アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第7話 愚者の考え3〜
シルフィア(なるほどねぇ・・・。)
ナツミA(先の偽者事変と同じ感じですね・・・。)
    討伐クエストに向かう妹達を見送り、再び酒場の屋上で監視を続ける。その中でも、念話に
   よる定期連絡は欠かさずに行っていた。地球にいるシルフィアとナツミAが表情を曇らせて
   いる。
ヘシュナ(私が言うのも何ですが、マスターが人間を守る意味があるのかと思うそれを、再度痛烈に
     感じています。)
ナセリス(守る気が失せてきますよね。)
   静かなる怒りを放つヘシュナとナセリス。念話を通して、凄まじいまでに伝わって来る程だ。
   ただ、殺気と闘気が絡んでいないため、純粋な怒りだけに留まってはいる。俺の場合なら、
   そこに殺気と闘気が絡むため、ドエラい事になってしまうが・・・。
女性(次は、私が暴れてみましょうか?)
ミスターT(真打登場って感じか・・・。)
シルフィア(はぁ・・・。)
   ボソッと話しだすのは、地球で“良い意味で暗躍中”だったスミエからだ。シルフィアの師匠
   であり、俺の遠縁の祖母でもある。
デュヴィジェ(どうされますか? 現地での潜入捜査を行う感じで?)
スミエ(その方が良いかも知れません。一応、女性だと侮られるので、性転換状態で挑んだ方が良い
    と思います。)
ミスターT(獲物は長刀と携帯方天戟だな。)
ミツキ(セフィ・・・むぐっ?!)
ナツミA(はいはい、黙りましょうね。)
   この美丈夫は・・・。隙あらば、ネタを展開しようとする姿は、暴走機関車そのものである。
   先はラフィナが同じ様相になっていたが、今度はミツキがその様相になっている・・・。

デュヴィジェ(もうね・・・次は私を飛ばせと五月蝿いんですよ・・・。)
ヘシュナ(エリシェ様とラフィナ様を前倒しで飛ばした事に、相当ご立腹していまして・・・。)
ミスターT(そ・・そうですか・・・。)
    やはり予想通りだったわ・・・。当初の転送装置による飛来者はミツキだったのだろう。
   それを止めて、“理に適った”形でエリシェとラフィナを飛ばした。怒るのは当然である。
   しかも、念話でハッチャケ状態のラフィナを窺えば、よりヒートアップするのは言うまでも
   ない。
ミツキ(ふんっ! 今回は譲ってあげたわっ! でも次はこうはいかないんだからねっ!)
ナツミA(何そのツンデレキャラ。)
シルフィア(こりゃ・・重症よね・・・。)
   会話が成り立たない・・・。だが、その様相を感じた面々は、堪え切れずに笑い出している。
   地球での行動時も、こうして周りを笑わす事を繰り返していた。ミツキの手腕には、ただただ
   脱帽するしかない。

オルドラ(・・・娘がいたら、お前さん達の様に明るい女性だったんだろうな・・・。)
ミスターT(彼女か・・・。)
デュヴィジェ(ほむ・・・。)
    一部始終を窺っていたオルドラが小さく呟く。魔物達に殺されたとされる、実の娘の事だ。
   それを窺った一同は黙り込むが、宇宙種族の面々は何かを感じ取ったようである。
デュヴィジェ(大変恐縮なのですが、オルドラ様の娘様は生きていると思われます。)
オルドラ(な・・何だと! 本当なのか?!)
デュヴィジェ(はい。ただ、何処かまでは分かりませんが、そちらの惑星内でご健在ですよ。)
ヘシュナ(なるほど、オルドラ様のこの感じですか・・・。確かに似たような生命を感じますね。)
   凄い業物を見せてくれたわ・・・。どうやら、念話を通して、オルドラと似たような生命力を
   感じたようである。しかも、その規模は異世界惑星全域に、である。宇宙種族の力は、何処
   までも逸脱した様相だわ・・・。
オルドラ(・・・信じても良いのか?)
デュヴィジェ(生まれてこの方、酷い嘘は一度も付いた事がありませんよ。それに、生命の次元の
       感知は、絶対に嘘を付きませんので。)
ミツキ(それ以外では・・・嘘を付いた事があるのだな?)
デュヴィジェ(え・・それは・・・。)
ミツキ(嘘吐きは泥棒の始まりだごるぅあー!)
ミスターT(だー・・・滅茶苦茶になるからやめれ・・・。)
   はぁ・・・どうしたものやら・・・。念話による定期連絡は、当面は自粛した方が良いかも
   知れない・・・。しかし、どんなに距離があろうが、即座にリアルタイムに連絡が取れる念話
   の力は、今は必須的な力の1つである。茶化しを除けば最高の能力なのだが・・・。

