アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第5話 カーチェイス2〜
    一区切りとして一服しようとすると、表の公道を凄まじい勢いで通過していく数台の車両。
   その後ろをサイレンを鳴り響かせ、数台のパトカーが追い掛けて行く。

    一瞬見えたが、前方の車両数台はスーパーカーに見えた。となると、乗車している奴が噂の
   窃盗者か。

    そこに血相を変えてオーナーさんが現れる。今のカーチェイスに青褪めるオーナーさん。
   これ、推測するに奪われたな・・・。


ナツミYU「もしかして・・・。」
オーナー「た・・大変申し訳ありません! 別の整備中の車両が窃盗団に奪われまして・・・。」
    エラい落胆しているオーナーさん。というかこんな間近にまで窃盗団が現れる自体驚きだ。
   こうなれば、ここで潰しに掛かるのが無難か。
ミスターT「追跡して捕縛するか・・・。」
ナツミYU「つ・・追跡するって・・・車両もないしどうするのよ!」
ミスターT「フッ、まあ任せなされ。オーナーさんや、後で全部弁償するから勘弁な。」
   腰のホルスターからマグナムを取り出すと、目の前のショーウインドウ目掛けて発砲した。
   強化ガラスではないようで、連続射撃で粉々に飛散した。それに周りの面々は驚愕している。

    そしてテーブルの後ろ側にあった車両を使う事にした。先日、俺が魅了された超高級車の
   パガーニ・ウアイラだ。現状だとこれが無難だろう。

ミスターT「ナツミYUさんや、燃料満タン後に追い付けるか?」
ナツミYU「・・・馬鹿にしないで頂戴、そこらの阿呆には絶対負けないわよ!」
    ショーウインドウの破壊とウアイラに近付く俺に、全てを把握したナツミYU。ポシェット
   からグローブを取り出すと、颯爽と両手に装着していく。警護者時と同じ本気モードである。
オーナー「あ、お待ちを。燃料なら予備のを全部用いれば、満タンは可能だと思います。」
ミスターT「・・・すみません、大至急補給をして下さい。」
   颯爽と動き出すオーナーさん。エリシェとラフィナも咄嗟の行動に加勢を申し出た。大企業
   連合の頭の様相ではない。今ここにいる2人は間違いなく警護者そのものである。

    気付いたが、破壊したショーウインドウの地面側。ここにまだガラスの突起がある。いくら
   ウアイラでもタイヤのパンクで大惨事を引き起こしかねない。

    俺は背中に装着している獲物を使った。携帯式方天画戟を取り出し、そのガラスの突起に
   一閃させる。それに驚いた。まるでバターを切るような感覚で突起を取り払えたのだ。

    そして同時に青褪めた。これ、真剣そのものだ・・・。それを背中に格納していた現状に、
   青褪める以外にどうすればいいのやら・・・。

    また全てを把握しだした店員さん達が、散乱しているガラスの破片の除去を開始しだした。
   俺も大きいものをウアイラが発進するであろう場所から遠ざける。その際こちらに向かって
   小さく頷く彼らに、俺は心から頭を下げた。


    俺達が出口を確保していると、ナツミYUがウアイラに乗車してエンジン始動まで待つ。
   そこに複数のガソリンタンクを持って現れるオーナーさん。エリシェとラフィナも一緒だ。

    更に車両からはバッテリーも外されていたようで、整備士さんの1人が速攻搭載してくれて
   いた。そう、本当に速攻である。流石はプロフェッショナルだわ。

    本当ならエンジンを始動して待ちたい所だろうが、給油中のエンジン駆動は非常に危険で
   ある。ここは車に詳しいナツミYU、しっかりと待つべき所は待っているわ。

    まあウインドウに飾られているサンプル車両故に、内部に搭載の燃料は微々たるものだとは
   思う。大量に入っていては不測の事態に問題を起こしかねない。

ミスターT「エリシェとラフィナ、俺達が出発したら喫茶店に行ってくれ。ミツキにオーダー66
      発動、と。」
ナツミYU「それってスターウォーズ・エピソード3・・・。」
エリシェ「アッハッハッ! 諸々了解しました!」
    秘密の暗号を口にするが、その元ネタを知るナツミYUが難癖を付けてくる。ただエリシェ
   とラフィナの方は大爆笑している。彼女達も元ネタを知っているが、その言葉が何を指し示す
   のかを把握したようだ。

