アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第2話 深海調査依頼2〜
ミスターT「う〜む、ナツミYUに押し付けられた形だわな。」
メルア「まあそう仰らずに。」
    粗方の雑務を終えて総合職員室に戻る。中では全ての学園の校長として奔走するメルアの
   姿があった。しかも彼女、お腹がかなり大きい。身篭った状態での総合学園校長か・・・。
   これは後でナツミYUに問わねばならんな。
ミュティナL「ほむ、お腹のお子様は双子で女の子ですね。しかも臨月が近いと。」
ミスターT「は? お前、そこまで分かるのか?」
ミュティナL「私達の種族は新たな生命には敏感に反応しますよ。ほぼ透視できるぐらいに判別可能
       ですし。」
   新たな生命に喜びを表しているミュティナ。外見はペンダント効果で変化しているが、その
   言動は従来の彼女そのものだ。ギガンテス一族もドラゴンハート一族も、新たな生命は大いに
   歓迎するという。

ミスターT「そう言えば、メルアにはターリュとミュックという双子姉妹がいたよな。」
メルア「はい。今は大学に進学しています。ただ・・・。」
ミスターT「遊び呆けている、か。」
    娘達の話になると、穏やかな表情と苦悩に満ちた表情を浮かべるのは母親の特権か。これは
   男児の場合も当てはまるが、どちらかと言うと娘の方が苦労しそうだ。またメルアのその表情
   を見ると、そこにシュームがいるかの様な感じになる。
メルア「それでも、ナツミYU先輩が仰る通りですよ。」
ミスターT「己が使命を全うせよ、だな。」
メルア「ええ、その通りで。まあ殆どが流れるままに進むしかありませんけど。」
ミュティナL「暗中模索が世の常ですからね。」
   ミンティアをガリガリしながら思う。メルアは警護者ではないが、相当の肝っ玉が据わった
   女傑の1人だ。しかもその度合いはかなりのものである。ナツミYUが全権を彼女に委ねた
   理由も痛感できる。しかし・・・メルアは身重の状態なのによくぞまあ・・・。

ミスターT「臨月になったら、どうするんだ?」
メルア「教え子の何人かが臨時で担ってくれます。ナツミYU先輩は忙しそうですし。」
ミスターT「いや、その場合は俺からしっかり言う。大事な後輩のメルアが産休で休むなら、己の
      責務を全うしろと。彼女も双子の母親だ、そのぐらいは弁えると確信している。」
    確かに警護者の役割は大切だが、後輩のメルアが産休で離脱するなら話は別だ。足元を磐石
   にしないと、そこから全ての綻びが生じてくる。
ミュティナL「母に相談してみましょうか? 何も諸々の指揮は宇宙船で行う事はありませんし。
       それに不動明王の如く鎮座する父もいますから。」
ミスターT「う〜む・・・それで良いのか俺には分からんが・・・。」
   この場合は代理を出せば済むという事ではなくなりそうだが・・・。しかし実際は不測の事態
   というのが存在する。それらに柔軟に対応してこそ全てが成り立ってくるしな。それに先の
   エリシェ事変で敵側の動きも活発になっている。ナツミYUの手腕が離脱するのは正直痛い。
ミスターT「・・・分かった、そのプランで済むなら済ませよう。とにかく今はメルアの母親たる
      責務を全うすべきだわ。」
メルア「大丈夫ですよ。こう見えても双子のじゃじゃ馬娘を生んでいる身。そう簡単には負けません
    から。」
ミスターT「・・・お前さん、シュームに似てるわ。」
   自分を見縊るなと笑顔で語る。親は子供で変わると言うが、この場合は逆のパターンだろう。

    シュームはじゃじゃ馬娘たるリュリアの子育てで、あそこまでの肝っ玉母さんに至った。
   メルアもターリュとミュックという双子のじゃじゃ馬娘の子育てで、ここまでの肝っ玉母さん
   に至ったのだろうな。しかもシュームと違うのは、メルアの方は双子だ。心労の種も倍以上
   である。

    ナツミツキ姉妹や四天王は孤児だという事だが、それを物ともしない様相は見事である。
   それだけ育ててくれた孤児院の方々が素晴らしかったという現れだ。子供は育てられた環境で
   激変していくしな。