    どうしてこうも、話の流れや場の流れを笑いへと持ち込もうとするのか・・・。それでも、
   確かに場の雰囲気を変えようとする一念は感じ取れる。ミツキ流の生き様が正にそれだしな。
   黙認すべきだろうが、異世界の住人達にとっては強烈過ぎるようである・・・。


    とりあえず、先の流れ通りの行動を取る事にした。次の異世界の飛来者はスミエに定め、
   性転換ペンダント効果で男性化状態を維持する。偽名でシャドウと言う名にし、王城への潜入
   捜査を任せた。

    地球でも数多くの潜入捜査を行った実績があり、その事から隠密の紫陽花と言われるように
   なっている。スミエ自身は紫陽花の花や紫色が好きなため、この異名を使っているとの事だ。
   また、弟子たるシルフィア自身も潜入捜査はお手の物である。

    しかし、2人をしても警護者界最強は俺であると豪語してくる。2人とも俺の師匠的存在に
   なるのだが、それをも超える直感と洞察力には脱帽らしい。俺には全くその力を感じる事が
   ないのだが・・・。

    ちなみに、瞬発的な戦闘力を叩き出せるのは、ボケとツッコミで活躍するミツキとナツミA
   である。“力の出し加減の触り”という究極の戦術を習得している事から、局地戦仕様とも
   言われている。その業物により、腕相撲では姉妹に勝てる者は絶対にいない・・・。



ミツキT「お疲れ様です。」
ネルビア「ただいま戻りました。」
    数時間後、冒険者ギルド内は奥のテーブルにて落ち合う俺達。久方振りの大都会とあり、
   討伐クエストの様相を把握せずに赴いたらしい。だが、問題なくクエストは完了したとの事。
カネッド「ランクSまでは遠いですわ。」
ダリネム「BからAまでは何とかなっても、それ以上が厳しいらしいし。」
   何時ランクSになるのかと、興奮気味に語る妹達。エメリナ達も今回のクエストでランクA
   となったようで、13人してランクAの凄腕冒険者となったようだ。
エメリナ「マスターは、今だにランクFとは・・・。」
ミスターT「目立っても、良い事など何もないんだがな。」
ミツキT「本当ですよ。」
   すっかりランクFが板に付いた状態だ。俺もミツキTも、ランク制度を好まない性質なので、
   今だに放置中となっている。それなりの依頼を受けて、冒険者ギルドに報告さえすれば、最低
   でもランクDぐらいまでは進むらしいが・・・。
フューリス「実力なら、既にランクS以上に至っているのですけどね。」
ジェイニー「ランクでは表し切れない実力だと思いますよ。」
ミスターT「俺のランクは変人でいいわ・・・。」
ミツキT「つまり、F以下のGの次のHと。」
   その例えに爆笑しだす妹達。ただ、ランクが変人という意味合いは、俺の性分としては十分
   合っているのが何とも言えない。