    慎重かつ迅速に燃料補給を終える。若干溢れそうになっている所を窺うと、このガソリン
   だけで満タンまで至ったようだ。これなら長距離走行は可能だろう。タンクの蓋を閉め、準備
   は全て整った。

    それを窺ったナツミYU、即座にエンジンを始動しだす。怒れるライオンが雄叫びを挙げる
   かのような大爆音を放つウアイラ。僅かな時間のエンジン温めの間に、俺は助手席に搭乗。
   エリシェ達に合図をすると、ナツミYUはウアイラを発進させた。

    長時間のアイドリングによるエンジン温めができないため、その場でバーンアウトをする。
   エラいスモークが発生し、車内にまでタイヤの焦げる臭いが充満してきた。

    これ、バーンアウトする必要はないような気が。そんな思いを巡らすと、傍らのナツミYU
   が俺の肩を軽く叩いてくる。気にするなという表情が見事なワイルドウーマンだわ。

    そのままの勢いで破壊したショーウインドウからウアイラが飛び出していく。歩行者さんに
   当たらないかと思ったが、ショーウインドウ周辺には店員さん達が通せんぼをしているでは
   ないか。全てを見越した行動に、俺は車内から彼らに深々と頭を下げた。

    ここに居る全員、思いは同じだ。窃盗団を捕縛してくれ、と。



    エラい騒ぎになっている。先方にいるであろう窃盗団と警察のカーチェイスの影響か、周辺
   の一般車両や公共物が尽く破壊されている。

    これ、連中は意図的に破壊して妨害を企てている感じか。所々にパトカーが大破している。
   ただ窺う所、死者は出ていないようだ。

    純粋に高級車ばかりを狙う窃盗団か。しかも車の運転技術は相当な腕前のようだ。これを
   プラスの方に用いれば、カーレースで大金星を挙げられるのだろうに。


ウインド(マスター、聞こえますか?)
ミスターT「ウインドか、どした?」
    携帯が鳴り響いたので応じると、ウインドの声が聞こえてきた。傍らではダークHが何らか
   の指揮をしているのか、引っ切り無しに大声を挙げている。
ウインド(エリシェさんから連絡がありました。お2人は喫茶店の方に向かっているそうです。)
ミスターT「例の暗号は必ず言えって伝えてくれ。」
ウインド(了解。それと窃盗団の向かう先が特定できました。今いらっしゃる場所からだと、恐らく
     品川埠頭だと思われます。)
ナツミYU「船舶で海を渡るつもりね。大至急、都内の港を完全閉鎖して下さい。またこの道筋だと
      環七が爆走コースになりそうなので、沿線道路は全部閉鎖を。」
ウインド(フフッ、そう仰ると思いました。既に手配済みです。数十分は掛かると思いますが、確実
     に閉鎖しておきます。)
ナツミYU「了解、後は任せて。」
   卓越した運転技術で環七を爆走するウアイラ。ぶつかるのではと思うぐらいの車間距離を華麗
   に追い抜く同車は、周辺車両のドライバーさんの度肝を抜いているようだ。

    また国内では滅多に見れないハイパーカーのウアイラ。それが環七を爆走している姿に、
   沿線の住民の方々は同じく度肝を抜かれているようである。

    以前ウアイラの製造過程をドキュメント方式にしていた番組を見た。その中の内容では、
   大多数が海外に輸出されているとの事。日本の剛腕社長なら買えなくはないが、今の所国内で
   見かけた事はない。あるとしてもムルシエラゴなどである。

    確かに場違いな車両ことウアイラだわ。しかし窃盗団を追撃するなら、これ程の適切な車両
   は他にないだろう。スーパーカー窃盗団をハイパーカーを駆って追い掛ける。何ともまあ。

