アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第1話 闇の風来坊2〜
ミスターT「・・・本当なのか、それ・・・。」
    アメリカへ到着する前に、ナツミYUの口から驚愕の内容を知らされた。俺の知らない時に
   彼女と会っているのだと言う。厳密には知らないではなく、忘れてしまったとの事だ。
ナツミYU「貴方が15歳の頃、同じ様に依頼を請け負った事があります。大規模な護衛依頼で、
      当時は国内を移動していました。その時に裏切り者が出て大事故に至ったのです。私を
      含む複数の護衛対象者がいましたが、奇跡的に誰も負傷をしていません。」
ミスターT「推測だが、その時に俺が唯一負傷したという事か。それに俺は15以前の記憶がない。
      記憶喪失と取るべきか?」
ナツミYU「鋭いご推察、その通りです。その大事故も今の貴方の苦手さと繋がっています。」
   俺の過去を語る彼女。俺自身は15歳の時に大事故により記憶を失ったというのだ。確かに
   意識がハッキリしているのは、15歳の病院のベッドの上からだ。それ以前の記憶は全く思い
   出せないでいる。

ミスターT「・・・航空機を操縦できていたのか。というか、15歳以前の俺も護衛者を担っていた
      のには驚いたが・・・。」
ナツミYU「いえ、普通の青年だったそうです。恩人が仰るには格闘センスはあったそうですが。
      その裏切り者を捕縛したのも貴方でした。ですがその首謀者は航空機のコンピューター
      を狂わせ、操縦不能に陥らせたのです。」
    会話の途中、ネイディアが紅茶を差し出してきた。それに小さく頭を下げて啜る。秘書的な
   存在だが、どうやらこの3人はナツミYUの直属のボディガードだろう。
ナツミYU「見事な操縦でしたよ。こちらも恩人が仰るには、幼少の頃は航空機を題材としたゲーム
      などで、なかなかの腕前をされていたとの事です。それが実際に活躍するとは思いも
      しなかったと。」
ミスターT「大事故は免れたようだけど、何らかの形で墜落はした。そう取るのが無難か。」
ナツミYU「ええ。この一件は海上での出来事でして、しかも首謀者は燃料投棄という暴挙にも出て
      いました。何とか陸地まで辿り着き、緊急着陸はできました。ただ、コクピットごと
      地面にぶつかってしまい・・・。」
ミスターT「内部にいた俺だけが負傷した、という事か。」
   当時の俺も本当にやりおるわ・・・。本物の航空機、多分ジャンボクラスだと思う。ゲームや
   フライトシミュレーターとは全く勝手が違う。それを上手く操縦し、大惨事に至らせないで
   不時着させたというのだから。


ナツミYU「貴方は孤児という事で、事故後は私達も陰ながら見守り続けました。ところが、怪我が
      完治すると格闘技や護身術を学び出しましたし。何時しか身辺護衛ではその名を知ら
      ないとまで謳われる強者に至っていましたので。」
ミスターT「その辺りは良く覚えているよ。病床から復帰し何を思ったのか、無意識に己の強化を
      始め出したわ。それを数年間行うと、振り返ればとんでもないレベルまで達していた。
      あれには度肝を抜かれたけど。」
    一服しながら当時を思い馳せる。記憶自体はその航空機大事故で失われたが、身体の方は
   必須だと受け止めたのだろう。それが今の護衛者の礎となっている。
ナツミYU「ウインドさんとダークHさんの一件もご存知です。あの時から、以後は重火器を用いた
      護衛者稼業を行われだしましたね。」
ミスターT「お前は探偵かね・・・。」
ナツミYU「フフッ、陰ながら見守る姉のようでしたよ。」
   にこやかに微笑むナツミYU。先程の冒頭で彼女から伺ったが、俺とは6歳差の年齢という。
   俺が28歳なので・・・まあ、挙げるのは止めておこう。後で手痛い竹箆返しが来そうだわ。

