アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第8話 国家間外交3〜
ミツキ「ぬっ?! 新手の勢力わぅか?」
    ミツキの声で我に返った。彼女が指し示す方角から、大型ヘリが向かってくる。明らかに
   味方ではないのは確かだろう。見た事がないカラーリングをしている。ここハワイに駐留中の
   アメリカ軍や日本の自衛隊の代物ではない。
ミスターT「円陣防御! 不測の事態に備えてくれ!」
一同「了解!」
   俺の声に即座に応える面々。ミュティ・シスターズを中央に、その彼女達を守るように展開
   した。それに上空のハリアーU郡も気付き、俺達の周りをゆっくりと旋回している。

    その中の1機が海岸に着陸してきた。コクピットからはシルフィアが颯爽と降りてくる。
   ただ、右手にはあのアタッシュケースを持っているのが何とも・・・。


    暫くすると、大型ヘリが海岸に着陸してくる。それに合わせて特殊部隊の兵士が俺達を取り
   囲む様に展開してきた。

    その様相を見て一際腹が立った。負傷した兵士達を踏み越える形をしたからだ。明らかに
   一般の兵士とは全く異なる。血も涙もないとはこの事だな・・・。



軍服男1「ほぉ・・・これだけの相手に無傷とは。まあ地球外生命体の恩恵があるからだな。」
    ・・・顔を見て一発で生理的に受け付けない事を直感する。周りの面々も明らかに不快感を
   感じている様子だ。間違いない、コイツが全ての元凶だな。
エリシェ「貴方が一連の首謀者ですか?」
軍服男2「口に気を付けろ、こちらのお方を誰だと思っている!」
ミスターT「・・・俺にはボンクラにしか見えんがね・・・。」
   俺の言葉に激昂したようで、軍服男が手持ちの拳銃を撃ってきた。それは脳波でコントロール
   された人口腕部、そこに握られている黒色パニッシャーによって弾き返されたが。どうやら
   脳波と直接リンクしているからか、直感と洞察力が即座に反映されるようだ。
軍服男2「クッ・・・化け物め・・・。」
ミスターT「生命体をカス同然に思う貴様等よりかはマシだがね。」
軍服男1「まあ待て、事を荒立てるつもりはない。こちらの要求は知っての通りだろう。それが達成
     されるなら、大人しく引き上がるとしよう。」
エリシェ「答えは言うまでもない、継続試合と行こうか。」
   その声を聞いてゾッとした。普段の温厚なエリシェの声色じゃない。ハスキーボイスが響き、
   腹の底から激昂しているのが痛感できた。ここまでの彼女の怒りを初めて見るわ・・・。

軍服男1「・・・一筋縄ではいかない訳だな。」
シューム「あら、ならその股間に付いているのはニセモノという事ね。」
ナツミYU「・・・なるほど、肝っ玉ですか。」
    軍服男の言動に、シュームとナツミYUの見事な茶化しが炸裂する。それに不本意ながらも
   笑ってしまうのは何とも言い難い・・・。近場で倒れている兵士すら小さく笑っている。

    その彼に先程激昂した軍服男が拳銃を発射。しかし同時に物凄い発射音がすると、放たれた
   弾丸が地面に落ちた。直ぐ近くには巨大な釘状の物質が突き刺さっている。

    ・・・恩師シルフィアが獲物、展開式パイルバンカーだ。その弾丸たる釘が兵士の近くに
   突き刺さり、そこに放たれた弾丸が当たり地面に落ちたという流れか。これは見事と言うしか
   ないわ・・・。

軍服男2「ググッ・・・一度ならず二度も・・・。」
シルフィア「悪いけど、アンタ等の動きは止まって見えるからねぇ。何をしても無駄よ。」
ウエスト「それとも・・・その胸に風穴開けてやろうか?」
    持参したガトリングキャノンを地面に置き、背中に背負うライフル状の獲物を構える彼。
   その銃口先は電気が帯びている。これ・・・まさか・・・。
ラフィナ「引き上げる気がないのなら、このまま徹底抗戦を繰り広げますけど。」
シューム「死にたいなら掛かって来な、ボウヤ達。」
   シュームの激昂はまだしも、エリシェと同じく普段は温厚なラフィナも相当激昂している。
   銃口は下げられているが、その右手に持つアサルトライフルが何時火を吹いてもおかしくは
   ない。