    メルアは第2の正念場を迎えている感じだ。新たに生まれ来る双子の娘の母親として、己の
   責務を十二分に全うして貰いたいものである。



シューム「おけり〜。」
ミスターT「ただいま・・・って、殆どフルメンバー・・・。」
    今日の雑務を終えて、ミュティナと共に喫茶店に戻った。店内に入ると一際賑やかなのに
   驚いた。凄腕の警護者の面々が勢揃いしていた。しかもエルシェナ率いるトラガンの精鋭中の
   精鋭も一緒だ。俺を見るなり会釈してくる。
ミスターT「ナツミYUも一緒か。少々尋ねたい事が・・・。」
ナツミYU「あー・・・メルアさんの事ですね。彼女自身が担いたいと仰ったのですよ。確かに重荷
      の手前、無理強いはさせたくありませんでした。しかし・・・。」
ミスターT「・・・なるほど、ターリュとミュックの気質か。」
   カウンターに座るも、煙草を吸わずミンティアをガリガリかじる。先刻のメルアの重荷の部分
   をナツミYUに問い質そうとした。しかしこちらの内情を直ぐに読まれ、その経緯を詳しく
   語り出す。そして何故その生き様を貫いているかを痛感させられた。
ミスターT「う〜む・・・双子に当てられた感じか。」
ナツミYU「ですです。以前の彼女は無理無茶をしない生き様でしたが、双子が生まれてからは激変
      されまして。どの様な状況であれ、己の責務を全うしだしたのです。」
シューム「なるほどねぇ、ターリュちゃんとミュックちゃんがメルアさんを変えた訳ね。」
ナツミYU「間違いなくそうですね。」
   実際に双子とは会っていないから分からない。しかし、あそこまで肝っ玉が据わった母親を
   変革さたのだ。その力強さは否が応でも認識させられる。実際にここに良い例があるしな。

シューム「へぇ〜・・・そうよねぇ、私もリュリアに影響受けたクチだしねぇ・・・。」
ミスターT「・・・すまん。」
シューム「フフッ、冗談よ。でも両親は子供から多大な影響を受けるからね。外部では子供が両親の
     影響を受けると言うけど、この場合は間違いなく相互に影響し合っている。」
ナツミYU「育児と言うのはそれだけ大変なのですよ。」
    カウンターに座るシュームとナツミYUが同時に一服しだす。そして同時に深い溜め息を
   付く所に、子供は大変だと言動で示していた。ただそれが苦悩であれど、苦痛ではないという
   のは俺でも分かる。
シューム「そうね、苦痛と思っては子供に失礼よね。」
ミスターT「あら、見事な読み。」
ナツミYU「貴方の事ですから、私達の言動で察知されたのだと思います。」
シューム「それでも・・・この生き様が好きなのよ。でなければ貫く事などできやしないわ。」
   メルアもそうだったが、この2人も自然と笑みを浮かべだす。つまり自分を見縊るなという
   雰囲気だ。それにメルアと違うのは、シュームもナツミYUも凄腕の警護者である。メルア
   には失礼だが、2人の方が格が違うのだ。

デュリシラ「子供は親で変わる、親も子供で変わる。それが生きるという事。家族を得るという事は
      凄い事なのですよ。」
    何時の間にか厨房で作業をする彼女。デュリシラもデュシアEとデュシアLという双子の
   兄妹の母親だ。メルア・シューム・ナツミYUの心情は手に取るように分かるのだろうな。
デュリシラ「ただ1つだけ怖いのは、私達の生き様への足枷にならないかですが・・・。」
ミスターT「以前言ってたな。警護者には要らぬ足枷は付けたくないと。その最もたるものが、大切
      な存在とも。」
デュリシラ「はい。明日がどうなるか分からない身、子供達には不幸な目には遭わせたくないのが
      本音です。しかし、この警護者の生き様も貫きたいのも本音で。」
ナツミYU「複雑な心境ですよね・・・。」
シューム「幸か不幸かは紙一重、か・・・。」
   この3人の母親は、子供達という家族で悩んでいるのだろう。警護者という殺伐とした世界を
   生きる手前、何時何処で倒れるか分からない。それに人質にされる怖れも十分ある。警護者が
   独り身を貫くのは、正にこれへの最低限の対処だろうな。


    警護者の厳しさに思い耽る。直後、俺達の身体が少し浮かぶではないか。それに驚くも、
   近場では食器類を洗うルビナの姿があった。彼女の超能力の力である。しかも彼女、何食わぬ
   顔で俺達を浮かせているのだ。

