アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第5話 再来のカーチェイス・前編3〜
    数日後、蒔いた餌に見事に喰い付いた窃盗団。喫茶店の駐車場に鎮座していた、デロリアン
   とダッジ・チャージャーが盗難にあったのだ。それだけ連中の目は広範囲に鋭く光らせている
   証拠だろう。

    ただし、タダで盗ませる訳にはいかない。同車両には連中には探知不能な追跡装置を搭載
   してある。それを辿れば連中の元に辿り着けるという算段だ。

ミツキ「あんにゃろ〜・・・見てろわぅ!」
デュリシラ「まあまあ・・・。」
    肩越しから強引に探索をするミツキにタジタジのデュリシラ。しかし流石はプログラミング
   の覇者か、二人羽織的な感じで凄まじいものだ。お互いに別の操作を行うも、それが意思の
   疎通から物凄い作業効率を叩き出している。
ビアリナ「このシグナルの行き先を踏まえると、今回は漠然と動いているようには思えませんね。
     色々と場所を変えつつ、目的地に向かっている感じで。」
ミスターT「前回の流れを覆す様相だわな。」
エリシェ「ただ、先を見越した動きをしないと読まれる可能性もあります。私達の方も動き出した
     方が良さそうですね。」
   何時でも動けると意気込みを顕にしている一同。特にミツキの気迫は凄まじい。何れ愛車に
   なるデロリアンを盗まれたのだ、怒りを顕にするのは言うまでもない。

デュリシラ「・・・お、動き出しましたね。この動きは、品川埠頭経由ですか。」
ミスターT「また同じルートか。いや・・・これはお台場辺りに向かいそうか。」
デュリシラ「でしょう。先の窃盗事変を踏まえて、態と前と同じ動きと見せかけて別の場所に移動
      すると。」
ミツキ「とっ捕まえてやるわぅ! 逐一位置情報の報告を頼むわぅ!」
    粗方の情報を得たミツキが暴走し出した。軽装を施すと、そのまま喫茶店を飛び出して行く
   ではないか。慌てて俺も手短な装備を持ち後を追った。

    喫茶店の表に出た瞬間、入店してきたナツミYUとぶつかりそうになる。倒れ込みそうな
   彼女を抱きかかえつつ、先に飛び出したミツキが何処に行ったかを尋ねた。すると喫茶店の
   駐車場に止めてあるウアイラに向かったとの事。彼女が定期メンテナンスを終えた同車両で、
   ミツキはそれを使って追走するようだ。

    慌てて2人して同車両に追い付くと、今正にウアイラに乗り込む彼女の姿が。俺達に気付く
   ミツキが手招きしてくる所を見ると、どうやら単独では心許ない感じか。ただその気迫は自分
   が運転するのだと断固として譲らない様相である。

    そこでナツミYUと一緒に強引に乗り込む事にした。先に座席に座り、その膝の上に彼女を
   座らせる感じである。ウアイラは2人乗り用で、かなり窮屈だが仕方がない。それに不測の
   事態ではナツミYUの力は大いに助かる。この場合は強引に進めるしかない。

    俺達が乗り込んだのを確認したミツキは、ウアイラのエンジンを始動。身内でミュティナ達
   に近い小柄な彼女だが、それを覆すかのように車両を運転しだした。何時学んだのか全く以て
   不明だが、彼女のパワフルなテクニックには感嘆するしかない。


ナツミA(お3方、相手は前回と同じく品川埠頭側に一応向かっているわ。)
ミツキ(アレわぅか。向こうに行くと見せ掛けて、途中でルート変更するわぅね。)
エリシェ(大凡その筋だと思われます。)
    ウアイラが疾走しだして数分後、念話でナツミAの声が聞こえてきた。前回は意思の疎通に
   よる念話はなかったが、今回は遺憾なく発揮されている感じだ。しかも既存の通信機器群と
   違って、どんなに距離が離れていてもリアルタイムで伝わるのだから恐ろしい。
ナツミA(で・・・今はポチが運転している訳ね。ナツミYUさんは同席です?)
ナツミYU(い・・一応・・・。)
ミスターT(ミツキのテクニックに驚愕しているわ。)
   俺の膝の上で抱き付くようにいるナツミYU。エラい赤面しているも、ミツキのドライバー
   テクニックに驚愕していた。しかも自身も凄腕のドライバーなため、進むべき場所を的確に
   アドバイスしている。まるで自分が運転しているかの様な感じだ。
シューム(へぇ・・・膝枕ならぬ、膝の上でノホホンねぇ・・・。)
デュリシラ(妬けますよねぇ・・・。)
ミスターT(言ってろ、じゃじゃ馬娘達め。)
ミツキ(ウッシッシッ♪)
   本来ならタッグで追撃する所を、トリオで暴れている部分に茶化しが入る。特にナツミYUが
   俺の膝の上にいる事を、シュームとデュリシラからエラい反感を喰らう。シュームなら分かる
   のだが、最近はデュリシラからも嫉妬の一念をぶつけられていた。