ナツミYU「あの航空機には数多くの強者が乗っていました。恩人もしかり、同業者しかりと。故に
      貴方が記憶と引き換えに皆さんを救った事に、今でも感謝の念を抱いています。無論、
      私もそうですけど。」
ミスターT「当時の俺がどう思っていたかは分からんが、全くの無欲だったと思うよ。誰も死なせ
      まいという一念が強く出て、一心不乱に動いていたと思う。」
ナツミYU「でしょうね。貴方の明るさは見事なものでした。事務所でお会いした、ミツキさんに
      似ていらっしゃいましたし。」
ミスターT「語末に“わぅ”までは付けてないだろうな・・・。」
    明るさがどこまでだったかは不明だが、流石にミツキ縁の“わぅ”語末は使ってないわな。
   そんな冗談を告げると、エラい笑い出す彼女。先程出発時に何度かそれが出て、面を食らって
   いたのが印象深い。
ナツミYU「久し振りにお会いしても、貴方の眼差しは全く変わりませんでしたね。ただ笑顔が全く
      なくなっていましたが。」
ミスターT「ひでぇな・・・。これでも周りが言うには、ミツキの影響でかなり笑顔が多くなったと
      言うんだがねぇ・・・。」
   本当にそう思う。数年前に彼らを護衛する前と、それ以降とでは雲泥の差である。それだけ
   彼らの存在が太陽の如く輝いている証拠だろう。


ナツミYU「でも・・・本当によかった。昔の貴方のままで。」
ミスターT「俺の知らない俺を知っている、という訳だしな。」
    再び一服しながら思い馳せる。ナツミYUからの護衛依頼は、過去があって今があるという
   流れで間違いない。彼女自身が凄腕の傭兵だった事から、本来なら護衛は近場の面々だけで
   済んだだろう。これは言わば俺に色々と確認したかったからだと思う。
ナツミYU「あの、今後何かあれば最大限お力になります。何でも仰って下さい。」
ミスターT「馬鹿だな、俺が見返りを求めて動いていると思うのか?」
ナツミYU「フフッ、それこそ愚問ですね。ですが返し切れない恩があるのは事実。過去に貴方が
      言っていた言葉を用いれば、“生き様は死ぬまで貫き通してこそ意議がある”です。
      私は私なりに動きますので、覚悟して下さいね。」
   自愛に満ちた表情で見つめてくる。まるで母親の様な暖かさだ。そしてナツミYUの信念と
   執念が凄まじい事も十分窺える。

ミスターT「・・・なら、1つだけお願いを聞いてくれるか?」
ナツミYU「あ、はい。私にできる事であれば。」
ミスターT「・・・頼むから、現地に到着するまで気絶させてくれ・・・。」
    俺の言葉に驚愕する彼女。同様に周りの面々もしかり。ナツミYUとの会話中に、窓から
   表を眺めてしまったのだ。その時に眼下に広がる青い海や白い雲を見てしまい、とてつもない
   恐怖心に襲われだしている。

    この言葉に頷くと、俺を近くのソファーに寝かし付けるナツミYU。すると彼女も自分の
   隣に座り、俺の頭を膝の上に優しく乗せるではないか。

ナツミYU「大丈夫です、私がついています。貴方は何も心配なさらなくていいのです。現地までは
      まだまだ時間が掛かりますので、今はお休みになられて下さい。」
    俺の額にソッと手を置き、そして胸を優しく叩きだした。子供を寝かし付ける時の仕草だ。
   それに安堵したのか、急激に眠気が襲ってきだす。
ミスターT「・・・まるで魔法だな・・・。」
ナツミYU「恐怖心は安堵感で相殺できますから。貴方1人では厳しいですが、傍には私もいます。
      今は何も考えずにお休み下さい。」
ミスターT「ハハッ・・・学園の覇者と呼ばれる意味を痛感したよ。」
   ナツミYUの暖かな厚意に一層眠気が襲う。それに委ねろと促す彼女に従い、俺は静かに瞳を
   閉じた。彼女は孤児院の母親や師匠に似ているのかも知れない。



