アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第11話 海への対策5〜
イザリア(・・・ミツキ様の力があったなら、もっと早い段階で安穏が訪れていたと思います。)
ミツキ(んにゃ、わたはゲストわぅよ。イザリアちゃん達が魔王という悪役を担ってこそ、この世界
    が運行していくわぅし。それに、Tちゃんがいなかったら、わたもここまで覚醒していない
    わぅからね。)
ナツミA(確かにね。Tさんとお知り合いになる前は、自分達を力なき存在だと思ってましたし。
     お知り合いになった後は、警護者の道へと進みだした。それにより、今の実力に至ったと
     確信しています。)
    ミツキもナツミAも、ウインドやダークHと同じく、叩き上げの実働部隊そのものだ。頭に
   立つ事はあれど、彼女達の真骨頂は誰かの元に属してこそ真価を発揮しだすしな。
エメリナ(・・・私達も、警護者という冒険者になりたいものです。啓示での役割ではなく、己が
     全てを決めて突き進む存在に。)
ミツキ(うーん、今は啓示の役割を担うべきだと思いますよ。その瞬間に与えられた役割を担って
    こそですからね。それに、背伸びをした所で、何れ必ず限界が生じてきます。身丈に合った
    服を着ろ、正にこれですよ。)
イザリア(・・・本当に素晴らしいお方です。)
   語末“わぅ”から真面目言葉になると、発せられる言葉の切れ味が増していくミツキ。その
   オンオフの姿を窺い知って、改めて妹達は感嘆している様子だ。俺達の方は見慣れたものに
   なるが。
ミツキ(とにかく、今はアルドディーレで様子見でしょう。リューヴィスの方は、もう暫くしたら
    新大陸の方に移住を行おうと思います。)
エリシェ(王城の目を引き留めるとするなら、リューヴィスを最後にした方が良いかも知れません。
     シュリーベル・デハラードを先に動かした方が良いかと。)
オルドラ(分かった。先ずはシュリーベルの全てを新大陸に動かそう。次にデハラードだな。現地の
     詳しい様相が知れないので、探検も兼ねての移動となるが。)
ルビナ(そこは我々にお任せ下さい。先発隊として、現地に赴きます。)
ミュティナ(誰かしら現地に赴ければ、以後は転送装置で飛ばす事ができますからね。)
ミスターT(便利な能力だわな。)
   本当にそう思う。従来なら徒歩や馬車、船などを使っての移動となる。それを誰かしらが現地
   にいれば、その人物を座標として転送が可能となるのだから。5大宇宙種族の力は、異世界
   惑星でこそ真価を発揮すると言える。

    ともあれ、他の4街に関しては身内に任せれば問題ない。今は造船都市の方に集中しよう。
   例の海賊群の話が気になる所だ。



    それから数日間、アルドディーレを中心に情報収集に明け暮れた。ここ自体の防備は高い
   ため、襲撃などは簡単に撃退している。俺達が手を出す暇がないぐらいに、である。ならば、
   俺達は裏方の警戒に当たるしかない。

    今の情報網からして、一番懸念する材料は海賊群だろう。得た情報から判明したが、海賊群
   の頭領は相当な野心家らしい。ただ、その野心が何処に向けられているかが気掛かりだろう。
   最悪の展開は、王城と結託してアルドディーレを挟撃する事が挙げられる。

