アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第3話 大都会の喧騒3〜
    翌日からは、団体での行動を開始した。妹達10人にメカドッグ嬢達10人、合計20人の
   冒険者軍団となる。更に護衛としてミツキTがおり、裏では10人のヒドゥン・メカドッグ
   嬢達が待機中だ。

    俺の方は単騎でも問題なく動けるため、オブザーバー的に動く事にした。今は彼女達の方が
   心配事の種でもある。まあ、ミツキT達がいるので、全く以て問題はないが。

ミツキ(ぬぅーん! 座標の特定ができたわぅー!)
ミスターT(へぇ・・・早かったな。)
    突然の念話に驚く。それは地球のミツキからであり、どうやら異世界たる惑星の特定が完了
   したようだ。
デュヴィジェ(ですが、まだ飛ばせるまでには至っていません。これ、結構な距離がありまして。)
ナツミA(下手をしたら、亜空間に飛び出す恐れがあるそうですよ。)
ミスターT(ワープ航法ですら難しい感じか、難儀だな。)
   ワープ航法は、先の黒いモヤ事変で実際に使った戦術だ。天の川銀河の端まで赴くのには、
   従来の航行速度では数百年や数千年掛かる恐れが出てくる。ワープ航法や転送装置での移動
   しか不可能となる。
ヘシュナ(まあでも、絶対的に不可能ではありませんからね。何とか解決させてみせますよ。)
ミスターT(アレだ、お前さん達も来たくてウズウズしているんだろうな。)
ミツキ(オフコースわぅ!)
   気迫で物語ってくる。念話を通してでも、異世界への興味が沸々と伝わってくる。しかし、
   一歩間違えば大変な事になりかねない。

ナセリス(そこは一切合切お任せを。警護者の端くれ、無様な醜態は曝しませんから。)
ヘシュナ(ですね。ただ、魔王と大魔王でしたか、相手が理不尽・不条理な展開を示すのなら、当方
     もそれなりの力を示しますけど。)
ミスターT(何となく読める、言わんでいいよ。)
    俺の言葉にニヤリと微笑むヘシュナとナセリス。念話を通して、その様相が伝わってきた。
   特にヘシュナは“場の力の出し加減の触り”を心得ているため、最大限の力を発揮する事が
   できる。帝王の如く振る舞うのが想像できた。
ミスターT(ところで、ルビナや三姉妹はどうした? 何時もなら食い付きそうな感じだが。)
デュヴィジェ(あー、何でも“来るべき時”に備えて獲物の作成中との事で。)
ミスターT(・・・なるほど、分かった。)
   間違いない、こちらに来た時に対応できる獲物の作成だろう・・・。地球でも四天王と共に
   数多くの獲物を作ってきた。今回は異世界用の特殊兵装を開発していると取れる。

ミスターT(しかしアレだ、魔法の概念はよく分からん。)
ヘシュナ(推測するに、生命力から繰り出されるのが魔力、と取れると思います。ミツキT様が一番
     ご理解されていると思いますよ。)
ミツキT(なるほど、この何とも言えない感覚はそれだったのですか。)
ミスターT(当の本人がアッケラカンとしてるのがな。)
    ヘシュナが言うそれは、ミツキTが精神体の生命体だからという事だろうな。しかし、当の
   本人はそれに疎いようである。確かに生前の彼女の雰囲気を踏まえると、魔法使いよりは戦士
   などが向いているとも取れる。
デュヴィジェ(推測ですが、ドラゴンハート一族とカルダオス一族でしか、魔法適正能力はないと
       思います。ギガンテス一族・ガードラント一族・デュネセア一族は、戦士系の家系
       とも取れますし。)
ナセリス(戦士系と言うより、超能力系とも取れますね。魔法の概念は超能力とは異なる感じだと
     推測できますし。)
ミスターT(お前さん達でも、魔法の概念には理解に苦しむ感じか。)
   地球人の俺やミツキTからして、デュヴィジェやヘシュナ達5大宇宙種族の概念は、とても
   理解できるものではない。その彼女達ですら、異世界の魔法の概念は理解し難いようだ。

