アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第13話 決着の時3〜
シルフィア「力とは勇気、君が記憶を失う前にも言っていた事よ。」
    物思いに耽っていると、恩師シルフィアの声がした。入り口を見ると彼女が入店している。
   更に見掛けない女性が3人いたのだが、その中の1人にエラい懐かしい雰囲気を感じる。更に
   厨房にいるシュームがエラい恐縮した雰囲気になってもいる。
エリシェ「お帰りなさいませ。諸々は順調に進んでおいでで?」
シルフィア「ミュセナさんが後始末に追われているわ。ギガンテス一族のテクノロジーの流出が発覚
      しただけに、血眼になって追跡している感じだけど。」
ビアリナ「やはり軍服連中の力はギガンテス一族のものでしたか。」
ミスターT「・・・となると、連中はもっと前に地球で暗躍していたという事か。カーチェイス事変
      や他の諸々も淵源はそれだったのかも知れない。」
シルフィア「それを彼女が躍起になって追跡している訳よ。ギガンテス一族の王族側以外からの技術
      流出とあるから、それは即ち自分達に原因があるとね。」
   これは後々の火種になりかねないものか。まあだとしても、俺達が加勢するのはミュセナ側の
   勢力なのは間違いない。先の軍服連中事変で受けた恩は必ず返していかねば。

ミスターT「ところで、そちらのお3方は?」
シルフィア「・・・やっぱ忘れちゃってるか。シュームさんはご存知よね?」
シューム「ご存知も何も、孤児院の覇者ヴァルシェヴラームと魔王セルディムカルダートで。」
ミスターT「む? つまり俺が幼少の頃にお世話になっていたという事か。」
    シュームの言葉に慌ててその場に立ち上がり、女傑2人に頭を下げた。今の俺自身には全く
   記憶がないが、記憶を失う前の自分が大変お世話になった偉人である。
ヴァルシェヴラーム「畏まらなくてもいいですよ。貴方がここまで偉大になった事が何よりの誇り。
          シルフィア様には本当に言い尽せない感謝がありますし。」
セルディムカルダート「貴方をこちらの師匠に託したのは正解でした。更に貴方の遠い血縁がある
           方が、まさか私達の共通の恩師だったのも見事なものですよ。」
   ヴァルシェヴラームとセルディムカルダートの孤児院の母以外に、シルフィアすらも恐縮して
   いる女性。黒髪に黒と紫色の衣服を纏ったその姿は、今の俺の姿に全く以て酷使している。
   そして失った記憶の欠片が過去の記憶を呼び起こしたのか、ある言葉が脳裏に浮かんだ。
ミスターT「・・・スミエばあさまか?」
スミエ「ほほっ、まさか名前で呼んでくれるとは。」
ナツミYU「ば・・ばあさまって・・・どう見ても私に近い年齢なのですが・・・。」
シルフィア「マスタースミエはT君と同じく、老化が訪れない特異体質よ。ただ実年齢は・・・。」
   両手を駆使してジェスチャーするシルフィア。それに驚愕する周りの女性陣だった。かく言う
   俺も正確な年齢は窺ってなかったので、これには同じく驚愕するしかない。
シューム「なるほど、血縁があるのが雰囲気で分かります。この恐怖と安心を兼ね備えた様相は、
     他の人物じゃ出せません。」
ナツミYU「そして恐らくですが・・・スミエ様も警護者で?」
スミエ「警護者・・・懐かしい響きです。もう70年以上前の話ですが。」
シルフィア「警護者も警護者、私が今の実力に至ったのはマスタースミエが淵源よ。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   とんでもない事も分かった。恩師シルフィアが警護者界最強の闘士だと思っていたが、実は
   他にもとてつもない実力者がいたようだ。しかもそれが俺の遠い血縁の者だったとは・・・。


