アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第4話 襲撃と召集1〜
    シュリーベル街から大都会カルーティアスに移動し、新たな天地での修行を繰り返す俺達。
   専ら妹達が先陣を切っているのだが、その姿勢は他の冒険者達に一切引けを取らなくなって
   いる。むしろ、率先垂範する姿は模範とも言えるようになっているらしい。

    街の方でも下積み時代は長く、基礎知識力は目覚ましい成長を遂げている。諸々の防御機構
   はあるものの、それに奢らず突き進んでいた。同時に、その生き様は他の冒険者に目立つよう
   になってきている。顕著なのが、例の勇者共だ。

    元は貴族のボンボンの集まりともあり、横槍の頻度が増している。これは他の冒険者にも
   同じ様子で、連中の評価は相当悪いようだ。まあ当然だろう。それでも、権力に物を言わせる
   横暴は防ぎ難い事もあり、総意は相当参っているようだ。

    同時に、魔王軍の侵攻も徐々に増加傾向にある。まさかとは思うが、一応の警戒はしておく
   必要がありそうだ。



ミスターT(さて・・・どうしたものか。)
ミツキT(様子見といきたい所ですが、難しいかも知れませんね。)
    俺とミツキTは、妹達とは別行動を取っている。今は彼女達だけで討伐クエストに赴いて
   いるのだが、一応のバリアとシールドの防御機構を施してあるため大丈夫だとは思われる。
   現段階での問題は、勇者共の横暴をどうするかで対策中だ。
ミツキT(この異世界だと、貴族の力が相当強いみたいですからね。連中がデカい顔ができるのも
     十分肯けます。)
ミスターT(地球での中世でも、貴族や元老院などが幅を利かせた時期があったしな。何処も彼処も
      同じ様相だわ。)
   地球とは異なる異世界たる惑星でも、その人間模様は全く同じと言える。もはやこれは生命に
   巣食う魔物とも取れるだろう。まだ魔王軍の方がマシに見えてくるわ。
ミツキT(最悪、魔王軍と手を結ぶ可能性が出てきますが。)
ミスターT(その場合は、問答無用で叩き潰せる理由ができる。問題があるとすれば、連中に同調
      する人間が出るかどうかだ。)
ミツキT(冒険者全体を敵に回す恐れが出てきますからね。)
   この手の問題は、相手が出そうな行動を全て予測しておかねばならない。地球での警護者の
   行動時でもそうだった。油断すれば、それは即敗北を意味し、最悪は死へと繋がる。

    今は大都会の酒場、屋上カフェテラスで雑談中だ。とは言うものの、ミツキTは道具類の
   調整をしつつ、俺は獲物の調整をしつつの状態である。会話は念話で行っている。聞かれては
   マズい内容が多々あるしな。

    この屋上カフェテラスなら、ほぼ大都会を一望できる。ここは木造建築とはいえ、3階建て
   の物件だ。地球での俺達の拠点とほぼ同じ感じである。

ミスターT(・・・妹達も念話ができるようにするか。)
ミツキT(そうですね、その方が良いかも知れません。ただ、私達の力は超絶的に逸脱したもの。
     余り表立って出したくはありませんけど。)
ミスターT(一部では、バリアとシールドの防御機構はバレているだろう。今更隠し立てしても、
      善悪判断レーダーの前では使用できるかどうか分かれてくる。)
    5大宇宙種族が力は、個人の生命力によって使い勝手が変わってくる。特に悪人は無論、
   悪心を少しでも持つ人物は、絶対に扱えない代物だ。これは遺伝子レベルを超越しており、
   生命の次元での解釈となるため、どんなに見繕っても使えない者は絶対に使えない。
ミツキT(一応、私に用いているような、遠方支援機構タイプにすれば大丈夫だと思います。)
ミスターT(指定人物に付与する感じか、それならペンダントを持たせなくても大丈夫か。)
ミツキT(悪い言い回しながらも、あの娘達は信用しても大丈夫です。どの道、バリアとシールドが
     可能な時点で、善悪判断レーダーはプラス面を向いていますし。)
ミスターT(元からその流れだった、という訳か。)
   懸念を語るミツキTだが、既にそれを覆す結果が出ている。ゴブリン共を撃滅する前の、彼女
   達と出逢った時の流れだ。もし彼女達に悪心があったのなら、バリアとシールドの防御機構は
   一切付与されなかっただろう。