    確実に分かるのは、魔法の概念は生命力に帰結している事だ。魔力自体も生命力から発する
   とも取れる。よく挙げられるのが禁呪法だろう。己の生命力を消費して、多大な魔力を引き
   出すというアレだ。

ミツキ(人体練成は禁じられている筈わぅ!)
ナツミA(何その某錬金術師の謳い文句。)
シルフィア(錬金術は魔法に近い感じだからねぇ。極め付けが賢者の石だし。)
ミツキ(野郎の石はないわぅか?!)
ナツミA(それ、実に嫌な石よね。)
    この美丈夫は・・・。何処からどうボケが出るのか分からない。しかし、その一撃は周りを
   爆笑させるには申し分ない威力のようだ。何ともまあ・・・。

    久方振りの念話だが、ホームベースとなる地球の感覚を補給できた感じだ・・・。



ミスターT「・・・人混みは好かんわ。」
ミツキT「まあまあ、そう仰らずに。」
    宿屋から移動後、冒険者ギルドへ入り浸りとなる。大都会の様相を知らないため、とにかく
   情報収拾も兼ねた行動が必要不可欠となった。
ミスターT「彼女達の気力を分けて欲しいものだわ・・・。」
ミツキT「若さですよね。」
ミスターT「若さ、ねぇ・・・。」
   掲示板を凝視し続けている妹達。前にいたシュリーベルより、各段に難易度がある依頼ばかり
   なので、慎重に吟味しているようだ。そんな彼女達をメカドッグ嬢達が付き従っている。隠密
   の如く、である。
ミスターT「他のメカドッグ嬢達はどうだ?」
ミツキT「情報収集に奔走中。目立ったものはなさそうですね。」
ミスターT「勇者共が横槍を入れて来ると警戒してたんだがな。」
   昨日の勇者共の言わば襲撃は、後の火種になると踏んでいた。しかし、実際に目立った横槍は
   なさそうである。何かあれば、一際感知能力があるメカドッグ嬢達が逃す訳がない。

ミツキT「もう20人ほど追加しますか?」
ミスターT「お前さんの身体に負担にならないのか?」
ミツキT「ご冗談を。既に死せる身ですよ。今は無限大の行動力を持つ精神体、死ぬ事すら許され
     ない状態ですし。」
ミスターT「ハハッ、そうだな。では頼むわ。」
    俺の言葉にニヤリと微笑むミツキT。精神体であるため、正に疲れ知らずの不死の存在だ。
   今の下りは彼女が生身の肉体と勘違いしたからだろうな。
ミツキT「・・・でも、そうしてご心配して下さって、本当にありがとうございます。」
ミスターT「気にしなさんな。あの様相を見てきたんだ、否が応でも気にしちまうしな。」
ミツキT「フフッ、そうでしたね。」
   サラッと言うそれだが、実際には筆舌し尽くし難い様相だった。だが、当の本人は、今の生命
   を横臥しているとも取れる。無粋な考えだろうな。

    有限実行のミツキT。先の20人のメカドッグ嬢達と同じ様に、追加で20人を創生して
   いく。彼女達は機械兵士の筐体がベースなため、プログラミングの応用で複製が可能らしい。
   これはミツキTやデュヴィジェが得意とする分野である。

    創生された追加のメカドッグ嬢達。当然精神体なため、一般的には認識できない。それを
   活かしての隠密部隊となる。先の10人は近辺の情報収集に、残りの20人は4人一組として
   異世界の情報収集に回って貰った。

