アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第10話 守るべきもの4〜
    我慢の限界を超えたのだろう、ゾロゾロと現れる女性陣。リューヴィスの女傑達を筆頭に、
   トラガンチームに妹達全員とウインドとダークHもいる。その表情は、この上ないぐらいの
   呆れ顔そのものだ。

伯爵「おお・・・良質の女がこれ程いるとは・・・。貴様の手腕により更生した感じだな。」
ミスT「・・・お前さんには、お嬢さん達をそうとしか見れない訳か。仮にここに男性が混じって
    いたとしたら、どうするおつもりで?」
伯爵「男など要らん、必要なのは女だ。」
ミスT「そうか・・・。」
    俺は性転換ペンダントの効果を切った。眩い光を発しつつ、元の男性の姿に戻る。それを
   見た伯爵は、まるで絶望的な表情を浮かべだした。そう、驚愕ではなく絶望である。
伯爵「な・・・何という事だ・・・男と話していたのか・・・。」
ミスターT「それを言うなら、その2人の執事君も野郎だろうに。」
伯爵「・・・解せぬ・・・解せぬ! この場でコイツ等を皆殺しにしろ!」
ミスターT「はぁ・・・そうなるのねぇ・・・。よし、そろそろ出番よ、三女神さんや。」
   言うか否か、地面に刺さる3つのマデュース改の裏から、ついに出番といった形で現れる。

    先程のトラガンチームの歩み寄りがカモフラージュとなり、その間に各マデュース改の裏に
   ミツキ・ナツミA・シルフィアを転送召喚しておいた。伯爵側は身内の女性陣に目がいって
   おり、3人の出現を誤魔化す事ができたようである。

    徐に俺の傍らに歩み寄る3人。その表情は、俺の心中を代弁するかの様な、超絶的な怒りと
   憎しみを浮かべている。末恐ろしいを通り越し、致死に至るような恐怖度である。

ナツミA「マスター・・・良く我慢されましたね。」
シルフィア「これは流石に・・・ブチギレるわ。」
ミツキ「良いじゃないですか・・・カスは潰すに限ります。」
    俺の十八番たる殺気と闘気の心当て、それを自分流にアレンジしたのを放つ3人。凄まじい
   波動を目の当たりにして、伯爵共は恐怖に慄きだしている。ここまで3人を怒らせたのは、
   俺が知る限りだと過去に例がない。
ミスターT「・・・伯爵さんよ、考えを改め直す事はない訳だな?」
伯爵「小癪な・・・これ如きの“魔力”などで・・・我らを屈服させられると思うな!」
イザリア「魔力か・・・それはこの事を言うのだがな。」
   3人の殺気と闘気の心当てに引かれている伯爵共だが、それもまたカモフラージュだった。
   俺の背後にイザリアを転送召喚した。彼女たっての希望で実現した流れである。

    その彼女が俺の傍らに出ると同時に、ご自慢の魔力の渦を“右手”から伯爵共に放った。
   どうやらこの異世界惑星では、殺気と闘気は魔力と同じ力を示すようだ。伯爵が俺達の力を
   魔力と勘違いしたのがそれである。

    となれば、魔王たるイザリアの魔力の渦の方が、伯爵共には特効薬そのものだ。それを窺い
   知った彼女が、共闘を申し出てきたのだろう。流石は魔王の名は伊達ではない。

    3人の殺気と闘気の心当てに、イザリアの魔力の渦のコラボレーション。それはもう、俺も
   驚くような恐々しさである。そして珍しいのが、イザリアがその一念に憎しみを込めている
   事だ。先の共闘ではその一念はなかったため、余計それに気が付いた感じである。

伯爵「お・・おのれ・・・。」
ミツキ「おい、まともに発言できんのか貴様は。」
    うわぁ・・・リミッターが解除されたミツキを久し振りに見た・・・。何時ものノホホン度
   が一切消え失せ、殺気と闘気を前面に出した本気モードの彼女だ。この力で各事変の愚物を
   瞬殺している。
ウインド「マスター、どうなさいますか?」
ダークH「ここは、是非とも女性の力を見て頂きたいものですが?」
ミスターT「そうだな・・・お嬢さん方、力を抑えてくれ。」
   俺が語ると、殺気と闘気と魔力の渦を抑える4人。この上ない怖ろしさが止むと、今度は臨戦
   態勢になる伯爵共。周りにいた騎兵や重装兵も武器を構え直している。
ミスターT「さて・・・こちらの華麗で可愛く、心から敬愛できる美女方が、是非とも暴れたいとの
      事なので・・・覚悟して下さいな、カス共がっ!」
ミツキ「お前ら、やっちまえっ!」
   態とらしく茶化しも織り交ぜつつも、最後は今までの怒りと憎しみをぶつけての啖呵。それに
   便乗するミツキの号令に、周りにいた女性陣が一斉に雄叫びを挙げて突撃を開始した。