    妹達を疑いたくはないが、警護者たる存在なら、調停者と裁定者という役割は徹底的に担う
   必要がある。これは地球での概念ではあるが、ここ異世界でも同じく通用する。いや、俺達の
   力が超絶的である以上、それを通用させないと破滅をもたらしてしまう。

    一介の警護者という存在で、更に力を持たぬ状態でこの異世界に到来していたら話は別で
   あっただろう。だが今は各種ペンダント効果による、言わば神に近い力を持つに至っている。
   故に、調停者と裁定者を担わなければならなくなったのだから。

    実に烏滸がましい限りだが、それが現実なのだ。ここだけは曲げてはならない。


ミスターT(お嬢様方、聞こえるかい?)
ジェイニー(ほぇっ?!)
ミツキT(萌え応対来ましたねぇ〜。)
    遠方は討伐クエスト中の妹達に念話を飛ばす。すると、ジェイニーが絶対に言わなさそうな
   声色で応対してきた。ミツキTが言う通り、萌え的な返しである。
キャイス(な・・・何ですかこれ・・・。)
ミスターT(バリアとシールド以外の業物、意思の疎通たる念話よ。お前さん達の生命に直接語り
      掛けている。)
アクリス(・・・もしかして、以前仰っていたものですか?)
ミスターT(薄々気付いていたのか、やりおるわ。)
   俺とミツキTが念話での会話をしているのを、どうやらアクリスは気付いていたようである。
   しかし、その雰囲気からして確証が掴めているものではないらしい。
アクリス(いえ、今思われた通り、貴方の気質からそう思っているのではと。)
ミスターT(はぁ・・・お前さんにも見抜かれるぐらいのダダ洩れか・・・。)
ミツキT(やりますねぇ・・・。)
   俺が地球にいる時の念話での会話は、場合によっては内容がダダ洩れする事があった。精神力
   の問題だと身内は言っていたが、最近はそれが特に酷くなっている。それを、ペンダント効果
   がないアクリスは察知していたようなのだ。
ダリネム(アクリスは霊感が強いので、恐らくその関係じゃないですかね。)
メラエア(霊感と念話が同じ類ですか・・・。)
ミスターT(新たな発見を得られた感じだわ。)
   10人の中で、アクリスとジェイニーは相当強い魔力を持っている。その中で、アクリスが
   一際高い魔力持ちだ。裏を返せば、霊感も強まっているとも思える。故に、念話を感じ取れた
   と言えるかも知れない。

アクリス(と言うか、大丈夫なのでしょうか? バリアとシールドの力はまだしも、念話まで使わ
     れるのは問題があるかと。)
ミスターT(大丈夫だから使ってるんだけどね。そもそも、バリアとシールドが利いた時点で、お前
      さん達は限りなく善寄りだ。少しでも悪心があれば、使う事すらできないしな。)
ジェイニー(そうでしたか。信頼して下さって、ありがとうございます。)
ミツキT(お礼なら、皆様方の胸中にある生き様に感謝してあげて下さい。常日頃から心懸けねば、
     今の境涯には絶対に至れませんから。)
    ミツキTの言う通りだろう。彼女達は常日頃から善心を心懸けていたのは明白だ。上辺の
   悪態などはあれど、それ自体は全く害をなさない。この姿勢なら、間違いなく真の勇者とも
   言い切れる。
ネルビア(勇者だなんて、恐れ多い事この上なしです。私達は私達の進むべき道を進むのみですし。
     勇者の役割は他の方々にお任せします。)
カネッド(うちらは傭兵家業の方が性分に合ってるからねぇ〜。)
ミスターT(ハハッ、何処までもじゃじゃ馬娘の気概か、流石だわな。)
   俺の言葉に殺気の目線を投げ掛けてくる妹達。その一念を感じるぐらいである、彼女達の善心
   は確実なものだろう。