ミスターT「これ、本来では有り得ない業物だわ。」
ミツキT「ですよね。各RPG作品では、手探り状態で旅路を繰り広げますし。敵側が裏方で暗躍
     しているのは、実際には察知ができませんから。」
ミスターT「だが、生命の次元に回帰したお前さんなら、全てを見通す事が可能とな。」
ミツキT「私に隠し事など不可能ですよ。遠方は魔王や大魔王の様相も、手に取るように分かります
     からね。」
    不気味に微笑むその姿に、流石としか言い様がなかった。この場合、言わば俺達はシステム
   面から関わっていると取れる。しかし、相手も生命体なため、その場での臨機応変の対応は
   健在だ。COMやNPCでは絶対に真似ができない手法だしな。
ミスターT「さて、そろそろ合流するか。」
ミツキT「何時も通りで動きますね。」
   掲示板前で暴れていた妹達が、1つの掲示を掴んで受け付けへと向かう。どうやら、今回の
   依頼のようだ。俺達は彼女達に付き添う形なので、依頼の内容の是非は問わない。

    今回の依頼は、大都会の北側に位置するダンジョン、ここの討伐クエストらしい。大都市の
   近くにダンジョンがあるとか、大丈夫なのかと思ったりするが・・・。

    某ゲームの場合だと、街の地下に大空洞的なダンジョンがあった。終盤では崩壊して大変な
   事になったが・・・。そして、それは主人公が行ったのだと、濡れ衣を着せられたが・・・。

    ともあれ、今は大都会の喧騒に慣れる事が優先だろう。騒がしさ以前に、その全ての規模が
   規格外に近い。こういった場合は慣れるに限る。



    既に上級者レベルではと思わされる妹達。大都会の北側のダンジョンには、ミノタウロスや
   各種魔物が巣食う場所だった。そんな様相を物ともせず、怒濤の如く蹴散らし進むのだ。

    また、今回からは狩人版メカドッグ嬢達も参戦するとあり、20人規模での大パーティーと
   なっている。全員がバリアとシールドの防御機構があるため、一切ダメージを受けていない。
   毒や麻痺のトラップなども全て無効化していた。実に恐ろしい限りである・・・。

    まあでも、良い傾向だと思うのが、バリアとシールドは保険という位置付けだ。相手の攻撃
   の殆ど全てを、回避ないし防御で防いでいる。保険に奢れる事なく、己の実力で勝ち進んで
   いる証拠だ。この部分は心から安心している。

    それと、一同には身丈に合った盾を装備して貰った。回避は誰でもできるが、防御は受ける
   物がなければ非常に厳しい。獲物でも受ける事ができるが、完全な防御とまではいかない。
   某ゲームでは、盾の性能が生き残りに大きく貢献している。不測の事態は避けるに限るわ。


ダリネム「自分は言うのも何ですが、大都会の近くにダンジョンとか、大丈夫なんですかね?」
ミスターT「大都会の領土内全域が、ダンジョンじゃないみたいだからな。ダンジョンの崩壊で上部
      も崩壊とまではならないだろう。それに、地理的に領土外にあるみたいだし。」
ジェイニー「不穏な空気はなさそうなので、大丈夫だと思われますよ。」
    ここ最近の戦いで、魔法使いとして腕前が上達しているジェニーにアクリス。更に魔法適正
   がないとされていた、アーシストとダリネムも魔法使いの力を持っている事が判明した。
キャイス「私達も簡単な魔法が使えるようになりましたからね。」
メラエア「剣士や戦士だと、魔法は使い難い傾向にあるのにね。」
ミスターT「定められた概念なんぞ、己の実力で覆してしまえばいいだけの事よ。」
   吐き捨てるようにボヤいて見せた。本当にそう思うわ。

    魔法は魔法使いや僧侶などの、魔法が使える人物にしかできないという。俺はこういった
   概念が非常に気に食わない。誰でも努力さえすれば、それなりの魔法は使えるようになると
   思われる。規模の問題ではプロとアマとの差はデカくなるが、それでも誰にでも道が拓けても
   良い筈だ。

