アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第7話 愚者の考え1〜
    工業都市デハラードに現れた魔王軍とその本人。何とか退ける事ができたが、待機型の人物
   ではない事を痛感させられた。何時何処で魔王決戦や大魔王決戦が起きてもおかしくない。
   それに、相手は様子見で訪れただけで、本気を出していなかった。

    ありとあらゆる手立てを考えねばならないが、実際には一歩ずつ前に進むしかないだろう。
   それに、俺個人では相手を瞬殺できようとも、それでは全く以て意味をなさない。この異世界
   の住人達が何とかしなければならないからだ。

    魔王や大魔王の本当の考えまでは読めないが、唯一言えるのは絶対悪だとは考え難い事だ。
   悪の権化身的な存在ではあるが、何か特別な考えを抱いているのは間違いない。それがこちら
   側にとって、プラスとなるのかマイナスとなるのか。そこが重要だろう。



ヘシュナ(ふむ・・・これは・・・。)
デュヴィジェ(なるほど・・・。)
    念話を通して、俺の脳裏を読むヘシュナ。遥か遠方にありながらも、彼女の特殊能力が発揮
   されるのは驚くしかない。それは、ほぼ同様の力を持つデュヴィジェもしかり。
デュヴィジェ(オルドラ様の推測と、魔王様の様相からして、彼女は恐らく宇宙種族の可能性が高い
       ですね。)
ミスターT(やはりそうか・・・。)
   先読みのスペシャリストたるデュヴィジェの言葉に、魔王の頭を軽く叩いた時を思い巡らす。
   あの時に感じた親近感は、5大宇宙種族と同じ感じだった。つまり、宇宙種族という事だ。
ヘシュナ(となると、何らかの要因により、魔王や大魔王を演じなければならなくなった、と。)
デュヴィジェ(十中八九、そうなりますね。それに、魔力や魔法の概念は、それに近しい力を出す
       事はできます。ルビナ様方の電撃力や、ヘシュナ小母様の治癒力もそれです。)
ナセリス(治癒力も過剰的に放つと、破壊をもたらしますからね。良い例としては、植物に水分を
     あげ過ぎると、枯らしてしまうのがそれです。)
ミスターT(対アンデットには特効薬そのものなんだがな。)
   治癒力はプラス面の力の究極体なだけに、不死の存在には超絶的に効果がある。ゲームで有名
   な所だと、回復魔法がアンデットにはダメージとして入るアレだ。

デュヴィジェ(極め付けは、魔王様が殺気と闘気の心当てに、完全に屈しなかった事でしょうか。)
ミスターT(いや、あの時のそれなんだが・・・比較がな・・・。)
ヘシュナ(マッチ棒の火力が魔王様で、太陽の火力がマスターと。超絶的な差ですよね。)
    呆れの雰囲気を感じずにはいられない。全力ではない魔王でも、その魔力は相当なものと
   なる。それがマッチ棒の火力となれば、一息に吹き消せる感じである。
ナセリス(まあ、お2人方も全力を出していないので、大凡の対比でしょうかね。貴方の全力は、
     天の川銀河に匹敵する黒いモヤを瞬殺する程ですし。)
デュヴィジェ(射手座エースターでしたか、天の川銀河の中心のブラックホール。太陽よりも遥かに
       凄まじい力を誇りますが、黒いモヤはそれをも軽く呑み込み消滅させますからね。)
ミスターT(その、変人を見る目は勘弁願いたいが・・・。)
ヘシュナ(役得じゃないのですか?)
   何ともまあ・・・。つまり、俺の戦闘力は、この異世界のレベルの範疇を超越しているという
   事になる。魔王や大魔王ですら話にならないというものだ。

    そして痛感した。殺気と闘気の心当てを除けば、俺の戦闘力は並である。身内の戦闘力の
   方が遥かに凄まじいのだ。特に5大宇宙種族の力量は、地球の人間たる俺には、到底敵わぬ
   領域となる。比較する事すら恐れ多いだろう。

