アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第4話 超長距離精密射撃3〜
    ざっと1時間以内に羽田空港に到着した。当然こちら側は超VIP待遇らしく、別の入り口
   から進入する事になった。この場所は従来の航空機の離着陸に支障を来たさない所とか。

    というか目の前の兵器郡には度肝を抜かれた。ヨーロッパで有名な垂直離着陸可能ジェット
   戦闘機ハリアーU。詳しい事は分からないが、この護衛任務にウインドとダークHが派遣した
   という。所属は航空自衛隊との事。

    もっと驚いたのが次世代最強ジェット戦闘機F−22ラプターだ。アメリカお抱えの門外
   不出機体じゃないのか・・・。それが平然とあるのには驚くが、周りからは関与されないと
   いった形みたいだ。更にはF−35ライトニングUまでもある。

    となると相当強烈な圧力が掛かって、むしろ平然としている感じなのか。とすると、関与
   しているのは彼女しかいない・・・。


ミツキ「うわぁ〜お! ハリアーUにラプターとライトニングUわぅ〜!」
ナツミA「場所問わず離着陸可能なハリアーUとライトニングUに、現行兵器最強のラプターと。」
ミスターT「う〜む・・・俺的にはハリアーUの方が武骨で格好いいんだがね・・・。」
    目の前の超兵器をマジマジと見させて貰っている。俺も飛行機は大好きだが、どちらかと
   いうとレシプロ戦闘機派だ。ジェット戦闘機は邪道としか思えない。確かに後者の方が戦闘力
   は凄まじいが、機体そのものの格好良さが欠落している。

ミスターT「というか・・・俺がメッチャ気になったのが・・・。」
    仲間がハリアーU・ラプター・ライトニングUを見入っている中、その奥にさり気なく鎮座
   しているレシプロ戦闘機が目に入った。というか現存しているのは知っていたのだが、まさか
   フルレストアが完了していたのには驚いた。

    フォッケウルフTa152H。第2次大戦時の旧ドイツ空軍最後のレシプロ戦闘機である。
   あのレシプロ最強戦闘機で名高いP−51Dマスタング2機の追撃を、軽々と逃げ切ったと
   いう最速の機体である。

    まあ非武装状態だったから成せた技だろうが、D型仕様のマスタングの追撃を逃れるだけ
   でも驚異的だ。Ta152Hの推定最高速度は760kmとの事だが、本当に見事としか言い
   様がないわな。


ミスターT「完成していたとはね・・・。」
エリシェ「今度の航空ショーで用いるために、アメリカから運んできました。ついでにラプターに
     ライトニングUとハリアーUもサンプル程度に。」
ミスターT「発端はお前だったか・・・。」
    色々な資料を見ながら語るエリシェ。傍らのラフィナが忙しそうに連絡をしている。次世代
   戦闘機の方は恩師シルフィアが絡んでいたと思ったが、どうやらどちらもエリシェが絡んで
   いたようだ。
シルフィア「君はプロペラの方が好きだったよね。ジェット機は絶対嫌だと一点張りで。」
ミスターT「洗練されていませんよ。確かに戦闘力は雲泥の差ですが、それ以前に形そのものが論外
      の何ものでもありません。」
   目の前に迫るTa152Hの姿には惚れ惚れさせられる。すると近場にいたエリシェが搭乗
   可能だと促してくる。う〜む、大企業連合の総帥が成せる技か・・・。

    ベストのポケットから手袋を取り出し装着。その出で立ちのままTa152Hの機体を吟味
   しだした。素手で触ろうものなら、指紋による錆び付きを招きかねない。

    本当に素晴らしい出来だ、感動ものとしか言い様がない。憧れているレシプロ戦闘機を間近
   で拝見でき、更に触れる事ができているのだ。これ程の感動は類を見ない。

    整備士さんに手解きを受けて、コクピット内部をマジマジと見つめる。資料などで見た類の
   知識でしかないが、内部は見事なまでにレストアされていた。これで動かないとなると、兵器
   詐欺としか言い様がないわ。それだけ見事なフルレストアである。

