アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第5話 再来のカーチェイス・前編2〜
    数週間後、それは起きた。ほぼ夜半になった頃、行き付けのディーラーから連絡が入る。
   各店舗の大型ガレージで待機中のクラシックカーが盗まれたとの事だ。しかも今回は面々の
   予測通り、スーパーカーを一切狙わない流れのようだ。

    前回は高級車たるスーパーカーばかりを狙った犯行だったが、今回はクラシックカーばかり
   を狙った犯行となる。同じ連中かどうかは分からないが、炙り出せた事には変わりない。

    この話を伺ったナツミYUは何時も以上に奮起し、必ず捕まえると躍起になっている。だが
   今現在はその手口が巧妙で隠密、痕跡を残さない犯行の様子。つまり特定が非常に難しい。

    防犯カメラ郡も配置してあったが、どれもハッキングやカメラ自体の破壊により無効化と
   なっている。今回の窃盗団は相当頭が切れるようだ。

デュリシラ「へぇ・・・連中は多重防壁を築いて、行方を眩ます手法を取っていますね。」
ミスターT「前の時は漠然と動いていたようだが、今回は手口が違うという事か。」
    喫茶店の奥側はDJブースになっているが、その少しカウンター寄りはサーバーブースに
   なっている。そこではデュリシラとビアリナがパソコンを使った情報収集に明け暮れていた。
   と言うか、ビアリナもデュリシラに匹敵するかのような腕の持ち主だとは驚きだわ。
ミスターT「お前さん・・・欠点がないんじゃないか?」
ビアリナ「何を仰います。頭脳的なら引けを取りませんが、行動的では皆様に敵いません。それに
     私以前に、警護者は何方かを補佐してこそ真価を発揮しますし。」
デュリシラ「ですね。あのシルフィア様でさえ、スミエ様とタッグを組まれてこそ真価を発揮して
      いらっしゃいますし。まあ異色とすれば、貴方ほどソロが合う方もいませんが。」
ミスターT「ソロねぇ・・・。」
   俺も警護者の手前、スタンドプレイはまず有り得ないわな。ただデュリシラが指し示したその
   意味は、単に単独行動を指し示すものではない。言わば先陣を切っての独立行動だろう。過去
   を例に挙げれば、トラガンへの潜入捜査が正にそれだ。
デュリシラ「そうですねぇ、正に思われたそれでしょう。」
ミスターT「はぁ・・・デュリシラにすら読まれるか。」
デュリシラ「あら、最近の貴方は内情を包み隠さず吐露していると思いますけど。」
ミスターT「何とも。」
   今や身内の女性陣に心中を見透かされる事が多々ある。それは裏を返せば、俺が内情を隠さず
   思うからだろう。野郎より直感と洞察力が非常に優れている女性ならば、俺の内情を読むのも
   容易いものだ。これは俺自身も性転換をしてから痛感しているものになる。

ビアリナ「まあ、マスターの心情を読めるのは別の要因もありますが。」
ミスターT「大体は分かる、言わんでいいよ。」
    俺の内情を読む女性陣は、スミエ・シルフィア・ナツミツキ姉妹を除けば全員こちらに好意
   を抱いてくれている。そこから内情を読むに至るのだろう。ただビアリナは分かるが、人妻の
   デュリシラからも思われているのには驚くが。
デュリシラ「・・・それを思われるのなら、シューム様やナツミYU様はどうなるので?」
ビアリナ「デュリシラ様も今はシングルマザーなので、問題ないとは思いますが。」
ミスターT「はぁ・・・そうですか・・・。」
   確かに彼女の言う通りか。シュームもナツミYUも夫に先立たれており、今は未亡人の状態
   になる。デュリシラも未亡人と聞いているが、それから至るのだろうな。
デュリシラ「恋心は千差万別、定まったものなどありませんよ。それに子供達からは新たな幸せを
      築けと何度も言われていますし。」
ミスターT「新たな幸せ、か・・・。」
   彼女が語った言葉に思い馳せる。シュームもナツミYUも、求める先の結末は夫婦の間柄に
   なるだろう。デュリシラもその感じだが、俺自身は彼女達の胸に開いた穴を埋められる存在に
   なれるのか。幸か不幸かは紙一重、一歩間違えば不幸に至ってしまう。
デュリシラ「・・・そこに回帰されるなら、夫として申し分ないと思います。夫婦とは支え合って
      こそのものですから。シューム様もナツミYU様も、貴方のその心意気を汲んでいる
      からこそ共闘されていると確信しています。」
ビアリナ「ですね。私自身は未婚なので詳しい事は言えません。しかし女である以上、お3方が何を
     心から望まれているのかは痛感します。いえ、この部分は他の方々も全く同じ思いだと
     確信しています。」
ミスターT「・・・俺にその役割が担えるのかどうか不安だがな。」
   一服しながら天井を見つめる。今は誰を娶ると言った部分ではなく、俺自身に本当にその重役
   が担えるのかどうかが気掛かりだ。彼女達の一生を左右する事になるから余計である。

