アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第07話 守り人と愚か者1〜
    窃盗団とのカーチェイスが一変し、彼らをも守る戦いに発展した事変。今では無人兵器郡が
   横行しており、それを警護者サイドが対処に明け暮れている感じになっている。実働部隊は
   トラガンのレディース部隊だ。

    日本自体の反撃は乏しいというか、実質不可能に近い。法案やら世間体やらで雁字搦めに
   なっているため、警察郡や自衛隊郡が動く事ができずにいる。だからこその俺達になる訳だ。

    まあ何にせよ、俺達は俺達の生き様を貫き続けるのみだ。今はそれしかできない。それが
   できるのもまた俺達以外にない。この世に生まれてきた理由が正にここにあるわな。



    喫茶店のカウンターで物思いに耽る。葛西臨海公園の海岸で性転換ペンダントを発動して
   からは、ずっと女性の姿でいた。ミュティナやルビナはヘシュナへの対策が同性なら突破口が
   拓けると推測している。そこで切り札としてのこの姿である。

    ただ実際問題は、どうやってヘシュナまでの道を開くかにあるが・・・。出会い頭の印象は
   最悪の状態になったため、野郎の姿で会うのはマズいだろう。この一手が相手にどれだけの
   効果があるか、今は様子を探るしかない。

ミスT「俺だったらこうするが・・・。」
    俺が性転換をしてからは、トラガンの女性陣が引っ切り無しに訪れてくる。彼女達と初対面
   で会った姿がこれだったからか、それが自然体の姿だと無意識に思ってしまっているようだ。
   ただ喋り方は本来の俺自身なので、“私”ではなく“俺”で通しているが・・・。

    毎回3〜4人のメンツで来訪してくる。これは何時何処で襲撃されても対処するための、
   ナツミYUが考案した戦術の1つだ。まあ今ではトラガンの女性陣の戦闘力は、日本一だと
   言える程の凄腕揃いに至っている。襲撃されたら逆襲撃で蹴散らせそうだが・・・。

シューム「君もよくやるわね・・・。」
ミスT「皮肉にしか聞こえんがね。」
    厨房越しから茶化しを入れて来るシューム。ただ俺が野郎時の様な茶化しの類ではない。
   もしそうだとしたら、相当な殺気に満ちた視線で睨まれるだろう。この場合は同性からの感嘆
   の声と言えるだろうか。
ミスT「それにしても、あれだけの戦闘力を持ちながら女性ならではの悩みを出すのは何とも。」
シューム「いいじゃない、ここに訪れる方は世間体の一切の柵を取っ払った状態で来る。だから胸襟
     を開いて対話できるというものよ。」
ミスT「確かにね。」
   一服しながら思う。トラガンの女性陣の戦闘力は、今では日本一の力を誇っていると断言して
   良いだろう。しかしそれは警護者としての姿であり、それを除けば女性なのだ。諸々の悩みが
   出てくるのは当たり前である。ただ、中身は野郎な俺に女性の事で相談されてもな・・・。
シューム「その考えの答えだけど、恐らく君が男性だから対処できる感じかもね。」
ミスT「野郎ならではなの解答、と言う事か。」
シューム「そう。今もトラガンの女性陣は男性恐怖症の面々が多い。ナツミツキ四天王との免疫は
     できているみたいだけど、君の素体の姿には免疫がなさそうだし。」
ミスT「性転換している今だからこそ、コミュニケーションを取れるという訳だな。」
   非常に複雑な心境だわ。できれば俺自身は野郎として接して欲しいものだが、それが適わない
   から女性の姿になるのだ。う〜む・・・それだけ彼女達に至った出来事が、相当なものだった
   という事か・・・。

ミスT「・・・野郎の時以上に怒りが出てくるわ・・・。」
シューム「フフッ、女性ならではの視線からの怒りね。」
    俺の怒りの表情を窺い、呆れるも小さく笑う彼女。それだけ俺が女性に近い状態に至って
   いる証拠だろう。スミエが言うは、幼少の頃に女性達の中で育ったのが淵源だとも。
ミスT「俺のもう1つの役目は、全部片付いたらトラガンの女性陣の支えになる事か・・・。」
シューム「そうね。女性の目線を持つ君だからこその大役よね。そこは大いに賛同するわ。」
ミスT「世上は女性の時代、それをもっと広められればな。」
   一服を終えると、紅茶を差し出してくれるシューム。頭を下げつつ受け取り、静かに啜った。

