの小型剣を二刀流で扱う斬り込み隊長の魔剣士ラーサー。彼はセレア同様、鳥人 種族の若者。背中に生えた大きな翼が印象強い。 ディーラの妹でラーサーよりも大型の大剣を操るストッパー役の聖剣士デェルダ。彼女は普通 の人間の種族であり、当然兄のディーラも同じ人間である。 4人は雇われた傭兵やならず者達からディーラ四天王と呼ばれ、恐れられていた。 そして4人のリーダー的存在であるディーラ。その身丈より巨大な槍を扱う姿から、皇帝との 異名を持っていた。 ディーラとデェルダの父はレルバルド出身、母はグリーエ出身。ちょうどレルバルド王国が 盛り栄えていた頃に2人は出会う。そして恋に落ち、2人の子供が誕生。それがディーラと デェルダであった。 だが2人が生まれる前、父は戦争で落命。ディーラとデェルダは父の姿を一度も目にした事は なかった。2人の母は女手一つで彼等を育てあげる。 そしてディーラが17歳になった時、2人の母は病気によりこの世を去った。最期まで徹底 して2人を育て上げた母は、死に際の表情はとても穏やかだったようである。 その後2人はお互い助け合い、苦しみや悩みを共に生きてきた。そして今に至った訳である。 ガードン・グランデス・ラーサー。この3人は戦争により孤児になり、行く当てのない時に ディーラ達に出会う。ディーラは3人の悲惨さに心を打たれ、一緒に暮らす事にした。 彼等は大切な家族同然な存在であり、兄妹の契りを分かち合った仲でもある。そしてどんな事 があろうと、お互いを助け合って生きる事を誓った。 その後ディーラを含めた5人が理想の国を創ろうと考えた事が、事の発端となったのである。 デェルダ「・・・やはり間違いだったのでは、理想の国などあってはいけない気が・・・。」 理想の国を求める事が間違いだと兄に諭すデェルダ。彼女はディーラが理想の国を創ろうと 考え出したすぐ後、間違いだと気づく。だがディーラの考えは堅く、諦めそうになかった。 ディーラ「もう遅い、作戦は第3段階に入った。今夜グリーエ城に傭兵団を進撃させ、グリーエを 壊滅させる。」 デェルダ「・・・でも。」 デェルダの発言に溜め息をするディーラ。そして徐に話しだした。 ディーラ「お前も賛成していたではないか。理想の国を創ろうと、自分達の国を創ろうと。」 デェルダ「確かに賛同しました。ですがその為に大勢の罪のない人々を苦しませてしまう。間違って います、絶対に!」 ディーラ「・・・ラーサー、デェルダを頼む。私は傭兵どもと作戦を練ってくる。」 デェルダ「待って下さい兄さんっ!」 デェルダの発言を無視してその場から去るディーラ。追いかけようとデェルダが近付くが、 ラーサーに引き止められる。 ラーサー「デェルダ様、ディーラ様の事を考えあげて下さい。」 デェルダ「考えています、だから・・・。」 ラーサー「少しお休みになられるといいです。ジェイズさんデュウバさん、デェルダ様を寝室へ。」 ラーサーがそう話すと、側にいた2人の兵士が迅速に駆けつけて来る。 ラーサーとデェルダが迫害から救い出したジェイズとデュウバ。2人の直属の部下であった。 イザルス同様の合成人種族で、一時期その事で迫害を受けていた。そんな2人をラーサー・ デェルダは助け共に過ごしていたのである。2人にとってジェイズとデュウバは兄妹であり、 数ある部下達の中で一番信頼に優れた者達である。 またジェイズ・デュウバもラーサーとデェルダを誰よりも慕っており、2人の為ならば命を 捨てる覚悟を抱いていた。 ジェイズ「分かりましたラーサー様。」 デュウバ「デェルダ様、参りましょう。」 デェルダ「・・・分かりました。」 ジェイズ・デュウバと共に悔しがるデェルダを連れて彼女の寝室へ向かう。 ラーサー「デェルダ様、貴女は優し過ぎるのです。ですが・・・私は貴女様をお慕いしています。」 デェルダの去っていく後ろ姿を見つめ、ラーサーは一人呟いた。 ラーサーは兄のディーラより彼女を心配している。だがディーラの理想の国発案に大きく賛成 する反面、それが彼女の事を後ろめたく感じてしまっている。それが彼にはとても辛かった。 ジェイズ「何かおありでしたらお呼び下さい、部屋の外で待機しています。」 デュウバ「それでは。」 ジェイズとデュウバはデェルダを寝室に入室させると、部屋の入り口で待機した。 デェルダは心中辛かった、理想の国を創る為に大勢の人々が苦しんでいる事を考えると。徐に ベッドに倒れ込み、これからどうするかを考えた。 暫く物思いに耽っていると、部屋の下から物音がする事に気がつく。