ルビナ「確かに今までは、その概念は死活問題だったのでしょう。しかし、私達がいる限り絶対に
    不幸なんかにはさせませんよ。ありとあらゆる力を駆使してでも、皆様方を守り通します。
    ナッツ様の名言しかりです。」
ミュティナL「ですね。」
    ルビナの超能力の力が終わった頃、カウンターに座るシュームとナツミYUの襟元を摘む
   ように掴むミュティナL。そのまま何気なく持ち上げるのだから恐ろしい。ホンの少しの力で
   持ち上げている感じだ。
ミュティナL「力は使ってこそ真価を発揮する、以前お兄様が仰っていました。確かに地球上の力を
       覆す様相になりますが、それで救われる方がいるなら安いものですよ。」
ルビナ「それに、私達はスミエ様に大変お世話になりました。全ての苦悩や苦痛を、矢面立って受け
    られていた。私達の一族はスミエ様あっての今の様相なのです。」
ミュティナL「受けた恩には報恩で返す、この一念も地球人と全く変わりませんよ。ルビナお姉様も
       根幹の生き様に至りますから。」
   先程のメルア・シューム・ナツミYUが自然体で現していた、自分を見縊るなという部分。
   それを今度はルビナとミュティナが超越した力を以て表現している。
ミスターT「・・・分かった、悩む事自体失礼だわな。」
ルビナ「いえ、悩み自体は良いのです。問題はそれで周りに迷惑を掛けるか否かで。」
ミスターT「メルアが実践している“我武者羅に突き進め”、これしかない訳だな。」
ルビナ「諸々の悩みは後々考えましょう。今はとにかく先に進む事のみ考えるべきです。」
ミスターT「そうだな。」
   本来は自分達で解決しなければいけない事を、偉大な地球外生命体のルビナやミュティナに
   諭された。しかしそれだけ彼女達が数多く辿ってきた道であるのは間違いない。そして彼女達
   を支えるに至ったのが、遠い祖母たるスミエであるのには驚くしかないが。

    となると、スミエはたった1人で突き進んできたのだろう。地球上での活動は何とかなる
   かと思うが、ギガンテス一族やドラゴンハート一族をも守り続けたのだ。どれだけの苦節を
   経たのか想像すらできない。

    それでも、その結果がルビナとミュティナ達だな。彼女達が無事誕生した事自体、スミエが
   勝ち切った何よりの実証である。恩師シルフィアもそうだが、その師匠たるスミエも本当に
   偉大な女傑だわ。



ミスターT「ところで、何故にオールスターなんだ?」
ナツミYU「ちょっと大問題が発生しましてね。」
    落ち着いた頃を見計らい、俺が厨房を担当する。ウェイトレスは引き続きルビナが担って
   くれていた。その中で喫茶店に訪れているオールスターの経緯を尋ねた。それに顔を曇らせて
   語るナツミYU。
ナツミYU「ケルマディック海溝ってご存知ですか?」
ミスターT「あー、アニメ“不思議の海のナディア”でも出てたな。」
エリシェ「おー、流石は博識ですね。」
   突然の声に驚き、入り口の方を見るとエリシェとラフィナが入店していた。数週間前に腹を
   撃たれた彼女が、今ではピンピンしているのが何とも言えない。
ミスターT「お前、動いて大丈夫なのか?」
エリシェ「全く問題ありませんよ。それに銃弾の着弾点が急所を避けており、更に内臓や神経には
     ダメージは至っていませんでしたので。小規模の手術だけで済みました。」
ラフィナ「エリシェさんのタフネス振りには驚かされます。」
   こちらの心配を余所に、アッケラカンとしているエリシェには苦笑いするしかない。何か負傷
   した時とその後では、雰囲気が変わった感じがするが・・・。

エリシェ「あ、横槍すみません。続けて下さい、ナツミYU様。」
ナツミYU「え・・ええ、分かったわ。」
    エリシェの復活度に驚いていたナツミYUが続けだした。手持ちの資料やノートパソコンを
   駆使して、それらの流れを示し出す。
ナツミYU「これは先月、海洋調査チームが偶然探知したみたいでね。同海溝の最深部に、見慣れ
      ない物体があるらしいのよ。ただこの海溝は結構深いようで、普通の潜水艇じゃ探査
      できないみたい。」
エリシェ「世界一の深さはマリアナ海溝のチャレンジャー海淵だそうです。公式記録は10863m
     との事で。ケルマディック海溝も1万mの様相とか。」
ナツミYU「らしいですね。ともあれ、そこの最深部の調査が今回の依頼でして。」
ミスターT「・・・海か・・・。」
   大体予測ができてきた流れに、顔を青褪めながら呟いた言葉がそれだ。これに周りの女性陣は
   苦笑いを浮かべている。俺が大の水苦手であるのは承知済みである。

