アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第9話 変装の潜入捜査1〜
    ハワイでの国家間外交の警護、そして特殊部隊との対峙。それらを無事終え、常夏の島を
   大いに満喫してから帰路に着いた。

    相変わらず超大型豪華客船の力は凄まじい。短期間でハワイから日本へと戻れるのは、本当
   に見事としか言い様がない。三島ジェネカンの実力は凄いものだわ。


    ちなみに一連の襲撃から、ミュティ・シスターズを本格的に強化させようという事になる。
   そこで実践者としては最強の警護者たる、恩師シルフィアの元で修行させる事にした。

    また不測の事態の身辺警護に9女傑が名乗りを挙げてくれたという。本音は彼女達も恩師の
   元で実戦修行を積みたいというものらしい。全てが終わった時、彼女達は相当凄腕の猛者に
   なっていそうだわ・・・。

    その間のエリシェとラフィナの専属護衛は、シュームとナツミYUが担当する事になった。
   ナツミツキ姉妹は相変わらず喫茶店でのDJ職を行いつつ、不測の事態には動いてくれると
   言う。四天王の方も同じとの事だ。

    暫くの間、喫茶店と事務所の運営は俺1人で行う事になりそうだ。まあ喫茶店に常駐は姉妹
   がいるため問題ない。


    ミュティ・シスターズが警護者として目覚めるなら、これ程安心な事はない。今でさえ個人
   戦闘力では恩師を遥かに上回る実力を有している。そこに警護者としての正確さと確実さが
   加算されるなら、ネズミ算式じゃないが相当なパワーアップにもなる。

    そして何より安心なのは、彼女達自身が不測の事態への対処法を持つという事だ。彼らの
   種族の力や技術力・科学力は、地球人のそれを遥かに凌駕している。そこに活人技が目白押し
   の警護者の力が重なれば、もはや怖いものはないだろう。

    唯一不安なのはメンタル面の部分だが、10万年以上生きている3姉妹なら問題あるまい。
   むしろこちらが見習うべき点が数多くある。何れ彼らから多くを教わる事が来るだろう。


    事態は不透明だが、今現在できる事をし続けるまでだ。油断すればやられるのは言うまでも
   ないしな。それに力があるのに使わないのは、時として不幸を招く事にもなる。ここはどんな
   手法であれ用いるべきだ。

    まあ周りに戒めてくれる存在が数多くいる。決して間違った道へは進まないだろう。それに
   下手な事をしたら蹴飛ばされるわ・・・。



ミツキ(常夏のハワイから帰還したわぅ〜♪)
ナツミA(ヘッドセット持参で、現地でもオンエアすればよかったわね。)
    今もFMの指定チャンネルでは、ナツミツキ姉妹のラジオ放送が行われている。この美丈夫
   に疲れという概念はなさそうだ・・・。ナツミツキ四天王の方は地下工房にて新たな武装の
   開発をしてくれている。ハワイでの戦闘で色々ノウハウが得られたとの事だ。

    そう言えば重力制御ペンダント効果により、武装開発に拍車が掛かっているそうだ。鋼鉄
   などを簡単に持てるとあり、従来の作業効率の数倍を叩き出しているとか。流石に3姉妹の
   超絶的な腕力などは実現できないため、削りや曲げるなどの作業は厳しいとの事だ。

    今となってはギガンテス一族のテクノロジーを惜しみなく用いている。顕著なのがハワイで
   ウエストが使った兵器だ。銃口に電気が帯びていた獲物のアレは、実際には実現可能とされる
   レールガンとの事だ。

    原発1基分の電力を用いねば実現できないとか。それかイージス艦の動力源ぐらいは必須
   との事でも。詳しい事は分からないが、それだけ実現が厳しい兵器である。問題は生身の身体
   で扱う事なのだが、重力制御ペンダント効果で可能とか。実にクレイジーな話である。

    そもそも電磁加速装置たるレールガンだったか。それを生身の身体でぶっ放したら、身体が
   粉々に砕け散る可能性も十分在り得る。マンガやアニメの世界では個人で放てる様相になって
   いるが、実際は不可能なのだから。兵器としての運用は、今の地球人のテクノロジーでは無理
   な話だろう。

    ちなみにギガンテス一族の宇宙船には、これらレールガンが標準装備されているとか。更に
   その重力制御ペンダントの応用次第では、それ自体が小型のレールガン化するという。どんな
   テクノロジーが用いられているのかは不明だが、地球人からすれば常識を逸脱した怖ろしい
   力なのは間違いない。特殊部隊の連中が血眼になって追ってくる理由が痛感できるわ。

