アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第1話 高々度襲撃1〜
    軍服連中との長い戦いが終わるも、息抜きで赴いたコミックマーケットの会場で謎の襲撃を
   受けた俺達。

    ギガンテス一族のヘッドたるミュセナでさえ、十八番の技術力で地球全体をサーチしても
   相手を発見する事ができなかった。ほぼ同属のドラゴンハート一族のルビナもしかり。

    そこで導き出された結論が、俺達と同じ地球人が絡んでいるというものだ。軍服連中以外
   にも敵対勢力がいるという事になる。しかもギガンテス一族やドラゴンハート一族の十八番
   たるテクノロジーを持った連中だ。

    こうなると、スミエが語る通りの戦術を取るしかない。迫り来る愚物をその都度叩き潰して
   いくという単純なものだ。端的かつ確実に行えるものだが、俺達がいるその場が戦場になる
   のは気が引ける。一歩間違えば一般人側に死者も出る可能性も十分有り得るからだ。

    ただ1つだけ分かるのが、誰を狙って来ているかという事だ。今まではギガンテス一族の
   テクノロジー欲しさに襲撃や奇襲を繰り返してきたが、今度は俺達全体を狙ってきていると
   いうものだ。特にその中で俺をターゲットにする回数が多い。

    再びレプリカ大和・レプリカ伊400を用いた洋上生活に戻るしかなくなるか。一般人が
   住む場所に要らぬ火種は放ちたくないわ。


    先日、その結論を一同に述べた。すると、とんでもない答えが返って来た。俺1人に押し
   付ける訳にはいかないと、この場に残り共戦を展開しろと豪語している。諸々の被害が拡大
   する怖れがあるから、洋上生活に戻ると思ったのだが・・・。

    となると、ここはギガンテス一族とドラゴンハート一族のテクノロジーを駆使した逸品を
   作成するしかない。ルビナも得意とする、閉鎖的に空間を固定させる手法だ。既にバリアの
   能力があるペンダントはあるが、それを広範囲に拡大したものになる。言わばシールドだ。

    ただそうすると、敵対側もバリアに守られる怖れが出てきそうだ。その懸念を語ると、何と
   生命体の善悪の判断に働き掛けるとか。俺も含め凡人には理解し難いものだが、地球外生命体
   からすれば朝飯前なのだろうな。

    以前、ルビナが語っていた。地球外生命体の自分達からすれば、地球人の心情を読む事は
   容易いものだと。それはミュティ・シスターズ側もそうだろう。となれば、今の世上の愚者の
   心情も簡単に読めていると思う。

    さぞかし心境は複雑だろうな。守るべき地球と地球人の一部が、その様な間違った道に進む
   のだから。それでも俺達を信じて歩んでくれている。本当に感謝に堪えない。


    ともあれ、如何なる環境であろうが問題はない。要は己自身がどの様な生き様を貫くかに
   帰結するのだから。恩師シルフィアが十八番の名言が何度も去来する。

    誰彼がどうこうじゃない、自分自身がどうあるべきか。それが重要だ、と。

    それに周りには戒めてくれる存在が数多くいてくれる。だから誤った道に進まないのだ。
   愚者側も戒めてくれる存在がいてくれれば、誤った道に進まないのだがな・・・。

    まあ何であれ、敵対するのなら容赦なく叩き潰すまでだ。でなければ、こちらが潰される。
   相手が極悪と分かるなら、冷酷無慈悲な程の鉄槌を下すまで。



ミスターT「はぁ・・・。」
    目の前にある依頼内容に愕然としている。どこからともなく現れる兵器郡は健在で、それに
   対しての行動がこれだ。高々度からの監視を強化するというものである。つまり空だ・・・。
ミスターT「どうにかならんかね・・・。」
エリシェ「こればかりは流石に。」
ビアリナ「ただし、不意の襲撃に対しての対策には上出来でしょうけど。」
   今は喫茶店のカウンターにいる。先程エリシェが来訪し、この依頼内容を提示してきた。厨房
   をビアリナに任せ、新たに購入した新型PCで現状の把握を開始する。

    空は嫌だと思いつつも、そのプランから先に至る部分が脳裏を過ぎった。これ、今も不明な
   敵側に利用されないかが気になる・・・。確かに対抗策として考案したのだろうが、それは
   敵味方問わず有利に運びかねない。