    ただ高所からの恐怖があり、更に過去の事変からコクピット内に入る事ができない。身体が
   震え出してきており、近場にいたシルフィアに支えられる。

シルフィア「コクピットを見るだけでも厳しいようね。」
ミスターT「あの事変が淵源でしょうね・・・。」
    目の前の超高級機とも言えるTa152H。これに乗れるチャンスなのに、身体の方は断固
   として拒否しているようだ。大観覧車の時よりも酷い。身体がそれ以上の行動を拒んでいる。
ミスターT「すみません、拝見ありがとうございました。」
   近場の整備士さんに感謝を述べて機体から離れた。やはり俺は飛行機好きだが乗るのは勘弁な
   タイプだわ・・・。


エリシェ「これは完全なオリジナルですが、レプリカなら数機製造しています。お望みなら、その中
     の1機をお譲りできますが?」
ミスターT「何処に置くんだよ・・・。」
    とんでもない事を言い出した。どうやら目の前のTa152Hはオリジナルのようだが、
   これ以外にもレプリカとして製造しているようだ。エリシェがそのうちの1機を提供できると
   言うのには度肝を抜かれるが・・・。
ミスターT「この手の骨董品は本物を持ってこそ真価を発揮する。正直な所だと、レプリカでは欲望
      を満たす事はできないよ。」
ミツキ「にゃらばっ! このオリジナルを買うべし!」
ミスターT「無理難題言わんで下さい・・・。」
   同じく手袋装備で、怖じずにコクピット内部に座りだすミツキ。その手際の良さに整備士さん
   は驚いているが、俺と同じく骨董品に対しての姿勢には安堵している様子である。

ナツミYU「飛行機好きなのに、乗るのは好きじゃないというのは何とも。」
ミスターT「コクピット手前で身体が完全に硬直したからね・・・。」
    流石のミツキも細心の注意を払って、方向舵やフラップを動かしている。しかしその姿に
   嫉妬心が出てしまう。やはり自身の身体で操ってみたいものだわ・・・。
ナツミYU「嫉妬心剥き出しですね。」
ミスターT「分かっちまうか・・・。」
シューム「私達が君に嫉妬心を出す感じが分かるわよ。」
   ナツミYUとシュームが語る。そうか、彼女達はこんな思いを抱いていたのか。実際にその
   現状に至らない限り、その人の思いや痛みは理解できない。2人には毎回この思いを抱かせて
   いた訳か・・・。

    近場の2人の肩に両手を回し、ソッと胸に引き寄せた。それに驚く両者だが、今の心境から
   察してくれて大人しくなる。左側にはナツミYUが、右側にはシュームが寄り添う形だ。

シルフィア「そうそう、それでいいのよ。有限実行、勝負は一瞬。思い立ったら吉日、と。」
ミツキ「ありゃ〜。それ、わたがTちゃんから聞いた名言わぅよ。」
シルフィア「フフッ、そうね。彼が口癖のように言っているものだからね。」
    満足そうにコクピットから降りるミツキ。俺と同じ様に整備士さんに感謝を述べている。
   ただ手袋装備はそのままで、機体の各所を細心の注意を払って触って回っていた。
シルフィア「実際にその感情に至らない限り、人の痛みなどを理解する事など不可能よ。理解しよう
      とするという一念に立つ事はできるけど、実際に至った人には敵わない。」
ナツミA「マスターは幸せですよ。そうやって心から思ってくれる人がいる。応じるかどうかは貴方
     次第ですが。私もシルフィアさんと同じ思いです。無様な姿は見せて欲しくない。」
シルフィア「私達の場合は純粋無垢の師弟の理の一念ね。対してナツミYUさんとシュームさんは
      女性の一念を出している。後は朴念仁の君でも理解できるでしょう?」
ミスターT「そこまで愚かじゃないですよ。」
   2人の言葉に感無量な雰囲気のナツミYUとシューム。同性故に思える観点からの示唆は、
   痛烈に相手の心に響いているようだ。俺の方もその思いに応じねば、強いては生き様自体を
   否定しかねない。

シルフィア「まあ時間は一杯あるからね。ゆくゆくは2人を労ってあげなさいな。」
ミツキ「2人同時も有りわぅよ? ウッシッシッ♪」
シルフィア「そうねぇ〜、その方が手っ取り早いかもねぇ〜。」
    ミツキの茶化しに同意のシルフィア。それに大赤面のナツミYUとシュームである。2人が
   何を指し示したかは、流石の俺でも痛いほど分かる・・・。