ビアリナ(マスター、数十分後にそちらに支援に入ります。)
ミスターT(上空からハリアーUで探索か、有難い。)
    茶化しの念話以外に、ビアリナからの支援の声が入ってきた。前回は途中でハリアー隊が
   加勢してくれたが、今回は最初から加勢してくれるようである。
ルビナ(今回は私も相席しますよ。)
ミスターT(あら、ハリアーUって単座じゃなかったのか?)
ビアリナ(このハリアーU改は単座から複座に改造してあります。更に後方の上側と下側に旋回式の
     マデュースを搭載してあるので、後方の憂いは消えますよ。)
ミスターT(マデュースねぇ・・・。)
   オリジナルのハリアーUは30mmバルカン砲を2門搭載している。他には各種ミサイル群が
   装備されているが、どれも機体前方にしか射出できない。機体の後方・左右・上下には死角が
   存在する。それを補う形のマデュース搭載だろう。
ビアリナ(これらの特殊兵装は実際の軍備の発展系のもので、言わばテスト導入な感じでしょう。)
ミスターT(悪く言えば実験台だわな。それに俺達警護者に提供すれば、その能力を試せるとある。
      どちらも恩恵に与れるが、どうもパッとしないわ。)
   表向きの支援はできないも、こうした裏側からの支援はされているようだ。ハリアーU改の
   提供は一個人では絶対に成し得ない。警護者という特殊な要因があるからこそ、提供されると
   いうものだろうな。

エリシェ(以前も言いましたよね。これら軍備は戦乱を助長させかねないと。しかし何も持たずに
     いれば虐げられるのもまた事実。私達は大企業連合の抵抗力を持ちますが、それ以外では
     軍事力には敵いませんし。)
ミスターT(それを黙殺するのが警護者という概念、か。だから平然と兵器を投入できる。)
ミツキ(実に皮肉な話ですよ。)
    念話だと通常の会話ではなく脳裏に思った事が透写できる。華麗なまでにウアイラを運転
   するミツキが、ハンズフリーで会話できるのは強みだろう。前回は携帯による会話だった。
ミスターT(だからと言って歩みは止めん。俺は俺の生き様を貫くのみ、だ。)
エリシェ(そうですね。この手の細かい上辺の要因に直面すると、最終的には己自身の生き様に帰結
     してきます。貴方のその姿勢が警護者たる何よりの証ですよ。)
ミスターT(複雑な心境だわな。)
   一服しようとするが、両手はナツミYUを抱きかかえているため身動きが取れない。それを
   知ったのか彼女も一服し、俺の口元に運んでくれた。そう言えば過去のカーチェイス時も、
   同じ様に運転中の彼女の口に煙草を運んだ事があったな。
ナツミYU(貴方はあの時もこうしてくれましたよね。)
ミツキ(ウッシッシッ♪ 正に二人羽織わぅ。)
シューム(へぇ・・・。)
デュリシラ(念話だと全て分かるのですねぇ・・・。)
ミスターT(はぁ・・・。)
   念話は会話以外にも視覚や胸中の一念すらも共有できる事から、ナツミYUがしてくれた事が
   遠方のシュームやデュリシラにも伝わったのだろう。そして同時に物凄い殺気に満ちた一念を
   抱いているのも感じ取れた。嫉妬の部分はさておき、この意思の疎通による念話は本当に恐ろ
   しいものだ。