    特に空に上がれば、それだけ宇宙空間が近くなる。ギガンテス一族やドラゴンハート一族の
   宇宙船にまで悪影響を及ぼさないか心配だ。それらを考えての作戦としたら、この作戦は受諾
   するのは非常に危険である。

ミスターT「・・・貶す訳じゃないんだが、どうも下賤わ・・・。」
エリシェ「・・・その技術力が敵側に使われたら、ですか?」
ミスターT「あら、既に読んでたか。」
    こちらの心の内をエリシェに語ると、ものの見事に読まれてしまった。と言うかこの場合、
   彼女も内心懸念していたものだろう。
エリシェ「高々度は成層圏に近いものなので、そこから宇宙空間に進出も可能です。となれば、今は
     到達不可能な宇宙母船にアクセスも可能になりますし。」
ミスターT「この依頼の出所が気になるわ・・・。」
   俺が調べる内容を、肩越しに見つめる彼女。この依頼が後の大きな火種になるなら、請け負う
   のは止めた方がいい。しかし、そこに依頼を望む声があるなら挑まねば警護者ではない。
ミスターT「・・・受けてみるか。」
エリシェ「もし今後、不安要素が出現するならお任せを。大企業連合の力で何とかします。」
ミスターT「むしろアレだ、高々度を飛べるレプリカ大和でも必要になりそうだな・・・。」
   高々度を長時間飛行できる乗り物、しかも飛行機郡ではない代物が今後の要因か。それこそ
   ゲーム・スカイターゲットで出てくる飛行戦艦フランベルジュなどが該当するが、実際に実現
   するのは非常に難しい。ただ、重力制御の理があればあるいは・・・。

ビアリナ「決行日は何時になさるので?」
エリシェ「明後日ですね。それまでに色々と準備をしませんと。」
ミスターT「受けるのはいいが、空がな・・・。」
    空や水という条件じゃければ、何処でも赴くのだが・・・。ただこの依頼は実際に見ない
   事には分からない。下手をすれば敵側に有利に働くかも知れないしな。
ミスターT「まあ何だ、乗ったからには最後まで突き進むわ。」
エリシェ「了解です。早速準備に取り掛かりますね。」
   紅茶を飲み干してから、店内を後にするエリシェ。表で待っていた護衛の人物と共に去って
   行く。この護衛なのだが、トラガンの精鋭中の精鋭が担当しているという。実戦経験を得る
   ために展開しているらしい。
ミスターT「ビアリナはどうする、ハリアーUで暴れるか?」
ビアリナ「そうですねぇ・・・その方が有事は有利かも知れませんね。」
ミスターT「と言うか、高々度だろ・・・。表にはどうやって出るんだか・・・。」
ビアリナ「まあ何とかなりますよ。」
   アッケラカンと答えるビアリナに呆れるしかない。出逢った頃の彼女は淑女風だったが、今は
   エリシェにソックリになってきている。それでいてシルフィアに近いライセンスを持つため、
   恐ろしいまでの戦闘力を持つに至っているのが何とも。

    とにかく、今はこの依頼が今後どの様に影響を及ぼすのかを見定める必要がある。もし2大
   宇宙民族たるギガンテス一族とドラゴンハート一族に悪影響を及ぼすなら、それ相応の行動を
   するつもりだがな。これに至らない事を願うしかない。



    2日後、羽田空港へと赴いた。と言うか、恐怖の何ものでもない。目の前に鎮座している
   のは、かつてナツミYU達と共にアメリカに赴いた際に使った巨大ジャンボジェット機だ。

    ただこれは後方からの支援用で、護衛対象は後に空で合流する複数のジャンボジェット機を
   用いるという。ここはその手のプロに任せるしかない。

    にしても、大空は本当に勘弁して貰いたい・・・。これ程の恐怖など他にないわな・・・。
   しかし今回の依頼が今後を左右する事から、ここは何が何でも赴かなければならない。