    ナツミYUとシュームの亡くなったご主人。多分、当時はこの思いで過ごしたのだろうな。
   その集大成がアサミ・アユミ・リュリアという娘達の誕生だ。今はその思いを俺に向けてきて
   くれている。

    何れ心から応じなければ、彼女達を否定しかねない。この場合は要らぬ感情は抜きで、純粋
   に接する方が正しい選択だろう。

    抱き寄せている2人を胸の中へと収めた。それに身体を委ねてくれる。勝負は一瞬、思い
   立ったら吉日。本当にそう思うわ・・・。



シルフィア「まあさておき、今はこちらに集中しましょうか。」
    そう言うと、轟音が近付いて来だす。そちらを窺うと、あの恐怖のフライトで用いた超巨大
   ジャンボジェット機が着陸してきた。どうやらこの機体にデュリシラを乗せるようだ。
シルフィア「また暫く離れるけど、大丈夫そうね。」
ミスターT「凄腕のガンマンがいますし。」
   戦闘モードに入りだしたナツミYUとシューム。持参している兵装を装備すると、先程までの
   女性の出で立ちが消え失せていた。周りの女性陣も同じく戦闘モードに入っている。

ミスターT「・・・エリシェとラフィナもやれるのか・・・。」
エリシェ「簡単な狙撃程度しかできませんけど。」
ラフィナ「護身術ならお手の物ですよ。」
    拳銃を持つ姿の2人に驚くしかない。他の10人は戦闘のプロフェッショナルなのは窺って
   いるが、この2人はその手の腕はないと思っていた。だが彼女達から戦闘訓練を受けていた
   ようで、出で立ちは間違いなく警護者そのものである。

    ちなみに超巨大ジャンボジェット機には、デュリシラを始めエリシェ達が乗り込むようだ。
   シルフィアはハリアーUに乗って護衛するとか。というか、戦闘機操縦できるのか・・・。



無線(緊急事態! 不審車両が多数接近、護衛を急いで下さい!)
ミツキ「一難去って、また一難ってわぅか?!」
ナツミA「馬鹿言ってないで動きなさいな。」
    普段のノホホン雰囲気はどこへやら。ホルスターから二丁のマグナムを抜くと、凄まじい
   勢いで現場に急行しだすミツキ。そんな彼女の姿に溜め息を付くも、アタッシュケースから
   取り出したスナイパーライフルを背中に担ぐナツミA。突撃のミツキとは別の方角に向かって
   行った。

シルフィア「T君はどうするの?」
ミスターT「どうするも何も、地上なら絶対に負けませんよ。」
    ナツミAやミツキから、例の力の加え加減の触りを窺った。多分扱う事はできるだろう。
   背後にあるトレーラーに鎮座していた、本物仕様のパニッシャーを持ってみた。当時は相当な
   重量だったのだが、力加減のお陰で難なく持つ事ができたのだ。それに周りの女性陣は驚愕
   している。
ナツミYU「そ・・それを持てるのですか・・・。」
ミスターT「地上ぐらい無敵だと言わせてくれ・・・。」
   右手に本物仕様のパニッシャーを、左手に簡易仕様のパニッシャーを持つ。凄まじい重量だが
   持ててしまうのには驚くしかない。ただ機動力の方は相当激減しているが・・・。

シルフィア「ハハッ、諸々了解。私は後から離陸するから、貴方達は先に動いて頂戴な。」
一同「了解!」
    己の役割が分かると、気合いの掛け声と共に散開しだす。先程の和気藹々の姿は全くない。
   流石は警護者だ、戦闘となると本気モード状態は素晴らしいものがある。


    エリシェ達はデュリシラの護衛を行いつつ、超大型ジャンボジェット機に乗り込んでいく。
   この11人はパーティーを組んでこそ真価を発揮するみたいだ。確かにそれぞれが姉妹の様な
   感じである。

    ナツミYUとシュームは周辺の警護を当たっている。遠方では不審車両が接近している様子
   だが、ミツキが時間稼ぎをしているようだ。多分ナツミAは管制塔辺りからの超長距離射撃を
   狙っているのだろう。

    シルフィアは複数の自衛隊員の方々と戦闘機に乗り込みだしている。彼女はハリアーUに
   搭乗し、他の隊員はラプターとライトニングUを使うようだ。というか恩師が戦闘機を操れる
   とは・・・。