    一触即発のこの場。そんな俺達すらも取り囲む軍勢が現れた。この出で立ちは先程大会議場
   でも見掛けたものだ。各国のシークレットサービスが総出で登場である。

    更にその彼らを縫うように現れる複数の面々。顔を見たエリシェ達は驚愕していた。そんな
   彼女に構わないといったジェスチャーをする。

スーツ男2「今まで見てきたテロリストよりも性質が悪いな・・・。」
スーツ男1「これだけの手練れを前にしても引かないかね?」
スーツ男3「私達も事を荒立てたくはない。それでも暴れるというのなら、彼らと同じく徹底抗戦を
      するつもりだが。」
    流石の軍服連中もその姿を知っているようで怯みだしている。静かにその場を去っていく
   軍服連中と特殊部隊の連中。相変わらず腹立たしいのは、負傷した兵士達を放っての撤退だ。
ミスターT「おい、仲間を見捨てて行くのか?」
軍服男1「役立たずなど必要ない。」
軍服男2「今度は容赦はしない、覚えておくんだな!」
ミスターT「・・・はぁ、これだからカスは困る・・・。」
   怒りと呆れの応対をするも、それに応えず去っていくのだから埒があかない。他の特殊部隊の
   連中も、後から駆け付けてきた大型ヘリに乗って去っていく。

    この襲来は言わば不法侵入者そのもの。アメリカの威信に掛けて追撃をすると思ったが、
   全く手を出さずにいるのが不思議である。むしろスーツ男の3人が、シルフィアの姿にエラい
   戦々恐々な感じなのも何とも言えない。



    数機の大型ヘリが完全に去って行った所を見計らうかの様に、一同して安堵による大きな
   溜め息を付きだした。かく言う俺もその中の1人である。

ミスターT「・・・胃に良くないわ・・・。」
ナッツ「ですよねぇ・・・。」
シューム「あら、私は今もアドレナリン出っ放しだけど?」
    緊張の糸が切れた面々はその場に座り込んだりしている。しかしシュームやナツミYUは
   今もイケイケモードのようで、目がかなり血走っているのが何とも・・・。
ミスターT「さて・・・人として当然の事をしますかの。みんな頼む、手を貸してくれ。」
ミツキ「おういえい! まっかせろ〜わぅ!」
シルフィア「フフッ、流石よね。人を憎まず、その行動を憎む。試合が終われば全てファミリーと。
      私も付き合うわ。」
   近場に3挺の黒色パニッシャーを置くと、ミツキが持参していた大きな袋を展開する。その
   中には応急救護セットが揃っており、それらを持って倒れている兵士達の元へ向かった。


    それから数十分、いや数時間は応急救護活動に明け暮れた。不測の事態に備えて、上空では
   今もハリアーU郡が旋回してくれている。地上にいる面々で、今まで相手にしてきた特殊部隊
   の兵士達を治療して回って行った。

    この姿にスーツ男3人やそのシークレットサービス達は呆然としている。しかしシルフィア
   がエラい形相で彼らを睨むと、顔を青褪めながらも加勢しだしているのが何とも言えない。
   これ、彼らは恩師の事を知っている事になるか。う〜む・・・。

    簡易的な治療を施していると、そこに数多くの救急車両が駆け付けてくる。負傷した兵士達
   の誰もが致命傷の一撃ではないため、先程の簡易治療で事無きを得ている感じだ。後は病院
   での治療で問題ないだろう。



    海岸に倒れていた兵士達は、全員無事病院へと搬送された。最後の救急車両が去っていく
   のを見つめ、徐に一服をする。と同時にドッと疲れが出始めた。

ミスターT「・・・命の大切さを分からぬカス共、か。」
シルフィア「連中は使い捨ての駒にしか考えていない。これでは成せる事も成せないわね。」
    その場に座る俺の隣に、同じく座り込む彼女。エリシェやラフィナは後始末に追われている
   ようだが、先程のギラ付いた殺気がまだ残っている様子である。
ミスターT「そう言えば、彼らは誰なんだ?」
シルフィア「あー、自己紹介がまだだったわね。」
   数々のシークレットサービスに守られるスーツ男達。その彼らに手招きをするシルフィア。
   それに気付くと怖ず怖ずといった雰囲気で近付いてきた。それに気付いたエリシェやラフィナ
   も同じく近付いてくる。