ミスターT「これ、車が苦手な奴は酔うわな。」
ナツミYU「まさか君もじゃないわよね?」
ミスターT「フッ、ご冗談を。陸上なら絶対に負けんよ。」
    一応俺の安否を確認し安堵の彼女。しかし身体は人車一体を成しているようで、一切の無駄
   がない運転技術には驚くしかない。俺は携帯式にした方天画戟を背中に仕舞う。そして両腰の
   ホルスターからマグナムを取り出し弾丸を再装填した。そう言えばこれ、ミツキの愛用銃を
   借りっ放しだわ。
ミスターT「悪い、変な気を起こしたんじゃないからな。」
   一応前置きをし、運転中のナツミYUの股間近くに手をやる。それに驚愕する彼女だが、その
   意図を把握して股を拡げだした。

    やはりそうだ。ノースリーブとミニスカート時は、股間の付け根部分に愛用の拳銃二丁を
   隠し持っているようだ。以前の船上の戦い、妖艶なバトルスーツ時も同じ様に装備していた
   らしい。そそくさげに彼女愛用の拳銃二丁を取り出し、マガジンの確認を行った。

    確認したのは正解だった。それぞれの拳銃には手前に空砲数発と、その下側に実弾が数発
   しかなかった。威嚇射撃用の最低限の武装である。そこで俺が持参していた実弾フル装填の
   マガジンを、それぞれの拳銃に装填を行った。

    警護者内の兵装は、効率化を図るためにマガジンなどを極力同じ仕様にしてある。ミツキが
   愛用のリボルバータイプのマグナムは1発ずつの装填だが、それ以外の現代風の拳銃は全て
   マガジン仕様である。確かに同じマガジンを使えるのなら非常に高効率である。一説だと、
   これにはシルフィア達が考案したようだ。流石は伝説の警護者だわ。

    弾薬の確認と補充を終えて、二丁の拳銃をそそくさげに股間の隠し場所に仕舞った。出す時
   と仕舞う時の緊張感と言ったらまあ・・・。

ミスターT「・・・はぁ、高所や水よりも緊張した・・・。」
ナツミYU「アッハッハッ! 貴方らしいですね!」
    愛用の拳銃二丁が仕舞われるのを確認し、再び股を閉じる彼女。真顔ながらエラい赤面の
   彼女だが、運転の方は真剣そのものだ。そんな彼女に今の心境を語ると大爆笑しだしている。
ミスターT「でも女性ならではの隠し場所、だな。」
ナツミYU「殿方だと厳しいものがあるからね。」
ミスターT「ハハッ、違いない。」
   色々な意味で女性なら秘部近くへのチェックは疎かになる。そこに必殺の獲物を仕舞うのは
   見事なものだ。対して野郎はほぼ無理な話である・・・。

    雑談しながらも戦闘準備を怠らない。ベストの左右には合計四丁の拳銃を隠し持っている。
   それらの弾丸を確認し、一丁を胸用ホルスターと一緒にナツミYUに装着してあげた。

    運転中での装着とあって厳しいものだが、それを物ともしない彼女は凄まじい。ちなみに
   今現在は危険だが、シートベルトを取って貰っての流れである。

    それに隠し愛用銃を二丁持っている彼女に、別に渡したのには意味がある。あくまでその
   隠し二丁は隠し武器であり、目玉は今装着させてあげた獲物に据え置いた。これなら相手の
   目を眩ますには十分だろう。

    最後に腰に装備していた日本刀。これ、鞘が通常のサイズより長い。その理由は鞘に5発
   までだが、ライフルの機能を仕込んであるのだ。搭載弾の確認しだすと驚愕するナツミYU。

ミスターT「あー、これね。通常の日本刀だと無理なんだが、刃を小太刀にして実現できたのよ。
      ちなみにミツキの発案ね。」
ナツミYU「脅威としか言い様がないわね・・・。」
    感嘆の声を挙げる彼女。確かに俺でも驚くしかない仕様である。通常の日本刀の鞘と見せ
   掛けて、実は小太刀とライフルを掛け合わせた日本刀仕様なのだから。
ミスターT「・・・できれば、この様な物騒なものを使わないで済む世の中になって欲しいがね。」
ナツミYU「そうね・・・。」
ミスターT「・・・しかし、力があるのに使わないのも不幸を招く。この生き様は崩さんよ。」
ナツミYU「フフッ、それも愚問ね。」
   全ての準備を終えて一服の準備をする。火を着けた煙草を、徐にナツミYUの口に運んだ。
   それに小さく頭を下げて一服しだしている。俺は別の煙草を取り出し一服しだした。