    根本的な解決策は、各種の紛争を根絶してこそだろう。時間は掛かるが不可能ではない。
   それに俺達には絶大な力を有している。これらを全て使い切ってでも、世上から悲惨や不幸を
   無くせていければ幸いだ。まだまだ課題は山積みである。

    まあ今は現状をどうにかする事を心懸けよう。ヘシュナさえ説得できれば、最終的な敵対者
   の炙り出しが可能になるだろう。既に彼女は当事者共と接触している筈だ。だが一筋縄では
   いかないのも確かだな。



トラガン女性隊員1「こちらへ。」
    カウンターで物思いに耽っていると、突然入店してくる面々がいた。そちらを向くと、恒例
   のトラガンの女性陣の他に見慣れない2人の男女がいる。しかしその雰囲気が殺気立っている
   事から、誰かしらの追撃を振り切った形か。
ミスT「どした?」
トラガン女性隊員2「すみません、急遽押し掛けて。こちらの2人が黒服連中に襲われそうになって
          いたので助けてきました。」
シューム「へぇ・・・それは後ろの連中の事ね。」
   厨房でノホホンと作業をしていたシュームが一変し、物凄い殺気立った表情で入り口を凝視
   しだす。颯爽と携帯している拳銃を取り出すと、入り口へと向けだした。

    直後、押し掛けるように入ってくる黒服連中。明らかに場違いな存在で、その雰囲気から
   あの傭兵軍団に近い。つまり武器を携帯している事になる。

ミスT「何なんだアンタらは?」
黒服1「その2人をこちらに渡して貰おう。」
シューム「嫌がっているのにかい?」
黒服2「お前達には関係のない事だ。」
    この雰囲気は軍服連中に近いのか。しかし連中はあの後全員捕縛され、ミュセナがそれ相応
   の対応をしたとの事だ。となれば、コイツらは別の勢力と言えるか。
ミツキ「何わぅ? 何わぅ?」
ナツミA「あー、愚物ご一行様のご登場ね。」
ビアリナ「はぁ・・・マスターが諸々で自己嫌悪に陥る心境が分かりましたよ。」
   喫茶店の奥でDJをしていたナツミツキ姉妹。最近はビアリナも参加してのトリオでのラジオ
   放送をしている。その彼女達が騒ぎを聞き付けて現れた。
黒服3「・・・どうしても渡さないつもりのようだな。」
ミスT「その兄ちゃんと姉ちゃんが喜んでいるなら別だがね。どう見たって嫌がってるだろうが。
    ならば話は早い、テメェらの様なカスには渡さんよ。」
黒服1「ならば強引に動くとしよう。」
   黒服連中が拳銃を取り出すと、俺に向けて発砲しだした。しかし常時、バリアとシールドの
   ペンダントを発動している状態だ。態とらしく左手をかざして、迫り来る弾丸を静止させて
   叩き落す素振りを見せた。それに相手は驚愕している。
黒服2「な・・何だと?!」
ミスT「何だ、この雰囲気から今の世上を把握していないのか。俺達に一切の攻撃は無意味よ。」
ミツキ「これは正当防衛と取って良いわぅね!」
   何振り構わず俺に向けて射撃したのは、完全にこちらを殺すつもりで撃ったという事だ。当然
   それに対しての反撃はしても良いだろう。それを正当防衛と豪語するミツキが、即座に反撃に
   出だした。

    颯爽と黒服連中に接近すると、今では恒例の体術で相手を襲撃。続いてナツミAとビアリナ
   も攻撃を開始しだした。居ても立ってもいられない雰囲気のシュームも加勢し、喫茶店入り口
   は凄まじいまでの修羅場と化していく。

    そのまま黒服連中を引っ張り店外に叩き出していく面々。俺は急遽護衛対象となる2人を
   守る形に回った。それを窺ったトラガンの女性陣も乱闘に加勢していく。何と言うかまあ、
   今では警護者集団と言うよりプロレス集団に近いわ・・・。


    暫くすると、騒ぎを嗅ぎ付けた地元の躯屡聖堕メンバーが現れる。こちらはトラガンが選抜
   した女性チームだが、その戦闘力は本家よりも断然強いのは言うまでもない。

    トラガンの女性陣は依頼があれば出撃する形を取っているため、本社から動けずにいる事が
   多い。それを改善するため、エリシェとエルシェナが躯屡聖堕チームの中の女性陣を抜粋する
   事にしたのだ。それが今し方駆け付けてきた躯屡聖堕メンバーである。