ミュティナ(前にも言いましたよね。ギガンテス一族は一夫多妻を推奨していますから。日本国内で
      一夫多妻が不可能なら、別の場所に移住すれば済みますよ。)
ミスターT(はぁ・・・そう言うものなのか・・・。)
    ミュティナが念話により、俺の心中を見事に読んできた。以前同じ事を言われたが、まさか
   再度言われるとは驚きだわ。皮肉なのが、それが現状の打開策になっている所だろう。
ルビナ(ドラゴンハート一族も全く同じです。強いては宇宙種族は大宇宙を旅する手前、一夫多妻
    でも後継者は多いに越した事はありません。)
ミュティナ(それだけ大宇宙は何が起こるか分かりませんからね。)
ミュセナ(地球も飢餓や紛争で命を落とされる方がいますが、大宇宙ではそれ以上の出来事が発生
     しています。私達宇宙種族は超が付く程の長寿命ですが、生命体である以上逝去は必ず
     訪れますし。)
ミスターT(幸か不幸かは紙一重、だな。)
   こうなると、ほぼ究極論理に至るのだろう。地球の概念以上に後継者を残せるかどうかが、
   種族の存続に関わってくる。ここに行き着くなら、上辺の固定概念など浅はかなものになる。
   ただ俺も地球人で日本人である以上、どうも固定概念の払拭は厳しい。
シューム(へぇ・・・一応は私達の事を汲んでくれているのね。でもね、要は私達がどうあるかが
     重要なのよ。シルフィアさんが名言のアレに帰結してくる。)
ナツミYU(人の一生は儚いぐらいに短い。だからこそ、先輩が仰る様に目の前の幸せを掴み取る。
      これだけ努力しているのです、そのぐらいの幸せは許されますよ。)
ミツキ(Tちゃんも罪な男わぅね、ウッシッシッ♪)
ミスターT(本当に難しいわな・・・。)
   今の俺には固定概念を崩すほどの勇気はない。しかし、何れ選ばなければならない事になる。
   それには今現在の問題を全て片付け、それから考えるべきだろうな。

    そう考えると、地球人ほど固定概念に縛られる種族はないのかも知れないな。ギガンテス
   一族・ドラゴンハート一族は、大宇宙を流浪の旅路の果てに帰結した生き抜くという概念。
   ここに回帰するから一夫多妻を容認している。何時何処で何が起こるか分からないのが宇宙
   である。

    逆を言えば、この壮大な大宇宙で住み良い地球に存在できる事自体が幸せだという事だ。
   それがどうだ、今では私利私欲に溺れたカス共が蔓延っている。テメェ等も地球に住ませて
   貰っている生命体の1つだと言う事を忘れていやがる。これでは地球自体が怒っても仕方が
   ないわな。

    その荒波の中を一念定めて進む俺達は、完全に異端児そのものだろう。しかしそれが大宇宙
   の法則からすれば、生命体として当然の行動に帰結してくる。敬い・労い・慈しみの精神は
   全てのプラスの要因に回帰するしな。

    この穢れた世上を考えれば、俺達の行動が光って見えるのだろう。と同時に異端児である
   手前、出る杭は叩くにも当てはまる。こと日本人はその傾向が非常に強い。同じ日本人として
   本当に恥ずかしい思いになるわ。

