アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第07話 守り人と愚か者2〜
ウインド「あー・・・どうしましょうか・・・。」
ミスT「俺に聞くな俺に・・・。」
    余りにも長丁場になっている襲撃で、流石の警察群も出動してきた。ウインドとダークHが
   直接訪れてきた事を見ると、この襲撃がかなり大規模かつ危険である表れだろう。しかし現状
   を見て2人して呆れ顔だ。
ダークH「最近は国外からの横槍が目立っていましたが、まさか国内にこれ程までの人物を送り込む
     とは驚きです。」
ウインド「例の転送装置の類ですかね。」
ミスT「そうだろうな。突然現れて来る事から、そうとしか考えられない。」
   俺の身嗜みを整えてくれるウインドとダークH。俺自身が女性化して時間が浅いからか、戦闘
   スタイルを野郎のと同じに動くと衣服が肌蹴るようだ。それを俺自身は意識していないから、
   かなり凄まじい姿になっていたようである。シュームやナツミYUが行いそうな行動だが、
   今はウインドとダークHが行ってくれている。
ダークH「はぁ・・・性転換されるのは良いですが、ご自身の身体の事を考えて下さい。」
ミスT「善処します・・・。」
ウインド「ハハッ、マスターは女性は合いませんね。」
   異性同士ならシドロモドロになるだろうが、今は同性同士だからか自然的だ。特に現状の俺と
   彼女達との男女比率が半端じゃないため、彼女達に合わせた方が断然有利だわ。

エリシェ「何だか、新しい姉ができた感じですよ。」
ダークH「あー、それ分かります。」
ウインド「不出来な姉ですね。」
ミスT「はぁ・・・。」
    返す言葉が無いわ・・・。まあ確かに女性の本家たる彼女達には到底敵わないわな。俺自身
   は野郎であり女性ではない。いくら性転換をしても、俺は野郎から逃れられないと言うべき
   だろうな。
ミツキ「Tちゃんは女性は合わないわぅね。」
ミスT「だな・・・。しかしこれだけの女性陣がいると、同じ性別なら安心するんだがね。」
ナツミA「いっその事、私達が男性になるのも有りかと。」
ミスT「いや、それはダメだ。今は女性が台頭してこその様相、活躍する姿を満天下に示してこそ
    意味がある。それに同調するために性転換したからな。」
   身嗜みが整ったのを確認し、再び暴れだそうとしたら周りに押し留められた。どうやら今の
   オフィスレディ風の出で立ちだと無理なようだ。まさか衣服で行動制限されるとは驚きだわ。
ミスT「はぁ・・・野郎だと身嗜みなんか気にしなかったんだが・・・。」
エリシェ「今度ミッチリ女性のイロハをお教えしますよ。今後も性転換を多用されるなら、それなり
     の力を持って頂かないと。」
ミツキ「むっふー、初心に帰るわぅね!」
ミスT「生きるって難しいわ・・・。」
   周りの女性陣が大いに暴れている理由を痛感した。それは激しい動きをしても問題ない出で
   立ちをしているからである。やはり生粋の女性だからこその考えだわな。性転換ペンダントの
   恩恵で変身した自分だが、全てにおいて野郎の気質は拭い切れない。

    その後は周りの女性陣の奮闘振りを、一服しながら見守り続けるしかなかった。後駆け付け
   のウインドやダークHも一緒になって暴れている。彼女の周りの仲間達も女性とあり、現状は
   女子プロレス集団が暴れているような感じに見えた。

    しかし蓋を開ければ怖ろしい様相だ。プロレス自体はエンターテイメントに基づいた遊行
   であり、実際の戦闘のプロフェッショナルではない。役者の域から抜けられないのだ。対して
   彼女達は生粋の戦闘集団であるため、その一撃はレスラーを遥かに凌ぐ威力を誇っている。

    更に日頃から重火器を使う集団なため、それを取り除いた時が真骨頂と言えた。つまりこの
   肉弾戦にこそ全てが集約されていると言っていい。逆を言えば、まともに肉弾戦ができない
   黒服連中の戦闘力はたかが知れている。重火器に頼り過ぎている証拠だ。



ミスT「これで大丈夫だな。」
トラガン女性隊員2「すみません・・・。」
トラガン女性隊員1「ありがとうございます・・・。」
    漸く収束しだし、一気に畳み掛ける流れに至った。その中で長期戦に不慣れなトラガンの
   メンバーの治療に当たった。とは言うものの、大怪我ではなく擦り傷程度だが。
エルシェナ「そのお2人は最近入隊された方です。」
ミスT「なるほど。にしては、その戦闘力でヘシュアとパートナーの護衛に回すとは。」
デュシアL「実戦経験ほど身になるものはありませんよ。サラさんもセラさんも走り立てですが、
      志は誰よりも高いですから。」
   ミツキに近い小柄のサラとセラの双子姉妹。まだ幼いのに警護者に至るのは、どうも気掛かり
   だが・・・。まあ本人達が望んで入隊したのなら何も言うまい。
ナツミA「ほほ、ポチに近い容姿の双子さんですか。」
ミツキ「むぬっ?! さては・・・ワンコ・デ・サンバに加入するわぅか?!」
ナツミA「・・・それでどうするのよ?」
ミツキ「アイル・ビー・バック! ダダン・ダン・ダダン!」
ナツミA「はぁ・・・。」
   後始末は警察群に任せ、引き上げてくる女性陣。その中でミツキが双子に気付き、大いにボケ
   をカマしだした。それに回りは笑っているのが何とも言えない。とにかくチャンスがあれば
   笑いを取ろうとする姿勢には脱帽だわ。