    先も挙げたが、躯屡聖堕チームの総合戦闘力は警護者軍団を超えている。その中で自由が
   利く女性陣を抜擢し、それぞれの地域の警護役として位置付けた。躯屡聖堕チーム自体の7割
   以上が女性なため、地域に隠れて有事に備えるのは打って付けだろう。

    野郎の姿の俺ならその気概は分からない所があったが、性転換している今は痛烈に理解が
   できる。女性ならではの武器は、野郎よりも遥かに数多く力強い。女性の時代だと豪語する
   エリシェやエルシェナの一念も痛烈に理解できた。



ミツキ「おとといきやがれわぅ!」
    致死に至らないまでにボッコボコにされた黒服連中。登場時の恐々とした雰囲気は一体何処
   へやら。怖ず怖ずといった感じで引き上げていく。念のため隠密を得意としている躯屡聖堕
   メンバーに尾行を依頼した。その彼らを仁王立ちで一蹴するミツキ。今では一端のレスラー
   そのものである。
シューム「はぁ・・・厨房に気兼ねなく立ってる事すらできないわね・・・。」
ビアリナ「ハハッ、確かに。」
   こちらはバリアやシールドの恩恵で全く以て無傷である。バリア自体が身体を超強化する感じ
   でもあるため、金剛のような強度を誇っている。以前機械兵器と傭兵軍団の襲来時に、ナイフ
   やダガーで切られても獲物を破損させる事も窺っていた。

女性「あの・・・本当にありがとうございます。」
ミスT「ん? ああ、気にするな。」
    再び襲撃されると厄介と思い、一同して近場で暫く待機する事にした。喫茶店は別に登場
   した躯屡聖堕メンバーに任せてある。その中で護衛対象だった2人のうち、女性の方が語り
   掛けてくる。
女性「それにその力、ギガンテス一族とドラゴンハート一族の力ですよね。」
ミスT「・・・お嬢も宇宙種族・・・と言うか、お前さんがヘシュアなのか。」
ナツミA「灯台下暗しと言うか・・・。」
ミツキ「飛んで火に入る夏の虫・・・んにゃ、勇んで茶菓子を漁る飢えたワンコわぅ!」
ミスT「はぁ・・・。」
   相手の発言から直感と洞察力がフル動員し、現状の流れを即座に察知した。と言うかこれ、
   野郎の時では絶対に至れないものだ。女性化しているから至れたものだろうな。

    しかしまあ、ミツキのボケには不甲斐無いとばかりに笑ってしまう。周りはおろか、相手の
   2人も釣られて笑っていた。この瞬時に雰囲気を変革させるミツキの力には本当に恐れ入る。

ミスT「まあ何だ・・・お前さんがヘシュアだったとは。黒服連中が狙う理由がこれだわな。」
ビアリナ「詳しく伺った方が良いと思いますよ。」
ミスT「そうだな・・・。」
    再び喫茶店に引き返そうとした時、何処からともなく黒服連中が出現しだしてきた。先程
   撃退した連中とは別の奴らだろう。
ミツキ「何わぅ?! エージェント・スミスちゃんの再来わぅか?!」
ナツミA「あー、マトリックスの量産型スミスさんね。」
シューム「それだけヘシュアちゃんともう1人を狙っている感じねぇ。」
   ノホホンとした雰囲気が一変し、再び臨戦態勢に入っていく面々。今度は広場とあってか、
   ビアリナがヘッドセットで増援を呼ぶ事にしたようである。今では遠方の動く司令塔と化して
   いるビアリナは、エリシェやラフィナの参謀そのものだ。

    問答無用で襲い掛かってくる黒服連中を体術で一掃する俺達。既に先の襲撃事変で準備を
   整えていたため、躯屡聖堕チームの方は即座に駆け付けてくれた。暫くして本命のトラガン
   精鋭チームが到着してくる。

    もはや喧嘩大乱闘そのものだ。相手は重火器や刃物を使うが、こちらはバリアやシールドの
   恩恵で全く以て無意味になる。そうなれば残りは体術による肉弾戦しかない。最近はミツキの
   影響で躯屡聖堕チームやトラガンチームもプロレス技を繰り出せるようになっている。この時
   ほど真価を発揮する瞬間はないだろう。