    しかしまあ見事な運転技術だわ。ぶつかりそうな所を颯爽と切り返しで乗り越えていく。
   また徐々に環七沿線は警戒網が引かれだしており、一般車両の数が少なくなっている。

    当然ながらそれは窃盗団にも有位に運ぶ形になる。それだけ障害物がない環七を爆走する
   事ができるのだから。

    まあナツミYUの卓越した運転技術からは逃れる術はない。仲間内の話だと、車両の運転
   技術は誰も勝てないとか。何処でどう学んだかは分からないが、彼女の腕が超絶的だという
   事は十分窺える。



ミスターT「・・・暇だな。」
ナツミYU「何ならラジオとかどう?」
    俺のボヤキにエラい冷静に対処する彼女。コンソールを操作してAMラジオを起動した。
   というかウアイラに、日本のAMラジオが搭載されているのには驚いたわ。まあディーラーの
   ショーウインドウに置かれていた事から、日本仕様だと思える。

    あ、違うか。日本仕様だとハンドルが右側だ。このウアイラは左側なので海外仕様だろう。
   ただイギリスなどでは日本と同じハンドルなので、海外仕様でも日本車と同じ扱いができる。
   うーむ、車種にも色々とあるわな・・・。

ラジオ音声1(・・・にゃっはー! みんな元気わぅかー! 今は特別番組を放送中わぅよ!)
    突然の音声に2人して吹いてしまった。これ、どう聞いてもミツキの声だ・・・。何故彼女
   の声がラジオから、しかもAM放送から聞こえてくるんだ・・・。
ラジオ音声2(ほら茶化してないで、本題伝えなさいな。)
ラジオ音声1(ラジャー! ただ今、環七を爆走中の黒色スポーツカーに協力して欲しいわぅよ。
       同車が狙っているのは、ちまたで悪逆非道を働いている窃盗団。絶賛追跡中わぅ!)
ラジオ音声2(えー・・補足しますと、同車の目的は環状七号線を品川埠頭に向かっている窃盗団
       そのものです。ただ同番組を聞いている怖れがあるため、ルート変更の可能性も十分
       在り得ます。)
ラジオ音声1(大変申し訳ないわぅが、窃盗団と思われるスーパーカー強奪軍団を追い込んで欲しい
       わぅよ。よろしくお願いするわぅ!)
ラジオ音声3(何卒、皆様の手で窃盗団を捕縛して下さい!)
   ・・・これ、ミツキ以外にナツミAとエリシェの声だよな・・・。一体何処でこの放送をして
   いるのやら・・・。まあ確かに意表を突くのには打って付けだわ。

    特質的なラジオ電波のお陰か、ウアイラの前方を走る車が道を譲ってくれだした。ハザード
   ランプを着けて、追い越し際に軽くクラクションを鳴らしてくれている。

    更には一般道から繋がる道に態と車両を止めて、歩行者さんの安全を確保もしだしている。
   同じく通過時にクラクションを鳴らしてくれていた。

    ・・・無意識に涙が出てきた・・・。これ程までに協力してくれるとは・・・。


ミスターT「・・・感無量とはこの事だの・・・。」
ナツミYU「・・・今は私情は禁物。皆さんの総意を胸に秘め・・目的を達成するのみ・・・。」
    彼女の声色に気付き、顔を見ると号泣している。アサミとアユミに聞けたが、ナツミYUは
   かなり涙脆いとの事。それが感動を呼び起こす様なものなら尚更だという。
ラジオ音声1(勝負は一瞬、思い立ったら吉日わぅよ。こういった積み重ねが、世上から悲惨や不幸
       を少なくしていくわぅ。確かに悲惨や不幸の根絶は厳しいけど、諦めなければ絶対に
       0%にはならないわぅからっ!)
   ミツキの声が響いたと同時に、車外から凄まじいクラクションの音がしだした。間違いなく
   この放送に賛同した形の合図のものだろう。それが環七沿線全体に響き渡っているのだから、
   脅威としか言い様がない。