ヘシュナ(何を仰るのやら・・・。)
ナセリス(本気でそう思っているのでしたら、逆に馬鹿にされている感じになりますけど・・・。)
デュヴィジェ(小父様や貴方の盟友方は、生命力の次元では私達を遥かに超越していますよ。種族の
       部分でしか、優劣が発生してきませんし。)
ミスターT(はぁ・・・そうですか・・・。)
    物凄く怒り気味に語ってくる。これは彼女達に何度も挙げられた概念だ。種族面での力では
   なく、生命力の次元での比較となる。
ヘシュナ(特にミツキ様の力の前には・・・。)
ミツキ(呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!)
   ・・・何とも。出番を窺っていた様子だろうか。その突拍子な様相を見て、周りの面々が笑い
   を堪えているようだ。この美丈夫の力は恐ろしいものだわ・・・。
ミツキ(冗談わぅ。ともあれ、そちらのレベルに合わせた動きをしないとマズいですよね。)
ミスターT(相当手加減をしないと危ないと思う。下手をしたら、俺達の力で異世界を簡単に破壊
      しかねない。)
ミツキ(地球と異世界惑星のレベル差というより、私達の戦闘力の差とも言えますし。)
デュヴィジェ(不測の事態に備えての、バリアとシールドの防御機構だけに留めるのが無難かと。)
ミツキ(ギガンテス一族は超怪力の効果、これは止めた方が良さそうです。)
   今までの様相を窺いつつ、現状の力加減を読み出す一同。ここまでの力量の差があるとは、
   到底思いもしなかった。現状の現地人、その中の最強の存在に近い魔王の実力で窺い知れた
   感じである。


ミツキ(そうわぅそうわぅ、ついにっ!)
ミスターT(・・・座標軸が確定できたのか。)
デュヴィジェ(ラフィナ様の妙案ですよ。)
    物凄く嬉しそうな雰囲気の面々。先のエリシェとラフィナとの念話後に、この技術が確定
   されたようだ。つまり、何時でもこちらに増援を派遣可能という事になる。
ミツキ(トランジットはどう・・・げふんげふん。)
ミスターT(あー・・・応用法は分かった、言わんでいい。)
ミツキ(さらば〜ちきゅ〜・・・むぐっ?!)
ナツミA(いい加減止めなさいな。)
   案の定な展開だ・・・。常にネタを披露するミツキとしては、その中に地球の用語が絡む。
   専門用語的に言えば、著作権の問題だろう。それを押し留めたナツミAは見事である。何とも
   まあ・・・。
ナツミA(まあ何ですか、その手法でそちらの座標軸が確定した訳でして。)
シルフィア(君とミツキTさんの生命反応を、例の手法で特定した感じなのよね。ラフィナさんが
      その手法を持ち掛けるまでは、異世界の惑星自体を探索し続けていたし。)
デュヴィジェ(ラフィナ様とエリシェ様のお力には脱帽しますよ。)
   ヲタクのパワーが炸裂、か。大企業連合の総帥に総帥補佐を担う2人が、裏ではヲタク気質
   全開である。その重役がなければ、普通の女性として過ごせていたのだろうな。

シルフィア(とりあえず、近々誰か送ってみるわね。それで更に座標軸が確定し、広げても安定する
      のなら、大規模な投入も可能になるし。)
ミスターT(・・・一応述べるが、何を送ろうとしているのかは一切感知しない・・・。)
ミツキ(ウッヘッヘッヘッヘッ♪)
    俺の言葉に、凄まじいまでのニヤケ顔のミツキに、不気味な雰囲気の笑いをしている面々。
   念話を通しても感じるその迫力は、それだけで異世界を破壊しかねない超大なものである。
   本当に大丈夫なのかこれは・・・。

    ともあれ、今の流れからして、異世界惑星への転送装置での移動は確立したと思われる。
   最初は数人を派遣してくると思われるが、その後の流れは感知しないでおく・・・。

    調停者と裁定者の役割は、しっかり担って欲しいものだが・・・。



    念話を終えて、工業都市へと意識を戻す。先の魔王到来から数日が経過し、普通的な生活を
   送っている。とは言うものの、実際には工業都市の警備が本命となっている。

    魔王を退けたという事から、冒険者ギルド・自警団・騎士団からの強い要請で、工業都市の
   臨時の警備隊長を任されてしまった。隊員は妹達全員と、メカドッグ嬢達全員である。まあ、
   あの魔王の言動からして、再度の到来はないと思える。

