覆面の風来坊外伝
〜三国志遊戯〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝3 〜三国志遊戯〜
    〜第1部・第06話 善と悪と〜
    ナンカイからカイケイへと進んだ俺達。君主のゲンハクコ氏とその弟ゲンヨ氏を倒した。
   まあリョフ氏とソンサク氏のペアによる、タッグマッチでの勝負となったが・・・。

    またテンスイはトウタク氏の軍勢が行動を開始。北はセイリョウ、南はカンチュウを制圧
   したとの情報が入った。ついに三国志きっての暴君が暴れだした訳だ。


    ただそれがマイナスとは限らなかった。セイリョウの君主、バトウ氏の長男・バチョウ氏に
   一族を皆殺しにされそうになったオウイ嬢。トウタク軍の侵攻によりそれが阻止され、窮地に
   一生を得た形に至った。

    しかし祖国を壊滅させられたのは事実であり、彼女達の帰るべき場所がなくなった。今は
   彼女達を保護し、大陸を統一するまで一緒にいる事にした。遠くにいるより近くにいた方が
   遥かに守り易い。


    その後の情報だと、トウタク氏の軍勢を倒すべく連合軍が組織されたらしい。反董卓連合
   そのものだ。しかしながらトウタク氏の軍勢、そこにいる筈のリョフ氏・チョウセン嬢・
   チョウリョウ氏・コウジュン氏はいない。彼らの力は殆どないと言っていい。

    ただ短期間でセイリョウとカンチュウを手中に収めたとあるだけに、総合的な戦闘力は結構
   あると推測できる。まあ彼の場合は漠然と攻めるのが主体だろうから、ソウソウ氏の様に色々
   と巡らせて進む事はないだろう。

    それに史実や無双でお馴染みのトウタク氏は、傍らに無敵のリョフ氏がいた。だからこそ、
   あの様な横暴極まりない行動をし続けたのだから。その彼がいないのだ、勢いは遥かに劣ると
   言っていい。



ミツキ(天下無双は、我が手中に有りわぅ!)
ミスターT(うわっ!)
    突然ミツキの声が脳裏に聞こえ、飛び上がらんばかりに驚いてしまった。どうやら念話に
   近い内情の思い、つまり独り言を言っていたようだ。という事は・・・。
ミツキ(そうわぅ、全部聞こえていたわぅよ。しかもみんなにわぅ。)
ミスターT(やっちまったわ・・・。)
   方々で笑い声が聞こえ出す。俺の独り言を一部始終を伺っていたようだ。まあ悪口ではない
   ため、別に隠す事ではないのだが。

リョフ(ふむ。お前達が知る俺は、トウタクと組むのか。)
ミスターT(Rさんや、代弁頼む。)
ミスターR(何故俺が・・・。まあともかく、そうですな。ほら、テイゲン氏の一件があったじゃ
      ないですか。本来ならセキトバ欲しさに彼を斬り、トウタク氏の元に赴くのが通例で。
      超絶的なリョフさんの力を得たため、もう横暴極まりない行動をしだす訳ですわ。)
    俺よりも無双シリーズに詳しいミスターRに、本来の流れをレクチャーして貰った。それに
   渋々応じている彼だが、内容は正確に提示されている。それに他の無双を知る面々はウンウン
   頷いていた。
リョフ(フッ、下賤わ。今の俺じゃ絶対に相容れられぬわ。そんな漠然と生き様を刻む・・・ああ、
    奴は酒池肉林が野望だったな。そんな下らない野望など何の役にも立たん。)
ミツキ(おりょ〜・・・、ならリョフちゃん。もしチョウセンちゃんが大勢いて、至れり尽せりする
    環境だったらどうわぅか?)
リョフ(・・・揺らぎそうだわ・・・。)
   リョフ氏の実に意外で野郎としては当然の流れに、俺達は爆笑してしまった。無双の彼はその
   様な事には耳を貸さないが、今の彼は自然体なだけに揺らぐのだろう。確かにチョウセン嬢が
   大量にいたら、そりゃあ揺らぐわな・・・。

ミツキ(にょほほ、それが野郎たるものわぅ。しかしトウタクちゃんの場合は、もう女性を食い物に
    するのは間違いないわぅよ。まあ大局的に見ると、覇道よりは小さな野望わぅけどね。)
オウイン(ですな。しかし・・・同性としては揺らぐ部分があるのが何とも言えませぬ。)
ソンケン父(同じく・・・。)
シルフィア(はぁ・・・これだから男は・・・。)
    そう言いながら俺を睨み出すシルフィア。更にはシュームやナツミYU、そして風来坊縁の
   女性陣全員が俺を睨み出した。今はカイケイの居城内で休息中なのだが、俺の独り言を聞いて
   一同集まってきたようである。
ミスターR(ミスター・・・物凄く睨まれてますよ。)
ミスターT(ぬぅ・・・。)
ミツキ(何時もの事わぅよ。)
リョフ(怖ろしいものだな・・・。)
   ネタの捌け口に俺を使われるのは何とも言えない。しかしそれが仲間達の笑いを誘い、場を
   和ませるに至るのも何とも言えないわ。これを狙ってやっているなら、彼女達の力は凄まじい
   ものである。


モウカク(なぁ〜風来坊、そろそろ俺達も攻めた方がいいのかね?)
ミスターT(あれから侵攻は受けていないのか?)
シュクユウ(完膚無きまでに叩き潰してやったからね、暫くはないとは思うよ。)
モウカク(後手に回るのは性に合わないんだがなぁ〜。)
    遠方はナンチュウからモウカク氏から連絡が入る。というかこの場合、一部始終を聞かれて
   いたという事か。まあミツキは常にオープン状態にしていると言ってたからな。向こうは後手
   に回っているだけに、暇を持て余しているのが窺えた。

ミスターT(戦略家さん方、今後はどうしたらいいと思うかね。)
リュウジN(出番きたぜ!)
アフィ(アンタは今は実働部隊だろうに、でしゃばった真似するんじゃないよ!)
リュウジN(むぅ・・・ビィルガ氏方に任せます・・・。)
ビィルガ(ハハッ・・・。で、今後の方針ですが・・・。)
    大陸地図を繰り広げ、展開を示そうとし出すビィルガ。しかしそれでは遠方のモウカク氏達
   には見えない。すると何と脳裏に今の状況が鮮明に映り出したではないか。これには驚愕して
   しまった。
ミツキ(念話をハイパワーにするとこうなるわぅね。)
ミスターT(こんな事もできるのか・・・。)
ナツミA(簡単な事ですよ。要は伝える器官を聴覚か視覚かにするだけです。まあケースバイケース
     とも言いましょうか。応用を利かせれば何でも可能ですよ。)
モウカク(やっぱ呪い師・・・。)
シュクユウ(ごるぅぁー!)
モウカク(わ〜っ! 叩くのは止めてくれぇ〜っ!)
ミツキ(賑やかわぅね。)
   それぞれの状況が脳裏に浮かぶため、シュクユウ嬢がモウカク氏を叩く場面を目の当たりに
   する。それに笑ってしまう俺達だった。しかしそれはお互いを信頼し切っているからこそ可能
   なコミュニケーションの1つだ。夫婦の鏡と言えるわな。


ビィルガ(・・・で、本題に参りましょうか。北部の動きは四つ巴に至ると推測できます。黄巾軍・
     ソウソウ氏とエンショウ無双氏の連合軍・カシン氏の軍、そしてトウタク氏の軍です。
     ただカシン氏の勢力は主力のソウソウ氏方が離脱したため、今や風前の灯。この場合は
     三つ巴と取るべきでしょうか。)
シェガーヴァ(間違いなくラクヨウとチョウアンの取り合いになりますな。黄巾軍とトウタク軍は
       殆ど拮抗している事から、北部は想像を絶する乱世の様相に至るかと。)
    大陸地図の将棋の駒を動かすビィルガとシェガーヴァ。実際の流れとは異なりだしている
   ためか、オウイン氏やソンケン父氏はかなり困惑しているようである。となれば、ここは俺達
   が進むべき道を示すしかない。

リョフ(リュウヒョウ軍とリュウエン軍はどう出ると思う?)
ビィルガ(停滞すると思われます。南はモウカク氏の南蛮連合に私達が鎮座している状態。北は前途
     の殺伐とした様相です。下手に動く様なら逆に攻められると思っているかと。)
    俺達の力を目の当たりにしている現状、向こうは動くに動けないだろう。むしろ下手に動く
   のなら、逆に喰われるのは間違いない。
リョフ(なるほど、完全に漁夫の利を狙う形になるか。)
チョウリョウ(動くに動けない状態ですな。)
シェガーヴァ(ただ、トウタク軍は今後も勢力を拡大するでしょう。失うものがない存在ほど、真に
       怖ろしいものはありません。民を蔑ろにしているのは事実でしょうし。一切考えずに
       進み出すと推測できます。)
モウカク(ひでぇ話だわな・・・。)
   混沌を通り越して、もはや殺戮に至りそうな様相だ。それだけ三国志の暴君・トウタク氏の
   存在は怖ろしいものだろうな。


ビィルガ(・・・しかし、相手は1つだけ見落としていますよ。)
リョフ(ああ、俺達の存在だな。)
シェガーヴァ(その通りです。今は小国の様な規模でしょうが、各人に内在する潜在能力は全てを
       超越していますからね。それに不死身の精鋭軍団や魔法など、現実世界に在り得ない
       要素がありますし。)
ソンサク(本気を出したら凄いぞ、っと言う訳だわな。)
コウジュン(相手の青褪める顔が目に浮かびますぜ。)
    不気味に微笑む彼ら。それに釣られてこちらも微笑んでしまう。今は進軍速度を遅めている
   だけで、神速的な規模で動く事もできるのが実状だ。ソンサク氏が言う、本気を出していない
   そのものだ。