ミスターT(で、今現在の連中の動向はどうだ?)
デュリシラ(あ、はい。今現在は品川埠頭から・・・って、海路に出ていますよ!)
ミツキ(ありゃ、道を変える流れじゃないわぅか。となると・・・。)
    疾走していたウアイラを減速させ、環七から一般道へと入っていく。ウアイラのウリの高速
   走行ではなく、殆ど徐行に近い流れでの商店街を走っている。
ナツミA(なるほど、今のその地点だと下手に動くのは得策じゃないわね。)
ミツキ(うむぬ。海路は広大わぅが、陸路より移動速度は激減するわぅよ。わた達が主導権を握って
    いるのは間違いないわぅし。そこで徐々に接近すると同時に、直ぐに切り返せるように待機
    走行をするわぅね!)
ナツミYU(これは私には考えもしない戦術ですよ。)
   ミツキの戦術に一段と感嘆しているナツミYU。ナツミYUのウリは高速走行による猛追に
   なるが、ミツキの場合は先を見越した低速走行を遺憾なく発揮している。しかもウアイラ自体
   の能力で補えるギリギリ範囲内での走行だ。車両の特性を見事に見極めている。
ミツキ(ビアリナちゃんとルビナちゃん、もう出撃したわぅ?)
ビアリナ(はい、そちらに向かっています。情報の方はルビナ様から逐一連絡を頂いていますので。
     あ、これは新規搭載のヘッドアップディスプレイです。)
ミスターT(ほぉ・・・F−22やF−35の装備ねぇ・・・。)
ミツキ(正にワンコアイわぅ!)
   う〜む、このハリアーU改には現行兵器の実験として色々な装備を施されているようだ。

    ヘッドアップディスプレイは最新兵器のF−22やF−35に搭載されている装備になる。
   目の前のサンバイザー的な風防に情報が表示されたり、機体を透写して下側の相手を見ると
   いった事もできるらしい。機体自体に搭載されているカメラとの一体化である。

    ただこの2種とも実際に実戦投入されていないため、その機構をハリアーU改に搭載して
   実験していると思える。システムの追加搭載は問題なさそうなので、完全な実験機体と言える
   だろう。

    実際、オリジナルのハリアーUにはヘッドアップディスプレイは装備されていない。それに
   各種電子機器群も該当する。更には亜音速飛行しかできない同機は、F−22やF−35には
   到底敵わない。機体の利点となる垂直離着陸だが、F−35の派生版も同様の能力が備わって
   いる。

    今となってはハリアーUが現行兵器に勝る事はなくなった。唯一の利点は価格面だろうな。
   F−22もF−35も高額で、ハリアーUが複数購入できるほどだ。このぐらいしか利点が
   なくなっている。

ビアリナ(・・・それでも武骨な機体の方が好き、ですよね?)
ミスターT(ハハッ・・見事な先読み、その通りだわな。)
    次の語りをする瞬間、ビアリナに胸の内を見事に見透かされた。彼女が言う通り、現行兵器
   は洗練され過ぎて面白味に欠ける。俺は武骨な姿にこそ兵器の粋があると思う方だ。まあこの
   ウアイラもムルシエラゴもそうだが、一部の機体には強い魅力はある。
デュリシラ(レプリカ大和やレプリカ伊400が正にそうですよね。現行兵器のイージス艦などは
      洗練され過ぎて華やかさがありません。まあ兵器に華やかさを求める自体おかしいの
      ですが。)
ミスターT(これら機体群の意味合いは、本来の力を発揮できるかどうかにあるからな。それに、
      どう足掻こうが兵器群は人殺しの道具の1つに過ぎない。)
   結論はこうなってしまうか。扱う人により全く変わってくるが、これら兵器群は所詮人殺し
   の道具に過ぎない。そしてそれらを扱うプロフェッショナルたる警護者も、悪く言えば人殺し
   に過ぎないのだ。この部分は払拭しようにも払拭できないのが現状である。
ミツキ(んー・・・でもTちゃんみたいな一念と心構えがあるなら、人殺しには至らないわぅよ。
    現に活人技を駆使した戦術を惜しみなく展開してるわぅし。更には相手を殺すのではなく、
    阻止するために動いているわぅから。)
ナツミA(そうね。その部分が絶対不動なら、殺人快楽者には陥らないわね。と言うかTさんには、
     その概念は全く以て皆無だと思いますし。)
ミスターT(一同の顔に泥を塗る訳にはいかんしな。無様な姿など曝せんよ。)
   結局はここに帰結、だな。ミツキやナツミAが指摘してくれたように、これが俺の生き様に
   なる。絶対不動の原点回帰が備わるなら、怖れるものなど何もない。後は己が生き様を貪欲な
   までに貫いていく、これしかないしな。