    俺達を空輸するのなら気絶でも良いだろうが、今回は高々度での護衛というのが何とも。
   もはや警護者の範疇を超えている・・・。

エルシェナ「あら・・・こんにちは、“ミスT”様。」
ミスターT「あ・・ああ・・・よろしく頼むよ・・・。」
    巨大ジャンボ近くに向かうと、エルシェナ率いるトラガンの精鋭が待っていた。今回は彼女
   達と一緒のようだ。案の定、茶化しの一言が加えられる。が・・・今はそれ所ではない。
エルシェナ「ど・・・どうなされたので?」
ビアリナ「実はマスターは空が大の苦手でして。」
エルシェナ「へ・・へぇ・・・。」
   俺の意外な側面を見たのか、エルシェナ達はエラい呆れ顔になっている。しかし俺の怖がり方
   が度を過ぎている事から、逆に心配になってきているようだ。
エリシェ「先日も拒否気味だったのですが、今回の依頼の重要度が気になる様子で。」
ミスターT「はぁ・・・何とでも言ってくれ・・・。」
   ふら付きながらも巨大ジャンボに搭乗しようとすると、颯爽と両脇を抱えてくれるビアリナと
   エリシェ。何だかんだ言うものの、しっかり支えてくれるのは本当に有難い。しかし俺の自重
   が相当なもので、支えるのに苦労しているのが表情で分かる。

    海上時の依頼の際のふら付きは、力の出せる加減を熟知しているミツキやナツミAが支えて
   くれた。よってホンの最低限の力で支えるだけで良い。だがビアリナもエリシェもその感覚は
   全く理解できていないようだ。それがこの表情だろう。何だか申し訳なくなってきた。

    ふら付く身体に鞭を打って、両脇の2人を一気に肩に担ぐ。突然の行動に驚愕するのだが、
   直ぐに大人しくなるのは通例なのか。ちなみに俺はナツミツキ姉妹に力の出せる加減の触りを
   伝授して貰った。完全には出せないが、ある程度の力なら出せる。

    そう言えば以前、ナツミYUやシュームは俺の何気ない行動でも嬉しがるという。それは
   ビアリナとエリシェも同じ様で、一瞬にして大人しくなったのは正にこれだろう。2人を肩に
   担いだまま、巨大ジャンボに乗り込む事にした。

    当然ながら、タラップ先の搭乗口は狭い。そこは2人を降ろして搭乗した。もしそのまま
   なら、外面にぶつかってしまうのは言うまでもない。



    安定感だけは大したものである。離陸を開始して大空に飛び上がるも、この区画だけは地表
   と水平に維持できる特殊な装置を用いているのだとか。俺が航空機を苦手としている事から、
   かなり前に特設したものらしい。

    まあそれ以外にも重要物資を不安定にさせる事なく空輸する目的もある。まさかその部分に
   俺自身が恩恵に肖るとは何とも言い難い・・・。

ミスターT「・・・ビアリナさ。今更ながら、何でお前もいるんだ?」
ビアリナ「ああ、ハリアーUの件ですか。この機体の後方格納庫に搭載してあります。」
エリシェ「通常のジャンボジェット機の3倍近い機体なので、戦車などの重量級車両でも問題なく
     搭載できますよ。」
ミスターT「はぁ・・・。」
    何ともまあ・・・。確かにこの巨大ジャンボのサイズは、通常のジャンボの3倍以上の規模
   を誇っている。先程の羽田空港の滑走路もギリギリ着陸できるぐらいのものだったが。その
   機内格納庫にまさかハリアーUを搭載できるとは・・・。
エリシェ「あと以前仰っていたプランも実現しました。レプリカ伊400の密閉棟にハリアーUを
     2機搭載できました。この場合はハリアーU改になりますが。」
ミスターT「やりおるわ・・・。それに改と言ったが、胴体は入るとして翼が格納できない。上手い
      具合に折り畳めるようにしたんだろうな。」
エリシェ「その通りで。またレプリカ大和には5機のハリアーU改を搭載しました。こちらも同じ様
     に改良を加えたものです。」
ミスターT「なるほど。有事の戦闘力に関しては問題なし、か。」
   第2次大戦時の遺物たるレプリカ大和とレプリカ伊400。それに現行兵器のハリアーUを
   搭載する部分は見事なものだ。しかも搭載し易いように改良を加えた特殊仕様のようである。
   特にレプリカ伊400にハリアーU改を搭載する意味は非常に大きい。

