アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第1話 未知の世界1〜
    ・・・とんでもない事になった・・・。


    警護者の依頼を完遂させ、喫茶店本店へと戻った直後、突然目の前が真っ白に変化した。
   目も開けられないぐらいの光だっため、目蓋を閉じて止むのを待つ。

    収まった後に目を開けると、緑の平原に立っていた。そう、大平原と言うべき場所だ。今の
   日本では限られた地域にしかない。そして、建物らしき物が一切なかった・・・。

    ・・・そう言えば最近、デュヴィジェが異世界ファンタジー作品を勧めて来ていたのだが、
   まさかそれがこれなのか・・・。いや、まだ実際には現物を見ていない。偶然で至ったとしか
   考えられない。

    ちなみに、俺の名前はミスターTで通している。本名は伏せているため、コードネーム的な
   感じになる。潜入捜査帰りだったため、頭から鼻先まで覆う覆面以外に、黒い仮面も着けて
   いる。場違い的な出で立ちだが、警護者界では名の知れた存在になっていた。


    それにしても・・・この様相は・・・。そよ風が実に清々しいが、それを打ち消すかの様な
   現状には混乱し捲くりだ。まあ、一応の装備群があるのが幸いか。

    背中のベストには、人工腕部の装置を背負い起動中。その上に一張羅のコートを羽織り、
   背中のスリットより右手義手に近い人工腕部が出現している。そこにはマデュース改こと、
   M2重機関銃改が握られており、更にその砲身には巨大な大盾が装着されている。

    四天王やギガンテス一族はミュティラ・ミュティナ・ミュティヌの三姉妹による力作で、
   20mm機関砲以外にレールガンの兵装能力が搭載。弾丸を電磁加速させて射出する以外に、
   エネルギー自体を射出させる機構もある。この同型の装備は、両手にも同じ獲物が握られて
   いる。

    マンガのネタであった、とある人物のオマージュ的武装だ。ただ、本家の方は巨大な十字架
   の超重量火器兵器だったが、こちらの3つの獲物は大盾にマデュース改を搭載した減価版に
   近い。それでも、本家に近い威力は叩き出せている。

    決め手は腰にぶら下げている携帯式方天戟か。格納式のもので、取り出す際に元の獲物の
   長さに戻る仕組みだ。また両腕にも格納式の獲物があり、両方をクロスさせる事で十字戟と
   いう獲物に化ける。どちらも出所はゲームで登場するものである。

    小道具袋は一応あるが、応急処置用のものしかない。緊急事に役立つかどうかは不明だ。
   もう1つの決め手は、胸にぶら下げてある各ペンダントだろうな。


    先程挙げた、デュヴィジェにミュティ・シスターズ、彼女達は5大宇宙種族の中の人物。
   彼女達が持つ超絶的な力が、これら各ペンダントに込められている。

    超怪力を発揮できる力、電撃を放てる力、相手の精神を操る力、身体完全回復と治癒の力、
   バリアとシールドを発生させる力、重力制御が可能な力、性転換が可能な力・・・何とも。
   他にも念じれば、それ相応の力が発揮されるため、万能的なペンダントと言える。

    これ、実に面白いのがその仕様だ。所持者に少しでも悪心がある場合、その効果は絶対に
   発揮されなくなる。しかもそれは無意識レベルで、一時的に雑念などを取り払っても使えない
   者は絶対に使えないのだ。

    こればかりは流石に驚いたが、逆に俺自身が悪党でない事が証明されたとも言える。現に
   要らぬ雑念を抱こうが、その能力を遺憾なく発揮してくれている。各ペンダント自身が俺を
   認めてくれたと言って良いだろう。


    今の自分が置かれている立場には、茫然自失するしかない。ただ、もし異世界へと旅立って
   いるのなら、現実世界での各行動が心配される。まあ、向こうでは現段階で全ての依頼を完遂
   している。特に人類には致死の一撃と言えた、惑星事変と黒いモヤ事変を片付けられた後で
   あったから良しとすべきなのだろうな。

