アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第2話 深海調査依頼1〜
    高々度襲撃事変から数週間後。諸々の流れから不穏な動きが目立ちだしている。特に顕著
   なのが、大企業連合の総帥エリシェのダウンだ。それにより外部からの横槍が目立っている
   との事だ。

    彼女は今は大事を取って休んで貰っており、臨時の総帥をスミエが担っている。例の性転換
   や体格の調整ができるペンダントを駆使した、完全な影武者的なものである。副総帥は引き
   続きラフィナが担っている。

    このプランはシルフィアの発案らしく、スミエでなければ担えないと言うのだ。ここは恩師
   に任せるしかない。まあ彼女自身、この手の行動はお手の物のようなので問題ないだろう。

    しかしまあ、頭が倒れれば要らぬ横槍か。外部からの大財閥へのヤッカミが強い現われとも
   言える。それだけ影響力が強い証拠の裏返しだろう。ただし、大財閥内部はエリシェのダウン
   により一層奮起しだしているのが何とも言えない。


    そもそも前回の依頼への襲撃は、明らかにこちらを潰そうと画策している連中の回し者に
   過ぎない。言い換えれば、連中にエリシェが倒されたと思っても良い。これには大企業連合
   全体が怒りの声を挙げ出した。敵対側にすればチャンスと取るのだろうが、こちら側も今以上
   に団結力が増したという流れになった。これは敵対側にとっては逆効果だろう。

    特に顕著なのが躯屡聖堕の面々だ。ヘッドを元に結束力を高める彼らにとって、そのヘッド
   への攻撃は大反撃の合図にも繋がる。正に獅子の尾を踏んでしまったと言い切れた。仲間が
   やられたのに激昂しない仲間などいない。躯屡聖堕チームはそういった純粋熱血漢の集まり
   そのものだしな。

    案外、エリシェの負傷は内部と外部への揺さ振りになったのかも知れない。外部はここぞと
   ばかりに攻めてくる要因となり、内部は一段と団結力と結束力を高めるに至ったのだ。

    それでも確実に言えるのは、このぐらいで一喜一憂する外部はまだまだ甘いという事だな。
   大企業連合・躯屡聖堕チーム、そして警護者軍団。こちらはより一層強い一念を抱いて進み
   出したのだから。



    エリシェへのお見舞いを終えて喫茶店に戻る。厨房とカウンターでは、新しく雇った女性達
   が奮闘中だ。フィオヌとレーティスという姉妹で、トラガンのヘッドはエルシェナの三つ子
   姉妹の次女と三女になる。

    エルシェナ自身はトラガンの運営があるから動けないが、逆にフィオヌとレーティスの2人
   は躯屡聖堕チームの元で数年に及ぶ修行を経て戻ってきた。ある意味、長女を超える警護者の
   実力を持っていると言える。ただ逆に外交や対人が苦手であるため、こうして喫茶店業務で
   慣れさせているようだ。

    相変わらず奥の一角ではミツキとナツミAがDJを担い、ラジオ放送を繰り返している。
   今ではこの流れが当たり前になりつつある。地下工房では四天王とミュティ・シスターズや
   ルビナが新たな得物の開発に挑んでいた。

フィオヌ「エリシェ様はお変わりなく?」
ミスターT「ああ、超が付くほど元気だったわ。数週間前に腹を撃たれたのにな。」
レーティス「何度か身辺警護を請け負いましたが、その活発さは姉を超えるものですし。」
ミスターT「彼女のウリはタフネスさだろうな。」
    カウンターに座り一服をする。この2人はエルシェナと違い、調理師免許を取得済みだ。
   よって厨房をローテーションで任せる事ができる。姉がトラガンの運営に一辺倒だったため、
   2人の妹は多岐のスキル取得に奔走できたのだと言う。何れ3姉妹揃ってトラガンを支える
   ようになるだろう。
フィオヌ「そう言えば、マスターも戦闘機のライセンスを取得なさるそうで?」
ミスターT「完全に取る訳じゃないけどね。レプリカTa152Hを単独で操縦できる位になれれば
      良いわ。まあ・・・高所が苦手だから、実際に乗る事は希だろうけど・・・。」
レーティス「高所恐怖症なのに戦闘機乗りは・・・。」
   俺の苦手とする2つの要因に、この姉妹も呆れ返っている。しかし実際に怖いものは怖い、
   これだけはどうする事もできない・・・。まあメンタル面が凌駕している場合は、それらの
   苦手要因を押し殺す事はできる。ただし、その状況は滅多に訪れないが・・・。