デェルダは部屋の外に 待機しているジェイズ・デュウバを呼び、共に原因を調べだした。 ジェイズ「おかしいですね・・・、確かに音がしますが・・・。」 デュウバ「この古城には地下室などなかったような気がしましたが・・・。」 丹念に寝室を調べる3人。そして部屋の隅に小さな穴が開いているのに気づく。3人は更に穴 を調査、そこにはかつて地下室への階段があった事を突き止める。 3人は地下室へ降りて行き、内部を調査する事にした。その先には話し声が聞こえてくる。 気配を殺しながら先に進む3人。 男1「いよいよ始まったな。」 女「ああ、これで例の作戦が始められる。」 男2「邪魔なのは感ずいたデェルダだ。いずれ災いとなろう。」 彼らの話を聞き、3人は驚きの顔をする。驚きにより足元の小石を擦れ合わせ、音を起こして しまうデェルダ。それに相手側は気づいてしまった。 男1「誰だ!」 男性1は破壊初級魔法バルラドを通常よりも小規模で唱え、物音がした壁に向けて放った。 放たれたバルラドは3人を壁ごと吹き飛ばし、その場に転倒させる。 女「へぇ〜噂をすれば何とやらだね。」 男2「今の話を聞かれたからには生かしておく訳にはいかない。」 相手側の言動にジェイズとデュウバは、鞘からそれぞれサンダーソードを抜き出す。デェルダ も同じくサンダーソードを手に取った。 ジェイズ「デェルダ様、この場からお逃げ下さい。ここは私達が引き受けます!」 デュウバ「この事をディーラ様にお伝え下さい。命に代えても奴等を倒しますっ!」 ジェイズとデュウバはデェルダにそう告げ、相手側に突撃しようとした。だが自分達の身体が 金縛りにあったみたいに動かない。 そんな3人を尻目に男性2は不気味な笑みを浮かべ歩み寄ってくる。 男2「精神束縛魔法ルードディーム、精神を麻痺させ行動を封じる魔法。逃がしはせんっ!」 男性1は短剣を手に持ち、ジェイズの元に近付く。そして短剣を胸に突き刺す。ジェイズは 何もできないまま、次々と胸を刺され続ける。 男1「フフッ・・・。」 ジェイズ「ぐうっ・・・、クソッ・・・身体さえ動けば・・・。」 その言葉を聞いたデェルダは、覚えたての状態回復最強魔法ラウディルフォーズを2人に 唱える。直後2人の精神束縛は解放された。動けるようになった2人は、物凄い勢いで相手に 襲い掛かる。 デュウバ「卑怯者めっ!」 デュウバはサンダーソードで男性1に斬り付けようとする。だが背後に火球が襲い掛かった。 男性2が火炎中級魔法ミルスーヴを唱えていたのである。デュウバはミルスーヴの直撃を受け その場に転倒。ミルスーヴによる酷い火傷に、デュウバは悶え苦しむ。 そこに容赦なく再び魔法が放たれた。男性2は火炎上級魔法ミルバーズを唱え、デュウバに 放ったのだ。瀕死のデュウバにミルバーズが襲い掛かり、デュウバは絶叫しながら焼死した。 デェルダ「デュウバさんっ!!!」 ジェイズ「貴様・・・よくもデュウバをっ!」 力を振り絞り、その場に立とうとするジェイズ。だがそこに男性1がジェイズの胸を長剣で 突き刺し、止めを刺そうとする。だが最後の力を振り絞り、男性1を突き飛ばした。 ジェイズ「デェルダ様・・・申し・訳あり・ません・・・。」 男性1を突き飛ばしたのを最後に、デェルダにそう告げ息を引き取るジェイズ。 デェルダ「ジェイズさん・・・。」 絶命したジェイズとデュウバを見つめ、身体の中から怒りが込み上げてくるデェルダ。 しかしそう思った瞬間、容赦なく胸に長剣が突き刺される。長剣はデェルダの心臓突き抜き、 徐々に意識が遠のいていく。 デェルダ「・・・兄さん・・・ラーサー・・・、ごめ・・んな・さ・・・・い。」 デェルダは涙を流し、そう呟きながら息を引き取る。その表情は無念さでいっぱいであった。 男1「これでよし。」 女「だがどう言い訳するのさ、ディーラの妹と忠実な部下2人を殺したんだよ。」 男2「な〜に、策はある。このジャオグにお任せあれ。」 そう語るとジャオグは火炎上級魔法ミルバーズを唱え、3人の死体を焼き灰にする。証拠隠滅 を図ろうとしたのだ。燃えてゆく3人の躯。その躯を見つめ、不気味に微笑むジャオグ。 しかしこの瞬間3人の躯から小さな光が飛び出していった事に、当の3人は知る由もない。 その光は一時的に1つの光となり、もの凄い速さでレルバルド城から飛び出していった。 第4話・2へ続く |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
戻る |