ミスターT(ただ勘違いして欲しくないのは、あくまでも民を慈しむ部分を忘れてはならないよ。
      それを忘れてしまったら、連中と何ら変わらない暴力集団に至ってしまう。)
リョフ(それは心得ている。それにそんな殺戮染みた戦いでは、本当の武の頂には至れない。真っ向
    勝負で挑んでこそのものだ。)
    武の頂とは何かを把握しだしたリョフ氏達。闇雲に動く事を良しとせず、確実に有意義な
   戦いを行える事を信条にしだしたのだ。これこそ武人たる所以そのものだろう。
ソンサク(リョフの言う通りだぜ。勝負ってモンは充実した戦いにこそあると確信してるぜ。)
ビィルガ(ですな。それに我らは乱世を駆けるプロレス集団・アルエキファイタですからね。全て
     純然な試合で勝負を決めねば意味がありませぬ。勝敗はリング上で行いたいものです。)
ミスターAK(大賛成です。その方が思う存分、暴れられますし。)
ミスターT(乱世をプロレスで統べる、か。理不尽極まりない手法だが、無血革命には打って付けの
      戦いだわな。)
   一服しながら呟く。今や俺達の根幹は活人剣ならぬ活人拳で進んでいる。武器は防御のみに
   用いて、専ら打撃や投げ技で倒していく。負傷はするが可能な限り死者は出さない。それに
   この生き様なら純粋に勝負に投じれるとあって、今の俺達の基本戦術に至っている。


モウカク(・・・これは俺様の推測なんだが、南方を一斉に侵攻された時はどうする?)
ミスターT(場合によるが・・・。)
    モウカク氏の懸念に考えだす。というか俺の内情が仲間全てに伝わるのなら、このまま今後
   の推測を考えるか。その方が包み隠さず全て語れる。

    ソンケン父氏の家系が何れ改める国号・呉。俺はその彼らに天下統一を任せたいと思って
   いた。しかし色々な文献を見る限り、彼は乱世を馳せる猛虎とも言える。喰らい尽くすという
   部分ではモウカク氏達と変わらない。

    逆に大陸中に名前が知れているソンケン父氏が天下統一に乗り出すと、それに反論しだす
   英傑達が必ず出てくる。彼らを馬鹿にするあの一件だ。コウソ氏の連中だな。

    となると、殆ど未知の大陸と言える南蛮を立たせるのが公平なのかも知れない。モウカク氏
   達には野望というより、全ての面倒を見るという家族愛が根付いている。彼らも中道に近い
   ため、ソンケン父氏達とも馬が合うだろう。まあ実際に合っているんだが。

    呉の天下統一を目指していたが、ここは方針を転換して南蛮に委ねよう。全てを平等に見る
   モウカク氏達なら、今後の覇権争いなどは起こらないだろう。同じ猛虎の流れを持つ孫家も
   同調してくれると確信している。

    誰を天下に、そんな恐れ多い事はしたくはない。しかし最終的にこの乱世を沈め、天下安寧
   を目指すのなら常套手段か。全ては住民の方々を心から安心させるため。そのためには、俺は
   悪役だろうが担う覚悟でいる。

ミスターT(・・・以上が内容なんだが。)
ソンケン父(そこまで俺達の事を思っていてくれたのか・・・。)
モウカク(武勇ならリョフの方が遥かに強いが、風来坊は全てにおいて仁愛的要素が半端じゃない。
     だからこそ、そこまで他者を思いやってくれるのだなぁ・・・。)
リョフ(ハハッ、流石は風来坊だ。だからこそ俺達も魅入られて、この場に馳せ参じている訳だな。
    これを運命と言わずして何と言うのやら。)
    モウカク氏の最初の質問には答えてないが、先ずは胸の内を伝えた。今後の方針はこの流れ
   を取って行きたい。そこから全てが解決していくのだと確信している。


リョフ(俺はお前達に何度も救われた。それに生き様すら変えてくれたのだ。お前達が知る俺は忘恩
    の塊だそうだが、今この場にいる俺は全く違うぞ。お前達が進む道の行く末を、最後まで
    見届けようじゃないか。そのためには、俺の武を思う存分使うがいい!)
チョウリョウ(拙者も同じ決意ですぞ。リョフ殿のお姿が変わる様を目の当たりにし、貴殿らの根底
       に据わる一念は揺ぎ無いものと確信致した。我が武勇、思う存分使って下され!)
コウジュン(ダンナ方の生き様には心から感銘しています。リョフ殿とチョウリョウ殿には敵いま
      せんが、どこまでもお供致しますぞ!)
    声色からして、3人の決意が痛烈に伝わってくる。俺達が知る彼らとは全く違った姿が今の
   彼らである。その彼らに心から敬意を表したい。生き様を共感してくれるだけでも感謝もので
   あった。

    やはり彼らをテイゲン氏の元から早期に奪取して、ミツキ流の慈しみの生き様を享受した
   のが大きいわな。本来の在るべき姿に戻ったとも言えるだろう。


オウイン(風来坊殿の進む先に天下安寧の完成が見えてくるようです。助言ぐらいしかできないかと
     思いますが、最大限お力になりましょうぞ!)
チョウセン(・・・頑張るじぇ!)
    オウイン氏の決意にも心から敬意を表したい。本来の彼の生き様は色々とあるようだが、
   この場では天下安寧を切実に求め抜く存在となっている。確かにトウタク氏の専横を見かねた
   彼が、愛娘たるチョウセン嬢を刺客として送り込むぐらいだからな。

    が・・・チョウセン嬢の決意がリュリアの様な言動に驚愕してしまった。普段から彼女達に
   面倒を見て貰っているからか、俺達が知る舞姫とは全く異なる生き様になりだしている。

    これはこれで可愛いのだが、本当に大丈夫なのか心配になってくる・・・。


ソンサク(親父はどうか知らないが、俺もお前達と共に進むわ。それに既に命を何度も救って貰って
     いる。まだまだ恩は返し切れていない。ならばリョフ達と同じく、武勇で生き様を示して
     いくぜ!)
ソンケン父(俺も同じ思いだ。本来ならサクと共々戦死している流れ、言わば亡霊とも言えるな。
      ならばこの命は風来坊殿達に委ねるとしよう。江東の虎を思う存分暴れさせてくれ!)
    ソンサク氏とソンケン父氏もそれぞれに決意を述べだした。またコウガイ氏とカントウ氏も
   しかり。彼らに付き従う家族や仲間達も同様のようだ。

    史実ではソンケン弟氏が呉を大発展させていく。しかしソンケン父氏とソンサク氏が死亡
   していなかったら、官渡の戦い前では凄まじい勢いになっていただろう。この場では両者とも
   生存している事から、史実や無双とは全く異なる展開が期待できる。

    運命とは本当に皮肉なものだが、この場限りでは絶対にそんな理は通させない。俺達の超絶
   秘技的な力を駆使して、何が何でも覆してやる。


    俺が彼らの命を助けたのは、後の見返りを求めて行った訳ではない。これはリョフ氏達や
   オウイン氏達にも当てはまる。俺の中での彼らの生き様を別の流れで具現化させたい。本来
   なら彼らの生き様に委ねたいが、今以上に希望に満ちた姿を示してくれるなら構わない。

    俺は心から彼らに感謝したい。やはり対話こそが最強の武器なのだろう。でなければいがみ
   合うだけで終わっていた筈だ。まあそんな事は俺は絶対にしないが。

    俺は俺の生き様を刻み続けるのみだ。どんな流れになろうが、途中で変えるぐらいなら最初
   から刻まなければいい。そんな中途半端な生き様など無様そのものだからな。


ミスターR(まあ何と言うか、ミスターらしい決意っすな。)
ミスターA(Tさんらしくていいじゃないですか。Tさんが貪欲なまでに貫く生き様は、もう美学と
      しか言えません。定めた一念を絶対に揺るがせない、羨ましいですよ。)
ミツキ(わた達も同じわぅよ。それにわた達はあの激闘と死闘を支えてくれた恩もあるわぅ。結果は
    仕方がなかったわぅが、この場限りはそうじゃないわぅね。)
    ミスターRとミスターAは予てから俺の生き様を見ていてくれている。ミツキ達に関しては
   あの激闘と死闘が一番大きな要素となっているだろう。それが培って、今を生きる盟友達へと
   繋がっているのだから。

オウイ(風来坊殿の生き方は良く分かりませんが、今まで苦労を重ねてこられた事は痛感します。
    私も家族を守るために奮闘してきましたが、一歩間違えば仰る通りの皆殺しに至っていたと
    思いますので。)
ミツキ(大丈夫わぅ。わた達の目が黒い内は、絶対にオウイちゃん達を不幸になんかさせないわぅ。
    大船乗った気持ちでいてくれわぅ!)
オウイ(すみません、ありがとうございます。)
    オウイ嬢の史実の経緯は分からないが、無双の彼女は孤独を誰よりも恐れている。しかし
   その一族を皆殺しという言わば死亡フラグ的なものか、それは無事に回避できている。それを
   踏まえてミツキが守ると豪語したら、満面の笑みで感謝を述べるのだった。彼女、こんな表情
   もできたんだな。

    復讐、か・・・。負の感情、ダークサイド。本当に人を人ならざる者へと変貌させてしまう
   脅威の魔酒だわな。そして永遠の負のスパイラルへと陥っていくのが何とも言えない。

    しかし目の前のオウイ嬢には、そんな負の感情など絶対に抱かせない。彼女もそうだが、
   女性は朗らかで明るい姿が一番似合う。

    ・・・チョウセン嬢みたいに、オウイ嬢も激変する事は考えものだが・・・。


モウカク(俺様は難しい事は良く分からねぇ。そっちは母ちゃんの方が得意だからな。しかし風来坊
     が思う一念、仲間や家族を大切にするという部分はしっかりと理解できるぜ。だからこそ
     一同揃って慕うんだろうからな。)
シュクユウ(アンタ、前置きが長すぎるよ。素直に風来坊殿の生き様に惚れたと言いなよ。)
モウカク(むぅ・・・ま・・まあ何だ・・・。)
シュクユウ(かぁ・・・まったく・・・。)
    モウカク氏のタジログ姿に呆れるシュクユウ嬢。それに俺達は笑ってしまう。いざという時
   のキレの良さは承知済みだが、こういった姿もまた彼らしいのかも知れない。不器用だが繊細
   という部分では、本当にリョフ氏にソックリである。