エリシェ(改めて、私達の立ち位置は非常に重要な所まで至っているのですよね。)
シューム(漠然と進むのは過去の話よね。)
ミツキ(んにゃ、何時も通りで問題ないわぅ。茶菓子を追い求めるワンコそのものわぅよ!)
シューム(ぶっ・・アッハッハッ!)
    それぞれの原点に立ち戻り、神妙な一念に回帰しだす。しかし次の瞬間、ミツキの一言で
   一気に崩れ去る。シュームを筆頭に一同して爆笑してしまった。この美丈夫の言動は本当に
   見事なものである。
ナツミYU(フフッ、ミツキさんの生き様があれば世上から悲惨や不幸は根絶できますよね。)
シューム(道は険しいけど、不可能ではないわねぇ。)
デュリシラ(今後の私達次第という事になりますね。)
ミツキ(うぉー! 最強のワンコを見せてやるわぅー!)
   徐行速度で様子を見るミツキが啖呵を切る。それに周りは笑うしかない。この女傑の一挙手
   一投足は本当に見事としか言い様がないわ。それでも運転は非常に慎重に相手の動向を探って
   いる。正に獲物を前にした猛獣の如く・・・。

    意思の疎通による念話で、デュリシラが捉えている情報が脳裏に浮かんでくる。海路に出た
   窃盗団は、そのまま東京湾に出だしている。しかし、その先にはエリシェが先手を打って行動
   をしていた。東京湾の出口、一番幅が狭い場所にそれは鎮座している。

    全長1315mの超レプリカ大和は東京湾に入り難いが、610mの超レプリカ伊400は
   湾内に問題なく入れる。しかも潜水艦なのに海面に出ても戦艦に匹敵する火力を有していた。
   後方に搭載された138cm主砲や46cm副砲が目を光らせている。

    流石の窃盗団も、超潜水艦が目の前に鎮座している様に驚愕した様子だ。慌てて品川埠頭
   方面に引き返している。


ミツキ(見るわぅ! ワンコサブマリンの実力を!)
エリシェ(はぁ・・・まあそう言う事にしましょう。事前に超レプリカ伊400を東京湾外に待機
     させておきました。レプリカ伊400だと舐められると思いますが、超レプリカ伊400
     ならレプリカ大和クラスですからね。)
ナツミA(皮肉の以前に、超レプリカ伊400のサイズがレプリカ大和の2倍以上なのが何とも。
     5倍まで拡大した様相は、地球上で最大最強の戦艦と潜水艦ですよ。)
ミスターT(運用次第では無限大の可能性を秘めているわな。)
    昨今の従来の潜水艦だと、武装は魚雷か単発式の砲塔しか発揮されない。最新式の潜水艦
   であれば、垂直発射ミサイル群が異彩を放ってはいる。しかし水中に潜水する事から、戦艦の
   様な重武装は不可能だ。それを覆したのが、レプリカ伊400と超レプリカ伊400になる。
   前者は23cm主砲だが、後者はその6倍の規模の138cm主砲が搭載されているのだ。
ミツキ(ニューノーチラス号でも、こんな重武装はなかったわぅよね。)
ナツミA(あー、まあねぇ。)
ミスターT(あちらはレーザー兵器そのものだしの。これら弾丸武装が物理となるなら、差詰め魔法
      兵器と言うかね。)
エリシェ(確かに。レーザーやプラズマなどのビーム兵器は、魔法に近い感じですし。)
ミツキ(ビーム兵器は水中では著しく火力が落ちるのも難点わぅ。)
ミスターT(スパロボ系作品の設定か。)
   ゲームは“スーパーロボット大戦”などで出る兵器群のどれもが、水中では火力低下に至って
   しまう。地上か・空中か・水中か・宇宙空間か、この4つでの運用が多い。同作の終盤は宇宙
   での戦いが数多いが。