シルフィア「はい、アメリカ大統領・ロシア大統領・イギリス首相の面々。」
ミスターT「うぇ・・・。」
    物凄く素っ気無く語る彼女に絶句した。大会議場にいた各国の首脳の中の代表格だった。
   その彼らが恩師に戦々恐々としている姿が何とも言えない。
ラフィナ「イギリス首相のデュシアE様、ロシア大統領のアマギH様です。そしてアメリカ大統領の
     ディルヴェズ様になります。お3方とも、元シークレットサービス所属ですよ。」
ミスターT「へぇ・・・。」
   大暴れしていたせいか、エリシェのストレートヘアーがエラい乱れている。それに気付き、
   彼女を近場に手招いた。座り込む彼女の髪の毛を撫でる形で整えていく。顔を赤くするも、
   まるで幼子のように嬉しがっていた。
シューム「櫛ぐらい使いなさいな・・・。」
ナツミYU「本当に女性キラーですよね・・・。」
   エラい殺気立った表情を浮かべるも、持参していた櫛を使って髪の毛を整えだすシュームと
   ナツミYU。その手際の良さは娘達にもそうしていたからだろう、心の篭った厚意そのものに
   見える。そして大企業連合の総帥たるエリシェも、こうして見ると普通の女性にしか見えない
   のが何とも言えない。

ミスターT「失敬。改めて、ミスターT=ザ・レミニッセンスです。」
    エリシェの身嗜みが整った所を見計らい、その場に立って彼らに自己紹介をした。すると
   俺の素性を知った事で一段と驚き、逆にその場で敬礼をしだしたではないか。国家の首脳陣
   らしからぬ行動である。
シルフィア「あー、補足ね。彼らも君が記憶を失う事変となった、あの飛行機に乗ってたのよ。」
ミスターT「あら、そうだったのか。」
ナツミYU「まだ大統領や首相になる前の話ですけどね。」
   今度はラフィナの髪の毛を整えだすナツミYUとシューム。このお節介焼きは何時もの事の
   ようである。そう言えば船旅時でも、娘達や9女傑の身嗜みに気を配っていたな。
デュシアE「その節は大変ありがとうございました。」
アマギH「俺達があるのは貴方のお陰ですよ。」
ディルヴェズ「本当に感謝しています。」
   それぞれの国家首脳が頭を下げてくる。それだけ記憶を失う前の俺は、彼らを命懸けで救おう
   としていた訳だ。今では窺い知る事はできないが、彼らの言動が何よりの証である。

エリシェ「実はお3方は本当の大統領や首相じゃないのです。言わば影武者的な存在でして。」
ミスターT「そりゃそうだわな。どう見ても日本人の血筋が流れているし。」
シルフィア「でもそれらが罷り通るのは、彼らが実際に築き上げた力の賜物よ。大統領や首相から
      絶大な信頼を寄せられているから。」
    薄々影武者とは感じていたが、それが罷り通るのも見事なものだ。しかも国家間外交での
   頭として派遣されている。代弁者とも言えるだろうが、それで外交が通るのだから凄い事に
   なるわな。
ミスターT「実際の首脳陣は知らないが、彼らの方がよっぽど国を纏めてくれそうな感じだがね。」
シルフィア「それは言ってはダメよ。」
   俺や彼女の愚痴に3人は苦笑いを浮かべている。しかし肯定している部分もあるようで、実際
   は覇権争いやら何やらで喧騒な雰囲気なのは否めない。彼らの方が確実に国を纏め上げる力が
   あるのは言うまでもないわ。