ミツキT(まあ、小父様の茶化しはともあれ、今後の非常会話は念話を行いましょう。少々問題も
     出てきていますので。)
ファイサ(・・・勇者共の愚行ですか。)
ルマリネ(あの阿呆共・・・。)
    ミツキTの一言で、何故念話を使い出したかを察知してくれた。それだけ、初対面時のあの
   言動からして、勇者共が大問題となるのは明白だった証拠だ。彼女達の怒りの一念が、念話を
   通して感じられる。
ミスターT(今は大丈夫だが、何れ何らかの横槍は入るだろう。メカドッグ嬢達が仕入れた情報で、
      連中の執念深さは相当なものなのが分かっている。)
アーシスト(何処まで他人を困らせる存在なのですかね・・・。)
キャイス(アレで勇者とか話にならないわ・・・。)
   怒り心頭の妹達。今までは外面からしか雰囲気を察する事ができなかった。しかし、念話を
   通してだと凄まじい怒りの一念が感じられた。
メラエア(シュリーベルの方に、要らぬ横槍が入るか心配ですが。)
ミスターT(何処まで突っ込んでくるかは不明だが、その場合は俺が動くよ。相手が敵だと分かった
      のなら、一切の容赦はしない。)
ミツキT(はぁ・・・小父様のその一念、全く以て変わりませんよね。)
ミスターT(ふん、言ってろ。)
   怒りの一念以外に、不安の一念も抱いている妹達。その彼女達を安心させるために、少し態と
   悪役を演じてみた。それに直ぐに応じてくれるミツキT。ボケとツッコミに近い様相に、妹達
   が小さく笑っている。

ミツキT(とにもかくにも、今は皆様方は力を付け続けて下さい。相手を一撃の下に叩き伏せられる
     ぐらいに。)
ネルビア(それは良いのですが・・・。)
ミスターT(・・・自分達も、悪道に堕ちてしまうかも知れない、か?)
    通常会話から念話に変えた事で、彼女達の胸中が直ぐさま察知できるようになる。表向きは
   強がっていようが、胸中では不安の色が状態だ。特に俺が一番心配している一念を、念話に
   より逆察知したのが現状だろう。
ミスターT(誰もがその道に堕ちる可能性は十分ある。曲がり違えば、あの勇者共も善道に進んで
      いたかも知れない。だが、現実は容赦がない。)
ミツキT(もし、皆様方が悪道に陥る事があれば、その時は全力を以て阻止しますよ。それでも無理
     な場合は・・・フッフッフッ。)
   念話を通して強烈な殺気と闘気を放つミツキT。それは遠方の妹達に襲来し、この上ない恐怖
   に襲われているのが感じ取れた。この戒めの一撃を放つ場合、流石は女性力と言うしかない。
ミツキT(大丈夫ですよ、私達がいます。後方の憂いは全て断ち切りますので、皆様方は先に進む事
     だけを考えて下さい。何処の馬の骨とも分からぬ輩に、私の大切な娘達には指一本触れ
     させません。)
ミスターT(大いに同意するわ。一切合切心配しなさんな。)
   ミツキTと俺の決意に、妹達が涙を流す一念が感じ取れる。先にも思ったが、自分達が悪道に
   堕ちる事が不安で仕方がなかったようだ。

    誰かが間違った流れを戒め、その道を正す必要がある。実に烏滸がましいが、それが俺に
   適任なら徹底的に演じてやるわ。


    その後、別行動をするようになってからは、念話を常用するようになった。大都会には俺と
   ミツキTが駐留し、討伐クエストなどの依頼は妹達だけで挑むようになる。念話という目には
   見えない場所からの支援が、彼女達を精神面から支えている証拠となる。