ミスターT(スパロボか。警護者全盛期は娯楽も楽しんでいたから、同作で遊んでいたわ。第4次の
      作品では、聖戦士ダンバインのガラリア=ニャムヒー嬢が好きだったな。)
ナツミA(あー、バストールの女戦士ですか。ショウさんとバイストンウェルに戻ろうとして、自身
     のオーラ力に耐え切れず爆死した。)
ミスターT(オリジナルの劇中ではね。スパロボの方だと、ショウ氏の説得で最終まで共に戦う強者
      になったし。ただ、宇宙適正がCと最悪だったが。)
ミツキ(宇宙空間ではゲストメカ群に大ダメージ与えられないし、ビルバインしても回避が困難と
    最悪極まりないわぅ。)
    当時の様相が脳裏に蘇ってくる。するとナツミAもミツキも同作をプレイした事があるから
   だろう、脳裏にその流れが鮮明に流れてきた。意思の疎通による念話は、お互いの胸中や脳裏
   の描写すらも透写するみたいである。
ナツミYU(何か・・・あまり美人と言えない気が・・・。)
ミスターT(オリジナルの彼女は美人ではないわな。ただ戦う女性としての魅力はあったね。しかも
      オリジナルでは不遇の流れも、スパロボでは最後まで第一線で活躍してくれた。)
ナツミA(マスターは死亡という概念に物凄く反感を抱いていますからね。最近では敵味方問わず、
     全員生存をモットーとしている。あの特殊部隊も全く同じでしたし。)
ミスターT(人が死ぬのは好きじゃない。)
   今のスキルだからこそ活人技を貫けているが、警護者走り立て時は不測の事態で死者が出て
   いたのも確かである。俺も何度かその場面は見てきている。できれば敵味方問わず、相手の
   死亡は絶対に見たくない。
ミュティナ(大丈夫ですよ。だからこそのギガンテス・ドラゴンハートのテクノロジーです。各種の
      バリアやシールドを駆使すれば、要らぬ被害は最小限に抑えられます。)
ルビナ(そうですよ。それにスミエ様はそれらがなかった時代に、己の身1つで私達を守られた。
    私達は一族を代表し、その孫となる貴方に恩返ししなければ失礼極まりない。)
ミスターT(ますます以て頑張らねばの。)
   全員生存とは烏滸がましいかも知れないが、実力が伴っていれば話は変わってくる。そのため
   の警護者の力である。警護者とは本来こういった力で動く戦闘集団そのものだ。厳守し続ける
   事にこそ意味がある。


シューム(しかし・・・君も女性には目が眩むのね。)
ミスターT(野郎の性でし・・・。)
ナツミYU(はぁ・・・。)
ミツキ(ウッシッシッ♪)
    相変わらずの様相だ。ゲーム内のキャラたるガラリア嬢に気を惹かれた部分に、シュームと
   ナツミYUはヤキモチを妬いている。俺の場合は恋愛感情とは別次元なのだが・・・。
ミツキ(わた達の力があれば、目の前の悲惨や不幸なんざ蹴散らしてやるわぅ!)
エリシェ(本当ですよ。そのための警護者・大企業連合・その他諸々の力ですから。)
デュリシラ(力とは、使ってこそ真価を発揮する。しかし誤った使い方をすれば破滅を導く。よって
      戒めてくれる存在が必要不可欠と。)
ミツキ(ワンコの力が必要なのだよ。)
   結論的流れを出すも、最後の最後でボケで締めるミツキに爆笑してしまう。この美丈夫の気質
   があれば、本当に世界から悲惨や不幸の概念を少なくさせられるかも知れない。
ナツミA(ふむ、あえて“消せるかも”と言わない所が見事で。)
ミスターT(生老病死の理などからすれば、幸か不幸かは表裏一体。消す事など絶対にできない。
      しかし可能な限り少なくする事はできるはずだ。それがミツキ流の生き様だと思う。)
ミツキ(烏滸がましい感じですが、それで少しでも幸せが得られるなら安いものです。私の生き様で
    ブイブイ言わせますよ。)
ミスターT(本当だよな。)
   ミツキ流の生き様は、人間に元来から内在する力の淵源に帰結する。彼女だけが特別な存在
   ではなく、一凡夫として開花させているに過ぎない。俺達も全て凡夫だからな。