アーシスト「ミスターTさんと姉さんは、魔法が使えないみたいですけど。」
ミスターT「魔法の魔の字すら分からんよ。」
ミツキT「ですねぇ。まあでも、私達は特殊能力があるので、大して気になりませんが。」
    迫り来る魔物を超能力で停止させたり、電撃を飛ばして麻痺させたりしてみせるミツキT。
   これは俺にもできる業物だが、端から見れば魔法を使っているように見えるだろう。
ルマリネ「そう言えば以前、シュリーベルでエネルギーを放っていましたが、アレは何なのです?」
ミスターT「あー、レールガンか。俺達の世界では、5大宇宙種族が必殺兵器の1つよ。実弾の弾丸
      を電磁加速させて射出させるものと、エネルギー自体を電磁加速させて射出させるもの
      がある。あの時のは後者になるね。」
ファイサ「アレだけでも、十分魔法能力と言い切れるのですけど・・・。」
ミスターT「科学の力だがの。」
   俺やミツキTが魔法の概念を理解できないのと同様に、妹達は科学の概念を理解できていない
   様子だ。根本的に概念自体が異なるため、理解しようにもし難いだろう。まあ、この異世界
   では特効兵器なのは言うまでもない。
ネルビア「その力ですが、魔王軍からすれば喉から手が出るほどに欲しがりそうですよね。」
ミスターT「そうだな。でも、これら力だが、自身が持つ生命力に少しでもマイナス傾向の一念が
      あれば、使う事すらできないのよ。こちらの世界で以前、悪党がその力を使おうと躍起
      になっていたが、最後まで使う事ができなかった。」
ミツキT「生命の次元からして、プラスかマイナスか、善か悪かの一念を察知する。それにより、
     各種力を使えるかどうかを判別している。5大宇宙種族のテクノロジーは超大ですが、
     それ相応のストッパーがありますからね。」
カネッド「ある意味、身丈に合った服を着ろ、でしょうかね。」
ミスターT「ほむ、良い事を言うじゃないか。」
   傍らにいるカネッドの頭をポンポン叩く。それに呆気に取られるが、嬉しそうにしている。
   実際に意味合いは異なってはいるが、自分に合った力を使えという意味合いは実に正しい。

ミスターT「身内に語った事がある。特殊能力などを経ても、胡座を掻くなと何度も戒めている。
      それらに胡座を掻けば、努力する事をしなくなるのが人間だ。」
アクリス「楽して進め、それが人間の堕落した姿になりますからね。」
ミスターT「何度も言っているが、バリアとシールドに関しては、余り過信はし過ぎるなとな。」
ジェイニー「本当にそうですね。」
    妹達に口煩く言っている、バリアとシールドの防御機構に関してのそれだ。これに慣れ過ぎ
   ると、防御や回避が疎かになってくる。地球での各種依頼時でも、同じ様に防御状態は維持
   し続けていたが、それでも全弾回避などの行動は心懸けていた。
ミスターT「まあでも、力があるのに使わないのは愚かだ。要はそれらをどう使い続けるか、ここが
      重要になるしな。」
カネッド「大丈夫っすよ。そこまで私達は腐ってはいません。補佐してくれるだけで十分です。」
   カネッドの言葉で他の妹達がウンウン頷いている。常に精進し続けるその姿勢は、俺も見習わ
   なければならないものだ。肝に銘じておかねばな。


    その後もダンジョン探索は続く。討伐対象の魔物以外にも、可能な限りの魔物を撃破して
   回っていった。言わばレベルアップである。枯渇しなくならないかと心配になるが、そこは
   大丈夫のようだ。

    これだけの下積みを経ているのだ、彼女達の戦闘力は相当なものになるだろう。それでも、
   修行する姿勢は一切崩さない。これこそが強者への最短ルートである。

    地球はトラガンの女性陣も、常に鍛錬を怠らなかったな。自分達でチームを組み、集団戦闘
   を何度も繰り返していた。この姿勢は妹達と全く変わらない。故に強者達と言われるように
   なったのだから。

    何時の時代も女性の底力は凄まじいものだ。そして何度も思うが、野郎の時代は終わりを
   迎えたに等しい。女性が輝いてこその世上であろう。野郎の俺が言うのも何だが、女尊男卑
   であると言い切りたいわ。

    第4話へ続く。

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