ミスターT「と言うか、日本の潜水艇すら潜るのが厳しいんだよな。一体どうやって向かうんだ?」
エリシェ「あるじゃないですか、世界一の潜水艦が。」
ミスターT「はぁ、レプリカ伊400ね・・・。」
    俺の問いに自信満々に答えるエリシェ。普通の流れなら直ぐに気付いたのだろうが、今は
   水の問題で直感と洞察力が鈍っている。この場合、彼女が指し示すのは遺物しかない。
エリシェ「レプリカ伊400なら、地球上の最強深度数を誇る場所にすら楽々と向かえますよ。」
ミスターT「船体が持つのかね・・・。」
ラフィナ「ほら、映画“ザ・コア”でのバージル船はご存知です?」
ミスターT「・・・アンオブタニウム・・・。」
ラフィナ「そう、それです。」
   まさかレプリカ伊400の船体に、架空物質たるアンオブタニウムを使っているとは・・・。

    同作ではチタンとタングステンを低温で結合する事で精製できるとか。しかし同物質は熱と
   圧力をエネルギーに変換するのは知っているが、深海となると熱は得られない。むしろ真逆の
   冷気が出てくる。

    地核の圧力よりは弱いが、深海での圧力も凄まじいものになる。確かにアンオブタニウム
   なら圧力をエネルギーには変えられるが、冷気の問題でネックにならないか心配だ・・・。

ラフィナ「ただ、アンオブタニウムは今現在の“地球上での技術力”では実現不可能ですけど。」
ミスターT「・・・つまり、ギガンテス一族のテクノロジーの一環か。」
エリシェ「その通りで。ギガンテス一族のテクノロジーと、宇宙空間での精製で実現できたという
     ものです。まあ詳しい事は分かりませんが、実際に実現できたのが証拠ですから。」
    勉学に博識のエリシェですら、この部分は分からないようである。まあアンオブタニウム
   自体が架空の産物であるのは間違いない。今の地球上の技術力では実現は不可能である。
エリシェ「ちなみに、レプリカ伊400以外にもレプリカ大和も同じ物質を使っていますよ。」
ミスターT「・・・熱と圧力をエネルギーに変換して、同物質を強化する。これがザ・コアでの設定
      だったよな。となると、地球上の兵器郡が着弾した時、反発する力が生まれて無敵の
      装甲となる訳か。」
ラフィナ「理論上はそうなります。ただそれ以前にバリアやシールドの効果で無力化しているので、
     実際にどうかまでは検証していないのが実状ですが。」
ミスターT「・・・この深海探査が正念場、と言う事だな。」
   何ともまあ・・・。前回の軍服連中事変ではレプリカ大和が大活躍したが、今回はレプリカ
   伊400が大活躍しそうだ。

    兵器郡の物質的な部分だと、爆発は熱になり破壊も一種の圧力になると思われる。ザ・コア
   の劇中のアンオブタニウム自体は、熱と圧力をエネルギーに変換し反発する力を持っていた。
   押せば押し返し、離せば離れる。圧力が掛かれば掛かるほど強固になるという、本当に有り
   得ない産物だ。

    レプリカ大和やレプリカ伊400に使われているとされるアンオブタニウム。これが何処
   まで効果があるかは未知数である。実際にはバリアやシールドにより艦体全体を守っており、
   船体自体の強度は把握し切れていない。この深海調査依頼が実質の実験となるだろう。

エリシェ「洋上ではレプリカ大和が待機します。不測の事態に備えての、転送装置での兵員移送も
     できますので。」
ミスターT「兵員は船内に可能だろうが・・・表は海だぞ・・・。」
エリシェ「まあ何とかなりますよ。」
    実に元気そうに語る彼女に、ただただ呆れるしかない。先のエリシェ事変で負傷した流れ
   から、何かが吹っ切れた感じなのだろう。今まで大人びいていた姿がなくなり、すっかり女性
   としての姿になっている。いや、本来の姿に戻ったというのが実状か。
ミスターT「まあ・・・諸々は分かった。ただオールスターだという事は、それ相応の流れを予測
      してのものか。」
ラフィナ「まあ色々とありますけど。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   こちらもニコニコしながら語る彼女。ラフィナもエリシェと同じく、大人びいた姿が全く感じ
   られない。普通の女性に戻った感じである。そして分かったのだが、この2人から今までに
   ない覇気も感じられた。素体に戻ったから発せられるパワーだろう。

    後半へと続く。

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