アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第3部・第01話 恐怖の暴君3〜
ドクターT(・・・正直に言う。俺も同族故に言えた立場じゃない。だがあえて言うなら、人間を
      守る意味はあるのか。地球を蝕む害虫は人間以外にないだろうに。)
    胸中の思いが自然と出た。人類こそが地球を蝕む害虫だと。究極論理だが、これ以外に淵源
   があるのなら教えて欲しいものだ。地球は46億年掛けて今の流れに至ってきた。人類は高々
   数万年程度に過ぎない。いや、それ以下の存在である。その存在がたった数百年で地球の環境
   を破壊し出している。これ程罪深い生物は他にはいないわ。
ミツキ(その行き着く先の考えが、Gガンダムの東方不敗さんですよ。地球の生態系が崩される要因
    は人類の存在が淵源だと。つまり人類を抹殺すれば阻止できるとも。)
ナツミA(でもその人類も大自然の一部なのよね。それを弟子たるドモンさんに諭され、自らの過ち
     を知った。以後の全てを彼に任せ、師匠は息を引き取った。)
ミツキ(フィクションの世界ですが、それは全て今の世上に当てはまります。烏滸がましいですが、
    誰かが調停者や裁定者を担わなければならない。だからこそ、私達があるのですよ。)
   これも胸中に出ていた答えの1つだが、ミツキとナツミAが見事に代弁してくれた。罪深い
   人類も大自然の一部である。それを滅ぼそうとするなら、地球を滅ぼすのと全く同じ事だと。
   しかし実際は、今も自然環境を破壊しているのが実状である。
シルフィア(皮肉よね。本来は地球の住人となる人類が、自らを抑制していかねばならない事よ。
      国連などが正にそう。彼らが率先して動いていくしかない。しかし決定的な抑制には
      至っていないし。)
エリシェ(大企業連合も一役買えれば良いのですがね。実際には財力の横暴だなどというヤッカミが
     飛び交いますし。)
シルフィア(貴方達の場合は国連とは違うわね。実際に国以前に世界自体を動かす力がある。各国の
      代表を即座にクビにする事だって可能だし。)
ミツキ(お前はクビわぅ!)
ナツミA(ビンスさんの十八番よね。)
   超真面目な会話の最中、恒例のミツキのボケが炸裂する。それに不甲斐無いばかりに爆笑して
   しまうのは言うまでもない。そしてナツミAのツッコミも実に的確とも言える。アメリカの
   プロレス団体WWEは会長ビンス氏の十八番の台詞だ。

エリシェ(・・・実際にクビにしてやりましょうかね。)
ラフィナ(恐怖の暴君さながらに、と。)
シルフィア(実力を伴っていると、本当に怖ろしい事この上ないわよね。)
    ボソッと語るエリシェに恐怖を感じずにはいられない。大企業連合は地球自体を支配して
   いる超財閥とも言い切れる。恩師が言ったが、各国の代表をクビにする事も簡単である。だが
   生命哲学の理に準じているため、それはあくまで威圧的行動であり実際に行う事はないが。
   地球最大のボランティア軍団たる躯屡聖堕フリーランスも同じ理を持っているため、エリシェ
   達に同調できる意味合いが痛感できる。
ドクターT(俺なら問答無用で徹底的に駆逐しそうだがの。)
ミツキ(ウッシッシッ♪ 恐怖の暴君の君臨わぅね!)
ナツミA(独裁政権になりそうねぇ。)
ミツキ(ブレインがしっかりしてれば大丈夫わぅ?)
ナツミA(ポチがブレインをしたら、そこら中にワンコとニャンコが屯しそうよね。)
シルフィア(何その生類哀れみの令。)
ミツキ(んにゃ、ワンニャンパラダイス発令わぅ!)
   ・・・この美丈夫には本当に感嘆するしかない。エリシェ達の力を前にすれば、迂闊な事は
   絶対言えなくなる。実際に力が備わっている人物ほど怖ろしいものはない。しかしこの女傑達
   は臆する事なくボケやツッコミを言い放つのだ。そして周りは笑ってしまうのである。
エリシェ(アハハ・・・何と言うかまあ・・・。)
ドクターT(この3人には敵わないわな。)
   おそらくミツキ達が実力を伴っても、それをボケとツッコミにして笑いに変えるのだろうな。
   そしてそこから突破口を開き、無血革命で解決するのだ。名実共に揃っていなければ成し得る
   ものではない。この姉妹の実力を否が応でも思い知らされる感じである。

    同日の依頼は終わったので、撤収という形になった。しかし今はグローブライナーでの移動
   寝泊りをしているため、以後は現地解散となる。ナツミYUとデュシアLもそれぞれの自宅へ
   戻って行った。

    この移動寝泊りは場所を特定される事を極力抑える意味合いもある。過去に行った潜入捜査
   時でも同じ流れを取っている。まあ当時は今ほど厳しくはないため、数週間で終わったが。
   今回はそれだけ長丁場になりそうだ。既に実行してから半年が経過している。


    それからもティエラとエシェムFの専属護衛は続く。専ら一定の距離を保っての護衛で、
   何事もなく済んでいた。彼女達が通う学園は固定されているため、偶に地元の面々が現れて
   来るが。その時ほど癒しの瞬間はない。