    まあ何にせよ、どんな力があろうが警護者としての生き様は崩したくはない。今できる事を
   し続けるまで、である。今後の俺達次第という事だ。



ミスターT「・・・で、これを俺にやれと・・・。」
エリシェ「マスターの実力であれば、先入捜査も単騎制圧も可能でしょう。それにミュティナ様が
     仰られた、あの力を用いれば容易でしょうし。」
    それから数日後、とんでもない依頼が舞い込んできた。と言うか単独での戦闘力が警護者内
   でトップクラスだから回ってきたのだろう。しかも以前ミュティナが言っていた力を用いての
   ものだ。
エリシェ「既にミュティナ様からは、その能力があるペンダントをお預かりしています。後はこれを
     使えば可能です。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   瞳を輝かせながら手渡してくる。受け取ったそれは、ハワイでミュティナが言っていた性転換
   が可能というナノマシン。その能力が施された別のペンダントだ。どういった手法でそれが
   至るのかは全く以て理解できないが、実際にそれが可能なのだから怖ろしい。
エリシェ「あと、衣服はこれを。ナツミYU様が見繕ったものです。」
ミスターT「・・・変態の仲間入りだなこれは・・・。」
   更に手渡してきたそれは、ハワイでナツミYUが着用していた妖艶なドレス。何故それを着用
   させたがるのかは不明だ。しかし潜入捜査となるなら、これらの言わば武装は大いに助かる。
   本当はやりたくはないがな・・・。
エリシェ「・・・引き受けて下さいますか?」
ミスターT「・・・お前の顔に泥を塗る訳にはいかんだろうに・・・。」
   念を押すかの様に、物凄いニヤケ顔で迫ってくる。エリシェにこんな一面があったとは驚き
   である。まあ部外者視線からして、もし俺が彼女の立場なら同じ事をしただろうな。

    厨房を彼女に任せ、俺は変装道具一式を持って2階へ向かった。どんな流れになるのか、
   全く以て未知数である。しかし未知の領域に足を踏み入れたくなるのは、人としての性か。
   いや、これは性転換という野郎のほぼ変態願望が後押ししているようだ・・・。

    まあどんな流れであれ、懇願されるのを断る訳にはいかない。もしこれが有効な手段となる
   のであれば、今後は大きな力の1つになるだろう。多用はしたくないが・・・。

    さて・・・どんな結果になるか・・・。



エリシェ「・・・・・。」
    変身が終わって店舗に戻った俺を見たエリシェ。驚きのあまり言葉を失っている。性転換
   ペンダントの効果により女性化した自分。そしてナツミYUが見繕った下着類やドレスを身に
   纏い、自分でも驚く程の美女と化していた。ちなみに太股の付け根には、あの隠し武器たる
   拳銃を施してある。これもナツミYUの見繕いらしい。何とも・・・。
ミツキ「なぁ〜にぃ〜?! やっちまったなぁ〜?!」
ナツミA「・・・女性化すると、こうまで化けるのですねぇ〜。」
   放送を終えた姉妹、俺の姿に同じく絶句している。と言うか半ば喜んでいるようだが・・・。
   ちなみに背丈は素体の自分と同じであるため、198cmと大女と化している。9女傑の1人
   である、ディルヴェズLKと同じだ。ちなみに彼女、ディルヴェズの双子の妹との事だ。
ミツキ「この場合はミスTちゃんになるわぅね、ウッシッシッ♪」
ミスT「声色まで変わるとは思わなかったわ・・・。」
ナツミA「ハスキーボイスも相まって無双状態ですね。」
エリシェ「これ、私達が男性化した場合はどうなるんですかね・・・。」
   彼女の言葉に姉妹がニヤケだす。本当なら在り得ない事が実現できるとあってか、物凄い興味
   津々といった表情を浮かべている。確かに第3者視点からすると、今の現状は非常に興味を
   惹かれるのは分かる。だが実際に至った俺にとっては、非常に遣る瀬無い気分だが・・・。