ミスターT「と言うか、何たって今頃登場で?」
スミエ「雲行きが怪しくなりましてね、シルフィア様から直々にオファーがあったのですよ。」
エリシェ「・・・例の後始末の一件ですか。」
    スミエの登場は後の火種への対策となる様子。更にその淵源を見事に読むエリシェ。それに
   小さく驚く彼女だが、見事な推理だと頷いている。
スミエ「実は私が警護者全盛期時にも、今回と同じくギガンテス一族とドラゴンハート一族には大変
    お世話になっていまして。今の方々が生まれる前の話なので分からないと思いますが、今回
    の事変よりも厄介な戦いがありました。」
ミスターT「ミュティ・シスターズやルビナすらも生まれていない時・・・。というか、彼女達の
      実年齢からすると・・・。」
シルフィア「前にも言ったよね、地球上の年齢と宇宙での年齢は全く違うと。この地球上での時の
      流れは物凄く速く、宇宙に出ればそれだけ遅くなる。つまりマスタースミエを彼女達の
      概念に乗せれば、それプラス万歳加算になるわね。」
   再び両手を使ったジェスチャーで年齢を示す。どうやら口に出そうものなら、とんでもない
   事になる表れか・・・。それを無意識に感じ取った周りの女性陣は、エラい強張った表情で
   頷いている。というか頷くしか手段がなさそうだ・・・。

シルフィア「今回の事変で燻っていた火種が再発した感じですね。」
スミエ「それだけで済めば良いのですが・・・。」
    会話しつつ懐を漁るスミエ。何と骨董品とも言えるキセルを取り出したではないか。それに
   火を着けて一服しだすのだ。大正時代の貴婦人を思い起こすような仕草に、俺はおろか周りの
   女性陣も顔を赤くして魅入ってしまった。
スミエ「今時キセルは場違いでしょう?」
ナツミYU「と・・と・とんでもない・・・。物凄くお綺麗です・・・。」
シューム「シルフィアさんだけが逸脱した女性像を醸し出していると思いましたが、スミエ様はその
     遥か先・・・いや次元が違います。」
シルフィア「私はマスタースミエの姿を何度も見てるからねぇ〜。今の私の言動などは、殆ど受け
      売りに近いし。」
ミスターT「へぇ・・・素じゃなかったんですか。」
シルフィア「・・・これだから君は・・・。」
   恩師の俺を一蹴する言動は、普段は物凄くテキパキとした一撃を放ってくる。しかし今の彼女
   は怖ず怖ずといった雰囲気が強い。目の前に彼女の師匠たるスミエがいるからだろうな。
スミエ「私に対しての気遣いは不要ですよ。Tちゃんみたいに自然に接してくれる方が有難いのが
    本音です。」
シルフィア「い・・いや、流石にそういう訳には・・・。」
ミスターT「恩師のこの姿、何か新鮮だわ・・・。」
   同じく一服しながらやり取りを見つめる。今もキセルを薫らせる姿が物凄く格好いいスミエ。
   その姿に脳裏の深層にある、過去に育てて貰った記憶が呼び覚まされるようだ。しかし実際
   には記憶喪失により、思い巡る事は不可能だが。



ミツキ「うわぁ〜お! こちらのバアチャンは誰わぅか?!」
    突然現れるミツキ。絶対に述べてはならない事を語る姿に、周りの女性陣は超絶的に青褪め
   だした。あのシルフィアでさえ顔を青褪めている。
スミエ「・・・物凄い千里眼で、私の実年齢からの様相を当てるのは見事です。」
ナツミA「すみません。ですがスミエさんから感じられるオーラは、Tさんのそれと全く同じで。
     Tさんもそうですが、見様には歳相応の様相が見て取れます。」
ミスターT「ミツキもナツミAも、ばあさまの本当の姿を見抜いた訳か。」
   ごく自然体で接するミツキとナツミAに、元祖警護者たるスミエも驚いていた。と言うか本人
   の素体を見抜くのは、姉妹以外には恩師しかできないだろう。ただ恩師は恩人たるスミエの
   手前、畏まっている感じが見て取れる。同じ素体で飾らない姉妹だからこそ、ドストレートな
   発言をしたのだろうな。
ミツキ「巫山戯すぎました、すみません。でもスミエさんがTさんのお祖母さんなのには驚きです。
    実際に遠縁の方で?」
スミエ「物凄い薄いですが、同じ血が流れているのは確かです。」
ナツミA「実際に血縁があるのは感じます。シュームさんが述べていた、恐怖と安心を兼ね備えた
     部分が正に証拠でしょうし。」
ミツキ「Tさんと同じ黒と紫が好きなのも見事なものですよ。」
   ミツキがスミエの衣服を指摘する。唯一違う点はスカートである部分と、黒を強調している
   俺とは異なり彼女は紫を強調している部分だ。それ以外ではスカート・ロング・ジャケット・
   コートと俺と殆ど変わらない出で立ちである。
ミツキ「アレわぅ、例のペンダントで性転換して並ぶと良いわぅよ。」
スミエ「ほほ、ギガンテス一族の力ですね。以前私も潜入捜査で男性化した事がありましたので。」
シューム「・・・何から何まで似てるわねぇ。」
   慣れてしまえば誰でもフレンドリーに接するシューム。この部分は彼女の長所だろう。対して
   ナツミYUは今もエラい緊張した面持ちをしている。警護者としての実力はシュームを遥かに
   超えるため、その潜在能力の凄まじさに当てられている感じになるか。