    何はともあれ、茫然自失をするものの、冷静に解釈できる己には呆れる。それでも、今は
   目の前の現実を直視していくしかない。これが5大宇宙種族の力によるものなのか、別の力に
   よるものなのかを。まあ、向こうでの警護者の力は伊達ではなかったから、そこそこやれる
   とは思われる。

    ・・・それに、ここに飛ばされたのは、何らかの意味があるのだろう。今はそう自分に言い
   聞かせるしかない・・・。



    どれぐらい草原を歩いただろうか。そこそこ深い窪みになっている場所で、地面に倒れ込ん
   でいる人物がいた。しかも1人ではなく複数規模だ。更にこれ、全員が女性のようである。

ミスターT「・・・大丈夫か?」
女性2「・・・話し掛けないで下さい、連中に見付かります・・・。」
    何かに追われていると思い、自分も彼女達の近場にしゃがみ込む。各種ペンダントの効果に
   念話という力があるが、これは敵対者などを感知する能力も備わっている。確かに敵対者と
   思われる反応が感じられた。
女性1「・・・と言うか貴方、連中に見付からなかったのですか?」
ミスターT「連中? ・・・ちょっと待っててな。」
   話を中断し、窪みから右手のマデュース改を出していく。大盾側の先端は反射鏡が搭載されて
   おり、依頼時はそこから部屋などを探る事をしていた。幸いにも曇天だったため、太陽光の
   反射はしていない。そして、反射鏡にはかなりの数の動く物体が映っていた。

    ちなみに、俺の言動に驚愕しだす女性陣。ただ、声を出しては発見されるからか、黙って
   俺の行動を見つめていた。多分これは、俺が持つ兵装と、その行動自体に驚いたのだろう。
   見た目からしてクレイジー極まりないしな。

ミスターT「確かに何かいるが・・・アレは何だ?」
女性1「・・・ゴブリンの群れです。私達は討伐に赴いたのですが・・・あの規模だと、勝ち目が
    ありません・・・。」
ミスターT「去るまでやり過ごす形か。」
    なるほど、様子見という感じだろう。女性陣の武装を見る限り、ファンタジー世界では在り
   来たりな軽装備を持っている。かく言う俺も軽装備なのだが、警護者特有の超重装備なのは
   ご愛嬌だろうか。
ミスターT「・・・そのゴブリンの単体戦闘力がどのぐらいかは不明だが、お前さん達が4人1組の
      カルテットを組めば問題ないだろうに。」
女性3「む・・無茶言わないで下さい・・・。ゴブリンは見た目に反して、非常にすばしっこくて、
    直ぐに囲まれてしまいます・・・。」
女性2「それに・・・連中は女性を・・・。」
ミスターT「・・・その類のカスになるのか、これだから野郎は・・・。」
   女性が語った内容に怒りが湧いてくる。人間であろうが魔物であろうが、女性を慰めものの
   道具にしか思わない連中がいる事だ。女性が虐げられるのは、向こうでもこちらでも何処も
   同じという事だな・・・。

ミスターT「非常事態時の自己紹介申し訳ないが、俺はミスターTと言う。お前さん達には悪いかも
      知れないが、俺も加勢させて貰うよ。」
女性1「え・・・それは願ってもない事ですが・・・。」
ミスターT「ただし、1つだけお願いがある。連中を完全駆逐するのは、お前さん達の役割だ。俺は
      “完全なサポート”に回るから、思う存分暴れてくれ。」
    うーむ、デュヴィジェが新たに開発した能力が役に立つ時が来るとは・・・。まあ、今は
   その恩恵に与るしかない。

    ペンダントの1つに力を込めると、その場にいる女性陣の身体が淡く光りだす。それに驚き
   だす彼女達。これで後方の憂いは絶対的に絶てるだろう。

女性2「こ・・これは・・・防御魔法・・・。」
ミスターT「んー、魔法じゃないんだが・・・。まあ、今はカス共を屠るとしますかね。」
    その場の女性陣の防御が完璧になったのを確認し、俺は堂々と窪みから出て行く。それに
   驚く彼女達だが、怖ず怖ずと言った感じで付いて来た。まあ、その怖ず怖ずが驚愕の表情に
   変わるのは目に見えているが・・・。