ソンケン父(よし、今後の方針は決まったな。俺達孫・・・孫呉だったか、俺達はモウカク殿に帰順
      する。風来坊殿が信じている道だ、間違いはあるまい。)
ミスターT(ありがとう。ただ間違って欲しくないのが、南蛮一家の中でも孫呉の流れは出す事。
      でなければダンナ方の生き様すらも衰退してしまう。そこはモウカク氏達は理解して
      くれるよな?)
モウカク(おうよ。俺様は難しい事は分からない。だからこそ、お前達が行う事に従っていくぜ。
     その方が結果的に楽ができ・・・。)
シュクユウ(アンタねぇ・・・。)
ソンケン父(ハハハッ、いいではないですか。お互いに持ちつ持たれつで進むのも、痛快極まりない
      ものですぞ。それこそ家族愛というものじゃないですか。)
シュクユウ(まあそうなんだがねぇ・・・。)
    一念が定まったソンケン父氏の強さは身に染みている。流石は江東の虎だわ、この呼び名は
   本当に伊達ではない。またモウカク氏も南蛮の虎とも言えるため、お互いに通じ合える部分が
   あると痛感した。この2人は本当に純粋なのだ。磨けば燦然と輝くダイヤモンドの如く。

ミスターT(遥か未来では色々と問題が出てくる思う。人種問題・領土問題などがね。しかしそこに
      他者を敬い・労い・慈しむ精神が据わっていれば、自ずと解決すると確信している。
      そもそもだ、そんな下らない事でいがみ合ったら・・・誰が一番悲しむかを知っている
      だろう?)
ソンケン父(ああ、住民が一番苦しみ悲しむ。そんな太平の世など見たくはない。)
モウカク(だな。皆が少しでも幸せに過ごせるような環境を作るのが、俺様達の使命・・・とやら
     だろうな。)
シュクユウ(ほら、しっかり言えるじゃないか。流石だよ、アンタ!)
モウカク(まあな・・・。)
    しっかりと纏め上げたモウカク氏を賛嘆するシュクユウ嬢。照れながら語っている仕草が
   何とも言えない。彼らなら全く問題ないわ。

リョフ(戦場がなくなるのは虚しいものだが、風来坊達が勧める格闘技の世界とやらなら話は異なる
    のだろうな。むしろそれを生き甲斐にすれば、充実した生き様を刻めそうだ。)
ミスターR(リョフさんなら統一世界王者になれますって。)
リョフ(世界王者か・・・いい響きだな。)
モウカク(俺様も何れ再戦して、リョフの鼻を明かしてやるからな!)
リョフ(フッ、望む所だ。楽しみにしているぞ!)
ミツキ(似た者同士、ここに極まるわぅね。)
    リョフ氏が語る格闘技の世界。俺達の本編とも取れるアルエキファイタ、強いては俺や盟友
   達が住む住む現実世界のプロレスと同じ流れだ。

    確かにそこに生き様を置くのなら、常に戦場が舞い込んでくる様なものだろう。リョフ氏が
   懸念していた争いがなくなる、この場合は戦う場がなくなる事だが。それが純粋な勝負として
   演じれる事になる。これなら彼も天下安寧後の世界でも生きていけるだろう。

ソンサク(うぉー! 面白くなってきたぜ!)
ミツキ(わぅっ、いきなりシャウトは厳禁わぅよ。)
ソンサク(だってお嬢、これほど嬉しいものはないですぜ。純粋に勝負に投じれて、それでいて平和
     が維持できるのは!)
ミスターA(殺し合いでは相手を憎むしかなく、そこは憎悪の連鎖のスパイラル。ですが格闘技の
      世界ならば、最後にリスペクトが存在しますから。ソンサクさんが言う勝負と平和が
      同時に挑めるというものでしょうね。)
ソンサク(スゲーぜ! そんな天下が来る事が!)
    見た事がないぐらい興奮気味のソンサク氏。この三国志の時代では、殺し殺されるの世上
   とも言える。それが俺達の世界、言わば現実世界だが。そこではエンターテイメントとしての
   格闘技が実在するのだ。三国志の時代では考えられないものだろう。これには戦いを愛する
   人物にとっては最高の環境とも言える。

リョフ(勝負に投じてリスペクトと名声か。まあ名声など眼中にないが、リスペクトにより更なる
    戦いの場が広がれば申し分ない。その環境構築は風来坊達の手腕に掛かってそうだな。)
モウカク(同調するぜ! 俺様も暴れられれば文句はないわ!)
シュクユウ(はぁ・・・まあアンタらしいか。)
    武勇でしか存在を示せない三国志の面々。オウイン氏などの知略陣は該当しなさそうだが、
   リョフ氏達の様な武勇を糧とする人物には最高の環境だろう。それを実現するための天下統一
   という事か。まあ殺戮に至らないで勝ち得られるのなら問題ないだろうな。


ソンケン父(話は変わるが、そのための布石としての行動はいかがなされる?)
ミスターT(そうだの・・・。)
    一気盛んになりだした面々を見つめ、一服をし出す。嬉しそうな表情を浮かべる彼らが、
   この一服がより一層美味く感じさせた。そこにソンケン父氏が語り掛けてくる。最近はトムM
   達の影響からか、煙草を吸いだしているのだ。白髪・・・銀髪か、その出で立ちからの一服姿
   は哀愁が漂うほどの存在を示している。強者だわ・・・。
ミスターT(ソンケン父氏の軍団を進ませようとしたが、総合的に兵力があるならモウカク氏達か。
      ならばナンカイとカイケイを南蛮軍団に回帰させ、ブリョウ・チョウアン・ケンギョウ
      と一気に攻め上がろうかね。)
コウジュン(おおっ、3箇所同時攻略ですな!)
チョウリョウ(となると一気に攻め上がらないと、逆に喰われる可能性も高いですな。)
   3箇所同時に制圧しないと、そこから亀裂が生じる事となる。それか1つずつの攻略でも問題
   なさそうだが、ここは相手に力を見せ付けるための3箇所同時攻略が無難だな。

ミスターT(セイトの方はコウリョウを潰してから、エイアンとセイトの同時攻略はどうだろうか。
      それで一気にリュウエン軍団を撃退する。当然その前にリュウヒョウ軍団の撃退になる
      んだが、特に問題はなさそうだしの。)
リョフ(なるほど、南の地域を一気に制圧する手順か。それならば平行して北上できるな。ただ問題、
    なのが、セイト・エイアン・コウリョウ・ケンギョウと4箇所を守らねばならなくなる。
    そこはどうする?)
モウカク(コウリョウを得るまでは、俺様達はナンチュウの防衛に当たるぜ。母ちゃんとモウユウは
     ブリョウの攻略を頼むわ!)
シュクユウ(あいよ!)
モウユウ(お任せ下さい!)
    恒例の大陸地図に将棋の駒を配置していくオウイン氏。そしてリョフ氏がそれぞれの地域
   から駒が出たと見立てて進めていった。

リョフ(分かった。チョウサはソンケン父達の・・・リベンジだったか、それでいこうか。猛虎軍団
    の総力を当てれば申し分ないだろう。故郷を奪われた逆襲とやらだ。)
ソンサク(おおっ、リュウヒョウの野郎を打っ飛ばせるって算段だな!)
ソンケン父(了解した。我ら江東の虎・・・いや、江東の猛虎の爪牙を見せ付けてやるぞ!)
    故郷を奪われたソンケン父氏達。今度は故郷を奪い返す戦いとなる事に、一段と燃え上がり
   出している。故郷なだけに戦い方も十分熟知しているだろう。それに現地では彼らを慕う住民
   がいるとも思える。地の利は完全にこちらにあるわな。
オウイ(ソンケン父殿、私も参戦致します。故郷を失った気持ちは痛感してます。微力ながらお力に
    なれれば幸いです。)
ソンケン父(願ったり叶ったりです。感謝致しますぞ、オウイ殿。)
   ソンケン父氏の戦闘に、オウイ嬢が参戦を申し出てきた。この場の流れでは一族を失っては
   いないのだが、それでも祖国を失う者の痛みは熟知している。それによる申し出だろう。

リョフ(うむ、チョウサは問題ないか。最後はケンギョウだが、これは風来坊達と俺達で攻略する。
    それで問題ないか?)
ミスターT(あー、現地はリョフ氏達をリーダーとして動いてくれ。俺は仮面の風来坊として、敵陣
      の工作に乗り込むよ。この部分は墓堀人で慣れているからね。)
    そう言いながら、一同に創生した大鎌を見せた。ギラッとした刃が相手の死を誘うようで、
   見る者はゾッと身震いしてしまうようだ。
ミスターR(おおぅ、ソルキャリ4のザサラメールさんのイルカルラっすな。処刑人という事なら、
      下手な詮索はされないでしょうね。それにミスターは殺気と闘気により、言わば陰険な
      雰囲気を作る事も可能ですから。敵を引っ掻き回すには申し分ないかと。)
リョフ(誰か護衛を着けなくて大丈夫か?)
ミスターT(大丈夫さ。俺は和気藹々を根幹にしているが、役割を演じるなら一匹狼でも問題なく
      演じれる。むしろ相手に察知できないような雰囲気も作り易い。それに後方で活躍して
      くれている盟友達が大勢いるんだ。膝を折ってなるものか。)
   流浪人本編でミツキから託された木製の仮面、それを顔に装着する。そして同本編で敵役の
   黒ローブが纏っていた正に黒ローブを纏った。これだけで死神のような様相を出せる程だ。

ミスターRY(こ・・怖いっすよそれ・・・。)
ミスターT(眠りを誘発させるランタンも持とうか?)
ミスターH(それ・・ダークアリズンの黒呪島、中ボスのデスじゃないですか・・・。)
ミスターKA(間違いなく恐怖の象徴ですよ・・・。)
ミツキ(いいわぅね、それにゃらば〜。)
    そう言いながら不気味なほどのランタンを創生しだすミツキ。骸骨のような形の不気味な
   様相、その両眼から青色の光が淡く出ている。正に死神そのものだわ。それを俺に手渡して
   きた。
ミツキ(完璧わぅ〜♪)
ミスターK(・・・雇ってくれますかね・・・。)
ミスターT(まあ、何とかなるさ。)
リョフ(う〜む・・・まあ任せるか。よし、俺達はケンギョウを攻略するぞ。攻めるタイミングは
    3箇所同時で構わないかね?)
ミスターT(その方がいいかも知れないわ。それにリュウエン氏とリュウヒョウ氏が使った手口も
      それだろう。目には目を、戦略には戦略で返してやろうか。)
ミツキ(やられたら、やり返す。倍返し・・・んにゃ、竹箆返しわぅ!)
ナツミA(それ某銀行員・・・。)
ミツキ(にゃっは〜♪)
   ミツキのユーモラス溢れる言動に、周りは笑い合っている。本当に彼女には敵わないわな。
   対してナツミAの方は滅茶苦茶呆れ顔になっているのが何とも言えない。まあこの場合は慣れ
   ものだと雰囲気で言っているのだろうな。


