アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第08話 飛行戦艦対無人兵器2〜
ミツキ(うぇーい! わたもホワイトソードで暴れればよかったわぅ!)
ナツミA(だから言ったじゃないのよ・・・。)
    ホワイトソードを筆頭にハリアーU改群が猛攻撃を繰り広げている。その様相を見たミツキ
   が興奮気味に語り出した。確かにこの場合なら空中戦を挑んだ方が遥かに良いだろう。俺達は
   レプリカフランベルジュの甲板から飛行兵器群を迎撃しているだけに過ぎない。
エリシェ(えー・・・一応レプリカTa152Hはありますけど・・・。)
ミツキ(なぬぅー?! それを早く言ってくれわぅー!)
ナツミA(はぁ・・・ダンデム飛行できるかしら・・・。)
   エリシェの言葉に大歓喜のミツキ。脱兎の如く格納庫へと向かって行った。その後を呆れ顔で
   追い掛けるナツミA。レプリカTa152Hだと20mm機関砲と30mm機関砲、それに
   2挺のレールガンが武装となる。ホワイトソード群より遥かに劣るが、多分ミツキやナツミA
   の実力からすると凄い事になりそうだ・・・。

デュリシラ(・・・何と、マスター一大事です。海外から未確認兵器が多数向かっているとの事。
      飛行兵器群は現在対峙中なので、恐らく艦船兵器だと思われます。)
ミスT(見事な動員力だな。レプリカ大和やレプリカ伊400などを守備に回してくれ。北は北海道
    を含む広範囲、南は沖縄を含む広範囲。幅広く守備を頼む。)
デュリシラ(了解! 直ぐに連絡を入れますね。)
    ヘッドセットを用意し、そのまま通信を入れていくデュリシラ。持参のノートPCが見事な
   司令塔へと早代わりしている。この場合はエリシェはお役ご免な感じになるだろう。彼女の
   ウリは企業の運営であり、戦闘指令を出すのは得意ではなさそうだ。
ミスT(・・・仕方がない、奥の手を使うか。エリシェ、現状が鎮圧したら地球全土に探りを入れて
    くれ。当事者を徹底的に炙り出す。)
エリシェ(ですねぇ・・・。この様相だと総力戦が続くので、短期決戦で挑むなら親玉を直接叩く
     しかありませんし。マスターが懸念されていた通り、これらは使いたくないのが本音に
     なりますが。)
ヘシュア(善悪感度レーダーを調整すれば、全球スキャンで確認できそうな感じですが?)
ミスT(だろうね。だが人間の極悪に至ると、恐らくそれでは察知できるとは思えない。現にお前達
    が察知できないのがそれだ。姉を見れば一目瞭然だろう。)
ヘシュア(はぁ・・・あのバカ姉・・・。)
   エラい呆れ顔のヘシュアに笑ってしまった。ヘシュナの度を超えた生き様は、妹のヘシュアに
   とっては悩みの種であろう。この呆れ顔が見事に物語っている。と同時に、ヘシュナを何とか
   すれば打開できるかも知れない現れでもある。

ミスT(ごめんな、ヘシュア。多分お前を利用する形になるかも知れない。)
ヘシュア(あー、全然構いません。私もあのバカ姉には本当に苦労させられますので。彼女が更生
     できるなら喜んでやりますよ。)
ミュティナ(・・・あの小娘がよくぞまあ育ったものです。)
ルビナ(ですねぇ・・・。)
    意気込みを語るヘシュアの言葉に、遠方のミュティナとルビナから呆れた雰囲気の声色が
   聞こえてくる。同じ宇宙種族の間柄、その変化などは直ぐさま察知するのだろう。と言うか、
   ミュティナの言い回しが気になったが。
ミュセナ(ああ、その部分ですか。補足しますと、ヘシュア様やヘシュナ様の年代は若干異なる感じ
     になります。私達からすれば異なる環境で過ごしてきたからか、100万年ほど差がある
     感じでも。)
ミスT(・・・だから小娘なのか、何とも。)
ミュティナ(若輩ながらの私からしても、本当に小娘も小娘ですよ。)
ヘシュア(面目ないです・・・。)
   姉の悪態に対しての総合的な揶揄を踏まえた台詞。それを察知したのか、ヘシュアがかなり
   申し訳なさそうな雰囲気で謝罪している。普通なら今の言い回しでカチンと来ると思えるが、
   それを超えた感じの怖々さと言うべきか。