エリシェ「えー・・・ぶっちゃけ、不可能ではないですけど。」
ラフィナ「地球規模の大企業連合の力を以てすれば、現首脳陣の退陣などお手の物ですよ。」
ミスターT「・・・真顔で言うから怖ろしいわ・・・。」
    エラい不気味な笑みを浮かべて語る。先程の激昂の余波がまだ残っているようで、エリシェ
   もラフィナもかなりのダーティ状態だ。ただ今語った行動が実際にできる力があるのだから
   怖ろしい。地球上で最大規模の大財閥というのは伊達じゃないわ。
エリシェ「まあそれは冗談として、今後の展開が読めずにいますけど。」
ミスターT「ああ、カス共ね。」
シューム「お3方の実力を以てしても、連中の動向は読めないの?」
デュシアE「残念ながら・・・。」
   影武者と言えど、今のその実務力からして実質の運営を担っているのは間違いない。その彼ら
   しても特殊部隊の動向が読めずにいるようだ。
ミスターT「・・・そうか、だからか。なるほど・・・今回はエサとして利用された形だな。」
アマギH「申し訳ない、それが本音です。連中には、かなり前から妨害工作などを受けています。」
ディルヴェズ「姉御方が護衛対象とされている、ギガンテス一族の方々が来訪される前からです。
       以前東京に向かわれ、その後種子島から飛んだ時からがピークでして。」
ミスターT「なるほどね、当時はそういった経緯からか・・・。」
   3姉妹が地球に残ると言ったのは予想外だったのだろう。しかしそれが今回の発端に至った
   のではなさそうだ。既にファーストコンタクトを取る前から、特殊部隊に目を付けられていた
   形のようだ。

    ふと3姉妹の方を見ると、海岸から砂浜に出てビーチボールで遊んでいる。多分発案者は
   ミツキだろう。3姉妹と一緒に暴れていた。

    驚いた事に9女傑が付き合わされているのが何とも言えない。雰囲気や強面で取っ付き難い
   彼女達が、である。まあミツキの殺気と闘気の前では、応じざろう得ないだろうが・・・。

    その近くではハリアーUのメンテナンスをするナツミA・四天王・エリミナ達。不測の事態
   への対処は万全に、だな。しかし海岸なのによくぞまあ・・・。


ディルヴェズ「局地的な支援活動なら今後も可能です。むしろ手伝わせて下さい。あれだけコケに
       さられたら反撃しない訳にはいきません。」
アマギH「こちらも同じく。ただ他の国家間の目もあるので、表立った行動ができません。そこは
     ご了承下さい。」
デュシアE「貴方には返し切れない恩があります。シルフィア嬢と同じく、今後もできる限りの支援
      をしていきますので。」
    3人の決意に心から頭を下げた。記憶を失う前の俺が彼らを支えたのだ。今の俺も彼らを
   支えねば、当時の自身をも否定しかねない。
シューム「国家や軍隊が動けない以上、切り札となるのは企業と警護者のみね。特に警護者なくして
     連中を抑える事はできない。」
エリシェ「少しでも平和な世上に近付けるのなら、私達も支援は一切惜しみません。そのための我々
     の力ですし。」
ミスターT「力の賢い使い方だわな。」
   影武者だが各国のリーダーがそれぞれ決意を述べる。それに大企業連合総帥のエリシェも。
   彼らは表の戦いに投じてくれればいい。裏の戦いは俺達警護者の役割である。特に汚れ役こそ
   真骨頂だわな。

    現状を考えれば、誰が間違っているかなど一目瞭然だ。しかしそれぞれの価値観、強いては
   生き様があるのが人間。生き様推奨派の俺は他人のそれを否定はできない。

    ただし、間違った行動に関しては徹底的に否定する。そして、盟友・友・大切な人物を悪口
   罵詈するカスは断じて許さん。

    あの特殊部隊の連中、いや・・軍服男が首謀者か。奴等がいる限り、今現在の安寧は絶対に
   掴めない。ならば、徹底抗戦あるのみだ。必ず叩き潰してやる。



シューム「さって、本題は片付いたし・・・。」
ナツミYU「そうですね・・・。」
    一服しながら一同を見つめていると、静かに立ち上がるシュームとナツミYU。その表情を
   見てゾッとした。エラい妖艶な瞳で見つめてくる。先程の戦いの興奮が今も冷めていない様子
   である。これはあの特殊部隊を相手にするより厄介だわ・・・。
エリシェ「お2方、すみません。まだ国家間外交が終わっていないため、マスターをお借りしても
     よろしいですか?」
シューム「・・・さっきの爆発事変で中止になったんじゃないの?」
ラフィナ「立て前はそうしました。むしろ皆様方には態と待って頂いた次第で。」
シルフィア「連中を引き寄せるエサとして、ね。」
ナツミYU「・・・了解です。」
   非常に不満そうな雰囲気の2人。まあエリシェ達の横槍がなければ、俺を強奪したのは間違い
   ない。この場合は彼女達に助けて貰った形か、何とも・・・。
ナツミA「と言うか、お2人さん。暇があったら最低限の武装以外、全部コンテナに収納よろしく。
     後でハリアーU郡で船に運ばないといけないから。」
ミツキ「断らないわぅよね?」
   うわぁ・・・姉妹のドギツイ殺気と闘気が放たれ出したわ・・・。それに周りの面々は顔を
   青褪めだしている。免疫がある俺や恩師には全く効いていないが。