ミツキ「ところで、スミエちゃんの得物は何わぅ?」
スミエ「“何者をも魅了する美貌”・“全てを威圧する恐怖”・“何事にも屈しない誇り”です。」
ミツキ「・・・本気で言ってるわぅ?」
    スミエが語るそれは、往年の名作ゲームのサガ・フロンティアは妖魔と言う種族の3つの
   概念だ。俺もプレイした事があるから分かるが、今もバリバリ現役のミツキやナツミAにも
   意味は通じているようである。他の女性陣には元ネタを知らない故に強烈過ぎたのか、今まで
   以上に顔を青褪めているのは何とも・・・。
ミスターT「それ、“何者をも魅了する美貌”はミツキ・“全てを威圧する恐怖”はシルフィア・
      “何事にも屈しない誇り”はナツミAじゃないかね。」
ナツミA「あー、まあそうとも言えますねぇ。」
ミツキ「シルフィアちゃんの恐怖度は流石のスミエちゃんも勝てないわぅね!」
シルフィア「ご・・ご冗談を・・・。」
スミエ「またまたご謙遜を。かなり前にTちゃんを馬鹿にする輩に、殺気と闘気だけで半殺しにして
    ましたよね。貴方が本気になった場合の怒りと憎しみは、私は到底敵いませんよ。」
   あのスミエが幾分か恐々と語る姿に、恩師の本気度が垣間見れた。シルフィアの怒りの淵源、
   それは俺と同じく大切な者を貶された時に帰結する。スミエが言うそれとは別だが、俺もその
   場面に遭遇した事がある。確かに強烈過ぎて以後の見方が変わったのも事実だ。
スミエ「かなり前にTちゃんが、その3要素の元ネタとなる作品をやっていた時。これは言わば全て
    の人に当てはまるのではと思った次第です。Tちゃんは3つとも備わっている感じになり
    ますけど。」
シューム「彼は極端すぎるほど、その場その場でエラい雰囲気が変わりますし。」
スミエ「フフッ、よく観察されてますね。滅多な事では表に出さない感情なだけに、それを察知する
    貴方は見事なものですよ。」
   スミエの褒め言葉に恐縮気味になるシューム。確かに彼女は対面する相手の深層心理や性格を
   見事に読む特技がある。同じレベルの猛者たるナツミYUですら不可能な荒業だ。