エリシェ「と・・とにかく、これなら潜入捜査は問題なさそうですね。」
ミスT「これで成功しなかったら、ただの変態なんだがね・・・。」
    3人が携帯やスマホで俺の写真を撮影しだした。それに呆れ顔になるが、彼女達のその心情
   はこちらも十分理解できる。後で身内に何を言われるか、分かったものじゃないが・・・。
ナツミA「と言うか、性転換しなくては攻略は不可能なので?」
エリシェ「今回の依頼先は男人禁制の場所でして。本来なら私達で潜入する所なのですが、この様な
     潜入はマスターが一番得意と伺いました。」
ミツキ「ミュティナちゃんのあの話でTちゃんが選ばれたわぅね。」
エリシェ「ええ、その通りで。一番得意としている方が担うのが無難だと思います。」
   俺と厨房を交代し、カウンターで紅茶を啜るエリシェ。その仕草からして、今回の意表を突く
   展開はネタではない事が分かった。と言うか彼女の雰囲気を察せば、それが本当かどうか直ぐ
   に分かる。
ミスT「元に戻ったら、その潜入場所の面々に殺されそうな感じだがな・・・。」
エリシェ「大丈夫だと思います。後始末の方は私達の方で行いますので。連絡はミュティナ様方が
     十八番の意思の疎通の念話を用いましょう。相手にスパイの疑惑を抱かさせる事はしない
     方がいいですし。ともあれ、今回は何時もと異なる流れになるのは間違いありません。」
ミスT「ああ、諸々分かった。可能な限り暴れてくるよ。」
   ここまで信頼してくれているなら、担わない方が失礼だろう。確かに通常では考えられない
   流れだが、逆を言えばそれは正に特効薬だ。後は俺次第という事になる。
ミツキ「今度その姿でアキバ散策するわぅね♪」
ミスT「・・・変な興味も湧いてくるわ。」
ミツキ「にょほほ♪」
   何やら良からぬ事を企んでいそうな雰囲気である。ミツキの逸脱したその考えは、時として
   ドエライ目に遭う。しかしその殆どが特効薬となり、現状打開に至るのが何とも言えない。
   だが彼女が話したそれは完全に娯楽である。う〜む、変な興味が湧くのはそのためか・・・。


    潜入捜査先は男人禁制のため、3人から女性の触りを徹底的に叩き込まれる事になった。
   それはそうだろう。俺自身は男性であり、その仕草はこの28年間ずっと同じ流れである。
   突然女性化に至っても、その仕草は野郎のままだ。

    歩き方・食事の仕方・その他諸々、全てにおいて女性として振る舞えるように修行をした。
   一番辛かったのはトイレだな・・・。う〜む、外交ならナツミYUが得意とするものだが。

    ちなみに潜入捜査が完了するまで、喫茶店の常駐警護者はエリシェが担うという。ラフィナ
   を三島ジェネカンの臨時総帥に抜擢し、ナツミYUとシュームが警護に当たっている。ここも
   ミュティ・シスターズ縁の意思の疎通の念話が役立っているとの事。

    もはや今の俺達はギガンテス一族のテクノロジーなしでは動けないわな。これだと後々大変
   な事になりそうな気がする・・・。微温湯に浸かり過ぎるとエラい目に遭いそうだ・・・。



    約1週間ほど、女性の触りの修行をこなす。その後、早速潜入捜査を開始した。場所は都内
   にある秘密組織“トライアングル・ガンナー”の日本支社だ。これ、例の特殊部隊とは全く
   異なるという。

    そもそも通称トラガンは警護者の下請け的な傭兵組織で、シークレットサービスでは担え
   ない厳しい依頼を受け持つ。特に力を入れているのは女性警護だと言う。だから男人禁制に
   なるのだとか。

    このトラガンには運転手や裏方にしか野郎がいない。完全な男人禁制ではなく、メインが
   女性中心という事になる。エリシェが述べていた事とは若干異なる。ただし、彼女が俺に大役
   を任せたのは意味があるだろう。

    恐らくだが、トラガンの内部調査は今後の特殊部隊への対策である。もし同調できる存在で
   あれば、ゆくゆくは共闘を視野に入れている筈だ。自分達だけで何とかなるだろうが、ここは
   数多くの協力者を募りたい所だな。

    それに俺が動いたとなれば、恩師や弟子達総出で動く事も在り得る。力があるなら可能な
   限り使う、エリシェのその考えは非常に的を得たものだろう。その根底の一念が世上から悲惨
   の二文字を無くす事に繋がるのなら、俺も心から賛同したい。



秘書「こちらです、少々お待ち下さい。」
    秘書さんに案内され、応接間に通される。俺が一時的に女性という事もあり、すんなり潜入
   する事ができた。というか雰囲気的にギラ付いたものは全くない。ただエリシェもそうだと
   言うが、不透明な部分が色濃いとの事だ。だからこそこうして潜入捜査に至った訳だが。