ミスターT「それでもエリシェにした行為は絶対に忘れん。確かに不測の事態で防御面が疎かだった
      のは確かだが、そもそも襲撃事態でそれに至ったんだ。この部分は必ず親玉を叩き、
      一矢報いてやるわ。」
レーティス「そこは同調します。私達も数多くの依頼の中で、仲間が倒れる事を目の当たりにして
      きました。その時の痛烈な怒りと悲しみは忘れられません。」
フィオヌ「私達にできる事は限られていますが、それでもできる事をし続けるまでです。そのための
     警護者の道ですから。」
ミスターT「・・・エルシェナとは全く違う生き様だわ・・・。」
    本当にそう思う。長女エルシェナは知略的で大局的に動く事が多い。正にヘッドに相応しい
   存在だろう。対して次女フィオヌ・三女レーティスは叩き上げの警護者だ。デュシアLと同じ
   実戦で実力を掴み取ってきた強者である。三つ子なのにこうも違うのには驚きだわな。


    警護者の世界には異体同心の理が力強く根付いている。個々の戦闘力が重なり合って、今の
   超絶的な戦力に至っているのだ。そこに追随するのが躯屡聖堕チームや大企業連合となる。
   こちらも凄まじい様相なのだ。

    躯屡聖堕チーム以外にも、大企業連合内でも実戦経験者が数多くいる。叩き上げの実力者が
   集い合うため、戦烈の戦闘集団とも言えるだろう。その彼らが財閥の運営などをしているの
   には驚きだが・・・。

    最前線の様相を知るが故に、世上から悲惨と孤児の各二文字を無くそうと奮闘している。
   だからこそ、躯屡聖堕チームと大企業連合に所属する面々は強いのだ。上辺の右往左往では
   揺らぐ事など滅多にない。いや、絶対にないと信じている。

    そして根幹に据えるは、ミツキの生き様である。“敬い・労い・慈しみの精神”だ。この点
   を見失えば愚者になるのは言うまでもない。敵対する人物にさえ手を差し伸べる精神こそが、
   世上から悲惨と孤児を無くす最強の一手になるのだから。



ナツミYU「はぁ・・・裏方は参るわ・・・。」
    姉妹と雑談をしていると、ボヤキながら入店してくるナツミYU。表情から疲労の色が見て
   取れる。今の彼女はオブザーバーそのもので、多岐に渡る役割を担っていた。
ミスターT「おけ〜り。と言うかお前さん、総合学園の校長だろうに。このぐらいで弱音を挙げては
      未来の申し子達に悪いぞ?」
ナツミYU「そうなんですがね・・・。ここ最近の行動、最前線が多かったじゃないですか。その
      余波なのでしょうけど、裏方がここまで辛いとは・・・。」
ミスターT「なら俺が暫くの間だけ、向こうの運営を担うか? 教師の免許がないから、教える事は
      できないが。」
ナツミYU「ね・・願ったり叶ったりだけど・・・大丈夫かしら。」
   非常に不安そうな表情を浮かべてくる。彼女の表情から推測するに、オブザーバーの戦いより
   教師としての戦いの方が遥かに辛いと言いたいのだろう。確かにその通りだわな。
レーティス「何も教鞭を取るだけが教師じゃありませんよ。生徒様方の悩みなどを聞いて回る事も
      立派な教師の姿です。むしろマスターはその方が合いますよ。」
フィオヌ「姉から窺っています。トラガンでの叩き上げを行ってくれた時、性転換してまで担って
     くれたと大変感謝していました。相手のためを思えば、何振り構わず突き進むのが貴方の
     生き様だと確信しています。」
ミスターT「その後は彼女に“ミスT”と必ず言われているがね・・・。」
   姉妹の激励何のその。姉の茶化しに参ると言うと、直ぐに笑う2人である。これも彼女から
   伺っているのだろう。何振り構わず突き進むが、まさか性転換してまではな・・・。エリシェ
   の発案には驚くしかない。

ミスターT「まあ何だ、俺の生き様が役立つのなら担わせて頂くわ。それで彼らがより一層奮起して
      行くなら嬉しい限りだし。」
ナツミYU「その姿勢こそが教師に適任している所以よ。生徒あっての教師、この姿勢を欠いては
      絶対成り立たないからね。」
ミスターT「頭の悪い俺でも、何が正しく何が間違っているかぐらいは分かるわな。」
    ナツミYUから、教師ではない俺が教師の心得を得ている部分にお墨付きを頂いた。確かに
   教師たる者、この部分は否が応でも回帰すべき概念である。いや、常日頃から心得ておかねば
   ならないものだ。これが欠落した先が不登校・学級崩壊などに繋がっていくのだから。
ミスターT「よし、アポの方は何とかしてくれ。己が使命を全うしてくる。」
ナツミYU「分かったわ。ただし・・・囲まれないように注意してね。」
   俺の決意を余所に、意味有り気に語るナツミYU。大体は想像は付くが、今は勢いで進む事が
   先決だろう。喫茶店の運営はフィオヌ・レーティスに任せれば問題ない。ナツミツキ姉妹は
   相変わらずの様相だが・・・。