ミスターT(よし・・・行動開始するか。戦闘開始に関してだが、俺がラクヨウ辺りに到着したら
      念話を入れるよ。それまでは何時でも攻められるようにしておいてくれ。)
オウイン(了解致しました。呉々もお気を付けて下され。)
リョフ(危なくなったら魔法とやらで俺達を呼べ、直ぐに駆け付けるぞ。)
ミスターT(フフッ、ありがとう。ではいくべ!)
    終始念話で通していたが、今では通例になりつつある。意思の疎通の念話、か。思い描く事
   が全て相手に伝わるのは見事なものだわ。

シューム(あのさ、幸運のキッスとか必要?)
ミスターT(そう言うのは大事な時に・・・って、それは今か。よし、受けさせて頂くよ。)
シューム(フフッ、分かったわ。)
    そう言いながら装着している木製の仮面を外し、両手で頭を掴み唇を重ねてくるシューム。
   半ば背伸びに近かったため、その彼女を抱き上げて続けさせてあげた。この愛情表現は風来坊
   本編で健在だわ。

    暫く彼女の激励を受けていると、傍らにナツミYUがいるではないか。これはあれか、彼女
   も激励という事なのか・・・。ここぞとばかりに愛情表現を示してくるのは、嬉しいのか困り
   ものなのか・・・。

    シュームから解放されると、次はナツミYUが半ば襲ってきた。そう、もう襲われていると
   言える。彼女達の濃厚な口づけは凄まじいものだわ・・・。しかしそこに込められている愛情
   は限りなく深く広い。女性を示す大海原の例えと同じだろう。

    流石の周りの面々も、シュームとナツミYUの本気とも言える激励には口を挟まなかった。
   本来ならヤジを飛ばされる所なのだが、その一念が凄まじく純粋無垢である事を察知している
   ようだった。こういった部分は気が利くのが何とも・・・。


ナツミYU(はい、これでおしまいっと。)
ミスターT(・・・サラッと言うのが何とも・・・。)
シューム(まあ上辺はそんなものよ。根底は今ので分かったと思うし。)
    顔を赤くしつつも、真剣な表情で語る2人。俺の方はこの場では免疫が殆どないためか、
   エラい頭がクラクラしている。そんな俺を見つめ、ミツキがニヤニヤしながら背中をバシバシ
   叩いてきた。何ともまあ・・・。
ソンケン父(情熱的でしたな。ですが込められた一念は、間違いなく旅先の安全を願ってのものと
      痛感してます。お1人で行かせるのは心苦しいですが、俺達は俺達の使命を全うする
      のみですから。)
ミスターT(ああ、そうだの。それぞれの使命を担うのみだわ。その瞬間こそ、各々の生き様を刻む
      事ができる。即ちそれ人生よ。)
   ソンケン父氏と会話をしながら、外していた仮面を着けて装備を整える。熱烈な激励を受けて
   の立ち眩みは続いているが、その意味合いを父親である彼は熟知していた。

    そう言えばソンケン父氏の奥さんはどうしたんだろうか。その手の話を聞かないとすると、
   若くして亡くなったかしたのだろうか。それでいてあそこまでの男気溢れる猛者なのだから、
   心中に据えた一念の硬さは凄まじいものだと痛感できる。

リョフ(うむ、ますます燃えてきたわ。後方の憂いは俺達が全て刈り取る。お前はお前の成すべき事
    を担うんだ。)
ミツキ(ちゃうちゃう、そういう時はこう言うんだわぅよ。)
    リョフ氏の近くに行き、耳元で名言を呟くミツキ。それに呆れ顔になる彼だが、彼女の言動
   に押されて言い出した。
リョフ(劣勢だと? ふん、俺が・・・俺達がいる限り負けん!)
ミツキ(わぅー! やったるわぅー!)
チョウセン(・・・蹴散らしてくれるわぁ!)
   リョフ氏が啖呵を個人から複数に言い直した部分に、俺達は感無量になった。それに一際笑顔
   で同調するミツキだ。他者との関わり合いを大切にしだした彼なだけに、心に余裕を持って
   接しているのが何と言えない。これこそが武人たる所以だろう。

    が・・・チョウセン嬢がまたもや場違いな言葉を叫んだため、その場の雰囲気を見事にぶち
   壊す。当然一同が爆笑しだすのは言うまでもない。

    ・・・あの可憐な舞姫がミツキ達に感化されて、エラい無邪気な美女になっていく・・・。
   これは良いのかどうか・・・。う〜む・・・。

    まあともあれ、チョウセン嬢の啖呵を合図に行動を開始しだした。連絡の取り合いは、この
   超長距離広範囲の念話があれば問題ない。連携と団結力は万全だわ。



    今後の作戦を簡潔に纏めておこう。同時侵攻は合図があるまで待機を徹底する。ナンチュウ
   は防戦を重視、侵攻はコウシ・ナンカイ・カイケイからとなる。

    コウシからはシュクユウ嬢とモウユウ氏達を中心に選抜した、南蛮が誇る特殊兵団が出る。
   それに彼らに付き従う猛将達が数多くいる。屈強の男達とはこの事だろう。

    ナンカイからはソンケン父氏達を中心に、江東の猛虎軍団が出る。既に連携が取れ出して
   いるため、呉の草創期のメンバーが出揃いだしていた。こちらも屈強の男達そのものだ。

    カイケイからはリョフ氏達を中心とした、我がアルエキファイタ軍団が出る。また仲間内
   から、シュクユウ嬢達とソンケン父氏達と共闘するメンバーを選抜した。これなら戦闘力の面
   では申し分がない。

    俺は単独で大陸の北側に潜入を試みる。何処へ行くかは現地に赴いてから決めよう。また
   大陸各地に隠密ハーズダント部隊が点在しているため、意思の疎通の念話以外の連携も万全
   である。


    3軍団の準備が整ったら、俺の合図と共に攻める手筈になった。できればどこかの地域で
   協力者を募りたいものだが。それか単独で旗揚げを狙うのも手だな。

    ・・・ラクヨウで単独で旗揚げ、か。ソウソウ氏達やエンショウ無双氏達、トウタク氏達や
   チョウカク氏達はさぞかし驚愕するだろうな。まあこのプランは到着してから考えよう。

    仲間が揃えてくれた旅道具を持ち、死神の格好で一路北上を開始した。さあ、ここからが
   本番となるわな。





    数週間後、ラクヨウへと到着した。流石は中国大陸、日本と違って桁が違う。移動だけでも
   結構な距離である・・・。ただ念話による連携が取れているため、後方の憂いは全くない。

    向こうは完璧なほどに軍備が整ったとの報告が入った。不死身の精鋭軍団が更に出揃い、
   それぞれの軍団の厳守を徹底している。本当に頼もしい限りである。

    ちなみにこの準備期間中、ナンチュウ・コウシ・ナンカイ・カイケイに侵攻を挑まれた。
   だが意思の疎通が取れ切った俺達に敵はいない。連携が超絶的に完璧であるため、敵を完全に
   敗退させている。

    それに連携を試す絶好の機会になったため、敵は逆に損をしている形になる。侵攻をすれば
   するほど、それだけこちらの強さが増すというものだ。何ともまあ・・・。


    俺はラクヨウにて仕官せずに様子を見る事にした。敵4軍団の動きがどう出るか、それを
   読んでからでも遅くはない。

    ただ少々気になるのが、仁愛の人と謳われるリュウビ氏達が出ていない所だが。もし全ての
   パワーバランスが崩れているのなら、彼やカンウ氏・チョウヒ氏達が旗揚げする可能性も十分
   在り得る。

    まあ彼らが出たとしても、こちらの流れにそぐわなければ敵対するしかない。正直な所、
   歩調が合わぬ存在は天下統一の布石への障害の何ものでもない。彼らには悪いが、俺は徹底的
   に潰すつもりだがな。



    そして満を持して、仲間達に一斉攻略の指令を出した。念話の方々で大合唱の如く雄叫びを
   挙げつつ、それが進軍の合図となったようである。

    敵はさぞかし驚愕した事だろうな。ブリョウ・チョウサ・ケンギョウに同時攻撃を受けた
   のだ。まさか南方のソンケン父氏軍団・モウカク氏軍団・リョフ氏軍団が共闘しているとは
   夢にも思っていなかろう。まあ仮に読まれていても問題はない。

    どの道、大陸全土を攻略するのが最終目標だ。敵の戦力を落として確実に得ていくのが通例
   である。それに仲間内には住民への協力を促すようにも伝えておいた。

    そうである。住民の安寧を狙っての戦いを伝えられれば、住民の方々を味方に付ける事が
   可能だと推測している。事前に先発隊を向かわせて、住民とのコミュニケーションを取るよう
   にも伝えた。

    住民の方々を味方に付けられれば、正しく鬼に金棒だ。後方の憂いは完全に消滅すると確信
   している。まあ必ず達成できるとは限らないが、狙ってみる価値は十分あるだろう。

    全ては天下安寧を目指しての戦い。そのためには、上辺の悪役なら喜んで担わさせて貰う。
   俺は俺の生き様を貫き続けるだけだ。





    数日後、ブリョウ・チョウサ・ケンギョウの制圧は成った。住民の方々を攻撃しないように
   細心の注意を払って動いたため、結構な時間が掛かったと言っている。まあその甲斐もあって
   彼らを味方に付ける事に成功もした。

    リュウヒョウ軍団はソンケン父氏達とシュクユウ嬢達の猛攻を受けて敗退。コウリョウへと
   引かざろう得なかった。これでブリョウとチョウサからコウリョウへの同時攻撃が可能にも
   なった。リュウヒョウ軍団は風前の灯だな。

    ケンギョウはリュウヨウ氏が収める地域だが、リョフ氏達の純粋な勝負に敗退して撤退を
   余儀なくされた。まあ最終目的のためなら、今の流れは致し方がない。こちらはコウリョウへ
   進む事ができないため、防戦を任せる事になりそうだ。



ソンサク(ヘッ、リュウヒョウの野郎の青褪める顔が目に浮かぶぜ。)
アマギH(本当ですな。)
    ソンケン父氏達への共闘軍団は、アルエキファイタ内の荒くれ者集団とも言えるアマギH達
   が志願した。リュウジN達などの現実面の世界観を本編に持つ面々だ。生き様も彼らに似て
   いるからか、率先して志願してくれたようだ。