    凄まじいまでの迫力だわ・・・超絶的と言っていい。あれだけ自分達の性別を侮辱され続け
   たのだ、怒らない方が絶対におかしい。野郎の俺でさえ、相手の暴言には超絶的に激昂する。
   しかし、ここはこの場にいる女性陣に全て委ねるとしたい。

    そして、それは恐ろしい現実となって現れる。1ヶ月ほどの修行は、リューヴィスの女性陣
   を屈強な女傑へと進化させていた。同月を見守り続けたが、どうやらそれは本気でなかったと
   いう事だろう。

    相手の武器を弾き、自らの拳や蹴りで一蹴する。その全ての一撃に怒りと憎しみを込めて。
   まあ、憎しみの部分はパワーアップの要因になるため、実際には怒りのみのものになるが。
   それでも、あの暴言には、怒り以外に憎しみも抱かない方がおかしい。

    リューヴィスの女性陣、トラガンチームの女性陣、妹達に身内全員。ここにいる全ての女性
   の原動力が、自分達を侮辱した伯爵共に向けられた。傍らにいるウインドとダークHは、不測
   の事態に備えて待機中だが、実際には暴れたい様子である。



    どれぐらいの戦いが続いたのだろう。屈強な女性陣の猛攻に、為す術無く倒された伯爵共。
   全員捕縛され、武器も1箇所に纏め上げられている。伯爵と執事2人も同じく捕縛された。
   急所を狙わずも、そのどれもが猛攻であったため、もはや反撃の気迫すらないぐらいだ。

    確かに役職やら権力やらでは上手だろうが、実戦主義者の俺達にはそれは一切通用しない。
   警護者自体がそれに該当するため、言わば伯爵共にとって特効薬そのものである。

伯爵「お・・・おのれ・・・。」
ミツキ「黙れ愚物、おのれおのれ五月蝿いんだよ、殺されたいのか?」
ミスターT「はぁ・・・そのぐらいにしておきなさいな。」
    依然として激昂モードのミツキに、周りの女性陣はタジタジである。しかし、それが自分達
   を擁護するものである事を知っているので、代弁役として任せている様子だ。
ミスターT「さて、どうするか・・・。」
伯爵「このままでいられると思うな・・・王城にいる貴族総出で貴様等を殺してやる・・・。」
ミスターT「・・・まだ減らず口を叩くのか。」
   捕縛中の伯爵の前に座り込み、顔に着けていた仮面を取り外す。すると、見る見るうちに顔を
   青褪めていく。

    実はこれ、事前にヘシュナの偽装により、顔が醜くなるように施してあった。実際のそこは
   黒い覆面があるのだが、伯爵や周りの面々には、醜い表情が浮かび上がっている様に見えて
   いるのだ。

伯爵「ひ・・ひぃぃぃっ!!! ば・・化け物・・・。」
ミスターT「ほむ・・・顔は化け物でも、心の方は貴様等よりはマトモだがな。」
    十八番の殺気と闘気の心当てを放つ。既に恐怖で一杯の相手には、追撃の波動は超絶的な
   ようだった。
ミスターT「・・・いいか、良く聞け愚物共。貴様等にあると思われる良心に期待し、今回だけは
      逃がしてやる。だが・・・今度彼女達に手を出したり、愚弄するような場合は・・・、
      貴様等全員皆殺しにしてやる・・・覚悟しておけ。」
   最後通告的に言い放ちつつ、瞬発的に殺気と闘気の心当てを高める。それらを目の前の伯爵共
   にぶつけた。当然ながら、その波動に当てられた連中は、白目を向いて気絶していく。
ミスターT「・・・嫌な役回りだわ・・・。」
ミツキ「ま・・まあそう仰らずに。」
ナツミA「最後は見事な啖呵でしたし・・・。」
   再び仮面を装着しつつ、徐に立ち上がり静かに一服をする。元は超チキンの俺だ、見事に手が
   震えている。これは当然の反動だろう。その手にソッと触れてくるのは、ウインドとダークH
   だった。