    しかし面々が口を揃えて語るのは、護衛対象の2人は実に暗い雰囲気だと言う。しかもその
   暗さが外部が原因であるのも見抜いている。特質的な力を持ったために、内外から特異の目で
   見られる事が所以だろう。どれだけ窮屈な思いをしているのか。

    そこで臨時的処置として、この2人をナツミYUの学園に転校させる事を父親に提言した。
   理由は2つ。1つ目は彼女達の暗さの改善。これは身内の女性陣に頼むしかない。俺では限界
   がある。そこで2つ目の臨時で地元に住ませる事だ。コミュニケーションを図る事もある。
   そして得られる結果が、手元に置く事で守り易くなるというものもある。

    ここまで来ると、俺が誰なのか薄々と把握されだしているようだ。数々の出来事をほぼ無血
   革命で済ませた、警護者の1人であると。態々この恐怖の暴君を演じてまで接近したのに、
   実際には何の役にも立たなかった事には遣る瀬無さが募るが・・・。

    まあ何であれ、ティエラとエシェムFを守り通す事が俺の使命である。それに俺1人では
   限界があるのも確かである。先の提言はそれらを全て解決させるためのものだ。



ナツミYU「申し訳ないわね。現地でもご友人がいたでしょうに。」
ティエラ「いえ、大丈夫です。」
エシェムF「昔から転校を繰り返していたので。」
    ナツミYUが総括する総合学園に転校してきたティエラとエシェムF。俺の提言は簡単に
   通ってしまった。と言うか、今現在は娘の方まで手が回らない感じに思える。これでは暗い
   雰囲気になるのは言うまでもないわ。
ミツキ「にゃっはー! OBのミツキわぅー! よろしくわぅよ♪」
ナツミA「ミツキの姉、ナツミ=アンドウと言います。よろしくね。」
ドクターT「OBねぇ・・・。」
   喫茶店でのDJブースはサラとセラに任せ、専属護衛としてミツキとナツミAを派遣した。
   更にはトラガンの女性陣も担当してくれるとあり、本当に肩の荷が軽くなった思いである。
   やはり同性同士の方が気が合うに決まっているわ。

デュシアL「仮面はそのままなので?」
ドクターT「まだ取るには早いだろう。連中が何処で出てくるか分からない。」
ビアリナ「大丈夫だとは思いますが。」
    久方振りの再会に、身内の面々は大いに喜んでいる。それだけで非常に嬉しい限りだわ。
   ただ役割方、今後も恐怖の暴君のままでいなければならないが。
ミュティナ「ほほ、あの赤ちゃんがここまで大きくなられて。」
ルビナ「ですね。」
ヘシュナ「私はリュリア様ぐらいの頃に見掛けましたが、今では美女そのものですよ。」
ドクターT「まるで小母だな・・・。」
   ティエラの姿を見て、懐かしそうに昔を振り返る3大宇宙種族の筆頭格。ミュティナもルビナ
   もヘシュナも、過去に彼女と会っていたようである。となると、ティエラの実年齢は相当高い
   感じがするが・・・。

ドクターT「これ、ティエラには兄弟・姉妹はいないのか?」
ミュティナ「残念ながらいません。だから父親方が躍起になっている訳ですよ。」
ルビナ「言い換えると、一人っ子は守る側も大変ですから。」
ヘシュナ「姉妹がいる有難みを本当に痛感します。先事では妹や一族に迷惑を掛けましたし。」
ドクターT「まあそう言うな。お前が矢面立って連中を引き付けねば、一網打尽にはできなかった。
      最後の喫茶店での決着もそうだが、全員集まってこそ連中も集まってきたしな。」
    一服しようも一服できない出で立ちなので我慢するしかない。今の雰囲気なら一服しながら
   の語りになるのだが。
ドクターT「・・・だからエシェムFを妹の様に見ている、か。」
ヘシュナ「十分あります。エシェムF様と一緒にいる時のティエラ様の表情、他の誰といても明るい
     ものですし。」
ドクターT「ただ・・・何れミツキとナツミAがそこに加わるとは思うが。」
   ミツキの明るさにタジタジのティエラとエシェムF。しかしあれだけ頑なな表情だった2人が
   直ぐに変化しだしている。それだけミツキのコミュニケーション力は半端じゃないものだ。
   逆にその影響でも明るくならないのなら、本当に困りものだったかも知れない。

    俺もナツミツキ姉妹とナツミツキ四天王と会うまでは、ティエラやエシェムFの様に非常に
   暗い雰囲気だった。周りが口を揃えて言うのは、そこまで冷徹無慈悲な表情ができるのかと
   いう程に。それがあの6人と出会った事で激変したのだ。しかも殆ど一瞬で、である。

    何度も言うが、ミツキはもはや凡夫の域を超えているとも言える。しかし凡夫に変わりは
   ないのだから本当に怖ろしい。いや、むしろそれが人間の当たり前の姿なのかも知れない。
   要は開花できるかできないか、ここに至るだろう。

    それに何もミツキだけが特別・特質的な存在ではない。人並み以上にその力を開花できる
   から、特別・特質的に見えるだけである。その淵源は敬い・労い・慈しみの一念だと確信して
   いる。この部分がなければ開花すら無理だろう。人としての当たり前の生き様が刻める彼女
   には、何度となく敬意を表したくなる。

    中半3へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る