ミツキ(ぬぅーん、そう言うなら・・・後でスペシャルなプロレス技を放つわぅよ?)
ミュティナ(え・・ええっ?!)
ナツミA(ハハッ。まあ過去の経緯に今の経緯、色々とありますよ。それらが折り重なり今がある。
     要は今後をどうするかです。苦節を糧として喰らい尽くし、先へと進む起爆剤へと変化
     させていくか。それが重要になりますから。)
ミツキ(うむぬ。ミュティナちゃんのその揶揄を一番痛感しているのはヘシュアちゃんわぅし。姉の
    ヘシュナちゃんがどれだけ周りに迷惑を掛けているか、血の繋がる妹だから痛感していると
    思うわぅよ。)
ナツミA(貴方もよくバカをやって迷惑掛けた事があるけどねぇ・・・。)
ミツキ(あうちっ! それを言ってはダメわぅ〜♪)
    格納庫から何時でも飛び立てる状態のレプリカTa152Hが現れる。そのコクピットには
   強引にナツミツキ姉妹が乗り込んでいた。ナツミAの膝にミツキが座る形になっている。その
   2人がヘシュアの肩を持った言い回しをするも、最後のシメはボケになって周りを笑わせて
   いた。全ての行動の帰結先を笑いにする姉妹の生き様は、本当に凄まじいものだわな。

    プロペラの回転速度を上げて、飛行甲板からレプリカTa152Hが飛び立っていった。
   あの高々度襲撃時の時と同じ仕様らしいが、恐らく姉妹が乗り込むと化け物と化すだろうな。
   力の出し加減の触りを心得ている2人だ。ビアリナ達を超える戦闘力を披露すると確信する。


ミスT(国内への被害は皆無か?)
デュリシラ(えー、今の所は問題ありません。全てこちらや各種艦船に向けられている感じで。)
ミスT(はぁ・・・俺だったら国民を人質に取るがな・・・。)
    甲板から周りの面々の活躍を見守る。時偶飛来する飛行兵器をトリプルパニッシャーで迎撃
   をするが、シュームやナツミYU達が速攻撃墜して回っているため活躍の場は少ない。自然と
   一服しながらも、一同への連絡要因となるしかないのが実状だろう。
エリシェ(全国民となると、絶対悪の持ち出しですかね。)
ミスT(揺さ振りとしてだけしか効果がないがね。実際に3大宇宙種族のテクノロジーからすれば、
    核兵器・細菌兵器・生物兵器は全て意味をなさない。連中はそれを知っているだろうから、
    使ってくる事はないだろう。)
デュリシラ(現状できる事は、こうして何度も波状攻撃を仕掛けてくるぐらいですかね。その隙を
      突いて致命の一撃を与えると。)
ミツキ(うぇーい! パリィにバックスタブわぅか?!)
ナツミA(確かに致命の一撃だけど、全く以て違うわね。)
   更に飛来する飛行兵器に弾丸が打ち込まれる。何とその場でコブラを演じながら、各武装の
   射撃を的確に繰り広げるレプリカTa152H。力の出し加減の触りを心得ている姉妹だから
   こそ成し遂げられる怖ろしいまでの荒業だ。
ビアリナ(・・・予想はしてましたが・・・。)
エリミナ(それ・・・戦闘機乗り泣かせですよ・・・。)
ミツキ(ハッハー! アイル・ビー・バックわぅぜぇー! ダダン・ダン・ダダン♪)
ナツミA(茶化し入れないで動きなさいな。)
   生粋の戦闘機乗りのビアリナやエリミナ、それに他のパイロット達からも感嘆の声が挙がる。
   ミツキとナツミAの実力は、全ての戦いに通ずる万能戦闘戦術そのものだ。それは如何なる
   場所でも惜しみなく発揮されるのだから怖ろしいものである。

    恐らくレプリカTa152Hにも反重力機構が搭載されていると思われる。明らかに通常
   では考えられない動きを披露していた。そして姉妹の実力も合わさり、二乗加算では済まされ
   ない程の戦闘力の増加に至っている。

    以前ビアリナが巨大ジャンボジェット機から離陸する際に用いた、可変ピッチプロペラでの
   逆移動も駆使している。機体の移動に関しても力の出し加減を行っているため、全ての行動に
   全く以て無駄がない。そして正確無比に放たれる弾丸も一撃必殺を帯びており、その一発で
   飛行兵器の急所を突いている。レシプロ戦闘機が時代遅れという概念を完全に払拭していた。