    とりあえず、一度解散という形になった。使った武装郡は大型コンテナに入れて、それを
   超大型豪華客船に戻さねばならない。不測の事態に備えて手持ちした方がいいのだが、先程の
   戦闘で大体の武装形態を窺い知れた。それだけでも儲けものだろう。

    また予てから計画していたバカンスも実行するようだ。何時でも日本に戻れる準備をして、
   それから行う様子である。彼らの言い分だと、折角ハワイにいるのだから楽しまねばとの事。
   まあ確かに一理ある。

    仲間達が行動をしている間に、本当の国家間外交を行う事になった。今回はエリシェ達も
   参加するようで、専属の警護者として俺も抜擢される。というか先程のアレは、シュームや
   ナツミYUから引き離す手法だったようだが・・・。

    ちなみにミュティ・シスターズには、ナツミツキ四天王が専属として護衛を担当している。
   ナツミツキ姉妹自身は単独で守れるとあり、今は3姉妹の方が最優先になる。何時あの特殊
   部隊の連中が現れるか分からない。俺としては3姉妹に全護衛を着けたい所だが。

    まあ今となっては警護者の触りも得だしているため、自身の種族絡みの戦闘力も相まって
   半端じゃない力を出せ始めている。何れ俺達が守られる様になるのは言うまでもない。



    結局、国家間外交が終わったのは日付跨ぎとなった。しかし大会議が始まる前に現れた、
   特殊部隊の連中が功を奏した形か。全会一致で対策を講じる決定がなされた。それは即ち地球
   規模での対策と言える。

    ただ連中が何処から現れるのか全く不明な点なのが気になる。先程の大型ヘリの一団も、
   突然レーダーに現れたというのだ。となると、ギガンテス一族の超絶的なテクノロジーに近い
   力が働いている感じか。

    まあ連中の狙いはミュティ・シスターズなのは間違いない。3姉妹と一緒にいれば、否が応
   でもこちらに現れる。そこを叩いていけばいい。

    まさか世界各国の首脳が特殊部隊を悩みの種にしているとはな。不信するつもりはないが、
   営利目的で連中と結託する手法も考えられた。それが現段階では皆無である。首脳陣がその
   話題になった時、あそこまで声を荒げるのには驚いた。とてもやらせの演出とは思えない。


    ハワイに赴いてまで国家間外交を行う意味はあるのかと思っていた。しかし今のこの流れを
   考えると、満更無駄ではなかったようだな。むしろこれもエリシェやラフィナの戦略の1つに
   なるのだろう。特に場所が決め手だな。

    常夏のハワイはアメリカである。そこに特殊部隊を呼び込み、言わば強大な獅子を怒らせた
   形を取らせた。日本だけでは対処できないと踏んだためだろうな。獅子の尻尾を態と踏ませ、
   本気にさせる事で同調者を得た形だわ。う〜む、そこまで狙っていたとは・・・。

    それに連中への腹立たしさを3ヵ国の首脳陣、いや全世界の首脳陣に知らしめた。それが
   決定打になったとも言える。態と怒らせて反撃に出る、か。何ともまあ・・・。

    ともあれ、今後の流れは見定まった。特殊部隊の目的が俺達なら、対処法は確実である。
   以後は日本が舞台になるが、駐留中のアメリカ軍の方々にも力添えが可能になろう。これは
   間違いなく、地球人自体を怒らせた報いになるわな。