    だからと言って歩みは止めん。己が定めた生き様は、愚直なまでに貫き通してこそだ。この
   姿勢は今後も一切変えない。断固として貫き続けてやる。



ミツキ「うっほーい! 本物のデロリアンわぅー♪」
ミスターT「見事なものだな。」
    数日後、何と喫茶店にデロリアンとダッジ・チャージャーが運ばれてきた。例の窃盗事件の
   関連から、日本国内にあった同車両をエリシェが購入。ここに運んできたとの事である。
エリシェ「すみません、まだお2人用のではありません。これは言わばエサの類でして。」
ミツキ「大丈夫わぅ。これでおバカさん達を吊り上げるわぅね!」
ミスターT「ディーラーに置いていては警備が厳しい。しかし地方にあるクラシックカーなら、容易
      に窃盗し易いのを逆手に取る訳か。」
エリシェ「はい。お話を伺う所、ディーラーにあるクラシックカー以外にも個人車両の窃盗も相次い
     でいるそうですので。」
   ガルウイングドアを開き、内部を物色するミツキ。ムルシエラゴやウアイラみたいな同ドアを
   採用するも、デロリアンは高級車の部類には入らない。手頃に手に入るスポーツカー的な感じ
   だろう。しかし今ではクラシックカーの仲間入りを果たしている。
ナツミYU「骨董車両が増えると、メンテナンスも大変よね。」
ミツキ「全部終わったらナツミYUちゃんに任せるわぅよ。」
ナツミYU「ほほ、それは願ったり叶ったりで。」
   ムルシエラゴを愛車とするナツミYUも、目の前のデロリアンとダッジ・チャージャーには
   魅入られているようである。まあムルシエラゴすらメンテナンスする彼女の車両スキルから
   すれば、この2台はお茶の子さいさいな感じだろう。それにパーツ自体も高級ではないしな。

ナツミA「で、本当にポチの車にするの?」
ミツキ「おうよ! これを改造して、過去や未来に向かってやるわぅ!」
ナツミA「はぁ・・・そうですか。」
    ミツキが挙げるそれは、映画“バック・トゥ・ザ・フューチャー”のデロリアンである。
   劇中の同車は科学者ドク氏が改造を施したタイムマシン。初期はプルトニウムを燃料として
   エネルギーを得ており、後半はゴミを燃料としてエネルギーを得ていた。ちなみに、車両に
   必要な走行燃料自体はガソリンになる。
ミスターT「ギガンテス一族やドラゴンハート一族の力を使えば、タイムマシンとはいかずとも本当
      に空を飛ぶ事ができそうだな。」
ミュティナ「あー、反重力機構ですか。それなら実際に実現していますので、この車に施す事は可能
      ですよ。」
ミツキ「レプリカ大和を改造すれば、正に宇宙戦艦ヤマトわぅね!」
ミスターT「機動力に関しては申し分ないわな。」
   こちらはマンガやアニメで有名な“宇宙戦艦ヤマト”になる。確かに元ネタは戦艦大和を改造
   した宇宙戦艦で、海上はおろか海中・深海・空中・宇宙空間も動く事ができる。レプリカ大和
   は史実に準拠の船体だが、宇宙戦艦化すれば無限大の行動力を得られるだろう。


エリシェ「ほぉ・・・そのプランは挙げておきましょうか。」
ミスターT「・・・本当に造りそうだな・・・。」
エリシェ「今後の戦況が悪化するなら、先を見越した行動を取らねばなりません。それにレプリカ
     大和の弱点は、その重荷による機動力の低下ですから。しかも海上でしか運用できない
     という最大の弱点もありますし。」
ミスターT「まあ確かにな。」
    いくら史上最強の戦艦大和と言えど、それは海上という限定的なフィールドでしか運用が
   できない。陸上は無理であり、空中となれば不可能になる。そもそもあの巨体を滞りなく運用
   できるのは、浮力を利用した海上でしかない。それこそ翼を取り付けて巨大なエンジンを搭載
   すれば浮かせるだろうが、物質的には絶対に無理だわな。
ルビナ「その作品を実際に拝見した事はありませんが、レプリカ大和や超レプリカ大和を空中や宇宙
    で運用させる事は不可能ではありませんよ。ただ現状では物質的に改修が不可能なので、
    最初から建造するしかありませんが。」
ミュティナ「エリシェ様が仰る通り、今後の戦況が悪化するなら考えねばなりませんね。」
ミスターT「はぁ・・・本気なようだな・・・。」
   彼女達の信条は有限実行、特にエリシェが顕著だ。実際にレプリカ大和やレプリカ伊400を
   警護者専用ガンシップに仕立て上げたのだ。地球上で最強の大企業連合の力を以てすれば、
   宇宙戦艦を建造するのも容易いだろう。皮肉にもそれがカルダオス一族の宇宙船に特効薬と
   なるのだから何とも言えない。