    要はその力を出せるかどうか、ここに掛かってくる。毎度ながらの回帰先だが、それでも
   回帰するのは重要である証拠だろう。



デュリシラ(お、窃盗団は再び埠頭に戻ったようですよ。)
ビアリナ(こちらからも確認できました。随時監視を続けていきます。)
    徐行運転をしながら待ち続けると、暫くして連絡が入る。窃盗団は東京湾から表に出る事が
   できないのを確認し、再び品川埠頭へと戻ったようだ。正に袋のネズミだろうが、奥の手が
   ありそうだな。
ルビナ(この通称ワンコアイは凄いですね・・・。)
ミツキ(ヘッドアップディスプレイわぅね!)
ミュティナ(そしてルビナ様から念話を通して、私達全員にその場が脳裏に映し出されるという。
      ギガンテス一族やドラゴンハート一族の十八番ですが、我ながら感心しますよ。)
エリシェ(テクノロジーはあっても、使わなかった証拠とも言えますね。今は惜しみなく使っている
     現状から、こうした便利さが如実に現れているのかと。)
   確かにそうだろう。意思の疎通による念話は、地球人自体には絶対に成し得ない力である。
   ペンダント効果もあるのだが、それ自体がオーバーテクノロジーの集合体だ。ミュティナ達や
   ルビナ達がいてこそ成り立つものである。

シューム(で、どうするの?)
エリシェ(再び陸路を走るまで待ちましょう。ビアリナ様方には監視を続行して頂き、ミツキ様方に
     追撃をお願いする形で。)
ミツキ(任せろわぅ! ただ、前回のように幹線道路を封鎖はしなくて良いわぅか?)
ナツミYU(多分大丈夫だと思います。その理由は連中がネットワークを通した情報網を巡らせて
      いるのと、前回の敗退理由を痛感していると思いますし。)
シューム(なるほどねぇ。同じ過ちは二度と行わない、ね。まあ、この窃盗自体が同じ過ちを犯して
     いるに過ぎないけど。)
ミツキ(説得力の欠片もないわぅね。)
    再び環七に戻り、ウアイラを中速走行で疾走させるミツキ。ただここからは前回のルートや
   各種の手法を知るナツミYUのアドバイスを受けている。幹線道路を封鎖しないのは、もし
   それを行った場合は相手にも有利になる事を知っているからだろう。

ミスターT(さて・・・次の一手はどう出るか。)
ミツキ(ナツミYUちゃんなら、どういった手法で逃走するわぅ?)
ナツミYU(私ですか? う〜ん・・・品川埠頭がダメで、別の場所に出るとなると・・・葛西臨海
      公園側ですかね。あそこからなら羽田空港も近いですし、桟橋も近いので目眩ましには
      十分だと思います。)
ミスターT(つまり、こちらに向かってくるという事か。)
    今は品川埠頭側に疾走中のウアイラ。ナツミYUの仮説に至るなら、連中と鉢合わせになる
   流れになる。となると、待ち構えるは葛西臨海公園周辺が無難か。
ミツキ(OKわぅ、Tちゃんのそのプランでいくわぅね!)
ミスターT(ああ、分かった。今度は逆追走だな。)
ミツキ(“ワンコでワッショイ”を発動するわぅ!)
エリシェ(アハハッ! 前回は“オーダー66”で、今回は“ワンコでワッショイ”ですか。)
ミツキ(はしる〜はしる〜わんこた〜ち〜♪)
ナツミA(はぁ、ランナーね。)
   どうしてこうも笑いに持ち込むのか不思議でならない。当然その術中にハマってしまい、爆笑
   してしまうのは言うまでもないが。これが自然体で出るのだから、ミツキの内在するパワーは
   本当に凄まじいものである。

    品川埠頭側に向かっていたのを止め、信号経由から反対車線へと切り替えた。本来は上り
   射線から下り車線への方向転換はし難いか、ここは急を有する事で行った。一歩間違えば違反
   切符を切られそうだが・・・。

    するとナツミYUが車内を漁り、何とパトランプを取り出すではないか。それを窓を開けて
   屋根に取り付けだす。更にサイレンまで鳴らし出したではないか。これには驚愕するより爆笑
   してしまった。

    覆面パトカー化したウアイラが本領を発揮し、環七を爆走しだす。ただし今回はナツミYU
   の運転ではなくミツキの運転である。

    第6話へ続く。

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