    何時の間にかいなくなっていたウインドとダークHは、無線の内容からミツキと共同戦線を
   張っている様子。警察庁長官自らが最前線で戦う、か。不思議な光景だが、指揮の向上には
   打って付けだろう。

    俺は重荷ながらも、ナツミYUとシュームの護衛に当たる。俺の本業は警護者よりも護衛者
   の方が性分に合う。まあどちらも同じ意味合いだが。



    準備が整ったようで、超大型ジャンボジェット機が離陸を開始しだす。遠方の不審車両側は
   一段と盛り上がっているが、肝心なのは護衛を成功させる事だ。今はこちらを最優先である。

    続いて恩師率いる戦闘機隊も離陸を開始。コクピット内部から俺に小さく手を振る彼女。
   そのまま滑走路の方へ進んでいった。本当に無敵な女傑だわ・・・。

    それぞれの機体が大空に飛び立っていく。それに身体が無意識に震え出すが、傍らにいた
   ナツミYUとシュームに肩を軽く叩かれる。それで一瞬にして震えが止まった。見事な癒しの
   一撃である。


無線(・・・何だと?! 緊急事態! 至急ジャンボ機を着陸させて下さい!)
ミスターT「横槍失礼、どうしたんだ?」
無線(先程の着陸時に不審者を発見。捕縛して問い質した所、機体下部に時限式爆弾を仕掛けたとの
   事です!)
    慌てた声色に驚き、持参していた無線に問い掛ける。どうやらあの短時間の間に機体に時限
   爆弾を仕掛けられたようなのだ。となると何時爆発するかが気になるが。
ミスターT「爆発までの時間は?」
無線(16:00に爆発するようにセットされている模様。今からだと数分しかありません!)
ミスターT「・・・となると、これが最短行動か。」
   持っていた2つのパニッシャーを地面に置く。その中の簡易仕様のパニッシャー内部に、新型
   兵器を置いてくれたとの事だ。四天王がギリギリで完成させた、超長距離精密射撃が可能な
   スーパースナイパーライフルという。即座に展開できるのは見事なものだ。

ミスターT「角度が厳しいか。・・・仕方がない、骨董品を足場にしよう。」
    俺の言葉で全てを察知したナツミYUとシュームが、鎮座していたTa152Hを滑走路の
   近くまで押していく。翼の付け根に腰を下ろし、エンジン部分にスーパースナイパーライフル
   を配置した。これなら十分角度を得られる。

    ちなみにTa152Hのエンジンカウル真上に獲物を直接置くと傷が付く。ここは着用して
   いる黒コートを脱いで折り畳み、それを衝撃吸収材として挟んだ。流石に骨董品に傷を付ける
   のは忍びない。

シルフィア(了解、全て察知したわ。機体をそちらに向かわせるから、確実に決めなさい。)
ミスターT「大丈夫、お任せを。」
    ハリアーU・ラプター・ライトニングUから破壊しようと試みていたのだろうが、衝撃で
   墜落しかねない。そんな中で地上のこちらの動きを察知したのだろう。シルフィアが無線で
   一連の行動を促してきた。

    同時にナツミYUが無線で時限爆弾の取り付け位置を窺っている。どうやら機体下部の後尾
   に近い所に仕掛けてあるようだ。目視できる程度の規模だが、それだけで十分破壊力を得ら
   れるとの事。


    大空に飛び立った超大型ジャンボジェット機がこちらに向かってくる。最低高度を維持し、
   可能な限り減速しての進入だ。パイロットは相当の腕前である。

    スコープから目標を覗くと、しっかりと時限爆弾らしきものが取り付けられていた。問題は
   どうやって爆発させずに切り離すか、だが。

ミスターT「・・・ブラジャーを取り外す方法が無難かね。」
ナツミYU&シューム「な・・何を言い出すのよっ!」
    俺の意外な発言に大激怒しだすナツミYUとシューム。そんな2人に小さく微笑みながら、
   目標目掛けて射撃を開始。連続で2発、時間差で1発。合計3発で大丈夫だと思う。

    当然だが実弾では爆発を誘発させる。そこで予備に入っていた模擬弾を用いる事にした。
   ゴム製の殺傷能力がゼロのもの。発射に火薬を使う薬莢以外に爆発物は一切使われていない。
   これなら爆発させずに切り離せるだろう。