    この事をミュティナ達に告げると、必殺技的アイテムを貸してくれた。何と学園全体を覆う
   バリアを張れるペンダントである。更には個々人を識別してバリアを展開するペンダントも。
   先のエリシェ事変と言うか、彼女の負傷から新たに開発したテクノロジーらしい。これなら
   不意の襲撃には対処できる。

    俺が行く先々で襲撃を受けるのが分かっているのだから、本来なら動かない方が得策だ。
   しかしだからと言って動かず仕舞いなのもよろしくない。ここはそれらに一切怯む事なく、
   突き進む姿勢を知らしめていくとしよう。この対策を欠いては負傷者が出る怖れも十分ある。

    もう1つの必殺技として、ミュティナ自身が体躯変換をして補佐に就いてくれると言う。
   地下工房の開発はミュティラ・ミュティヌが居れば十分らしく、ミュティナは専ら会計の役割
   を担っていたそうだ。これはサイバーやエンルイが最も得意とするもので、彼らだけでも十分
   担えるとの事。

    それにミュティナ自身は先のエリシェ事変で共に同伴する予定だった。しかし開発側の人手
   不足で赴けなかった矢先のあの流れだ。恐らく負い目を感じているのだろうな。ただそれを
   エリシェは既に見抜いていて、自分に詫びを向けるなら俺を気遣えとも言っている。だから
   このタッグに至った訳なのだが。

    療養中でありながらも、最大限周りを気配る彼女の姿は凄まじいものだ。常に大企業連合の
   総帥として動いているからか、簡単な事では倒れないという決意の現われだわな。それに奮起
   しだしたのが、先の大企業連合所属の面々と躯屡聖堕チーム全体である。



ミスターT「本来なら、エリシェの元に居たいのが本音だろう?」
ミュティナL「あ・・・ま・・まあ・・・。」
    今はナツミYUが開学に一役買った総合学園にいる。教師免許を持っていない以上、教鞭を
   握る事はできない。その事を副校長のメルアは既に知っており、雑用係として動いて欲しいと
   述べてきた。言わば主事さんである。
ミスターT「あの事変は俺にも非がある。最初からバリアやシールドを張っていれば、何の問題も
      なかった。むしろお前の決意を知れず、逆に苦しめるに至ってしまって申し訳ない。」
ミュティナL「そ・・そんな、お兄様は全く悪くありません。」
ミスターT「それにエリシェ自身は問題なかった。と言うかあの銃弾、あれは特殊仕様だったのよ。
      彼女自身は拳銃程度の銃弾なら弾く衣服を身に着けていた。しかしそれを貫通する程の
      威力だった。逆を言えば彼女だけで済んだのは本当に幸運だと思う。」
   サンプルとして、当時の銃弾の検証結果が出た資料を見せる。それを見たミュティナは驚愕
   した。そこに使われていたテクノロジーはギガンテス一族のも含まれていたからだ。

ミスターT「言っておくが、お前達のテクノロジーが使われていた部分には負い目を感じるなよ。
      それを使った奴等に非がある。それにあの依頼は当初からどうも信用ならなかった。
      ただ結果として、エリシェ自身の負傷を除けば一段と結束力と団結力が備わったしな。
      災い転じて福と成す、正にこれだよ。」
    落ち込んでいるミュティナの頭を優しく撫でる。と言うか体躯変換をしているため、今は
   ナツミYUに近い長身だ。幾分か撫で辛い状態ではあるが。
ミスターT「エリシェも言ってたが、詫びは行動で返せ。これで行くべ。今度は同じ失態は絶対に
      起こさない気概でな。」
ミュティナL「はい・・・。」
ミスターT「まあ何だ、この特殊ペンダントがそれを許さないだろうけど。」
   ここに来る前に預かったペンダントが2つある。任意的範囲拡大縮小可能バリア発生装置と、
   敵味方識別可能バリア発生装置。まあ俺にはとてもじゃないが理解できない代物だが、これが
   あればエリシェ事変は絶対に起こらないわ。そのためのキラー要素だしな。