    同時にこれはプレッシャーにもなる。このクラクションウェーブは窃盗団への揺さ振りにも
   なるだろう。連携を経た人々が絶大な力を発揮するのを目の当たりにしている筈だ。

    ・・・なるほど、ミツキ達はあの暗号で心理戦を展開した訳か。俺としては漠然と先回り
   して、連中の捕縛をと伝えたかったのだが。う〜む、やはり彼女達は凄まじい女傑だわ。



ミスターT「連中、この流れだとどう出るかね。」
ナツミYU「この情報を聞いているなら、別ルートを取ると思うけど・・・。」
    クラクションの合図の中を疾走するウアイラ。所々に大破したパトカーがあるが、警察官の
   方は無事のようだ。となると、窃盗団の腕前は相当なものだな。
ミスターT「ショーウインドウ前を通過時のパトカーの数は見てたか?」
ナツミYU「6台よね。それに大破した車両は既に11台になってるわね。」
ミスターT「ひゅ〜、見事な洞察眼だ事。」
   この高速走行中に周りをしっかり把握しているのには驚いた。卓越した運転技術以外にも、
   しっかりと見定める洞察眼も持っている彼女。これだから伝説の凄腕ガンマンとして名が知れ
   渡るのだな。

ラジオ音声・別音1(聞こえるか! 窃盗団と思われる連中が、品川埠頭手前でJR品川駅方面に
          向かったぜ!)
ラジオ音声・別音2(こちら上空戦闘機隊より、地上のランジェリーマスターへ。以前はお世話に
          なりました。当方からも該当される車両を追跡中。増援部隊も参戦するとの
          事なので、随時連絡を流します。)
    最初の音声はトラックのオッサン風な感じか。次の音声には吹き出しそうになる。これ、
   間違いなくブラジャー作戦時に共闘した航空自衛隊員の方だ。ランジェリーマスター・・・、
   嫌な異名だわこりゃ・・・。
ナツミYU「フフッ。ある意味脅威になりつつあるわね、ランジェリーマスターさん。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   ニヤケながら語る彼女に溜め息を付くしかない。変な称号的要素が確立した訳だが、それだけ
   実力が証明された訳だ。冗談とも取れる異名を語るのだから尚更だろう。


    環七沿線の車両は殆ど協力してくれた。路肩に止めて道を譲ってくれているため、中央車線
   をほぼ最高速度で疾走できている。ウアイラの最高速度は370kmほどだ。超爆音を轟かせ
   ながらの走行は、さながら戦闘機に乗っている感じがする。

    ただし決定的に違うのは、それが陸上から離れないからだろう。もし100mでも真上に
   飛ぼうものなら卒倒だわ・・・。



    窃盗団の追撃は続く。携帯からのウインドの情報で分かったのだが、半ば電波ジャック的な
   応用で連絡を取れているとか。ミツキが発案したオーダー66は見事な戦術である。

    またラジオリスナー風の電話連絡、多分携帯や無線からだと思われる。それらを駆使しての
   逐一連絡先の指示は見事な手際の良さだ。


    暫くすると上空に爆音が響きだす。真上を窺うと、何とハリアーUが数機いるではないか。
   更に上空には高速で飛ぶ戦闘機がいる。あの形状からして同型の機体なのか、遠過ぎて上手く
   窺えない。

    それもそうだろう。300km以上の超高速走行をしているウアイラの車内から、ほぼ真上
   の同じ高速で飛ぶ戦闘機を読み当てるのは難しい。不可能ではなさそうだが、流石にそこまで
   詳しくはない。

    まあ今は一致団結して窃盗団の捕縛を優先するとしよう。相手はさぞかし苦汁を飲まされて
   いるだろうな。

    後半へと続く。

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