ミツキ(・・・こうしてレシプロ戦闘機を扱うと、スミエさんが全盛期に経験された大戦時の英霊の
    方々を偲びます。止むに止まれぬ戦闘が、悲劇の特攻などを生み出していった。)
スミエ(ああ、零戦などの戦闘機ですね。確かに当時、開戦直後は圧倒的戦闘力を誇っていました。
    しかし拿捕され解析されて弱点を把握。零戦とはドッグファイトを行うな、これが当時の
    アメリカ軍パイロットの間では掟的な感じになりましたので。)
    ふとミツキから言葉が語られる。真面目会話のそれは、第2次大戦時の零戦などの運用法
   になる。愚かな軍国主義の概念により、どれだけの生命が空に散ったのか。スミエの言葉は
   平然としている感じだが、そこに無念さを感じずにはいられない。
ミスT(防弾などの生命維持装置と言うか、それらを全て取り払っての機動力。攻撃力と運動性は
    最強クラスだとしても、防御力が欠落している以上継戦能力は皆無だわな。)
エリシェ(戦争は絶対悪、それを満天下に知らしめた大戦でも。しかし今も世界では紛争が続いて
     いるのが現状。こうした愚物が襲ってくる時点で・・・当時の英霊の方々を愚弄するにも
     程があります!)
   肉薄する無人兵器にマデュースを射撃するエリシェ。普段から温厚な彼女が激昂していた。
   生命哲学を根幹とした生き様を貫く大企業連合からして、それと真逆の愚かな生き様に痛烈な
   怒りを抱いているのが分かる。

スミエ(エリシェ様のその一念が、当時の英霊の方々への追善回向になるのは間違いありません。
    端から見れば、私達も同じ軍事力を使った行動に見えかねませんし。しかし、警護者という
    生き様がそれを抑制させていますので。)
シルフィア(全く以てその通りで。警護者というのは、ただ単に依頼に応じて動く傭兵ではない。
      今となっては調停者そのものと言えるでしょうね。場合によっては裁定者にならねば
      ならない時がありますが。烏滸がましい感じだけど、誰かが担わないといけない。)
ミスT(世界中の人達が安心して過ごせる世上にする。そのための警護者の存在だ。その誓願に一歩
    でも近付けるなら、俺は鬼にでも悪魔にでもなってやる。全ては総意のため、とな。)
シルフィア(はぁ・・・その身形でその啖呵は似合わないわね・・・。)
    毎度ながらの胸中の絶対不動の原点回帰を語る。これはもう恒例の語り草に近い。しかし
   何度も己に言い聞かせねば、とてもじゃないがこの誓願は達成できない。そんな思いの中、
   恩師が意思の疎通で感じ取って返してきた。今ではお互い全員が一挙手一投足で感じれる。
   つまり容姿も手に取るように分かる。そして性転換状態の俺には合わないと言って来たのだ。
スミエ(フフッ、幼少の頃から女性達の世界で過ごしてきましたからね。性転換する事でより一層
    際立つというものでしょう。それでも、TちゃんはTちゃんに変わりありませんけど。)
   飛行機事変以前の記憶は全く思い出せないが、当時を知るスミエが様相を語った。俺が女性に
   近い気質なのは、当時から女性達の世界で過ごしてきたからとの事。確かにペンダント効果
   による性転換を繰り返すうちに、女性の視点が痛烈なまでに理解できるようになった。実に
   不思議な流れだろうな。


ミツキ(こちらはワンコラー総統。レプリカ大和の諸君、久し振りだな。)
ナツミA(また何で宇宙戦艦ヤマトのネタなのよ。)
ミツキ(建造中の宇宙戦艦でイスカンダルへ向かうわぅ!)
ナツミA(はぁ・・・。)
    己の身を振り返っていると、突如としてミツキがネタを披露しだす。ワンコラー総統は言い
   換えで、実際はデスラー総統になる。マンガやアニメで有名な“宇宙戦艦ヤマト”のネタだ。
   建造中の宇宙戦艦を捩ったようである。イスカンダルねぇ・・・。
ミュティナ(アハハッ。ちなみに実際にはイスカンダルという場所はありません。それらの名前は
      言わば物語の言い得てですので。)
ヘシュア(月とか太陽とか、実際には人間が名付けた感じですよね。他の銀河系などもしかり。)
ルビナ(私達が生まれた直後は名前がないように、誰かが名付けない限りは無名のままですし。)
ミツキ(・・・ぬぅーん! ではこれら惑星や星団をザ・ワンコと命名するわぅ!)
ミスT(ザ・ワンコ・・・。)
   真面目会話のシメに強烈なネタを繰り出してくるミツキ。それを聞いた周りの面々は爆笑して
   しまう。かく言う俺もそうだが、彼女の術中にハマった感じと言っていいだろう。本当に見事
   としか言い様がない女傑だわ・・・。