ミスターT「俺の見解だが、シュームの観察力は身内で最強だと思う。やはり思うのは、人それぞれ
      得手不得手があるという事だの。」
ミツキ「ぬぅーん、Tちゃんが高所・水・セミが嫌いなのと同じわぅね!」
ミスターT「・・・事実だから反論できん。」
    彼女の言葉で周りの女性陣が笑い合う。実際に高所と水が苦手なのは何度も見てきた女傑達
   である。その場面を思い起こしてのものだろう。
スミエ「数多くの警護者が乗る飛行機を、墜落から救ったあの事変。あれ以来から高い所がダメに
    なったそうで。」
ナツミYU「そうですね。ただその事変があったからこそ、私達はこうして生きていられますし。
      お孫様のマスターには返し切れない恩がありますから。」
スミエ「そう意固地にならなくても良いですよ。当時のTちゃんが私利私欲で動いた訳ではないのは
    明白です。目の前の人を助けたい、この一点に帰結したからこそ動けた。自らの記憶を犠牲
    にしてまでね。」
ナツミA「それは結果論になりますが、本音だと決死の覚悟で挑まれたと思いますよ。Tさんの一度
     決めた事を徹底的に貫く姿勢は今も健在ですから。当時も同じ決意だったと思います。」
   今ではすっかり周りの女性陣に馴染んでいるスミエ。そして周りの女性陣も普通の応対をする
   姿が見え出した。これはシルフィアの基礎にもなっているからだろう。今も恩師に備わる長所
   の1つである。ただ初対面の人物には、超強烈な印象を与えるのが事実だが。
ミスターT「ハッキリとは覚えてないが、ばあさまに人の役に立てと常々言われてきた感じがする。
      献身的一念から、ミツキ十八番の敬い・労い・慈しみの精神と。」
スミエ「そう、それです。ミツキ様の姿勢が、私が草創期に抱いていた一念と完全に同じ。これには
    本当に驚きました。むしろTちゃんの中にも内在・・・と言うか、全ての人に内在する一念
    に過ぎませんが。」
ミツキ「それを開花できるかどうかが人生の醍醐味になる、ですよね?」
スミエ「ですね。人は些細な事で開花も堕落もする。やはり必要なのは良いお手本になる人物に巡り
    逢う事。私の場合なら良き師匠に巡り逢うと言い切りますがね。」
   再びキセルを薫らせながら語る彼女。俺も常々心懸けている一念は、正にここに有りと言い
   切れる。本当に凄い事だとしか言えないわな。


ナツミYU「あの、私達も貴方様を師匠を言い切ってもよろしいでしょうか?」
スミエ「フフッ、もっと身近にその存在がいますよ。」
    警護者として・女性として・人としての敬意を込めた一念だろう。ナツミYUが語るそれは
   物凄く深いものだ。ただそれを言われたスミエは、意味深に返すだけに留まる。多分これは
   俺の事か・・・。
スミエ「そう、Tちゃんの事ですね。」
ミスターT「うわぁ・・・心中読み・・・。」
シルフィア「恩師のそれは更に凄まじいわよ。私の心中読みはマスタースミエの受け売りだからね。
      模して今の実力になったけど。」
シューム「Tちゃんの浅はかな胸中なんか直ぐに読まれるわねぇ〜。特に異性をイヤラシい目線で
     見る部分なんかね。」
ナツミYU「・・・これだからマスターは・・・。」
   普段から気丈に振る舞うナツミYUの新鮮な姿を見た部分を返されたのだろう。その視線を
   色目として捉えてきた。それに顔を赤くするも、物凄く怒り出すナツミYU。自身が胸中で
   決意した一念を茶化されたと思ったようだ。しかも語り草に恩師の十八番を使うとは・・・。

スミエ「フフッ、Tちゃんは皆様に愛されていますね。それ即ち、Tちゃんが今までの生き様を刻み
    続けて来た事への裏返しとも。我ながら、遠縁の祖母としては誇らしいです。」
シューム「・・・お祖母様、今後のTちゃんの事は全てお任せ下さい。」
ナツミYU「私も同意見です。」
スミエ「その逆ですよ。色々とご迷惑をお掛けすると思いますが、何卒よろしくお願い致します。」
    一旦キセルを置き、その場で深々と頭を下げるスミエ。一連の言動から何から凄まじいもの
   であり、畏まった姿にすら気品を感じさせるのは見事としか言い様がない。
シルフィア「ミツキさんスタイルの、持ちつ持たれつ投げ飛ばすよね。」
ミツキ「ウッシッシッ♪」
ナツミA「それがスミエさんにも内在しているのが何とも。」
   根底の一念が据われば、無双の如き力を発揮しだす。それを恩師やナツミツキ姉妹を通して
   痛感していた。ナツミYUやシュームもしかりだ。その淵源がスミエとなると、この一連の
   定石的な気質は自然体と言うしかない。全ての人に内在する力、だな。


    その後も雑談は続くも、スミエの存在感は凄まじいものである。ただし、シュームと同じく
   一度慣れだすと親しみを感じ出すのは見事なものだが。

    噂を聞き付け、地下工房からナツミツキ四天王とミュティ・シスターズも登場。会話には
   参加してなかったルビナと共に、スミエの存在感に驚きを示していた。そして口を揃えて言う
   のは、彼女がナツミツキ姉妹とシルフィアにクリソツである点だろう。

    そしてこの出逢いが、後の大きな事変への布石になる。それを俺を含め、この時誰も知る
   由もなかった。

    第14話へ続く。

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