    窪みから現れた俺達に、徒党を組んでいたゴブリン達が殺気立つ。特に女性陣を見た連中の
   顔はまあ・・・野郎の俺でも腹が立って来るほどの醜態さだ・・・。

    対して女性陣は、相手の戦闘力を把握しているためか、俺の近場から離れようとしない。
   まあ、俺が持つ3つのマデュース改が大盾なのを知ったためか、防御策として使うようだ。

    後手に回っている姿を見て、攻めに転じてくるゴブリン達。俺もマデュース改を構え、防御
   の姿勢を展開する。そこに複数の女性陣が身を隠していた。

ミスターT「あー・・・攻めに転じても全く問題ないんだが・・・。」
女性3「ご冗談を! 貴方が掛けてくれた防御魔法の効果は不明ですが、連中の姑息な立ち振る舞い
    には為す術がありません!」
ミスターT「そ・・そうか・・・。」
    物凄い真顔で詰め寄る女性陣に、ゴブリン以上の怖さを感じてしまう。だが、完全な恐怖
   には支配されていない様子だ。彼女が言う様に、本当に様子見をしていると取れる。

    そうこうしているうちに、ゴブリン達が俺達を取り囲んで来る。複数が先陣を切り、こちら
   に攻撃を加えて来た。そのうちの1匹が女性陣に肉薄し、手に持つナイフで斬り付けて来た。

    斬り付けが放たれたのをガードした女性だが、そこに別の1匹が突き刺し攻撃をしてくる。
   流石に隙がない一撃だったため、それを足に受けてしまう筈だった。

    しかし、ゴブリンのその攻撃は弾き返され、相手の武器を圧し折ってしまう。当然ながら、
   女性の肉体へのダメージは一切皆無だ。それを見た女性陣は驚愕している。

女性1「?! ええっ?!」
ミスターT「だから言っただろうに・・・。」
女性2「こ・・これならっ!」
    攻撃自体が無力化されている事を知った他の女性陣。肉薄したゴブリン2匹に集団攻撃を
   開始し出した。まるで獲物に襲い掛かるカラスの集団の如く、である。
ミスターT「お前さん達が認知する、防御魔法とやらに近いのか不明なのだが、物理攻撃も火炎など
      の魔法的攻撃も一切受け付けんよ。だから、全て叩き潰してしまえ。」
   態とらしくニヤケ顔で微笑んで見せると、それに恐怖の表情を浮かべる彼女達。だが、自分達
   への防御効果がズバ抜けているを窺ったからか、凄まじい勢いで行動を開始していった。

    女性陣は丁度10人おり、その中から4人1組となって反撃を開始しだす。残りの2人は
   俺の背中を守ってくれるようだ。

ミスターT「すまんな。」
女性3「お気になさらずに。ここまでしてくれたのですから、貴方を守らねばレディガードの名が
    廃ります。」
ミスターT「なるほど・・・。」
    彼女達はレディガードという集まりらしい。防備からして、まだ駆け出しの面々といった
   ところだろうか。しかし、その戦い振りを見る限り、とても初心者とは思えない。
女性4「お役に立てて見せます!」
ミスターT「ハハッ、身内の女性陣を思い出すわ・・・。」
   トリプルマデュースシールドを展開しつつ、背中を守る2人が攻撃を開始し出した。俺は2つ
   の大盾を上手い具合に動かし、彼女達に迫るゴブリンの一撃から身を守っていく。その俺達の
   死角を狙って襲い掛かるゴブリン達もいたが、人工腕部の大盾がそれを弾いていった。

    そもそも、この人工腕部は俺の脳波と連動しており、更に各種ペンダント効果による広範囲
   生体レーダーで自動迎撃すらしてくれるのだ。デュヴィジェ達5大宇宙種族が基本力となる、
   生命体の感知力はここに凝縮されているのだから。

    しかし、5大宇宙種族か・・・。現実世界でも逸脱した戦闘力とその技術力には呆れ返って
   いたが、ここ異世界らしい世界でも化け物的な能力を発揮してくれている。女性陣に集団で
   襲い掛かるゴブリンの一撃を、全て完全無力化しているのだから・・・。

    中半へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る