ミュティナ「ハワイという場所は、殆どこうして晴天なのですね。」
ラフィナ「偶に曇ったりしますが、この数日間は快晴のようです。」
    翌日はフリーとなった。一同でワイキキビーチに足を運び、バーベキューを楽しんでいる。
   ちなみに女性陣は水着である。3姉妹や9女傑すらも水着とあって、一種の有名人の集いの場
   的な感じになっていた。何ともまあ・・・。
エリシェ「・・・ここに来てもその出で立ちですか・・・。」
ミスターT「カナヅチに沈めを仰るのか・・・。」
シルフィア「相変わらずねぇ〜。」
   恩師ですら水着を着用している。しかしその彼女達を見ようものなら、次の瞬間ギラ付いた
   視線が突き刺さってくるのが何とも言えん。その主はシュームとナツミYU。更にはエリシェ
   とラフィナからも向けられてくる。う〜む・・・。
ミスターT「流石にここには襲撃は来ないよな・・・。」
ミツキ「来たら容赦しないわぅよ。バカンスを邪魔するツケを必ず払ってやるわぅ。」
ナツミA「娯楽を邪魔するのなら、それ相応の地獄を見せますよ。」
ミスターT「はぁ・・・頼りにしてます・・・。」
   ナツミツキ姉妹の水着姿も初めて見る。というか実に不思議な事があるが。それは姉妹や恩師
   にはドキリとする感じが出ないのだ。まるで同性を見ているかのようである。確かに女性と
   しての魅力は痛烈に伝わるが、それ以前の次元の話な感じか。本当に不思議だわ。

    しかしまあ、野郎の性は何とも言えん。これだけの水着の美女が揃うと、やはり鼻の下を
   伸ばしてしまいがちだわ・・・。それでもほぼ全員が警護者であるため、その体躯は半端じゃ
   ないものである。

    何度も思うが、やはり真女性には敵わない。今後の世界は女性陣が活躍してこそのものだ。
   破壊と混沌という業を持つ野郎の時代は終わったも当然だわな。

    そんな考えを巡らせていると、当然の如くエロ目線だとヤジが飛んできた。まあ半分は事実
   だから否定はできない。野郎の性は悲しいものだ・・・。



ミツキ「サンセットは美しいわぅ〜。」
ミスターT「本当だわな。」
    以後もずっとワイキキビーチで過ごした。明日には日本へ向けて戻るとの事なので、夜は
   大規模なパーティーを開くとの事だ。数時間後に控えた同催しの前に、地平線に沈む夕日に
   感動を覚える。
ミュティナ「今まで私達が見てきた中での、最高の夕日ですよ。」
ミュティラ「地球が素晴らしい事が分かるよね。」
ミュティヌ「う〜む、絶景っす。」
シルフィア「アレよね、宇宙空間で見る日の出も格別とか。」
ナツミA「空気がありませんから、それは見事な美しさかと。しかしこの地球だからこそ、大自然が
     織り成すハーモニーと言えるのかも。人工物とは比べ物になりませんね。」
   何も考えずに夕日を見つめるのも乙なものだ。この奇跡の地球に生まれ出た事に、心から感謝
   したい。そして仲間達と過ごせる今にも、である。
ミスターT「・・・地球の環境だからこその美しさ、だな。」
ミュティナ「この世界を守りたいと思いたくなります。」
ミュティラ&ミュティヌ「だねぇ〜。」
ミスターT「・・・お前達も立派な地球人だわ。」
   ギガンテス一族は宇宙を流浪する民族。その彼らして地球が美しいと言うのだから、この星を
   心から守り通したくなる。できる事は限られるが、だからこその行動だろう。

シルフィア「雰囲気クラッシャーになるけど、人間ほど身勝手な存在はいないわよね。」
ミスターT「この美しい星を壊そうとするんですからね。」
    ボソッと語る恩師に本音で応えた。言わずともなが、地球環境の破壊が深刻化している。
   この流れだと何れ取り返しの付かない事になりかねない。
ミツキ「敬い・労い・慈しみの精神がカギですよ。」
ミスターT「お前のその心構えがあれば、この世上から悲惨や孤児という概念は消えるわな。」
ミュティナ「それは私達ギガンテス一族も同じ生き様です。でなければ何光年も掛けて大宇宙の旅路
      は続けられませんから。」
エリシェ「今度、宇宙に出てみたいものです。」
   後始末に終われるのか、引っ切り無しにノートPCと格闘中のエリシェ。同じくラフィナも
   スマホなどを使い雑務に追われているようだ。
ミスターT「空から眺めるのは最高だろうけど・・・俺は絶対に勘弁な・・・。」
シルフィア「相変わらずねぇ〜。」
ミツキ「気絶させて輸送わぅね、ウッシッシッ♪」
ミスターT「はぁ・・・。」
   宇宙空間ともなると、地球上の最大高度の比ではない・・・。これ以上の恐怖はあるのかと
   思いたくもなるわ・・・。まあ多分、無理矢理連れて行かれそうな気がするが・・・。