シュクユウ(お前達、焦るんじゃないよ。やるからには徹底的に潰すのさ!)
デュシアE(皆さんが仰っている2箇所同時攻略ならば、徹底駆逐が可能となりますからね。)
    シュクユウ嬢達への共闘軍団は、ファンタジー世界観が本編のデュシアE達が志願した。
   ディルヴェズ達とユキヤN達は不死身の精鋭軍団の創生があるため、ナンチュウはモウカク氏
   達と共に鎮座している。言わば今の総大将はモウカク氏である。

リョフ(こちらからの進軍はミスターR達に任せる。俺はガッピからの侵攻を抑えよう。何時もは
    皆に後方の憂いを絶って貰っているからな。今度は俺が後方の憂いを切ろう。)
ミスターTA(リョフさんが防衛に立ってくれるなら、完全無欠そのものですね。俺達は思う存分
       暴れられますよ。)
ミツキ(わたも防衛に回るわぅね。みんなでリベンジと行こうわぅよ!)
    リョフ氏が防衛に回るという部分は、大局的に物事を見ての戦略ではある。しかし先手を
   得意としているミツキも防衛に回るというのは驚きだわ。まあケンギョウの北はガッピだ。
   ここは黄巾の乱の要因となる、黄巾党軍団が鎮座しているからな。総力で攻められたら危ない
   かも知れない。


ソンケン父(風来坊殿、そちらの様子は如何かな?)
ミスターT(凄いものだよ。ブリョウ・チョウサ・ケンギョウを同時進行された事は、ラクヨウにも
      伝わってきたわ。例の4軍団は更に殺気立っているよ。)
リョフ(それを狙っての行動だからな、むしろ好都合と言えるだろう。ただ今だに行動をしない所を
    窺うと、相当慎重な行動を取っているか。)
    同盟とは思えない3箇所同時攻略に、4軍団の殺気立ちは凄まじいものがあった。自分達が
   私利私欲を貫いている間に、南では超絶的な団結力を誇る軍団が誕生していたのだからな。
   これは当然であろう。まあだからといって手を緩める事など一切しないがな。

ミスターT(・・・大義名分ねぇ・・・。)
リョフ(ふむ、それは各々に据わる一念だと思うが。)
ミスターT(まあ確かにそうなんだがね。しかし考え方によっては、それが善にもなり悪にもなる。
      非常に紙一重だなって思ってさ。)
    ボソッと呟いた言葉に、簡潔に述べるリョフ氏。しかしそこに込めた一念は、人が人として
   生きるための概念だと伝えたい。それが即ち生き様であり人生でもある。

ウエスト(大義名分なんぞ、所詮は飾りの1つに過ぎんよ。絶対的に揺るがない原点回帰が据わるの
     なら、それこそが全ての要素だからね。覇道・中道・王道、そんなものは問題じゃない。
     重要なのは自分がどう生き、どう進むべきかを示す事だ。)
シルフィア(そうね、ウエストさんの言う通りね。そこが据わるからこそ、誰彼がの坐右の銘が燦然
      と輝くのよ。その部分の上部に位置するのが大義名分。人それぞれ異なるけど、根底に
      敬い・労い・慈しみの精神がなければダメね。ミツキさんが顕著じゃない。)
ミツキ(そんな大層なものではありませんよ。ですがウエストさんが仰る通り、根底はブレない一念
    こそですから。それが据わらない人物は、大体が強い者に負けますね。通例ですよ。)
    真面目口調で語るミツキに、周りは深く頷いているようだ。最終的には己自身の生き様だ。
   周りがどうこうじゃない、それが真実なのだ。そこを疎かにし、大義名分に酔いしれて暴れる
   のが今の世上だ。まあシルフィアが語る通り、人それぞれ生き様が異なるのは確かだ。しかし
   他者を慈しむ精神は絶対に持ちたい。でなければ忘恩の輩に堕ちるのは言うまでもない。

リョフ(ウエストは見掛けも巨漢だが、考え方も愚直だよな。だが心から同調できる。)
ウエスト(実際に行ったりするのは難しいものですよ。でも先生が決意している一念と同じく、根底
     に据わるものがあれば恐れるものなどありません。むしろリョフ氏の超愚直に生き様を
     貫く姿勢こそ見習いたいものです。)
ナツミA(貴方の場合は見境なくなるからダメね。何時もそうじゃないのよ。)
ウエスト(そ・・それを言われると苦しいが・・・。)
    呆れ顔で語るナツミAに恐縮しだすウエスト。彼は彼女には絶対に頭が上がらない。これは
   ミツキにも当てはまる事だが。本当に女性は強いものだわ。

    そもそも俺が盟友と位置付けた元祖とは、彼ら6人の事である。世代を・地域を超越して
   巡り逢った、掛け替えのない大切な家族そのもの。

    色々な流れがあり、そして今がある。過去はどうあれ、これからどうするか。それが重要
   なのだろうな。まあこれを彼らに言ったら、愚問だと一蹴されそうだが・・・。


ミスターT(・・・いっちょ暴れるかね。敵の様子を見てやるわ。)
リョフ(単独で大丈夫か?)
ミスターT(問題ないよ。それにこの出で立ち、夜にでも出現すれば一種のホラーさ。更に獲物を
      メメント・モリ化すれば、魂殺しの一撃になるからの。)
ミスターA(うぇ・・・、メメント・モリですか・・・。魂を刈り取る鎌の相称とされるもの。)
    以前ミスターAと雑談をしていた時、魂殺しの鎌の話題になった事があった。それがこの
   メメント・モリというらしい。まあそれは架空の設定であり、こんな大鎌で斬られれば即死は
   間違いないのだが。
ミスターK(Tさんらしいじゃないですか。まあ殺さない程度の・・・廃人ですが、それに至らせ
      れば無血革命でしょうね。)
ミツキ(一生涯動けなくなりそうわぅけど。あ、その度合いは調整すればいいわぅ。夜や暗闇を恐怖
    し続けるしかなくなる身体にしてやればいいわぅね。)
ミスターR(卑怯極まりないっすが、まあ無血革命なら問題ないかとも。)
ミツキ(暴れてやれわぅー!)
   毎度ながら、半ば暴走気味のミツキに周りはタジタジのようだ。彼女が今の俺の立場になった
   のなら、一体どういった手法を取るのか非常に気になるが・・・。

ミスターT(ともあれ、リュウヒョウ軍団とリュウエン軍団への攻撃は任せるよ。ただタイミングは
      絶対に合わせる事。敵に付け入る隙を絶対に与えるなよ。)
コウガイ(ふほほっ、お任せ下されぃ。そういった連携は得意中の得意ですからの!)
コウジュン(コウガイ殿と同じく、お任せ下さい!)
    拠点攻略では無類の力を発揮するコウジュン氏。また赤壁の戦いでは苦肉の策で呉蜀連合に
   勝利を導いたコウガイ氏。どちらも攻略という部分では凄まじい戦闘力を発揮する猛将だ。
   リョフ氏達は対武将に特化するように、彼らは対拠点に特化する存在と言える。

ミスターT(了解。ケンギョウに関しては、リョフ氏達に防衛を任せるよ。あとモウカク氏は、今は
      ナンチュウの防衛を頼む。)
リョフ(フッ、任せておけ!)
モウカク(おうよ!)
ミスターT(コウリョウはソンケン父氏達を立てるようにね。これは言わばリベンジマッチだ。先の
      逆襲がまだ終わっていない。徹底的にやってやれ!)
ソンサク(おうさ! やってやるぜ!)
    因縁の対決たる、ソンケン父氏達とリュウヒョウ軍団。本来ならその戦いが起きる前に、
   ソンケン父氏は伏兵により射殺されるのだが。まあ今は長男のソンサク氏共々、死亡フラグは
   回避されている。俺の目が黒い内は、絶対に悲惨な末路など起こさせるものか。

ミスターT(あと追加で、彼らの厳守を徹底してくれ。例の奇襲がまた起きるかも知れない。不測の
      事態は全て排除した方がいい。)
ソンケン父(ありがとう、感謝致します。皆さんがいらっしゃるから大丈夫ですよ。)
ビィルガ(ですが、本当に不測の事態は付き物。そうですな・・・リョフ殿、ケンギョウの防衛は
     我らが致します。貴殿は彼らの護衛をお願いしたい。)
リョフ(うむ、そう来るだろうと思っていた。分かった、任せておけ!)
ミツキ(にゃらば、わたも一緒に赴くわぅね。ケンギョウは姉ちゃんにも任せるわぅ!)
ナツミA(分かったわ。貴方は思う存分暴れてきなさいな。)
ミツキ(やったるわぅー!)
    追加プランとして、ソンケン父氏達の厳守を依頼した。例のコウソ氏軍団がまた奇襲を張り
   巡らせているかも知れない。そういった場を読み易いリョフ氏とミツキなら、護衛は完璧で
   あろう。

ミスターT(・・・そうだな、ミュティラ・ミュティナ・ミュティヌと一個師団をこっちに派遣して
      くれないか?)
シェガーヴァ(それは構いませぬが、何か気掛かりでも?)
ミスターT(もしかしたら、ラクヨウで旗揚げの可能性もある。ソロで対処も可能だろうが、全ての
      要素を考えておいた方がいい。)
    今のカシン軍団なら俺1人でも旗揚げが可能だろう。しかしその後の北はソウソウ軍団、
   東は黄巾党軍団が侵攻してくると推測できる。西のカシン軍団も健在だろうから、3方向から
   の侵攻は避けられない。ある程度の軍備はしておいた方がいいだろう。

シェガーヴァ(なるほど、後々の戦略ですな。了解致した。ディル殿、ご準備は大丈夫ですかな?)
ディルヴェズ(了解です。しかし本当にリョフ殿の予感は当たりますね。マスターがラクヨウにて
       旗揚げをされて、その後の対処が仰る通りの展開に至ると読んでいましたよ。)
ミスターT(あらま、既に推測済みだったのか。)
リョフ(俺ならそうして欲しいからな。武将相手であれば問題ないが、兵士達相手では些か不利に
    なりかねない。それに仲間を信頼してこその天下無双よ、俺1人だけ至って何になる。)
ミツキ(流石はミスターリョフわぅ!)
    今では仲間思いの精神が色濃く出ているリョフ氏。表向きの破天荒な言動は健在だが、根底
   は完全に異なっている。本当に頼もしい限りだわ。何度も言うが、彼ならカンウ氏を超える
   武神として後世に語られるだろう。