ミスターT「まあやるからには、超レプリカ大和と同じのを改修した形がいいか。ネタ先の宇宙戦艦
      ヤマトは実際のレプリカ大和のサイズだから、それ以上の方がいい。」
ミツキ「超武装でブイブイ言わせてやれわぅ!」
ミスターT「全て終われば、ミュティナ達やルビナ達が宇宙空間で使えば良いだろう。運用方法は
      任せるとして、警護戦艦としては申し分ない。」
    一服しながら思った。ただ漠然とこれらのガンシップを建造するだけでは、それこそ軍事力
   増強云々と言われかねない。ここはギガンテス一族とドラゴンハート一族の宇宙船群を守る
   ガンシップとして位置付ければ良いだろう。しかも宇宙戦艦として運用するなら、これ程の
   逸材は他にはない。
ナツミA「何か当初の話から完全に逸脱しだしている感じですがね。それでも今後の不測の事態への
     対応に一役買えれば万々歳でしょう。」
ミスターT「地球人は地球規模だから反感を持つのであって、宇宙規模となれば介入すら無理だわ。
      先にシュームが言っていたが、人類が宇宙空間で活動できるシップはスペースシャトル
      ぐらいしかない。それもただ漠然と乗り回すぐらいのな。」
ナツミA「確かに。地球上では各国の軍事物が猛威を振るいますが、宇宙空間では全く以て無力に
     等しいですからね。それこそカルダオス製の宇宙船が妥当な所かと。」
エリシェ「諸悪の根源どもは、正にそれを狙っていると思えます。もしかしたら、ミュティナ様方や
     ルビナ様方の宇宙船団が最終目標かも知れません。」
   ギガンテス一族とドラゴンハート一族のテクノロジー欲しさを考えれば、連中の最終目標は
   衛星軌道上に鎮座している宇宙船団だろう。その先は分からないが、そこを連中の最終目標と
   取ればこちらも動き易い。断固として阻止する動きを見せれば申し分ない。


ミスターT「・・・エリシェ、超レプリカ大和と同クラスの宇宙戦艦建造を。先を見越した動きを
      するしかない。全て終わった後の運用は面々に任せる。」
エリシェ「了解です。と言うか、実案は既に出ているので後は動き出すだけですけど。」
ミツキ「さらば〜ちきゅうよ〜たびだ〜つふねは〜♪」
ミスターT「はぁ・・・。」
    ミツキのネタに笑ってしまうが、実際にそれが実行されるというのは驚愕するしかない。
   そして短期間で建造してしまう大企業連合の力、この姿も常識を逸脱しているわな。だが連中
   の最終目標が宇宙船団なら動くしかない。
ナツミA「宇宙で運用可能な超弩級戦艦、クレイジーとしか言い様がないわね。」
ミスターT「それが連中には特効薬になるんだから、実に皮肉な話だわな。」
ルビナ「ですが、私達の母船は簡易的武装しか搭載していません。例えそれがレールガンやスーパー
    レールガンであっても、戦闘を考慮した船体ではありませんから。」
ミュティナ「実際に戦闘を想定した超弩級戦艦は、今後の私達の抑止力の1つになりますね。」
ミスターT「あまり軍事力云々は出したくないがな・・・。」
   前にも挙げられたが、もはや警護者の次元を超越した形に至っている。個人の戦闘力どころの
   話ではない。

    レプリカTa152Hはまだ黙認できたのだが、レプリカ大和やレプリカ伊400から逸脱
   しだした。仕舞いには超レプリカ大和に超レプリカ伊400だ。最終的にはマンガやアニメで
   有名な宇宙戦艦ヤマトにまで発展しだしている。

    しかし、このどれもが暗躍する連中には超絶的に特効薬になっている。実に皮肉な話だわ。
   海上運用に限定されるガンシップたる4大艦船だけでも、地球上では最強の戦闘艦になる。
   現行兵器をも超越する様相は、第2次大戦時の遺物であれ凄まじいという現われだろう。

    そしてそれら兵器郡を地球上で最強と言わしめるのが、例のバリアやシールドの要因だ。
   現行兵器が全く役に立たなくなる。人類史上最強最悪の核兵器ですら防ぐのだから恐ろしい。
   更にはギガンテス一族には核兵器を無力化させる術もある。後聞きだが、ドラゴンハート一族
   も同じ術があるとも言う。

    人類から最強最悪の核兵器や細菌兵器を取ったとしたら、もはや為す術はない。現行兵器も
   役に立たないのなら、白旗を揚げて降参するのが関の山だわ。だからこそ、連中はこれらの
   オーバーテクノロジーを欲している訳になる。そこに付け入ったのがカルダオス一族であり、
   強いてはヘシュナになる。

    まあ最強最悪の核兵器や細菌兵器を使われないのならまだいい。細かい抗争は虱潰しに殲滅
   していけば問題ない。昔はスミエがたった1人でそれを遂行してきたのだから。今の俺達にも
   同じ事が十分できるわな。

    後半へと続く。

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