リュリア「準備できたよ〜!」
    夕日が沈み、雑談に明け暮れる。そこに上陸したリュリアが駆け付けてくる。他にアサミや
   アユミも一緒だ。依頼が終わったとあり、船からハワイ島へ呼び寄せた。
シューム「大会議場が今回のパーティーの場よ。シークレットサービス総出で改修したみたい。」
ナツミYU「ハワイ最後の日程ですから、大いに楽しみましょうか。」
   3人以外にもシュームとナツミYUも一緒だった。しかも今までに見た事がない妖艶なドレス
   を身に纏っている。エロスを通り越して格好良すぎるわ・・・。
シルフィア「あらぁ〜、見惚れちゃって?」
ミスターT「いえ、それを超えて格好良すぎるんですがね・・・。」
ナツミA「なるほど、確かに。」
ミュティナ「失礼ながら、シューム様もナツミYU様も男気がありますから。言わば女装した男性風
      な感じでしょうか。」
ミスターT「女性はいいよな、男装してもおかしくないし。」
   本当にそう思う。野郎が女装すると変態目線で見られる。対して女性は男装をしても全く問題
   はない。というか衣服に関して全て着こなせるのが羨ましい。

ミツキ「今度シュームちゃんとナツミYUちゃんに、パンツ・ステテコ・ランニングを着せるわぅ。
    オヤジ臭さ間違いなしわぅよ。」
シューム「へぇ〜・・・それもいいかもねぇ。」
ナツミYU「男性のラフな姿には憧れますし。」
ミツキ「そして・・・Tちゃんには女装させるわぅ!」
    ミツキの言葉に周りの女性陣の顔が不気味に微笑みだす。これはやらされかねない・・・。
   そもそも体躯の問題で不可能な事なのだが・・・。
ミュティナ「あー・・・すみません。ナノマシンを駆使すれば、一時的ですが性転換も可能です。
      私達が用いる外交手段の1つでもありますので。」
ミツキ「うっひょー! それは朗報わぅー!」
シルフィア「T君の女性化か・・・見てみたいわね。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   これはとんでもない事になりそうだ・・・。ただ野郎の俺からしても、女性化という部分には
   若干の興味を惹かれるが・・・。う〜む、これも野郎の性か・・・。何とも・・・。
ミスターT「・・・もしかして、お前達が外交をする場合は大人化させるとか?」
ミュティナ「そうですね。母をベースとする体躯で担う場合も。まあ大体同じでしょうけど。」
ミスターT「この美丈夫が覚醒する訳か・・・。」
   ミツキやリュリアと変わらない体躯のミュティ・シスターズ。それがシュームやナツミYUの
   様な女傑に化ける、か。物凄く興味が惹かれるのは野郎の性だろうか・・・。
ミスターT「まあ何だ、今は一時の安らぎを満喫しますかの。」
ミツキ「パーティーわぅ〜!」
   脱兎の如く、パーティー会場へと向かうミツキ。釣られてリュリアやミュティ・シスターズが
   追随して行った。この美丈夫はまあ・・・。まあだからこそ、あの戦闘力が出せるのだろう。
   実に羨ましい限りである。

    一服を終えて、ドレス姿のシュームとナツミYUを手招く。近付いて来た2人に手を差し
   出した。本来なら腕組みなのだろうが、ここは手繋ぎという初歩的な姿を取ってみる。すると
   予想もしない展開だったのか、エラい顔を赤くしながらも握り返してきた。

    俺の取った行動に、周りの女性陣は呆れ顔である。この場合はキザったらしい行動をして、
   ヤジを飛ばされるのは目に見えている。そこを態とカップル風な行動に変えてみたのは正解
   だったようだ。まあシュームとナツミYUの方は、恥ずかしがりながらも実に嬉しそうでは
   あるが。

    もう少し人手がいない時は、普段のキザったらしい行動を取ってみてもいいだろう。今は
   この流れも乙なものだわ。2人の壮麗な美丈夫の手を握りながら、夜の帷が降りだした海岸を
   後にした。

    第9話へ続く。

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