エルシェナ「そうですね・・・ここはマスターのお傍に居た方が実戦経験が積めそうですね。」
ミスT「むしろヘシュアとパートナーの専属護衛が良いんじゃないか?」
ルビナ「あー、ヘシュア様とリオデュラ様とは一緒に行動しますよ。近場の方が守れますし。」
    仲間内で巨女を誇るルビナが軽快にプロレス技を披露する姿は、他の女性陣に良い刺激に
   なっていたようだ。ミュティナも同じ流れに近い。超絶的な体躯の力や超能力を除いた、純粋
   な体術による戦闘に惹かれるものがあったのだろう。今では完全にレスラーそのものだ。
ミスT「となると、リオデュラも宇宙種族・・・には見えないな。」
ヘシュア「以前、助けて頂いた経緯から一緒に行動しています。」
ミスT「なるほど、レシュスとラーデュと同じな訳か。」
   この雰囲気からすればパートナーという事は一目瞭然だ。だからこそ強いと言える。守るべき
   存在ができると、人は今以上に強くなっていくからな。まあ逆のパターンもあるが、それは
   希なケースでもある。
ヘシュア「諸々の流れは後でお話致しますが、今は姉の愚行を何とかしませんと。」
ミスT「・・・本当にヘシュアの爪の垢を、ヘシュナに煎じて飲ませてやりたいわ・・・。」
ミュティナ「ハハッ、何とも。」
   この気丈夫たるヘシュアなら、カルダオス一族を纏めるには十分だろう。問題は姉の方だ。
   妹の言い分からすれば、完全に悪道に走っているのは言うまでもない。それでいてバリアや
   シールドが発生できるのだから尚更性質が悪い。

ミツキ「善心を持ちつつも、己の生き様を誇示する故に悪道に陥る。私達も十分注意しないと。」
ミスT「そうだな、本当にそう思う。」
    茶菓子を頬張り終えると、何時になく真面目な雰囲気で語るミツキ。それに彼女の別の姿を
   初めて見た面々は驚いている。何時ものノホホンな姿が当たり前だと思っていたようだ。
エリシェ「アレですかね、ジェダイの騎士が悪道に陥りシスと化す。」
ミツキ「あながちフィクションとは言えませんよ。人・・・生命体ですか、曲がり間違うとそうなり
    ますから。」
ナツミA「胸中の一念が、全ての生命を思い遣っての行動に帰結する。ここに至るなら、上辺の些細
     な出来事なんか蹴散らせるんだけどね。」
エリシェ「本当に難しいですよね。」
   後始末をウインドとダークHに任せて、喫茶店へと戻りつつも雑談をする。一際真面目な言動
   のミツキに周りは圧倒されているが、それに自然と同調できるナツミAとエリシェも凄いと
   しか言い様がない。

    ミツキの理論は、もはや生命哲学に帰結してくる。躯屡聖堕フリーランスや大企業連合、
   そして各警護者軍団の根底の理にも至っている。ここがブレなければ、絶対に道を踏み外す
   事はない。周りが戒め続けてくれるため、踏み外す事すらない。

    戒めてくれる存在が欠落し、悪道に進んだのがヘシュナになる。しかも地球人からすれば
   驚異的な戦闘力を有しているだけに、非常に性質が悪いと言える。まあ今の俺達からすれば、
   彼女の戦闘力は微々たるものに至ったが。

    かつてはギガンテス一族とドラゴンハート一族をしても、カルダオス一族には勝ち目がない
   と思っていた。技術力なら遥かに勝っているため、怖ろしいまでの力を有していると言える。
   しかし種族としての力に至るなら、ヘシュナはミュティナやルビナにすら勝てない。だから
   彼女は悪道に走る地球人を味方に動き出したという事だ。

    今回のキーパーソンはヘシュナに間違いない。彼女を説得できるかどうかで、今後の戦いが
   左右されると言い切れる。まあ今となっては妹のヘシュアがいるから大丈夫な気がするが。