ミスT(・・・全ての生命が安寧できる状態、か。一生涯掛けても達成できるか微妙だが。)
ミツキ(諦めなければ0%にはならないわぅよ。それにわた達の寿命は100年ちょいだけど、その
    理は3大宇宙種族に引き継がれると確信しているわぅ。)
ミュティナ(ですね。ますます以て使命感に燃えますよ。)
    俺が語った内容を、ミツキが見事なシメをしてくれた。俺達の寿命は100年程度でしか
   ない。それ以上の高寿命は3大宇宙種族の面々が適任だろう。今となっては一蓮托生に近く、
   こうなれば彼らに俺達の警護者の理を託すしかなくなる。
スミエ(本当に申し訳ありません。本来は私達の寿命の中で担い続けなければならない誓願。これを
    貴方達宇宙種族の総意に委ねてしまって。)
ミュセナ(とんでもない、むしろ望む所ですよ。私達の高寿命とテクノロジーを駆使すれば、その
     誓願に少しでも近付く事ができると確信しています。スミエ様が草創期から私達を守って
     頂いたように、今度は私達がそれを受け継ぐべきです。)
ルビナ(調停者に裁定者の概念はあまり好ましくありません。ですがそれで全ての生命が安寧として
    いけるのに一役買えるのなら、何が何でも担うべきでしょうね。ミュセナ様が仰る通り、
    望む所と豪語致しますよ。)
ヘシュア(・・・何だか本当に恥ずかしいです。バカ姉があの様な失態を繰り広げている様相に、
     同族として合わせる顔がありません。)
ミツキ(全ての物事には意味がある、わぅよ。ヘシュナちゃんが身を挺して悪役を担ってくれている
    からこそ、わた達はこうして戦えるわぅね。むしろ本当の悪党を燻り出すには、ヘシュナ
    ちゃんが適任になるわぅ。)
ミスT(あー、そういう手法もあるか・・・。彼女を利用する事はしたくなかったが、全ては全生命
    の安寧を目指すなら悪くはない。彼女を騙す罪なら俺が全部被ろう。)
   一服しながら思う。ミツキの言い方は考えもしなかったものだった。ヘシュナ自身を阻止する
   べき存在、言わばラスボスな感じだと思っていた。だがミツキの言い回しは、ヘシュナ自身が
   真のラスボスを引き摺り出すためのキーパーソンという事だ。ヘシュナを利用する事はしたく
   ないが、それが全ての解決策に続くなら行うべきだろうな。

シューム(はぁ・・・全部君が罪を被るつもりでいるのね。)
ナツミYU(ヘシュナさんと対峙してから、何やらずっと思い悩んでいた理由が分かりましたよ。)
ミスT(結局はヘシュナすらも被害者になるわな。確かに彼女の言動には問題があるが、そもそも
    根底には今だに見ない悪党連中こそが淵源だ。ヘシュナを騙して利用する事になるが、全て
    片付いたら彼女に謝罪する。)
    漸く道らしい道が定まってきたわ。今までは暗中模索で進んでいた感じだったが、これで
   俺が進むべき道は定まったと言っていい。全ての解決に繋がるために、俺は全身全霊で鬼や
   悪魔を演じ切る必要があるわな。
スミエ(何と言うか、ヘシュナ様と変わらない感じがしますが。まあでも、誰かが突破口を開いて
    こその戦術や戦略ですからね。ここはTちゃんに甘えるとしましょう。もちろん、私もただ
    黙って見ている訳にはいきませんから。)
シルフィア(ですね。T君が矢面立って行動してくれるなら、その彼をバックアップしてこその盟友
      というもの。私も最大限の力を出し切っていきますよ。)
ミツキ(ぶっ飛びワンコでヒャッハーわぅー!)
   決意新たに意気込みを語るも、シメはやはり彼女だった。レプリカTa152Hで縦横無尽に
   暴れつつ、その様相を“ぶっ飛びワンコ”と言う様に爆笑してしまった。釣られて周りも爆笑
   している。その純然たる生き様の前には、笑うまいと思っていても無理なのだろうな。
エリシェ(アハハッ。ミツキ様の生き様があれば鬼に金棒・・・いえ、ワンコに骨付き肉ですね。)
ミツキ(おんどぅらー! 茶菓子を寄越せごるぅあー!)
ナツミA(はぁ・・・。)
   エリシェの例えも見事なものだわ。鬼に金棒をワンコに骨付き肉とは。しかし当のミツキは
   茶菓子を所望しているのが何とも。呆れながらも笑ってしまうのは、ミツキ・スタイルに身も
   心も魅入られたと言っていい。本当に心から敬愛する女傑である。

    後半へと続く。

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