ミスターT「そう言えば、ラフィナがボヤいていたわ。彼女がプレイしたゲームで、ランクを上げる
      のが相当厳しいのがあったとか。」
テューシャ「そのゲームという作品では、同じクエストを何度も繰り返して行う感じで?」
ミスターT「そうなるね。ゲーム内だと、内部設定で定めない限り、モンスが枯渇する事はない。
      永久的に狩りが続けられるしな。」
    ゲームの中の仕様であれば、魔物の数には制限がない。一部作品では、出現する魔物の数に
   限りがあったりするが、大多数は無尽蔵に沸き続ける。この異世界の惑星はリアルそのもの
   なので、有限仕様であるのは言うまでもない。
ミスターT「モンスも生命体の1つと捉えるなら、やはり殺害は避けたいのが本音だが・・・。」
アクリス「確かにそうですが、その心構えによりこちらが倒されては話になりません。降り掛かる
     火の粉は払い除けねばなりませんし。」
キャイス「難しいですよね。相手が魔物だから討伐するとか、一体誰が定めたルールなのか。」
ルマリネ「本当ですよ。」
   妹達の方も、少なからず魔物への一念が変わってきているようだ。相手も生命体なのは言う
   までもない。魔物だから殺害し、人間だから守る。一体誰が決めた理なのか、突き詰めても
   永遠に答えは出ないだろう。
ミスターT「それでも・・・己が定めた生き様は、どんな事があろうが貫き通す。」
ファイサ「そうでしたね。ミスターTさんの絶対不動の一念ですから。」
アーシスト「相変わらず強いですよ。」
ミスターT「伊達に28年は生きてはいないさ。」
   徐に一服しながら天を仰ぐ。この一念に至ったのは、やはりミツキTの逝去後だろうな。

    それまでの俺は、何かにつけては折れるような事が多かった。当時はまだ凄腕の警護者では
   なく、一介の警護者だったため、そこまで肝っ玉が据わった奴ではなかった。その俺を命懸け
   で変革してくれたのが彼女だった。

    後の警護者の任務では、徹底的に不殺の精神を貫き続けた。不殺を貫くなら、それに見合う
   実力を持たねばならない。ミツキTが健在の頃から知り合った、シルフィアやスミエの元で、
   死に物狂いで修行を繰り返したのが良い思い出である。

    そして、絶対不動の原点回帰に至った要因は、ナツミツキ姉妹と四天王と出逢った事だ。
   また、5大宇宙種族の彼らが俺の一念の淵源を、更に不動にしてくれた。しかし、今でも修行
   は繰り返している。油断をすれば、己自身に食い破られるのは言うまでもない。


    物思いに耽っていると、歩み寄ってくる人物達がいた。意識を戻し、そちらを窺う。今度も
   懐かしい人物達がいるではないか。3度目の飛来者は、正に“警護者”そのものであった。

ミツキT「あら、ウインド様とダークH様ではないですか。」
ウインド「お久し振りです、ミツキT様。」
ダークH「マスターもお変わりなく。」
    エリシェとラフィナ、そしてスミエの飛来は窺っていた。その後の飛来は当面はないだろう
   と踏んでいたが、それを覆す事となった。今度の飛来者は、警察庁長官のウインドとダークH
   の2人である。

    俺達への挨拶後、妹達を見つめ、その場で敬礼をする2人。現役の警察官故の、相手に敬意
   を示す行動である。地球でも同じ事を繰り返していた。

ミスターT「身内が良く許したな・・・。」
ウインド「ミツキ様のご依頼でした。今度は規律の達人を飛ばすべきだと豪語されてまして。」
ダークH「警察庁の方は、ヘシュア様方が担ってくれています。当面はこちらを最優先すべきだと、
     半ば追い出された感じでしたが。」
ミスターT「追い出された、ねぇ・・・。」
    敬礼後は休めの姿勢で立ち続ける2人。職業柄、座る事は非常に希である。警察庁長官と
   いう大任を拝しながら、部下達と最前線で戦う闘士でもあるのだ。
エメリナ「あの・・・こちらのお2人とは、どういった関係で?」
ミスターT「一応、俺の戦術指南役なんだがね。師匠でもある。」
ウインド「ご冗談を。私達は基礎をお教えしたぐらいです。以後の技術力発展は、全て実戦経験に
     よるものですよ。」
ダークH「警護者の戦いで培った技術の方が、遥かに凄い経験だと思います。」
   俺の師匠だと聞いて、瞳を輝かせる妹達。しかし、2人が言う通り、彼女達からは戦術指南
   のみしか受けておらず、それ以上は独学で今の戦術を体得するに至っている。2人の場合は、
   盟友達と言うべきだろうな。