ミスT「何だ、ミュティナやルビナから聞かされた話とは全く違うな。」
ヘシュア「お2人は私達を買い被り過ぎですよ。」
    何時襲撃されてもいいように、喫茶店にはほぼフルメンバーが集っている。先程の襲撃への
   対応後とあってか、食事の摂取量が半端じゃない。厨房のシュームやナツミYU、ビアリナや
   エリシェが食事作りにテンヤワンヤである。
ヘシュア「私達種族は存在も技術力も全てにおいて、お2人の種族には到底敵いません。弱小種族の
     私達を憂い、色々と技術提供やサポートをして頂いていました。私はお姉様と同じで、
     個々人の生き様に心から敬意を表しています。エリシェ様の生き様からして、大企業連合
     に所属される方々が凄まじい強者方であるとも痛感できますし。」
ミスT「何だかシュームみたいだな。」
   一服しながら思った。ヘシュアの生き様は完全にシュームに近い。その雰囲気で相手の内情を
   察知する術を知っている。唯一違うのは性格だろう。まあ両者とも個性があってこその生命体
   だからな。
ミュティナ「いえ・・・実は昔、お会いした時はヘシュナ様よりも酷かったのですがね。」
ルビナ「確かに・・・。会頭直後に暴言を吐いたり、酷い時は殴り掛かって来た事も。」
ミスT「この美丈夫が、か・・・。」
ヘシュア「もう過去の話ですよ・・・。」
   照れ臭そうにするも、本当に申し訳ないような雰囲気を出している。それだけヘシュアの悪態
   が凄まじかった証拠だろう。あのヘシュナですら真っ青のようである。
ミュティナ「ただ、どんな悪態を付いても敬いの精神は忘れていませんでしたよ。」
ルビナ「暴言吐きながら助ける姿を何度も見ていますし。今推測すると、本気で怒っているという
    事ではないようでしたね。」
ミツキ「ツンツンデレデレわぅ?」
ナツミA「正にツンデレの極みよね。」
   食べ終わった食器を片付けてくるミツキとナツミA。その際に伺った話を察し、今時の言い
   回したるツンデレだと語ってきた。本当にそうだろうな。

ミツキ「でもヘシュアちゃんの生き様からは、全く以て悪心が感じられないわぅよ。元からそうで
    あった証拠もあるわぅね。」
ナツミA「かなりの年月を経ないと、性格は変化しないからね。」
ミツキ「変わらない場合もあるわぅけど。Tちゃんが顕著わぅよ。」
    新しい生命体とあってか、マジマジと見つめるミツキにタジタジのヘシュア。しかしその
   眼光が遥か先を見定めるものだと知ったのか、胸中を曝け出しているかのようである。
ヘシュア「何だか、ミツキ様とナツミA様に全てを見透かされている感じです・・・。」
ナツミA「んー、そんな特殊技能なんかないですよ。まあ簡潔に言えば、直感と洞察力による先読み
     とも言いますか。」
ミツキ「シュームちゃんも凄いわぅが、Tちゃんなんか更に凄いわぅからね。特に女性の姿になって
    からの先見性ある目線は、抜き身の真剣そのものわぅし。」
ヘシュア「えっ・・・もしかして・・・。」
   ミツキの発言を聞いた直後、俺の胸元を見つめるヘシュア。その中の1つに気付き、俺の素性
   を察知したようである。
ヘシュア「うわぁ・・・ギガンテス一族の性転換ペンダントでしたか。」
ミスT「一同の特効薬だの。お前さんの姉を説得するための、言わば偽装工作に近い。」
ヘシュア「あー・・・一理あります。姉は幼少の頃に同族の男性にからかわれた経験から、かなりの
     男性嫌いになっていますので。」
ミスT「・・・初見時の見下すような目線はそれだったのか。」
   なるほど、これで全ての合点が一致した。ヘシュナが俺を強烈な目線で見ていたのは、男性が
   嫌いだったからというものだ。確かにミュティナやルビナを敵視する一面はあるものの、完全
   に嫌いだという雰囲気はなかった。全てはここに帰結する訳か・・・。

ミツキ「むーん、Tちゃんがダクアリで性転換キャラで暴れているのと同じわぅね!」
ミスT「あー・・・。」
ナツミA「何時でも性別の変更ができるしねぇ。」
    ミツキが挙げるは、“ドラゴンズドグマ・ダークアリズン”という作品だ。以前彼女から
   面白いと勧められ、暇があればプレイしている。まあ今は喫茶店での常駐が多いから、その
   機会は全くないが・・・。
ヘシュア「ミスT様・・・いえ、ミスターT様なら姉の凝り固まった心を溶かす事ができますよ。
     そこまで女性を知り尽くされていらっしゃるのですから。」
シューム「隙があれば色目でサーチを開始するからねぇ、これだから野郎は・・・。」
ミスT「はぁ・・・。」
   厨房から強烈な殺気に満ちた目線で睨んでくるシューム。同調してナツミYUやビアリナと
   エリシェも睨んできた。更に背後からトラガンの女性陣からも痛烈な殺気を感じる。俺自身の
   一挙手一投足全てに反応しているかのようだ。
ヘシュア「ですが、その身形だと女性陣の中に溶け込む事も可能でしょう。色目とかそれ以前の話に
     なりそうですが。」
ミツキ「あー、着替えの覗きわぅね!」
ミスT「勘弁してくれ・・・。」
   意地悪そうに語るヘシュアとミツキ。それを聞いた周りの女性から、再び強烈な殺気に満ちた
   目線で睨まれた。本当に勘弁してくれ・・・。

    後半へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る