    それに、相手が海賊とあり、活動拠点は大海原である。海を移動する手段を持たない俺達
   には、情報収集がかなりの難題とも言える。

ヘシュナ(・・・重装甲飛行戦艦・・・。)
ミスターT(だー・・・いきなり話し掛けるのはやめれ・・・。)
    酒場の屋上で警戒しつつ、色々と模索していると、恒例の心中読みをしてくるヘシュナ。
   しかし、彼女が挙げたそれは、確実に特効薬になるのは言うまでもない。
デュヴィジェ(むしろ、海上となれば、“レプリカ大和”でも出したらどうですか?)
ミスターT(・・・おのれらは、この世界のバランスを壊すおつもりか・・・。)
   平然と力を使おうと述べる2人にタジタジである。重装甲飛行戦艦は空中を、レプリカ大和
   は海上での運用が可能である。しかし、その戦闘力は海賊群が使う帆船の比ではない。最悪は
   世界を破滅しかねないのだから。
エリシェ(皮肉ですよね。現状を即座に打開できる力を持つのに、パワーバランスを見極める必要が
     あるため、使いたくても使えないという現実。)
ラフィナ(地球での核兵器と同じですよ。有り余る力は破滅をもたらしますし。)
ミツキ(力を持ち過ぎるものは全てを壊す、お前もその1人だ、わぅ。)
ミスターT(はぁ・・・あの機体だけでも単独制圧が可能だしな・・・。)
   力の在り方を語るエリシェとラフィナだが、ミツキのシメに苦笑してしまう。ネタながらも、
   見事に言い当てている部分が流石である。
ミスターT(まあ・・・もし連中が、この異世界の軍事力を超越するものを出すなら、それら兵装を
      出しても良いだろうな。)
ナツミA(通常の軍事力でも、圧倒的な数を誇る場合も該当しますよ。相手の力を拮抗させ、戦意を
     喪失させるのも警護者の役目ですし。)
ミスターT(・・・何時でも出せるようにはしておくべきか。)
   本当に悩ましい感じになっている。弱いと押し切られ、強いと押し切ってしまう。強弱共に
   絶妙なバランスを求められている。実に嫌な役割だわ。

    警護者の役割の手前、調停者と裁定者を貫かねばならない。警護者になった頃は、全く以て
   気にも留めなかった。しかし、今の俺達のレベルだと、それを心に留めねば、本当に破滅を
   もたらしてしまう。5大宇宙種族の力もそうだが、個人戦闘力では無類の力を発揮している
   からだ。

    マンガやアニメのフィクション作品である、最強状態での物語の開始。見ている側では実に
   爽快感がある展開になるが、パワーバランスは確実に破綻を来たしている。超強い主人公に
   全てを合わせだすため、周りのレベルが追いついて来れない場合が多い。

    俺としては、その様なぶっ飛んだ設定の作品群は大好きである。しかし、自分が至った場合
   だと、この異世界惑星の俺達の立ち位置は、彼らと同じになってくる。シュリーベルの奇跡と
   言われた、レールガンをぶっ放したあの流れもそうだ。

    警護者である手前、態と力をセーブし、総意との均衡を保ちつつ圧倒していく。ただし、
   時と場合によっては、リミッター解除という感じになるだろうが、そこには至って欲しくない
   ものだ。

ラフィナ(最強という概念、正にロマンそのものですよね。)
ミスターT(ん? ああ、確かにな。)
エリシェ(ただ、実際にそこに至った場合、本当に気苦労が耐えなくなる感じと。)
ミツキ(最悪は、リョフちゃんみたいになるわぅよ。)
ミスターT(裏切りと身勝手、か。)
    フィクション作品群をこの上なく愛する面々が呟く。彼女達も最強という概念には、少な
   からず魅力を感じているようだ。しかし、その称号は一歩間違えば破滅への切符であろう。
ミスターT(はぁ・・・イザリアさんの爪の垢を煎じて、飲ませて貰いたいわ・・・。)
イザリア(ご・・ご冗談を。貴方ほど、調停者と裁定者を貫く方はいませんよ。まあでも、バリアと
     シールドの防御機構を常に出す部分は問題がありますけど。)
ミスターT(そこもあるんだよね・・・。任意でオンオフはできるが、善心がある限りは永遠に出る
      概念になるし。)
ナツミA(ポチなら間違いなく永遠不滅ですよね。)
ミツキ(ふふり♪ ワンコの力は偉大なのだよ。)
ナツミA(ワンコねぇ・・・。)
   最後はボケで締めて来る。それに小さく笑ってしまった。まあ、この姿勢を貫く限り、彼女が
   善心を悪心に変える事は絶対にない。逆に、その存在で周りを善心に変えていくのだからな。
   天下無双と言われてもおかしくはない。


    その後も情報収集に明け暮れる。シュリーベル・カルーティアス・デハラードの3都市とは
   違い、海に面しているため色々な情報が入ってくる。その中で有益だったのが、南東の新大陸
   は未踏査状態らしい。つまり、不測の事態を除けば十分住めるという事だ。

