アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第14話 最終話・新たな火種2〜
    どれだけ暴れたのだろう。突然、参戦してくる面々の姿があった。ギガンテス十八番の技術
   である性転換をし、友好拡大を行ったトライアングルガンナーの女性陣。エルシェナを筆頭に
   凄腕の女傑が揃い踏みだ。

    俺がレプリカ大和で抗戦中、ナツミツキ四天王が何度か修行相手になっていたそうである。
   今では名実共に凄まじい戦闘力を誇る集団との事。何れ来るであろう、戦いの時に彼女達の
   実力が拝めると思っていた。それが今正に来たと言うのには驚きだが。

エルシェナ「えー・・・お久し振りです、“ミスT”様。」
ミスターT「だー・・苦い記憶なんだから止めてくれ・・・。」
    態とらしく語るエルシェナに顰めっ面を浮かべる。ただ俺の応対に笑顔でいるのは、今の
   流れは一応の確認を取った形か。今は本来の野郎の姿なので、実際に披露するのは今が初めて
   になる。
デュリシラ「フフッ、皆様は全てご存知ですよ。貴方が性転換してまで戦闘訓練をしてくれた事を。
      今では警察郡や自衛隊の方々に引けを取らないぐらいの戦闘力に至っていますし。」
デュシアL「今の実力からすると、国内での有事の対処はトラガン部隊が最有力候補でしょうね。」
   後続から駆け付けをしてくれた彼女達は、俺達が殆ど丸腰である事を気にしていたようだ。
   別途特殊車両を乗り付けており、それぞれが愛用の得物を運んできてくれている。
ミスターT(ルビナとミュティナ、この会場周辺に飛び交う流れ弾は全部撃墜してくれ。)
ルビナ(お任せを。ミュティナ様方と一緒なら問題ありません。後方の憂いは全て絶ちますので、
    安心して進撃を。)
ミツキ(うっほーい! 進撃のワンコわぅー!)
   最後の最後でのミツキのボケに笑ってしまう。それはこの場にいる俺達以外に、トラガンの
   女性陣にも聞こえていたようだ。交戦しつつも笑っている姿が見受けられた。

    愛用の得物が運ばれてきたとあってか、合間を縫ってミツキが駆け付けてくる。彼女の愛用
   の武器はマグナムの2丁拳銃、以前俺がカーチェイス事変で借りていたものだ。他には特注品
   のダブルトリガー2対である。それらを手に取ると、元の場所へと戻っていく。

    続いてナツミAが駆け付けて、ミツキと同じダブルトリガー2対とマシンガンを持ち戻る。
   彼女のウリは超遠距離射撃だが、今は近距離とあっての得物の変更だろう。

    その後はナツミツキ四天王が1人ずつ、それぞれの得物を取りに来ている。護衛箇所を疎か
   にすると危険だという事が行動から窺えた。流石は不屈の6闘士である。

    エリシェも愛用の拳銃を取りに向かう。俺も方天画戟を止めて、今では恒例の黒色トリプル
   パニッシャーを持って暴れるとしよう。本来なら射撃での流れ弾が危ないが、仲間や周りの
   方々がバリアに守られているなら問題ない。


    本来の警護者スタイルに戻った事で、避難している参加者さん側は今以上に盛り上がって
   いた。ゲームやらの出で立ちで得物を振るう様は、さながら作品から飛び出したキャラクター
   そのものだ。

    特に俺達が扱う得物の大多数のネタはゲームが元である。ヲタクの方々からすれば、それは
   正に大歓喜するようなものだろう。しかし実際はその得物が人を簡単に殺しかねない恐ろしい
   兵器である。

    何処から何処までが安全なのか、そんなの分かったものじゃない。常人からすれば凶器と
   取れるが、俺達警護者側からすれば命を預ける大切な相棒なのだ。得物を持つ側により、その
   様相がガラリと変わる様は見事としか言い様がない。

デュシアL「そのパニッシャーでしたか、準備するのに大変でしたよ。」
ミスターT「すまんの。」
デュリシラ「超重量火器兵器の1つですからね。常人では絶対に持って振り回せません。」
    トリプルパニッシャーを装備する俺の周辺で暴れる女性陣。実は最近この姿が多い。それは
   パニッシャー自体が超重厚な大盾になるからだ。特に相手が遠距離攻撃武器を装備している
   場合、恐ろしいほどの特効薬となる。

    本家のパニッシャーは十字架風の得物で、そこに身を隠す事は非常に難しい。ところが、
   このレプリカは機関砲やレールガンが内蔵されている側の両サイドが左右に開くのだ。それに
   より銃弾などを防ぐ大盾になる。しかもマグナムの弾ですら弾くほど堅固である。