ミスターT(了解。ならばリュウエン軍団とリュウヒョウ軍団が潰れた頃を見計らい、ラクヨウで
      旗揚げをするわ。またミュティラ達が到着するまでは情報収集に走ってるよ。)
オウイン(了解致しました。ではかねての通り、進軍準備を解して下され!)
    オウイン氏の合図に一同雄叫びを上げて応じる。今ではもう意思の疎通による会話は当たり
   前になっている。遠方にいても全員に会話ができるとあってか、これ程の連携プレイは今の
   世界には絶対に存在しない手法だわ。


    今後の流れはナンチュウとケンギョウの守りを徹底し、ブリョウとチョウサからコウリョウ
   へと同時攻撃を仕掛ける手順となった。

    ブリョウからはモウカク氏の仲間が率いる南蛮特殊兵団。チョウサからはソンケン父氏が
   率いる南蛮呉連合兵団だ。ソンケン父氏自体がモウカク氏達に帰順する流れに至っている。

    しかしそこには上下や縦の関係ではなく、大家族という左右や横の関係である。でなければ
   反発するのは言うまでもない。まあモウカク氏達も服従という要因を大変嫌っているから、
   この部分は問題ないだろう。

    それに俺達が憧れる彼らは強かな愚策を巡らせる存在ではないと確信している。もっと純粋
   に生き様を貫く猛者であると。そんな彼らに付き従う仲間達なのだから。

    本当に不思議な流れだわな。まあそれでも、俺は俺の生き様を貫き通すだけの話だ。そこに
   こそ己の存在に同調してくれる方々が共闘してくれるのだから。



    仲間達がコウリョウへの進軍準備を整える中、俺はラクヨウのカシン氏にアポを取る事に
   した。仲間内からの半ば好評の死神スタイルで挑んでみよう。どういった対応をされるか、
   実に見物だわ。

    それにカシン氏には大変悪いが、彼は色々な流れを見ると悪逆的な流れを醸し出している。
   正直俺は同調はできない。まだ覇道を地で往くソウソウ氏の方が無難な所だ。

    ここは仕官すると見せ掛けて、半ば揺さ振りを掛けてみるかね。面白い事になりそうだわ。



カシン「・・・お主か、仕官を求めてきたのは・・・。」
仮面の風来坊「左様。世間では仮面の風来坊と称されるが、俗には墓堀人で通っている。我が知勇、
       如何様にもお使い下され。」
    案の定な展開だ。俺の出で立ちに周りの面々は恐怖の表情を浮かべている。本来なら門前
   払いとなるだろうが、今のカシン氏の軍勢には猛者がいないのが実状だ。こういった武将の
   仕官は有難いものとなるだろう。それを突いての行動なのだがな。
カシン「わ・・分かった。貴殿の仕官を認めよう。今は周辺各国の状況が芳しくない。直ぐに出撃
    できるように準備してくれ。」
仮面の風来坊「承知致した。」
   跪きからゆっくりと起き上がる。大鎌を手に持ち、ランタンを腰にぶら下げる。それだけで
   周りの配下達は驚愕の表情を浮かべていた。生物が根本として内在する恐怖心、それを掻き
   立てる出で立ちなのは間違いない。


ミツキ(おういえい、仮面の風来坊殿〜。)
仮面の風来坊(茶化しなさんな・・・。)
リョフ(確かにその出で立ちなら恐怖で誰も近寄らない、下手な詮索はされないだろう。内部の状況
    が分かれば恐れるに足らずだ。)
    仕官時の会話は念話も含めていたため、それが仲間達にも伝わっていた。間隔空けずに遠方
   はミツキとリョフ氏から会話が入ってくる。

オウイン(今現在のラクヨウの状況は如何かな?)
仮面の風来坊(殺伐としてるよ。北はソウソウ氏、東と南東からは黄巾党が睨みを利かせている。
       チョウアンは何とか保たれているが、今のトウタク氏の軍勢は黄巾党に匹敵している
       から侮れない。)
    直接潜入して痛いほど分かった。この劣勢も劣勢状態で保っているカシン軍団、それなりの
   力があってこそのものなのだろう。それか、ただ単に運が良かっただけなのか・・・。

ソンケン父(思ったんだが、コウリョウの制圧は見送った方がいいのではないか?)
リョフ(ふむ・・・。ソンケン父が懸念するのは、ジョウヨウのエンジュツ軍団か。それにガッピが
    勢力下にある黄巾軍団からも攻撃を受ける事になる。コウリョウを落とすと、双方からの
    攻撃に曝される可能性が高いな。)
ソンサク(親父、今は攻めるべきじゃないわ。リョフが言うように、今は連中を利用した方が有利に
     なるぜ。)
仮面の風来坊(そこは皆で決めてくれ。宿敵なのには変わりなく、早期撃破をしたい思いは分かる。
       ただそうすると他の軍団に目を付けられる場合があるからね。)
ビィルガ(となると、今現在は侵攻不可能となりますか・・・。)
    大陸地図に駒を配置し、今の状況を一同に見せるビィルガとシェガーヴァ。例の念話を通り
   越した、意思の疎通による会話。今では当たり前の様に用いている。


    ナンチュウの守備はモウカク氏達が担ってくれているため、磐石な防御態勢となっている。
   補佐でディルヴェズ達創生軍団がいるため、不測の事態に対しては問題はない。

    ブリョウはシュクユウ嬢とモウユウ氏が、チョウサはソンケン父氏達が防御を担っている。
   前者はデュシアE達が、後者はアマギH達が補佐を担当。こちらも不測の事態は問題ない。

    ケンギョウはビィルガ達が守る形になっていた。リョフ氏達はフリーで動いているため、
   決められた待機場所はないとも言える。


リョフ(・・・風来坊が思うその4箇所を厳守し、ラクヨウから亀裂を発生させるのも手だな。)
ソンケン父(やはりそう思われるか。後ろに退けない状況を作り、前から攻める状態に持ち込むと。
      徐々に大陸を掌握していけば、相手の戦力を分散させる事が可能だろうな。)
コウジュン(となるとアレっすか、魔法による大規模移動でラクヨウ旗揚げって寸法で!)
チョウリョウ(しかし苦戦は必須ですな。ラクヨウを得ても、シンヨウ・ボクヨウ・キョショウ・
       チョウアンから攻撃を曝される事になりますし。)
仮面の風来坊(フフッ、それこそ敵の目を引く格好の的になれるよ。)
    大多数の地域が狙うとされるラクヨウ。そこを落とせば、他の軍団は血眼になってこちらに
   向かうだろう。しかしそれこそ好都合だ。仲間達の方に意識を向かわせないためなら、この
   戦法を用いる価値は充分にある。

リョフ(・・・お前は本当にどこまでも他者思いだな。)
仮面の風来坊(その切っ掛けを作ってくれたのは、他ならぬミツキだけどね。)
リョフ(そんなに凄い奴なのか。)
ミツキ(大した事じゃありませんよ。しかし敬い・労い・慈しみの精神を常に持ち合わせたい。その
    一念が現在に至りますからね。根底が据わっている人物ほど強い存在はいません。皆さんは
    それぞれに抱く強い信念と執念がありますから。)
    真剣な言葉で語るミツキに感嘆しているリョフ氏。確かに彼女の言う通り、常日頃からの
   心遣いから発展した今の流れだ。俺の生き様も十中八九は彼女の受け売りである。慈愛を地で
   行くミツキの生き様なら、間違いなく常楽我浄の生き様を刻めるわな。

シルフィア(それでも個々人の個性を忘れずにね。根底は据わっていても、そこに個性がなくなれば
      殆ど操り人形そのものだからね。)
ミツキ(それは愚問ですよ。皆さんはしっかりと進むべき道を見定めています。上辺の紛動は人間
    だから仕方がありませんが、根底は定まっていると確信していますので。)
シルフィア(フフッ、T君が心から惹かれる訳ね。ここまで生き様が定まった女傑はなかないない
      わよ。)
ミツキ(ふふり、淵源はシルフィアちゃんにあると確信してるわぅよ?)
    真剣言葉からノホホン言葉に切り替わるミツキ。それに毎度の事だと呆れながらも、頬笑
   ましい視線を送るシルフィアだった。

    先にビィルガが地図に駒を配置する際も、視覚に影響を与える手法をしだしたナツミA達。
   念話だけなら頬笑みなどは分からないが、今はその全てが脳内に鮮明と映し出されている。


リョフ(・・・師弟、か。師弟がこれほどまでに絆を強めるとはな。)
仮面の風来坊(俺達が知るリョフ氏は一匹狼的だが、今は半ばミツキが師匠じゃないか。だからこそ
       更に純然たる武勇を示す事ができている。漠然と攻めるだけではダメだわな。)
リョフ(そうだな。ミツキには色々と教えられてきた。それが今では全てを大局的に見定める事が
    可能になるまでに至っている。俺が言うのもなんだが、本当にありがとな。)
    あのリョフ氏が他者に感謝を述べるという場面を目の当たりにした。俺達が知る彼は絶対に
   その様な言わば戯言はしていない。一番親しいチョウセン嬢にも述べていたかどうかも分から
   ない。これには本当に感激するしかなかった。

ミツキ(ふふり、全てはリョフちゃんに内在する生命わぅよ。わたはそれを開花させただけわぅ。
    変革とは、己が強く思い行動する事によって至れる。そうわぅよね、Tちゃん?)
仮面の風来坊(ああ、その通りだな。元来から負けず嫌いのリョフ氏なら、常に変化し続けたいと
       思う一念があったと確信している。でなければ今のダンナは存在しないよ。)
ミスターR(俺達が知るリョフさんは怖ろしいものですからね。今のリョフさんは垢抜けた状態では
      ありますが、心の強さは雲泥の差と思いますぜ。最終的には心の勝負になりますし。)
ミツキ(という訳わぅよ。)
    色々な文献を見る限り、リョフ氏の身勝手さは凄まじいものがあるとの事だ。それに振り
   回されたのが周りの猛者達だという。あのテイゲン氏すらもそうらしい。しかしこの場にいる
   彼は全く異なる姿を示している。それは間違いない。

    ただ考え方では、彼の内在する生命。ここにはそういったマイナス面の要素があるのかも
   知れない。それを極力抑え付け、根底に据わる己自身を出せれば幸いだろう。それが可能と
   するなら、前例がないぐらいの猛将として後世に語り継がれていくのも間違いない。