    どれぐらい眠っていただろうか。不意に肩を叩く感覚で目を覚ました。今も俺の頭を膝に
   乗せているナツミYUがいる。

ナツミYU「現地に到着しましたので、起きて下さい。」
    寝惚け状態で聞かされた事実に驚愕し飛び起きる。慌てて窓の外をと窺うと、何と空港に
   着いているではないか。
ミスターT「・・・あれから何時間経ったんだ?」
ナツミYU「ざっと12時間です。」
ミスターT「・・・お前さんの癒しの膝枕は化け物だわ・・・。」
   僅か短時間ほど仮眠と思っていたのが、半日近く寝てしまっていた。これにはただただ驚く
   しかない。そう言えば出発前にナツミYUが全て任せろと言っていたのは、この事だったの
   だろうな。

ミスターT「すまんな。すっかりお世話になっちまって。」
ナツミYU「いえ、お気になさらずに。」
    身支度を済ませると、特殊ジャンボから降りる。相変わらずこの規格外の巨大さには驚愕
   してしまう。しかし航空機としては最高峰の安定感だろう。
ミスターT「それで、これからどこへ向かうんだ?」
ナツミYU「ニューヨークまで来ましたので、後は会議場へと赴くだけです。その間の移動が問題に
      なりますが。」
   貨物室から運び出された十字架風オブジェを背中に担ぎ、手配されたリムジンに乗り込む。
   彼女や俺の他には3人の戦友も一緒である。ただ4人の面持ちはかなり厳しいものになって
   いた。

    このリムジンは半ば専用車両に近いため、俺は十字架風オブジェを展開して武装を施した。
   拳銃を両脇のホルスターに仕舞い、日本刀を左腰に装着する。今は分解格納されている特殊
   武器は出さなくていいだろう。

ネイディア「よくこれだけの重武装を運べましたね。」
ミスターT「日本では警察庁長官直々に許可を得たからね。彼女達を護衛した時、素手で応戦した
      経緯からだよ。」
セフィヌ「お話は窺っています。マフィア相手に格闘術で応戦したとか。」
ミスターT「仕舞いには戦闘車両すら出しやがったからねぇ・・・。」
    ナツミYUを含む4人は簡単な武装しか装備してないようだ。その彼女達に予備のマガジン
   を手渡した。自分達で準備は済ませているのだろうが、素直に受け取ってくれた所に優しさを
   感じずにはいられない。
ミスターT「で、そろそろ本題を聞いてもいいか?」
ナツミYU「はい。今回の護衛内容は、会議場でのボディガードそのものです。」
ヴァディメラ「先日、身元不明の犯行声明文が送り付けられまして。それを警戒してのものです。」
ナツミYU「3人の腕には絶大な信頼を置いていますが、それでも相手が未知数なため保険と取って
      頂ければ。」
ミスターT「なるほど・・・何か釈然としないが、かなりヤバいのは痛感できる。」
   ネイディア・セフィヌ・ヴァディメラの腕は相当なものだ。その3人と共闘しても厳しいと
   判断したのだろう。それに伝説のガンマンたるナツミYUが危ないと判断している。相当な
   危険度の裏返しとも言えた。

ミスターT「俺のスタイルは知っているだろうけど、殺人はご法度だからな。」
ナツミYU「それもご存知ですよ。だからこそ貴方の腕が広まったのですから。誰1人として殺害
      せずに任務を遂行する。それは相当な腕がない限りは至れません。」
ミスターT「なら話は早いの。まあ打撲や骨折は当たり前とするけどね。」
    俺が両拳を鳴らすと、それに釣られて4人の方も両拳を鳴らしだす。それにお互い笑って
   しまった。この場合は阿吽の呼吸は完璧と言えるだろう。
ミスターT「さて・・・到着したら言ってくれ、もう一寝入りするわ。」
ナツミYU「フフッ、分かりました。」
   再び膝枕はどうだと促すナツミYUを制して、腕を組んで瞳を閉じた。この場合は何時でも
   動ける様にしておかねば危険すぎる。それに彼女の膝枕の安眠度も非常に危険だ・・・。

    仮眠に入るも、リムジンは現地へと疾走する。ここがアメリカはニューヨークとは思えない
   ほど静かである。それだけ嵐の前の静けさとやらか・・・。

    後半へと続く。

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