    俺がパニッシャーを盾として、そこに女性陣が身を潜める。相手の攻撃をやり過ごしたら、
   自分も含めて反撃を開始する。これは俺がレプリカ大和で戦っていた頃に考案されたものだ。
   ただ単にマンガの同得物を再現するだけではなく、そこから発展させた形になるだろう。

    それに見る所、人型機械兵器郡は最初は素手や手持ちの棒状の得物を使っていた。それが
   今では鞭やらボウガンやら弓やらを扱っている。こちらの得物の変化に対応した形だろう。
   と言うか、それを即座に判断できるのか・・・。


ミスターT(ミュセナさんや、聞こえるかな?)
ミュセナ(あ、はい。何でしょう?)
ミスターT(この連中は例の軍服連中とは異なると取って良いのかね?)
ミュセナ(それが・・・分からないのです。今も人型機械兵器が出た場所のサーチをして回っている
     のですが、まだ出所を掴めていません。)
    ミュセナに意思の疎通による念話で話し掛ける。直ぐに応じてくれた事から、こちらの行動
   は読めているようだ。しかし相手の出所に関しては掴めていないようである。
ルビナ(私達の船からも地球全体にサーチを試みていますが、今の所目立ったものはありません。
    相手が生体兵器ではないため、超広範囲生体レーダーでの索敵ができないもありますが。)
シューム(案外、これは地球人の仕業かもね。)
   シュームの一言で一同黙ってしまう。先の軍服連中事変を考えると、十分在り得る話になる。
   ただそうすると、一体誰が放った刺客なのかが気になるが・・・。

スミエ(今は詮索は要りませんよ。私の時は今ほど情報網が整っていなかったため、迫り来る愚物を
    その都度潰して回っていました。攻撃されるなら反撃を、です。)
ミュセナ(アッハッハッ! 流石スミエ小母様ですね!)
ミスターT(はぁ・・・淑女が無邪気に・・・。)
    スミエの声を聞いたミュセナが一段と湧き上がっている。淑女を体現したかの様な彼女が、
   その声色はミュティヌやリュリアに近い無邪気さを醸し出している。そう言えばミュティナ
   から伺えたが、ミュセナは幼少の頃にスミエに世話になっていたとの事だ。
ミュセナ(裏方の行動は全てお任せをば。皆様方は目の前の迫る愚物を叩き潰して下さいな。)
ミュティナ(・・・こんな母を初めて見ましたよ・・・。)
ミツキ(猫被っていたわぅね!)
ナツミA(貴方はくまモンの着ぐるみを被っているけどね。)
ミツキ(くまモンやったるモン!)
シルフィア(はぁ・・・賑やかでいいわねぇ。)
   相変わらずミツキのボケで爆笑してしまうのは見事なものだわ。周りの面々も笑っている。
   しかしどの様な戦場であれ、心のゆとりを失ってしまっては負けは確定だ。ミツキの気質は
   全てにおいての勝利の方程式を体現していると言って良いわな。


スミエ(Tちゃんは幸せですね。ミツキ様方の様な素晴らしい人物と巡り逢えています。警護者の
    世界は仲間の存在は足枷になりかねません。特に家族を持てば、人質に利用されるのが通例
    ですから。)
ミスターT(それを真っ向勝負で否定し、捻じ曲げるのが警護者というのがね・・・。)
スミエ(フフッ、良いではありませんか。力とは限りない勇気と希望、プラスの力が正にそれです。
    起爆剤とするならマイナスの力も必要となりますけど。)
ナツミYU(それ、以前お孫様から伺いましたよ。)
    本当にそう思う。俺が彼らに何度か語った内容を、スミエの口から語られた事に驚いた。
   いや、恐らく凄腕の警護者が必ず回帰する概念なのだろう。超絶的な戦闘力と兵器を有するが
   ために、最終的には己自身が最大の敵に至ってくる。一歩間違えば堕落してしまうのは言う
   までもない。
ミツキ(恐怖は暗黒面に通じておるのだよ。)
エリシェ(ハハッ。恐怖は怒り・怒りは憎しみ・憎しみは苦痛に通じている、でしたね。)
ミツキ(うむぬ。シメは、お前には怖れがある。これわぅね。ヨーダちゃんの名言わぅ。)
スミエ(スターウォーズのダークサイドもライトサイドも、生命に内在する善悪の象徴を言い換えた
    ものですからね。私達の様な警護者にも重々当てはまりますし。)
   絶大な戦闘力を持つ故に、堕落した場合は超絶的な愚者となりかねない。スターウォーズは
   ジェダイの騎士が正にそれで、ダークサイドに落ちた先がシスとなるのだから。
ミスターT(ジェダイとシス、か。人間の根幹の概念を表した様相だわな。)
スミエ(ですね。まあそこは各々が思った回帰先に委ねますが。)
   物凄い意味深な例えで締めるスミエ。その意味合いは今の俺にも十分理解できる。先も言った
   ものだが、力を持つ故に最後は己自身との対決に帰結してくる。