    早速この情報をオルドラ達に知らせた。既にシュリーベルの先発部隊が新大陸へと進んで
   おり、向こう側でキャンプを張っているとの事だ。ただ、造船都市ほどの帆船がないため、
   急拵えの船となる。特に新大陸周辺は荒波が多いため、海上が落ち着いた時でしか進めない
   との事だ。

    それでも、今はこの新大陸に活路を見出すしかない。カルーティアスが牙を向いて来るのは
   間違いないので、後方に退けるだけの準備は進めておくべきである。



ミュティナ(これはマズいですね・・・。)
ミスターT(未踏査の地の調査は難航か。)
    更に数日後、ミュティナ達から念話が入る。新大陸での仮住居の確保は済んだが、野生の
   魔物がかなり出ているとの事だ。ここ最近は海上が荒れているため、引き上げるにも引き上げ
   られないらしい。
ミュティナ(ミュティラとミュティヌが追い払ってますが、2人だけに任せるのは厳しい感じで。)
ミュティヌ(うちらは大丈夫なんだけど、シュリーベルの方々のモチベーションが下がっているのが
      難点なんよ。)
ミュティラ(まあ、可能な限り大暴れはします。ギガンテス一族を舐めないで下さいな。)
   襲来する野生の魔物共をトリオで撃退している三姉妹。ギガンテス一族は5大宇宙種族中、
   最強の力を持つので、戦い自体は全く以て問題はない。あるとすれば、ミュティヌが挙げた
   シュリーベルの面々の士気だろう。
オルドラ(工業都市からも増援を派遣したいが、荒波が続いているのと海賊が出没しているのがな。
     迂闊に動けないでいる。)
エリシェ(造船都市の方の防備は万全ですか?)
ミスターT(全く以て問題ない。襲来する海賊群も、ほぼ一蹴している感じだ。ただ、ここ最近は
      海賊共が頻繁に現れている。)
ミュティナ(推測ですが、こちらにも目を付け出しているみたいです。海賊自体は陸地は不向きだと
      思いますが、海上では無類の力を発揮しますからね。)
   どうしたものか・・・。海賊群はこちらの動向を探っていると思える。大海原を支配する存在
   なのだ、その行動力を発揮せねば本末転倒だ。俺が海賊の頭領なら、間違いなくそう動く。

    一番怖いのは、海賊の頭領が王城と結託する事だ。もし海上に独自の交通網でも引かれた
   場合、船舶関連を持たない俺達には為す術がない。こちらは簡単な帆船はあるが、どれも戦闘
   特化の海賊船には敵わないだろう。

    それに、造船都市に絶え間なく襲撃を繰り返すため、ここから新大陸へと進む事も不可能と
   なっている。連中が俺達の行動を読んではいないとは思うが、逆に読んでいた場合の事を念頭
   に入れておくべきだろうな。

ラフィナ(ふむ、となれば・・・ヘシュナ様、やりますか。)
ヘシュナ(おおぅ、ついに出しますか。)
ミスターT(あー・・・俺は予め、関知しないと述べておく・・・。)
    物凄いニヤケ顔で語るラフィナとヘシュナ。それに予め、一切関知しないと告げておいた。
   だが、俺の方も幾分かワクワク感はあるにはあるが・・・。

    2人が行う事は間違いなく、最強の海上兵装を出す事だ。俺はパワーバランスを崩しかね
   ないかと、内心物凄くヒヤヒヤしている。

    しかし、三姉妹の念話からして、海上の荒波が凄まじい点、海賊群の規模の問題点、王城の
   動きが読めない点、これらを踏まえれば今は何振り構っていられない。

    その海上兵装は異世界の荒波すらも十分耐えられる強度を誇っている。地球でも数多くの
   事変を乗り越えてきた。それに、シュリーベルとデハラードの第2陣の海運を行うには、既存
   の船舶では心許ない。海上輸送を行う点でも、申し分ない規模でもある。

    ここは、地球で大活躍した警護者専用のガンシップ、レプリカ大和を投入する事となった。
   同時に、海賊に野望があるのなら、同兵装の投入で潰えたも当然だ。そこだけは痛烈なまでに
   分かる。だが、本当に大丈夫かと心配であるが・・・。

    第12話へ続く。

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