    全てはその瞬間瞬間での魂心の対話か。それにより相手を根底から揺るがし、間違った方向
   へ進ませないようにする。一見すると難しいようだが、元来から個人が持つ一念に火を灯す
   事ができれば不可能ではないわな。


リョフ(・・・ここまで尽くしてくれて期待されているのなら、それに誠心誠意応じなければ失礼
    極まりない。俺にできる事は限られているが、出来得る限りの報恩で返そう。)
ミツキ(にゃらば、その返しはチョウセンちゃんに頼むわぅよ。それがわた達の願いわぅ。)
    ミツキの言葉に無双の彼らを知る面々は深く頷いている。俺達が知るリョフ氏はパートナー
   たるチョウセン嬢に全幅の信頼を置いている。それに今のこの場の彼なら、それは揺ぎ無い
   ものとなるだろう。ミツキが述べた言葉が全てを意味する。パートナーを大切に、だ。

リョフ(・・・そうだな、それが今の俺の最善の行動だな。チョウセンを守る事こそが、今の俺に
    与えられた使命とも言える。それにそこから諸々の活路が見出していける。お前達が心から
    願うその一念、確かに受け取った!)
チョウセン(・・・ありがとわぅ!)
    リョフ氏の魂の叫びに俺は心から頭を下げた。史実や無双の彼とは真逆の武人たる姿の彼。
   これこそ彼を天下無双と知ら示す何よりのものだ。

    が・・・直後とんでもない追加の言葉が聞けた。チョウセン嬢の礼なのだが、それがミツキ
   縁の「わぅ」言葉を発したのだ。場の雰囲気を破壊するには強烈過ぎる。当然周りは爆笑して
   しまった。

ミスターR(あぁ・・・チョウセンさんが変貌していく・・・。)
チョウリョウ(ハハッ、いいではないですか。それだけ皆さんの生き様に感化されている何よりの
       証拠ですぞ。特にミツキ嬢の生き様にどれだけ感化されているか。)
ソンケン父(俺達も風来坊殿よりはミツキ嬢に影響を受けていると言える。リョフも同じ流れだから
      尚更だ。)
リョフ(そうだな。本当に見事な女傑よ。)
    一同がミツキを称えると、ニヤケながら右手親指を立てる彼女。ミツキの純粋無垢な生き様
   は本当に凄まじいものだわ。彼女の生き様を応用すれば、この天下を笑顔で咲かす事も夢物語
   では決してない。



カシン配下「風来坊殿、大変です! 隣国のチョウアンがテンスイより襲撃を受けています! 至急
      救援に向かって下さいとの事です!」
仮面の風来坊「了解した。」
    突然知らせが入ってくる。カシン配下の兵士がチョウアンの襲撃を告げてきた。テンスイ
   となると、相手はトウタク軍団か。向こうの勢力からすれば、加勢しないと敗退は間違いない
   だろう。

コウジュン(聞こえてますぜ、大丈夫ですかい?)
仮面の風来坊(規模が気になるが・・・。そうだ、魔法が使えるのはディル以外に誰がいる?)
ディルヴェズ(妹ディルLKとディルス、それに娘ルデュファス。またデュシアE様方とルビナ様方
       です。ヴァルは魔法より武器の扱いが得意なので。)
    今現在の魔法という超絶的な力を使える人物を挙げて貰った。アルエキファイタ内では数が
   少ないのだが、その力は万物を根底から覆す力である。

    ディルヴェズは無論、双子の妹ディルヴェズLK。その2人の妹のディルス、そして兄の
   ディルヴェズの娘のルデュファス。

    またデュシアE達も魔法世界観が出身なため、全員が魔法を使える流れだ。更に調停者の
   存在でもあるルビナ姉妹もしかり。代表的なのはこのぐらいだろうか。

    意外にもネデュラ達不死のファミリーは魔法を得意としていない。しかしサイコキネシス的
   な超常力は持っている。スターウォーズ・シリーズでも有名なフォースの力に似ているか。

    何はともあれ、彼らの力なら超劣勢な状態を意図も簡単に覆せるだろう。

仮面の風来坊(了解。ならば拠点制圧のスペシャリスト、コウジュン氏の軍団を飛ばしてくれ。護衛
       にはミュティラ達で大丈夫だろう。)
コウジュン(おおっ、大役来ましたぜ! お任せ下され!)
    指名されて大張り切りするコウジュン氏。ミスターMI氏から伺った事なのだが、史実の
   彼の実力はあのチョウリョウ氏をも上回ると言う。しかし短命だったために、後の有名な逸話
   が立ったとも言える。チョウリョウ氏が呉軍相手に奮闘したアレだ。
仮面の風来坊(第1陣はコウジュン氏達で、第2陣としてチョウリョウ氏達を待機させてくれ。)
チョウリョウ(承知仕った!)
   追撃軍団としてチョウリョウ氏達を抜擢した。それに一気盛んになる彼。リョフ氏もそうなの
   だが、彼らは最前線で立つよりは誰かの補佐に回った方が凄まじい力を発揮する。この場でも
   例外ではない。

仮面の風来坊(本当はリョフ氏にもご足労と思ったんだが、今ではアルエキファイタ内の頭脳にも
       なってるからね。今は待機していてくれ。)
リョフ(分かった。それでお前が安心するなら、お安いご用だ。)
ミツキ(チョウセンちゃんと仲良くね?)
リョフ(フッ、それもお安いご用だ。)
    もうリョフ氏の和気藹々とした言葉には慣れものなのだが、改めて聞くと俺も周りも笑って
   しまう。ミツキの影響でたった一言でもムードメーカーとしての役割を担うものだ。

    全てを大局的に見定めるが故に、心に余裕を持たせる事ができる。彼が知略を学びだして
   からの劇的な成長は凄まじいものだ。だからこそ、ユーモラス溢れる言動ができるのだろう。

    ただ逆にチョウセン嬢が無邪気になりだしている事から、無双の2人とは真逆の性格になり
   そうで怖い・・・。大丈夫なのかどうか・・・。


    しかしまあ・・・念話の多様性に感心してしまう。ただ普通に会話するだけだと思ったら、
   そこに視覚への伝達で流れを映しだせてしまうのだ。更には今の様に外面からの会話も一同に
   伝わるというものだ。

    この連携は今の時代には本当にないものだわ。時代は情報戦とも言えるだけに、意思の疎通
   による念話は常識を逸脱している。だからこその力なのだがな。


    カシン配下の兵士と共に、襲撃を受けているチョウアンへと向かう俺。遠方からコウジュン
   氏達を空間魔法により移動してくれるとの事だ。

    ただ・・・いきなり目の前に現れるのはマズいな。何とか上手く演出できないものか。



    チョウアンに到着して驚愕した。テンスイからの侵攻は手当たり次第に襲い掛かっており、
   もう暴虐の一言としか言い表せられない。トウタク氏が悪逆なだけに、この流れは必然とも
   言えるのだが・・・。

    そんな中で孤軍奮闘している武将を発見した。どうやらその人物はカシン軍団の配下では
   なさそうである。というか・・・これは・・・。

仮面の風来坊(・・・カユウ氏が侵攻軍に対して暴れてるわ・・・。)
ミスターR(何と! カユウさんがいらっしゃるとな?!)
リョフ(彼はトウタク配下の猛将と聞いている。それが奴の暴政に見かねて離反したと考えるのが
    妥当か。詳細は不明だが、お前達とも同調できるだろう。)
ミスターR(ディルさん、俺をミスターの所に飛ばして下され! カユウさんとあらば、助けねば
      俺の流儀に反しまする!)
ディルヴェズ(わ・・分かりました。)
    何時になく燃え上がるミスターR。彼は以前カユウ氏が大変お気に入りだと話していた。
   その彼が苦戦しているとあれば、馳せ参じたくなるのは痛感できる。俺もリョフ氏が同じく
   苦戦している立場なら、何振り構わず救出に向かうわな。

リョフ(しかしトウタクの牙は、ついにチョウアンに向けられだしたか。となると他の軍勢は必ず
    ラクヨウに侵攻するな。)
オウイン(ですな。北はソウソウ殿、東は黄巾党。風前の灯とはこの事かと。)
    険しい表情をするリョフ氏とオウイン氏。意思の疎通の念話の派生により、脳内にその状況
   が鮮明に映り出す。例の大陸地図の配置を、腕を組みながら模索していた。
リョフ(ふむ・・・よし、俺達は引き続きナンチュウ・ブリョウ・チョウサ・ケンギョウの守備を
    徹底するぞ。混乱に乗じて侵攻してくるかも知れん。)
モウカク(分かったぜ!)
ソンケン父(承知した!)
シェガーヴァ(お任せあれ!)
   リョフ氏の号令で一気盛んに燃え上がる一同。無双での彼から毒気が抜けた状態では、表向き
   にはぶっきらぼうだが切実さに溢れる青年と化している。俺が望んだ実像、誰からも好かれる
   猛将の姿だ。俺はこれを見たかったんだわ。

    仲間に増援を依頼しつつ、俺は先鋒で戦っているカユウ氏の加勢に回る事にした。リョフ氏
   が述べた事が当たっていれば、トウタク氏から離反したと推測できる。なら尚更助けねば俺の
   生き様に反する。



精鋭騎兵長「カユウ殿、敵の攻勢が一層激しさを増しています!」
カユウ「ぬぅ・・・抑え切れぬか・・・。」
精鋭部隊長「はっ・・・カ・・カユウ殿・・・、後方より・・敵武将らしき人物が・・・。」
    大苦戦中のカユウ氏達に近付く俺。やはり俺の死神的な出で立ちに相手は驚愕している。
   敵兵士達は彼らではなく、俺の方にターゲットを向けてくる。しかし同じく死神の姿に驚愕
   していた。

カユウ「むぅ・・・貴公も敵側の武将か・・・。」
仮面の風来坊「いや・・・猛将カユウ氏を助けに来た、しかない風来坊さ。」
    カユウ氏に接近しつつ、敵兵士達にイルカルラを投げ付ける。ダークの計らいで魔剣化して
   くれていた。つまりこちらの意思で自由に操る事が可能となる。ブーメランの如く敵に襲い
   掛かり、そのギラついた刃で相手を斬り付けていく。当然ながら魔剣最大の長所たる、魂殺し
   も健在だ。
カユウ「な・・何と・・・刃が相手を擦り抜けている・・・。」
仮面の風来坊「超絶秘技、魂殺しの暗殺技さ。これなら相手を殺さずに倒す事が可能だからね。」
ミスターR「それにこういった技も可能ですぜ!」
   カユウ氏の背後を守りつつも、圧倒的な敵兵士の前に押され気味のこの場。そこに空間魔法に
   より直接転送を行われた軍団が到着する。ミスターR・コウジュン氏・ミュティラ3姉妹、
   そして不死身の精鋭軍団である。