スミエ(それに、どちらの勢力も師弟関係は存在します。ですが悪は戒める存在が欠落している。
    だから悪道に陥ってしまう。Tちゃんの周りには、叱咤激励を超えた戒めをしてくれる存在
    が数多くいてくれる。これがどれだけ有難いか、肝に銘じておきなさいな?)
ミスターT(委細承知。腐っても伝説の警護者の遠縁だ、間違った道など絶対に進まんよ。それに
      周りには素晴らしい盟友達がいる。これほどまでに心強い事は他にはないわ。)
    心の底から感謝する一念、それが念話を通して全員に伝わったのだろう。彼らの表情が何時
   になく穏やかなのが窺えた。利他の一念、誠意ある対応。ミツキが根幹とする、敬い・労い・
   慈しみの精神。これが今の俺達の大切な概念である。
シューム(くぅ〜・・・念話は本当に素晴らしいわねぇ〜。T君の深層心理まで窺えられた。まるで
     その胸の中で抱かれているような感覚、一段と惚れてしまった感じよね・・・。)
エリシェ(す・・素で仰られますか・・・。)
シューム(あら、この場にいる大多数の女性陣はそうじゃないかしら?)
   シュームの念話に該当する女性陣がソワソワしい。意思の疎通・念話自体が言わば心と心の
   会話そのものであるからか、その深層の一念が強く伝わってくる。それだけ俺の事を想って
   くれているのだ。そして同時に何が何でも彼らを守らねばならない、この一念に自然と回帰
   するのだから凄いものだわ。

シルフィア(そうね、T君の思った通り。どの様な流れであっても、必ず回帰できる先があるのは
      幸せな事よね。それができないのが人型機械兵器郡を放った愚者よ。)
    何を思ったのか、十八番の展開式パイルバンカーを地面に置く。すると今まで以上の動きで
   人型機械兵器に接近し、何と右手正拳突きで胸を貫通させたのだ。これには驚愕してしまう。
   彼女はどう考えても人間の領域を超えていない。それがギガンテス一族の様な堅固な筐体を
   持ちえているのか・・・。
ミツキ(ウッシッシッ♪ 正に人型機械兵器なんざ素手で、わぅ!)
ミュティナ(実はペンダントのバリア効果は外面からの物質を防ぐのと同時に、ご自身の身体の強度
      も増させるのです。だからと言って鋼鉄の人型機械兵器を貫けるとは限りませんが。)
ルビナ(それだけシルフィア様の技術力が素晴らしい証拠ですよね。)
スミエ(一点集中突破で撃破、ですよ。)
   弟子に負けられないと取ったのか、地面に長刀を置くと同じ様に体術で戦いだすスミエ。右腕
   から繰り出される正拳突きで人型機械兵器を破壊していくのだ。開いた口が塞がらないという
   のは、正にこの事である・・・。
ナツミA(ポチもそうだけど、シルフィアさんもスミエさんもあの力の出せる加減を熟知されている
     と思います。だから一点集中突破で破壊できる。しかもミュティナさんが仰るバリア効果
     で身体が金剛の様に堅固に至っていますし。)
ミツキ(ま・・まさか・・・体術で一掃可能わぅか?! うぉー! やったるわぅー!)
   何ともまあ、くまモンの着ぐるみ状態のミツキが暴走しだした。得物を地面に置くと、迫り
   来る人型機械兵器に向かってシャイニングウィザードを繰り出したのだ。ただその一撃で破壊
   は不可能だが、金属に対して肉体で殴っても痛みは訪れないようである。それを知った彼女の
   動きは更に増していった。

    地面にダウンした人型機械兵器にヘッドロックを放ち、強引に首元から圧し折ったのだ。
   これには周りの面々は驚愕するしかない。しかし感化される事も忘れないようだ。特に近場に
   いたナツミツキ四天王が同調し、得物を置いて体術勝負を仕掛けだしたのだ。

    そしてこの流れにトラガンの女性陣が同調しだす。彼らに修行を施されていた経緯からか、
   その同調性は自然的なもののようだ。まるで師匠と弟子が組むかのような様相での大乱闘に
   至りだしている。

    後半へと続く。

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