    最初に放たれた弾丸2発は、機体下部に付いている時限爆弾の左右に着弾。その衝撃で本体
   がグラ付き外れそうになる。そこに最後の1発が時限爆弾中央に着弾。飛行している機体の
   風圧も合わさって見事に取り外せた。

    超大型ジャンボジェット機が真上を通過後、時限爆弾は地上に落ちてくる。そこに複数の
   実弾の弾丸が打ち込まれ、直後大爆発して飛散した。射線上を見ると、スナイパーライフルを
   構えるナツミAが小さく手を振っている。見事な連携だわ。


    機体の再確認という事で、一度戻ってくる超大型ジャンボジェット機。戦闘機隊も同じく
   戻ってきた。あの短期間でよくぞまあこれだけの事ができたわ。

    シルフィアに有事は落ち着いて動けと常々言われてきた。実際の時限爆弾爆発時間までは
   分からなかったが、時間範囲内で全て決着ができたのは幸運である。

    しかし・・・Ta152Hを足場に使うとは。確かに乗る事はできたが、別の意味合いに
   なってしまうとは・・・。まあ終わり良ければ全て良し、だな。


    最終点検と万全な警備体制の中、再び超大型ジャンボジェット機が離陸していった。護衛の
   戦闘機隊も同様である。既に妨害要素は駆逐しているため、安心して見送る事ができた。

    遥か大空まで去っていく機体郡。その彼らを一服しながら見つめ続けた。



ミツキ「ブラジャーのホックの応用わぅね!」
ミスターT「実際に触った事はないが、大凡で何とかなったよ。」
    帰路はナツミAがキャンピングカーを運転、助手席ではミツキが茶菓子を頬張っている。
   この2人も大型自動車免許を持っており、更に牽引と二種もあるとの事。

    俺は2人の後ろの席で、ナツミYUとシュームとでトランプで暇潰しをしている。更に後部
   座席ではウインドとダークHが携帯やノートパソコンで後始末に追われている。まあこれが
   彼女達の本職だからな、任せるとしよう。

ナツミYU「あの時、何を言い出すのかと怒りましたけど。」
シューム「まさか爆弾切り離しの作戦だったとはね。」
    彼女達が言うには、2つの留め金で装着するとの事。時限爆弾を両サイドから狙撃、不安定
   にさせた所を外した。茶化しも込めて言ったのだが、まさかその通りだったとはな。
ミツキ「現地で大騒ぎだったわぅよ。名付けて、ブラジャー作戦って言ってたわぅね。」
ナツミA「馬鹿みたいな感じだけど、実際にそれで多くの人が助かった訳ですし。」
ミツキ「Tちゃんの本番に対する姿勢はピカイチわぅ!」
ミスターT「自分の事だが、本当にそう思うわ。」
   あの瞬間、咄嗟に思い付いた戦術がアレだ。超長距離精密射撃はナツミAこそ真骨頂だが、
   俺にでもできたのには驚くしかない。

ナツミYU「でも、ブラジャーの本質を知らないようですからね。」
シューム「そうねぇ〜。ここは実際に見せて触らせて取らせた方がいいかと。」
ナツミYU「大賛成です。」
ミスターT「勘弁して下さい・・・。」
    案の定の展開だ。ネタで言った程度だったが、本質を見せると豪語しだす。それに呆れる
   俺だが、ミツキとナツミAはエラい笑っている。う〜む、要らん事を言うんじゃなかった。


    後日窺ったのだが、あの超長距離精密射撃でエリシェ達の命を救った事に大感激の彼女達。
   俺の事を恩人とまで言いだした。

    また警護者の間で伝説が打ち立てられた。咄嗟の判断で時限爆弾を爆発させずに切り離した
   というものだ。しかも飛行中の航空機に付けられているのを、である。

    そして茶化される事にもなった。名付けてブラジャー作戦となったあの依頼。強者の間では
   ランジェリーマスターとも言われているようだ。実に嬉しくない徒名である・・・。


    まあ実際にエリシェ達の命を救えた事に変わりない。シルフィア達を救ったあの時の様に、
   本当の時は本気になれる事も知れた。事前に準備が整っていたからこそではあるが。

    今後もこの生き様は貫くべきだな。人間は追い込まれてこそ真価を発揮する。それを身を
   以て思い知られた依頼であった。

    第5話へ続く。

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