    対して黒服連中も先の軍服連中も肉弾戦は得意としていないようだ。絶対的な獲物の重火器
   で相手を圧倒する事を視野に入れて来たからか、バリアとシールドの前には為す術がない。
   この部分を踏まえると、流石のヘシュナも技術流出はしていないようだ。

    そもそも、前にミュティナやルビナが言っていた。この手のバリアとシールド、そして念話
   は使い手の生命に反応するのだとか。つまり善心には力強く反応し、悪心には全く反応しない
   というものだ。更にこれは無意識レベルまでの理のようで、意図的に狙ったとしても反応は
   しないという。

    いくらヘシュナが技術提供をしようも、彼女達や宇宙種族の概念から悪心を持つ地球人には
   絶対に扱えない代物と言える。こうなると精神面の問題になるだろう。スミエが無双を演じて
   いるのは、胸中の生命が善心中の善心だからだな。

    俺もこうして恩恵に与れる事を考えれば、少なくとも悪心は無いという事になるか。本当に
   有難いものだ。俺自身の生き様が間違っていない証拠と言えた。

    更に言えば、このバリアとシールドをヘシュナが扱える点が何よりの救いだろう。それは
   即ち彼女が悪ではないという事になる。少しでも悪心があれば反応すらしないのだからな。
   よってヘシュナ自身は善道に回帰する事が十分できるという事だ。



    喫茶店近場の駐車場が凄まじい状況になっている。夥しい黒服連中が倒れており、今も喧嘩
   大乱闘は続いていた。当然誰1人として死者は出していない。極悪人だろうが殺人はご法度、
   それが俺達の生き様だ。

    ようやく本隊が到着しだす。躯屡聖堕メンバーの精鋭中の精鋭、トラガンメンバーの精鋭中
   の精鋭。そしてエリシェ達も含めた警護者軍団だ。喧嘩大乱闘の状況を目の当たりにして、
   驚愕の表情を浮かべている。

    重火器を使わない肉弾戦での殴り合いとあり、それぞれの面々は大いに盛り上がっていた。
   完全に日頃で溜まったストレスの憂さ晴らしに近い。それが黒服連中という事になる。そして
   相手が完全に私利私欲を貪る悪である何よりの証と言い換えられた。

エリシェ「はぁ・・・何なんですかね・・・。」
ミスT「俺に聞くな俺に・・・。」
ミュティナ「これはヘシュア様を狙った形でしょうね。」
    呆れ顔のエリシェだが、ミュティナとルビナは暴れられるとあって大盛り上がりだ。最近は
   2人もプロレス技を得意としだしているから、大乱闘の際は凄まじい事に至っている。
ルビナ「お久し振りです、ヘシュア様。」
ヘシュア「あ、ミュティナ様にルビナ様。お久し振りでございます。」
ミスT「はぁ・・・姉に妹の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ・・・。」
シューム「フフッ、本当よね。」
   3大宇宙種族が出揃う形か。しかも3人とも種族の代表を務めるような存在だ。いくら今現在
   の代表を務めるヘシュナも、ヘシュアには頭が全く上がらない理由が痛感できる。これならば
   現状打開ができそうな感じだわ。
ナツミYU「詳しい事は追い追い伺うとして、今は現状を何とかしましょうか。」
シューム「終わり無き襲撃者、よね。」
デュリシラ「終わるのですかね・・・。」
ミツキ「ブックエンドわぅ!」
ナツミA「それ意味が違う。」
   今も現れ続ける黒服連中を叩き伏せながらも、見事なボケをカマすミツキに周りは爆笑する。
   この殺伐とした流れであっても、その和気藹々な姿勢を崩さない。これが彼女達の無双たる
   力の秘訣だろう。初見のヘシュアもその心意気を察知したのか、一際笑っていた。案外彼女は
   笑い上戸かも知れない。

    しかし尽きる事が無い襲撃者には飽きれ返るしかない。それだけヘシュアともう1人を無傷
   で捕縛せよという命令なのだろう。そして確実に言えるのは、それはヘシュナが命令しては
   いないという事だ。

    もし彼女が命令をするなら、恐らく直接出向いて来る筈だ。この妹の気質からして、姉は
   心から信頼を置く女傑だろう。上から目線で召集をするとは思えない。またはそれができない
   から黒服連中を寄越したとも取れる。

    だがヘシュアの潜在能力はかなり高い。あの姉をしても下手な行動はできないだろうな。
   信頼を置くのと同時に恐れてもいるかも知れない。う〜む、姉を超える妹か・・・。

    中半へと続く。

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