女性「ようこそ、オーナーのエルシェナと申します。本日は如何様のご用件で?」
    非常に慣れない女性座りで待つ事数分、先程の秘書さんと一緒に別の女性が入室してくる。
   エリシェに近い雰囲気だが、彼女より凄まじい覇気を感じる。警護者の道で培った戦闘力が、
   身体から滲み出ている感じだ。
ミスT「ミスT=ザ・オールラウンダーと言います。元シークレットサービスを担っていまして、
    失礼ながらこちらなら食み出し者の自分を雇い入れてくれるかと思った次第で。」
エルシェナ「なるほど、そうでしたか。」
   ハスキーボイスが役立っている感じだ。元来から男性声と言うか男性口調なのに、これで女性
   口調なら大変な事になりそうだ。1週間ほど修行をしたのは正解だったな。

    その後は簡単な素性を語った。これはミツキが設定した素性で、実際は架空のものとなる。
   彼女、小説家とかの方が合うんじゃないかね・・・。

エルシェナ「了解致しました。先ずは見習いという事で様子を見させて頂きます。その後、どの様な
      任務に合うのか考慮しましょう。」
ミスT「ありがとうございます。」
    立ち上がり右手を差し出す彼女。すると無意識にその手を取り、手の甲に優しく口づけを
   してしまった。それに顔を赤くしている。男性時のクセが見事に出た形になる。ただその行為
   をヨーロッパ風の作法と勘違いしている様子だが。



ミツキ(あらま〜、野郎時のクセが出たわぅか。)
    追って任務依頼が入るまでは待機となるようで、今は喫茶店に戻る事にした。移動に関して
   だが、移動のスペシャリストたるウアイラを用いた。帰路に着いている最中、ミツキから念話
   が入る。心情が伝わっているとなると、全て見られていた感じか。
ミスT(無意識だったからなぁ・・・。まあしかし、粗方の内情は把握したよ。)
エリシェ(こちらが懸念していたほど、厄介な所ではなかった感じですね。)
ミスT(ただ確実に分かったのは、その実力は俺達に勝るとも劣らない凄いものだという事だな。)
   運転しつつ、一服しながら思う。トラガンの戦闘力はかなりのものだ。しかもその大多数の
   メンバーが女性とあれば、野郎にはない武器も使える。ある意味オールマイティに依頼を行う
   事ができるか。各国のシークレットサービスには担えないものだろう。
ミスT(とりあえず、今後も様子を見ていくとするよ。)
エリシェ(よろしくお願い致します。)
ミツキ(わたもミュティナちゃん十八番の体躯変更で、潜入捜査するわぅか?!)
ミスT(案外お前の方が合うかもな。例のセラーナ嬢の口調を用いれば・・・。)
ミツキ(お任せ下さいですの!)
   う〜む、ミツキのネタのバリエーションは凄まじい。そしてそのボケもだ。不覚にもそれに
   笑ってしまうのは、案外彼女の術中にハマってしまった証拠だろうな。


    それから数週間、トラガンへの通いが続いた。彼らの素性は、警護者より表沙汰で動ける
   警護者的な存在と言えた。俺達よりも世間体を気にせず動けるのは羨ましい。

    世間体を気にせずと言うのは、警護者が闇の存在であるのとは真逆だからだ。トラガンは
   通常の警備員的な流れとも言うべきか。ただシークレットサービスが合法で動いているのに
   対し、トラガンは半合法で動いていると言える。警護者は完全に非合法で動いているがな。

    当然実力は真逆に位置する。最高峰・・・いや、最強の実力を持つのは警護者だ。次いで
   トラガンになり、最後はシークレットサービスとなる。戦闘技術は無論、個人兵装の問題に
   よりこの流れに至るのは仕方がない。特に日本は武装に関して厳しすぎるからな。

    これも逆になるが、海外だと3つとも最高峰の力を有する事になる。当然その中で最強は
   警護者になるが。やはり戦闘技術と個人兵装が大きなウェイトを占めている。だからこそ、
   ここぞと言う時に警護者が使われるのだ。ナツミツキ四天王が武装製造に没頭しているのは、
   正にここに至るだろう。

    今後も警護者の存在は廃れないわな。社会的に武装云々の面で厳しい目線で見られるほど、
   非合法組織となる警護者が半ば暗躍するのは言うまでもない。仕舞いには警護者同士の対決も
   十分在り得る。まあその時は容赦なく叩き潰すに限るがな。

    中半へと続く。

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