    その後、侵入者全てが気絶した状態の現状を利用して、イザリアの転送魔法の力で王城前
   へと移動させて貰った。捕縛状態で白目を向いて気絶している伯爵共が、現地でどんな扱いを
   受けるのかと思うと、変な興味が湧いてくるが・・・。

    街中の被害も、格闘戦で対処したため皆無に近い。それなりの散らかし度はあるが、掃除を
   すれば問題ないだろう。問題があるとすれば、俺自身だろうな・・・。



サラ「全部片付きましたじぇ。」
セラ「骨が折れましたにゃ。」
ミスターT「ありがとさん。」
    全ての行動を終えて、街の中央交差点に集う面々。そこはリューヴィスの女性陣が炊き出し
   を行ってくれており、戦いに参加した面々を労っている。
カネッド「何かさ、今までで一番戦った気がするわ。」
ダリネム「そうだねぇ。」
キャイス「女性の尊厳を取り戻した感じっと。」
   キャイキャイ騒ぐ妹達を見つつ茶菓子を頬張る。これ、ミツキが地球より持ち込んだ一品だ。
   未知の世界の食べ物とあり、リューヴィス在住の女性達には大人気である。特に幼子達には
   かなり好評のようだ。
ミツキ「沢山あるから、一杯食べてわぅ♪」
ナツミA「茶菓子漬けよねぇ。」
シルフィア「ハハッ、良いんじゃない。」
   漸く異世界に来れたとあってか、瞳を輝かせている3人。彼女達は生粋のヲタク気質なため、
   見るもの全てに熱い視線を送っている。それに呆れ顔の身内達である。

    和気藹々と盛り上がる場だが、やはりリューヴィスの女性陣の視線が痛い。彼女達を癒した
   人物が、女性ではなく男性だった点だ。言わば、目の前に憎き異性がいる。その目力は殺気
   ではなく、触れたくないもの、見たくないもののように刺さってくる。

イザリア「ミスターT殿・・・。」
ミスターT「ん? ああ、気にしなさんな。」
テューシャ「あの戦いの後ですから、辛いですよね・・・。」
    一際気に掛けてくるイザリアとテューシャ。その2人に小さく頭を下げた。リューヴィスの
   女性陣を治療した厚意には、強かな心など一切ない。むしろ、彼女達が立ち上がれるのならと
   思っての行動だ、後悔もしていない。
ミスターT「・・・これだから野郎は・・・。」
ネルビア「ハハッ、恒例の自己嫌悪ですか。」
エメリナ「今は・・良いと思います。」
ミスターT「酒でも飲みたい気分だわ・・・。」
   憎まれ役を担う、か。ヘシュナやイザリア達が担ってきた、悪役の流れ。形はどうあれ、今の
   俺はリューヴィスの女性陣にとって敵である。彼女達を虐待した男性共と同性なのだから。
   俺が彼女達の立場だったら、同じ思いを抱かずにはいられない。
ミスターT「・・・それでも、彼女達が立ち上がれるなら、それでいい。」
ウインド「そうですね。今のマスターの役割は憎まれ役。私達が警察官も、時と場合によっては、
     憎まれ役を担わなければなりません。警護者も全く同じです。」
ダークH「今の世上に憎まれようが、後の世上が良くなるのなら安いもの、と。自ら担って行動した
     事ですからね。後悔せずに進んで下さい。」
ミスターT「ああ、委細承知。」
   両肩に優しく手を置いてくるウインドとダークH。その手に自分の手を優しく添えた。


    今の様相からすれば、どうしようもない流れである。しかし、俺が行った行動は、決して
   後悔はしていない。ここまで立ち直る事ができたのだ、むしろ異性の俺だが誇り高く思う。
   本当に、女性の力は凄いとしか言い様がない。

    すると、トラガンチームの女性陣が、俺から意識を遠退かせようと、リューヴィスの女性陣
   に色々とコミュニケーションを取り出している。自発的なその厚意を見て、俺は彼女達に頭を
   下げた。彼女達も、昔は同じ様相だったのだから・・・。

    それでも、守るべきものは確かにある。それを貫く事ができる存在の1つが警護者だろう。
   今は異世界在住なため、探索者となっているが、殆ど同じ様なものである。

    今後も、己が生き様を通し、この世界の住人方を支えられる存在であり続けたい・・・。

    第11話へ続く。

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