    そして、不測の事態が当たった感じになる。第3勢力の台頭だ。

ミスターT「人間が嫌いになりそうだわ・・・。」
ミツキT「ハハッ、確か地球でも同じ事を仰ってましたよね。」
    街中の警護と共に、美化の貢献にも一役買って出る。デハラードは工業都市という事から、
   非常に殺伐とした様相となっている。そこで、ゴミ拾いから始まり、植物を埋めていった。
   これらの出費は、オルドラが全額担ってくれた。
カネッド「片や街の美化に貢献する人間、片や裏で暗躍する人間。私も嫌いになりそうですわ。」
ダリネム「連中の方が魔物そのものですよ。」
   人の闇を垣間見て、愚痴をこぼすカネッドとダリネム。ちなみに、妹達とメカドッグ嬢達も、
   街の美化に貢献してくれている。工業都市自体の警備は、ヒドゥン状態のメカドッグ嬢部隊に
   任せてある。
エメリナ「王城の非常事態宣言は、独自に軍備を拡張するのが目に見えています。ここへの魔王到来
     を利用した形でしょうね。」
アクリス「不安な心情の住人方を煽動し、軍事拡張に利用する。軍事絡みに疎い私でも、その先の
     行く末は痛いほど分かりますよ。」
ミスターT「魔王軍討伐と言う名の世界進出、だな。」
   地球の抗争と何ら変わらない様相である。これには、人の業深さに心底呆れ返るしかない。

    推測の域だが、魔王軍所属の魔物達は、しっかり統率が取れていると思われる。先の魔王が
   退き際、工業都市外にいた魔物達が全員去った事だ。討伐依頼などで暴れている魔物達は、
   恐らく野性的な存在だろう。アンデットなども該当すると思われる。

    そう言えば、あの魔王は自身をカースデビルとは名乗っていなかった。黒ローブ自身は、
   己の上官はカースデビルだと言っていたが、どうやら魔王とは異なるようだ。

    妹達も魔王自体をカースデビルだと思っていたようだが、あの魔王・・・女性魔王は別の
   存在だと思われる。そもそも、誰もカースデビルという存在を見た事がない。誰がその名を
   最初に挙げたのかも分からない。

    となれば・・・考えられるのは、捏造しかない。問題は、誰か捏造を企てたか、という事に
   なる・・・。

ミスターT「・・・あの黒ローブ、王城専属の魔術師の可能性があるかもな・・・。」
ミツキT「シュリーベルへの襲撃は、魔王軍ではなく王城軍によるものだった、ですか・・・。」
ミスターT「面と向かっての対峙だと、色々と学べるものもあるからの。」
    話題の対峙が魔王絡みである事を察知したエメリナ達。物凄い殺気に満ちた目線で睨んで
   くる・・・。あの様相からして、完全に嫉妬心である。俺としては、そこに強かな考えなど
   なかったのだが。
ミツキT「もしかして、魔王様の頭を叩かれたのは、それを読むためだったのですか?」
ミスターT「んにゃ、アレは自然に出たんだがね。結果的に、その瞬間に彼女の様相が窺い知れた。
      それらを踏まえて、カースデビルとは別人であると思った訳だ。」
   無意識的に出た厚意が、結果的に後の様相を把握するのに一役買った、か。女性への応対は、
   紳士的に行うべし、である。茶化しの類ではないため、流石に身内は怒らないだろう・・・。
ミツキT「まあ・・・上辺の対応は黙認しますが、その推測が当たっている場合が痛いですね。」
ミスターT「全ての襲撃事変は、裏で王城が暗躍していたという事になるしな。」
ネルビア「だとしたら・・・許せるものではありませんよ。」
   今は推測の域ではあるが、非常に信憑性が高いこの推測。それを窺っていた妹達は、今までに
   ない様な怒りの表情を浮かべている。間違った事に対しては、徹底的に抗戦する姿勢を示すの
   だからな。この勢いには、何処か羨ましさを感じずにはいられない。