エリシェ「一応ですが、この作戦時の近海ではレプリカ伊400が警備に就いています。従来の原潜
     をも凌ぐスペックを持つに至ったので、地球上のどの海域にも赴けますよ。」
ミスターT「帰りはレプリカ伊400で戻るわ・・・。」
ビアリナ「は・・はぁ・・・。」
    これ朗報との感じで応えると、呆れ顔になる女性陣。それだけこの大空は本当に苦手だ。
   問題はどうやって高々度から海面に降りるかだが・・・。
エリシェ「と言うか・・・レプリカ伊400は苦手の1つの海ですよ?」
ミスターT「遺物自体に乗れる興奮度の方が強いからねぇ。レプリカ大和での洋上生活時も苦では
      なかったよ。」
ビアリナ「何というかまあ・・・。」
   そんなに空と水が苦手なのかと、一段と呆れ顔になる彼女達。確かに水の方も苦手だ。しかし
   先も言った通り、遺物に乗れる事でほぼ相殺できている。対して空の方はどうしようもない
   ぐらい怖いしな・・・。もしも、Ta152Hでもあれば別だが・・・。
エリシェ「フフッ、心中を読めましたよ。しっかり対策もしてます。」
ミスターT「はぁ? ・・・まさか、ここにTa152Hもあるのか?!」
エリシェ「レプリカですが、特注品の改良版を搭載しています。まあ実際に乗られるかまでは不明
     だったので。」
ミスターT「戦闘機のライセンスでも取っておけば良かったわ・・・。」
   俺の表情が一変した部分にも呆れ顔になっている面々。しかし同時に空への恐怖度が薄らいで
   いるのも分かったようで、幾分か落ち着いた雰囲気が感じられる。

ビアリナ「・・・共に乗れば操縦は可能ですけど?」
ミスターT「無理だろ、あの狭いコクピットでは。」
ビアリナ「いえ・・・貴方の膝に座れば容易で・・・。」
    エラい赤面のビアリナ。しかし語る内容に非常に魅力を感じずにはいられない。ただ相当
   窮屈なフライトになりそうだが・・・。
エリシェ「へぇ・・・私もライセンス取りますかね・・・。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   そしてエリシェにより見事な殺気に満ちた目線で睨まれた。完全にヤキモチである。それでも
   遺物たるレプリカTa152Hに乗れるのは本当に嬉しい。レプリカ大和やレプリカ伊400
   には、ただ乗るだけで済んだ。しかし戦闘機たるレプリカTa152Hはライセンスがないと
   乗るのは厳しい。
エリシェ「まあでも、貴方が空に対して苦しまなければ良いですよ。見ているこちらも心苦しくなり
     ますし。」
ビアリナ「本当にそう思います。」
ミスターT「そんなに悲惨な表情しているのか・・・。」
   俺の言葉にウンウン頷く女性陣。相当強烈なようで、その恐怖度が薄らぐ部分には賛成して
   くれているようだ。
ミスターT「まあダンデム搭乗はまだしも、俺も空でも役に立つなら申し分ない。そのためなら全て
      の力を使ってやるわ。」
エリシェ「フフッ、本当に頼もしいです。今回の依頼は地上とは訳が違いますから。」
ビアリナ「地上や海上なら助かる見込みはあるものの、空中となると全く変わってきますし。」
   依頼内容になると表情を曇らせるエリシェ。それだけ今回の依頼が相当厄介だという現れだ。
   今まで見せた事がない顔である。その彼女や周りの負担を取り除ければ、俺の存在も無駄では
   ない。


    暫くすると、アナウンスで護衛対象と合流したと流れた。窓の外を見ると、3機のジャンボ
   が併進している。しかも機上には不思議な物体を搭載していた。

    ・・・非常に嫌な予感がする。確かに不確定要素への対策には打って付けだ。しかし逆を
   言えば、宇宙にある母船や大母船を狙いかねない不安要素に化ける可能性も十分ある。

    ただし、この護衛対象のジャンボは人工知能搭載による無人機のようだ。もし不穏な行動を
   しようものなら、撃墜しても構わないだろう。まあ最悪の事態に陥ったら、だが・・・。

    ・・・ここは、この依頼を達成させるしかないのかね・・・。

    中半へと続く。

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