    現れるや否や武器で相手の攻撃を防ぎ、体術でダウンさせていく仲間達。特にコウジュン氏
   が超重量の砕棒を防御に回しているのが何とも言えない。普通なら砕棒で叩けば十分ダメージ
   を与えられるのだが。

    もはや仲間内のプロレス技で相手をダウンさせる戦法は当たり前になっている。これなら
   相手を殺さずに倒す事ができるため、全力を以て対峙できるのが強みだろう。

コウジュン「おおっ、貴殿がカユウ殿ですか。俺はコウジュンと申す者、以後お見知り置きを。」
カユウ「これはご丁寧に、拙者はカユウと申しまする。」
ミスターR「俺はミスターR、カユウさんの大ファンですぜ!」
仮面の風来坊「何とも・・・。」
    簡単な自己紹介をしつつも、攻撃の手を休めない面々。特にコウジュン氏とミスターRが
   コミュニケーションを取りだすと、ミュティラ3姉妹が邪魔をさせまいと守りだすのが何とも
   言えない。彼女達は不死身の身体を持つため、どんな攻撃を受けようが直ぐに癒えるのも長所
   だろう。だから思う存分戦えるのだから。

仮面の風来坊「Rさんや、カユウ氏達を任せていいか?」
ミスターR「モチのロンですぜ!」
ミュティラ「私達が皆さんを厳守しますね。」
    直ぐに連携を取り出すミスターR達。既に他の場所で連携訓練たる戦闘を行っているため、
   どの様な戦場でも順応してしまう姿には感嘆せざろう得ない。
仮面の風来坊「分かった。コウジュン氏さ、片っ端から拠点を制圧して回ろう。後方の憂いを絶ち、
       敵を殲滅させる。」
コウジュン「了解! お任せ下され!」
ミュティナ「ディルさんから一個師団を2軍団お借りしました。1軍団はこちらで、もう1軍団は
      マスターの方でお願いします。」
仮面の風来坊「あんがとさん、助かるよ。」
ミュティヌ「おーしっ、かましたれぇー!」
   何時になく暴れまくるミュティラ3姉妹。まあ彼女達のはっちゃけ度の受け売りはミツキが
   影響しているのだが。本当にミツキは全ての人物に対しての、明るさというプラスの要素の
   師匠的存在だわ・・・。

    主力陣はカユウ氏やミスターR達に任せ、俺はコウジュン氏達と共に近場の拠点から潰して
   回っていった。彼の拠点制圧を得意としている荒業は目を見張るものがある。その彼を補佐
   していけば、制圧に関しては申し分ない。

    先にも述べたが、ミスターMIが語る史実内容。伝説のチョウリョウ氏よりもコウジュン氏
   の方が遥かに強いとの事だ。その彼の力を借りれば、獲物の砕棒も相まって鬼に金棒とは正に
   この事だろう。

    しかし・・・この無差別に襲撃する様は何とも言い様がない。これがトウタク軍団が生き様
   とするものか。


仮面の風来坊(・・・略奪・強奪・・悪逆の限りを尽くす、か・・・。)
カユウ(ぬぉ?! な・・何ですかこれは・・・。)
ミツキ(カユウちゃんね。これは念話という奴わぅ。あ、わたはミツキわぅ。よろしくわぅ!)
カユウ(これはご丁寧に、拙者はカユウと申しまする。)
    念話に対して驚愕するカユウ氏だが、ミツキの簡単な自己紹介には誠心誠意応じる部分が
   見事なものだ。やはりリョフ氏が猛将と言うだけあって、強者としての心得を心懸けている。

ミツキ(でで、本題は何わぅ?)
仮面の風来坊(ああ、悪逆の一件だわな。)
ウエスト(人間の醜さが露呈される生き様だからな。まあそれも個人の生き様だから、表立っての
     批難はできない。だが・・・俺はその生き様を強く否定する。)
    一際苛立ちを見せるウエスト。彼の思う結末は、盟友達の幸せの確立だ。強いては全ての
   人の安寧にも繋がる。それを食い物にするのが悪逆の生き様。反論するのは当然だわな。
仮面の風来坊(俺も彼と同じだ。敬い・労い・慈しみの精神が欠落した生き様など話にならんわ。
       ミツキ達の生き様を否定するようなものだからな。)
リョフ(前の俺なら考える所だが、今はチョウセンや仲間達が苦しむ圧政と暴政には断固反対だ。
    カユウもトウタクのその生き様に同調できず、奴の元から離反したのだろうからな。)
カユウ(・・・確かにそうですな。今のトウタク殿は何振り構わず、己の野望を達成しようとして
    いらっしゃる。仲間をも糧とするような姿に、とても耐えられなくなりました次第で。)
ミスターR(残念がる事などないっすよ。結果的にこうやって中道に回帰できたんですからね。俺達
      と一緒に戦えば、そこには氏が望む純粋無垢の生き様を刻めますぜ。)
   カシン軍団の増援が到来し、今の状況よりは楽になりつつある。しかし略奪などを目的とした
   トウタク軍団の何振り構わない行動、これにはてこずるしかなかった。


仮面の風来坊「敵軍団の様子はどうなんだ?」
カシン配下「西側からの進軍が後を絶ちません。貴公方が抑えてくれていますが、押し切られるのも
      時間の問題かと。」
    通常会話も一同に聞こえるように念話も含めたもので話している。俺の身体を媒介とし、
   意思の疎通の中継地点となっていた。これはもう携帯そのものだわな。
コウジュン「こりゃぁ・・・チョウアンを厳守しないと、ラクヨウもヤバいですぜ。」
仮面の風来坊「そうだな・・・。」
カシン配下「殿にも援軍を要請していますが、出られる軍は限られているようで・・・。」
仮面の風来坊「そりゃそうだわな。ラクヨウから主力陣を増援に派遣したとなると、ラクヨウ自体が
       狙われる可能性が・・・。」
   まさか・・・敵はそれを狙って動いているのか・・・。略奪はしつつもチョウアンを強行軍で
   攻めようとはしていない。むしろ他の出方を待っているとしか取れないわな・・・。

リョフ(ふむ・・・ソウソウやチョウカクがトウタクと手を結び、カシンを潰そうと考えるか。)
オウイン(ですがそれでは利害一致とはいかないでしょう。お互いにラクヨウを狙っている様子と
     見られますから。)
ソンケン父(黄巾党とソウソウ軍団は水と油の存在だからな、手を組む事はないだろう。かといって
      トウタク軍団も同じだろう。これは少々気になるな・・・。)
    お互いに睨み合っている手前から、同盟や共闘はまず考えられない。オウイン氏が語った
   利害一致とは絶対ならないだろう。やはりこれはトウタク氏の軍団が先手打って動いたと言う
   べきだろうな。
リョフ(・・・諸々、承知した。引き続き俺達は各地域の守備を徹底するぞ。懸念する混乱に乗じて
    侵攻して来るかも知れん。念には念を押そう。)
ビィルガ(承知仕った!)
   リョフ氏の言葉で一同は全て理解したようだ。今の現状は何時何処で戦闘が起きてもおかしく
   ない状況という事を。早い段階でリュウヒョウ軍団を潰さなくて正解だったかも知れない。



コウジュン「・・・はっ、ダンナ! 向こうから逃げてくる奴がいますぜ!」
仮面の風来坊「む・・誰だ?」
    念話を終えた後も戦闘は続く。そんな中、突然コウジュン氏が叫び出す。彼が指し示す方向
   から逃げてくる人物がいるではないか。黄金色の衣服に簾の様な帽子を被っている。というか
   これは・・・。
仮面の風来坊「ええっ・・・何故献帝氏が現れるんだ・・・。」
コウジュン「な・・なんと?!」
   俺の言葉でコウジュン氏や念話を通して仲間達が驚愕しだす。確かに目の前に迫る人物は、
   5エンパや6エンパでも馴染み深い献帝氏だ。
献帝「す・・すまぬ・・・賊に追われておる、助けては下さらぬか?」
仮面の風来坊「それは構いませんが。」
コウジュン「直ぐさま防衛に当たりますぜ。」
   この献帝氏、誰かが演じているという訳じゃなさそうだわ。身形や雰囲気からして、当の本人
   と推測できる。だが何故この場に現れたというのかが気になるが・・・。

コウジュン「失礼ですが、帝殿は何故この場に?」
献帝「チョウアンの王城がトウタク軍に奇襲され、使いの者が逃亡を手助けしてくれてな。命辛々
   逃げ出せたのだ。数日前から襲撃の兆しはあったと伺っていたが、まさかいきなりとは。」
コウジュン「そこまで魔の手が伸びていたとは・・・。」
    献帝氏の発言から、事の次第がトウタク氏軍団によるものが確定的になった。確か史実でも
   トウタク氏は献帝氏を利用して、独裁政権を敷きだしている。この流れは必然的だろうな。
   唯一異なるのが、目の前の献帝氏がトウタク氏軍団に捕まっていないという事だ。
仮面の風来坊「了解しました、献帝氏の安全を守りましょう。」
献帝「おおっ、すまない。心から感謝致す。また折り入ってお願いを聞いて下され。今も王城では
   使いの者が孤軍奮闘しておる。できれば救出を頼みたいのだが。」
仮面の風来坊「了解です。コウジュン氏、献帝氏の護衛を頼む。あとカユウ氏達と合流して行動した
       方がいいだろう。」
コウジュン「了解しやした!」
   献帝氏の護衛をコウジュン氏達に任せ、俺は単独で献帝氏が居た王城へと向かった。献帝氏の
   存在は、今後の流れを決定付ける重要な要素だ。荒くれ者と謳われるモウカク氏達を献帝氏の
   庇護勢力とすれば、住民の方々の賛同も得られるだろう。

    とにもかくにも、最大の目的は天下安寧。そして住民の方々の平和だ。そのためには、俺は
   悪道以外ならどんな手段を使ってでも達成させてやるわ。

    第1部・第07話へと続く。

    後半へと続く。

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