ミスターT「しかしまあ・・・これで6つのペンダントか・・・。」
ミュティナL「重力制御ペンダント・バリアペンダント・性転換ペンダント・超能力ペンダント、
       そして今仰られた2つと。」
ミスターT「本来なら有ってはならない得物だろうが、これで助かる人がいるなら使うべきだな。」
    胸に6つものペンダントをぶら下げているため、何か変なパンク的ファッションのようだ。
   しかし地球上では作れない傑作なため、その輝きはダイヤモンド以上のものである。
ミスターT「なーに、大丈夫さ。俺達がいれば不測の事態をも喰らい尽くしてやるわ。」
ミュティナL「ですね。」
   最後の最後で漸く彼女の表情に笑顔が戻りだした。元来から明るい性格なため、直ぐに戻った
   のだろう。と言うか先程挙げていたエリシェ事変は本当に不測の事態だったしな。今後は絶対
   に同じ事は起こさせないわ。


    会話しつつ雑用を繰り返す。主事という事で周辺のゴミ拾いや清掃が多く、教師の方々に
   お願いされた事をこなして回った。本当に雑用である。

    しかしこれは1年前に喫茶店で行っていた、初期の頃の警護者の依頼に非常に似ている。
   言わば万屋である。まあこうしたコツコツと地道な行動を積み重ねる事にこそ意味はある。

    躯屡聖堕チームも暴走族が発端で、その後は悔い改めて万屋家業で今の流れに至っている。
   仕舞いには名実共に最強クラスのボランティアチーム、躯屡聖堕フリーランスにまで至るの
   だから恐ろしい。人は何処でどう化けるのか分からないものだわ。

    何にせよ、物事の出だしは順風満帆ではない。波乱万丈の流れが相応しいだろう。そこから
   這い上がり力を掴む、それが生き様なのだから。



女子学生「ありがとう、ミュナ先生!」
    サッカーボール格納カートが転倒してしまい、起こすのに悪戦苦闘する女子学生さん達。
   そこで活躍するはミュティナだ。自慢の怪力を生かし、簡単にカートを元に戻すのだ。その間
   に俺は散乱したサッカーボールを彼女達と一緒に回収している。

    礼を述べると、カートを引いてグラウンドへと向かう女子学生さん達。一区切り付こうと
   懐から煙草セットを出すが、ここは学園なので思い留まった。ミツキから分けて貰っている
   ミンティアで我慢するしかない・・・。

ミュティナL「先生ですか・・・悪くない感じです。」
ミスターT「お前はミュティラやミュティヌと違い、頭を使う方が向いているしな。案外、教師の
      方が合うのかも知れないわ。」
    ミンティアをガリガリと食しながら一服する。自分はアメ玉を舐め続けるのではなく、砕く
   方が非常に多い。このミンティアも同じ感じである。その中で思うのが、ミュティナは教師に
   向いているというものだ。
ミュティナL「実は父も母もギガンテス一族としては教師の位置付けなのです。」
ミスターT「ほぉ、それは初耳だわ。」
ミュティナL「ただし、私達には教員免許という概念がありません。言わば過去の一族から受け継が
       れる歴史などを語るという類ですが。」
ミスターT「それでも十分だと思うが。何から何まで免許免許とする地球人に問題があるしな。まあ
      責任問題の部分から、この免許云々の概念が出たのだろうけど。」
   殆ど当たっているだろう。責任の問題と知識の問題で各種免許が必要になったのだと思う。
   顕著なのがバイクの免許だ。自転車が乗れれば免許など要らない感じがするが・・・。ただ
   公道を走る以上、法規に則る必要はある。そのための学びの免許でもあろう。

ミスターT「まあ何だ、お前の生き様からすれば何でもできるわな。常に学ぼうとする姿勢は、俺も
      見習わなければならない。」
ミュティナL「以前はいい加減な感じだったのですけどね。ですが皆様の、特にお兄様の生き様に
       感化させられ今に至った感じです。」
ミスターT「変革とは、己が強く思い実践する事で変わっていく。まあ外的要因はあるだろうが、
      最後は己自身に帰結するからな。ミュティナが変わりたいと思って動いた結果だの。」
    人一倍向上心が強いミュティナの事、常に学ぼうとする姿勢は全く失われていない。むしろ
   約1年前よりも強くなった感じか。やはり思うが、人は外的要因より自身の一念次第で全て
   変わってくる。俺も精進し続けねばな。


    しかしこの総合学園は変わっている。小学校・中学校は共学だが、高校だけは女子高という
   流れなのだ。大学は再び共学になっている。どうやらこの地域の全学校を1つに纏めたのが
   ナツミYUらしい。

    ちなみに女子高とは言うが、男女の割合は1対9になる。決して男子禁制の花園ではない。
   まあ女子高の学年だけは、明らかに女性の力の方が強い。まるでナツミYUの生き様がそこに
   あるかのようである。

    どうもこの女子高はかなりレベルが高く、共学にしたが編入してくる男子学生は少ないとの
   事だ。それでもいるにはいるが、相当のレベルがないと入れないらしい。俺の学力程度なら、
   正に高嶺の花になるわな。

    中半へと続く。

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