    これは地球での各依頼時もそれで、終盤は専ら念話を使う事が多かった。無線装置などを
   使っての通話はあるが、敵方に傍受される恐れもある。しかし、念話は時間や空間を超越し、
   リアルタイムにその声色を相手の生命に語り掛ける。

    一度試したら病み付きになる、本当にそう思わざろう得ない。5大宇宙種族の力は、強烈な
   魔酒そのものである。



    念話を開始してからの依頼は、正に破竹の勢いになった。意思の疎通たる念話は、文字通り
   言葉を交わさず相手に思いが伝わる。それは連携に最適であり、最強のコミュニケーション
   ツールである。

    凄まじい勢いで討伐クエストを繰り返す妹達は、ここでも注目の的となっていった。当然、
   それは良い方にも悪い方にも至っているようだ。

カネッド「冒険者ランクがCからBにアップしましたよ。」
ミスターT「やりおるわ・・・。」
    心では嬉しい一念を抱いているも、外面では淡々と語るカネッド。妹達の念話への適応能力
   は凄まじく、俺やミツキTの方も十二分にその恩恵を与れるに至っている。そして、それに
   奢る事を一切見せない。これが下積み時代を経ずに至っていたら、天狗状態になっていたと
   思われる。
ミツキT「各々のレベルが数値化できれば楽なのですがね。」
ダリネム「例のステータスのアレでしたか。」
ミスターT「ここはゲームの世界じゃないからな。何処まで成長したとか、それらは各々の力量で
      見極めていくしかない。ここまで強くなったんだ、絶対に奢りなさんなよ。」
キャイス「愚問ですよ。」
   自分達を見縊るなと、外面でも内面でも語る妹達。隠し立てができなくなった現状だが、逆に
   以前よりも遥かに強くなったとも見て取れる。

ミスターT「そう言えば、最終的なランクはSだったか。」
ネルビア「正に冒険者の極地ですよね。」
ミスターT「ランク制度ねぇ・・・あの作品を思いだすわ・・・。」
ミツキT「あー、ロボットを操る傭兵のアレですか。」
ミスターT「ランク制度は懲り懲りよ・・・。」
    ボソッと語った内容に、食い付いて来るミツキT。黒いモヤ事変が終わった後に嗜んだ、
   とあるゲームの内容だ。
ミスターT「それ以前のシリーズなら、ランク制度なんかなかったのに。」
ミツキT「各作品は極めの段階に至ると、要らぬ要素を詰め込み過ぎだしますからね。最悪はそれで
     バランスを崩し、衰退する事もザラですし。」
アクリス「もしかして、貴方が冒険者ランクをFのままで止めているのは・・・。」
ミスターT「やり出したら最後、終着点を目指すから嫌なのよ。」
ジェイニー「そ・・そうでしたか・・・。」
   地球での話に呆気に取られているが、俺が冒険者ランクを上げない事がそこであると気付いた
   彼女達。今度は別の意味で呆気に取られている。
ファイサ「姉さんもランクFのままですよね。」
ミツキT「ん? ランクなんざ眼中にありませんが何か?」
ルマリネ「はぁ・・・。」
   今度はミツキTに問い掛けるも、俺と同じ回答であったために呆れ返っている。特に彼女は
   ゲームを自由に楽しむ事を信条としているため、極める事は一切しない。ここは俺と同じ気質
   である。
アーシスト「ただ、今は冒険者ランクが低いと、舐められる可能性が出てくるのですけど。」
ミスターT「その場合は、実力での一騎打ちをしてやるわ。」
ミツキT「同じく。ただ、それ以外では穏便に済ませますです、はい。」
   ミツキTの言葉に爆笑する妹達。元来から茶目っ気もある彼女なため、こうした少しでも周り
   を笑わせようとする姿勢は健在だ。ここはミツキと全く変わらない。

    中半へと続く。

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