ミスターT「あの魔王嬢は、恐らく中立に近い。諸々の襲撃が王城を淵源とするものであれば、連中
      がカースデビルという魔王を捏造したに過ぎない。」
ジェイニー「シュリーベルを襲った、魔物の存在はどうなるのでしょうか。」
ミスターT「アレも召喚魔法だと思っていたが・・・。」
    現状の懸念材料は、王城が魔物を生み出す力を持っているかどうか、である。黒ローブが
   王城の手先だとすれば、あの時のガーゴイルとケルベロスナイトは召喚による産物だ。人間が
   そこまでの高等魔術を使えるのかどうか・・・。



    色々と思索しながら作業を進めていると、ふと現れる人物があった。そう、突然その場に
   現れた感じである。まさかと思い、静かにそちらの方を見入る・・・。

ラフィナ「来ちゃいました〜、テヘペロ♪」
エリシェ「テヘペロって・・・。」
ミスターT「は・・はぁ・・・。」
    そうである・・・地球にいる筈のラフィナがそこにいたのだ。更にもう1人、エリシェで
   ある。流石にラフィナほどの興奮気味ではないが、未知の様相に瞳を輝かせていた。
ラフィナ「凄いですよね、通称トランジットげふんげふんは♪」
ミスターT「はぁ・・・。」
エリシェ「何でも目標となる対象を、複数から測定するらしいとか。そこにマスターとミツキT様の
     生命反応を当てはめ、四次元から測定したらしいです。」
ミスターT「お前さんでも、この測定自体は未知の領域だった訳か・・・。」
   実に馬鹿げているとしか思えない。しかし、5大宇宙種族が技術力を以てすれば、この超大な
   宇宙を移動する事は容易なのだろう。今回の手法により、より一層視野が広がったと思える。
ミスターT「しかし、よくミツキさん達が許したわな。」
エリシェ「貴方の相談役として、真っ先に派遣したかったそうですよ。ほら、例の自己嫌悪への応対
     云々が、悩みなどを解決していた事を評価してくれたようで。」
ラフィナ「それに、獲物の方も完全武装ですのでご安心を♪」
   最初に到来した増援の意味を、正確に語るエリシェ。対してラフィナの方は、エリシェも持参
   している自前の獲物や武装群の事を挙げてきた。

    通常の武器だが奥の手の武器としては、エリシェは迅雷剣、ラフィナは戦戈となる。どちら
   も某ゲームで有名な獲物のそれだ。当然、持ち易いように携帯式に改造してある。これらも
   携帯方天戟や携帯十字戟と同じく、四天王や三姉妹が製造した逸品である。当然、ゲームの
   形とは多少異なっている。

    そして、主力兵器が恐ろしい。エリシェはマデュースことM2重機関銃の改造版。従来型は
   12.7mm弾を発射するものだが、彼女や俺が持つマデュース改は20mm弾の発射が可能
   である。正に化け物だ。

    ラフィナの方が更に恐ろしい、ガトリングガンである。しかもこれ、口径が恐ろしいのだ。
   A−10サンダーボルトに搭載のガトリングガンと同じ、30mm弾を発射するモンスター
   ガトリングガンである。

    それに、俺が持つマデュース改は少ない弾倉なため、銃自体が比較的軽量タイプとなる。
   対してエリシェのマデュース改は、多段弾倉を複数備えた重装備版だ。俺の規模よりも3倍
   近い大きさを誇っている。ラフィナのガトリングガン改も、サンダーボルト搭載型の3倍の
   規模である。

ミスターT「はぁ・・・。」
ラフィナ「何ですか? この重装備でも不服ですか?」
ミスターT「・・・ぐうの音も出やがりません・・・。」
エリシェ「地球の最終決戦時より、更に改良を加えて頂きましたからね。長期戦に特化したタイプに
     化けましたから。」
    実に嬉しそうに語るエリシェとラフィナ。華奢な身体には似付かわない、超重火器を持つ
   姿は、女性魔王よりも恐ろしく見えてくる・・・。重力制御ペンダント効果がなければ、絶対
   に持つ事ができない超重量火器兵器である。

    中半へと続く。

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