ダークH「デュヴィジェ様からの指令です。今後、お嬢様方に横槍が増えると推測されるため、身辺
     警護に回るようにとの事です。」
ウインド「マスターとミツキT様は今まで通りの遊撃を担当して下さい。私達はお嬢様方を守る側に
     回ります。」
ミスターT「デュヴィジェさんの指令となると、何らかの流れを掴んだ感じだな。」
    改めて、ここに来た内容を語るウインドとダークH。デュヴィジェの先見性ある目線は、
   5大宇宙種族の中で最強とも言えるものだ。彼女からの指令とあれば、その予感は十中八九
   当たるという事である。
ミスターT「ばあさまは王城に潜入できたのか?」
ウインド「はい、私達がここへ来る前に行動を開始されました。」
ダークH「すんなり潜入できて、拍子抜けだとボヤかれていましたけど。」
ミスターT「あのばあさまがボヤくとなると・・・相手の実力もたかが知れているわ。」
   一服を終えて溜め息を付いた。相当な戦力を有し、姑息な行動をすると踏んでいた王城側。
   しかし、デュヴィジェに負けず劣らずの先見性の目線があるスミエが愚痴ったのだ。相手の
   実力は低いという証拠である。

ミスターT「これで、デハラードとカルーティアスは何とかなるか。残りの憂いとすれば、最初の
      街のシュリーベルだな。」
ダークH「現地はヘシュナ様とナセリス様が向かわれるそうです。“後方の憂い”は全て断つと豪語
     されていましたので。」
ミスターT「後方の憂い、ねぇ・・・。」
    彼女の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。5大宇宙種族の根幹とする戦術や戦略では、後方の
   憂いを断つと言う場合は、“ありとあらゆる力”を駆使してでも守り切るという事になる。
   俺達側に一切の不安を抱かせないという、それはもう尋常ではないレベルでだ。
ミスターT「はぁ・・・ついに恐怖の暴君を出す訳か・・・。」
ウインド「フフッ、あの時もそうでしたからね。しかし、確実に守ってくれますよ。」
ミスターT「ハハッ、そうだな。」
   とにかく笑うしかない。今後の展開が、手に取るように見えてしまったからだ。

    ギガンテス一族・ドラゴンハート一族・カルダオス一族・ガードラント一族・デュネセア
   一族の5大宇宙種族。彼らは己が持つ技術力、これを使う事を躊躇する傾向がある。しかし、
   ヘシュナとナセリス、そして裏方のデュヴィジェ。この3人は、自前の力を使う事に際して、
   一切の躊躇がない。

    特にヘシュナは先の事変の1つで、態と敵役を演じていた事がある。己を押し殺し、敵側に
   信用させて内部から崩壊させたのだ。ただ、その時は悪心が発生していたため、各種力を使う
   事はできなかった。それでも、自身の超人的な戦闘力は遺憾なく発揮できていたが。

    今度の2人は善心に満ち溢れている。各種力を最大限発揮できるため、その様相はもはや
   破壊神レベルであろうか。そこに、己の力を使う事に躊躇がないときた。

    後方の憂いを全て断つと言い切った2人は、確実にその大役を完遂し切ってくれる。

ネルビア「何だか・・・私達の出番がなくなっていくような・・・。」
ミスターT「何を仰る。お前さん達が切り札になるのよ。お前さん達を最大限活躍できるように、
      俺達が良い意味でも悪い意味でも暗躍しているに過ぎない。」
カネッド「アッハッハッ! 暗躍っすか!」
ダリネム「物凄く響きが良いですわ!」
    俺の言葉に爆笑する妹達。確かに今の俺達地球サイドは、暗躍組とも言い切れる。真の巨悪
   すらも青褪めるような、先の先を見据えての行動を展開している。戦いすらも起こさせない、
   静かなる暗躍であろうか。
エメリナ「無益な殺生をしないためには、圧倒的な流れで完全屈服をさせるに限りますからね。」
テューシャ「小さな戦いは仕方がないとは思いますが、大きな戦いはしないに限りますよ。」
ミスターT「何時の時代の争い事も、結局泣くのは女性と子供だけだ。その殆どの当事者は野郎と、
      同じ同性として恥かしいわな。」
   吐き捨てるようにボヤく。これは身内にも同じ事を語っている。数多くの戦乱の当事者、その
   大多数は野郎が引き起こしている。女性が発端となるのは非常に希だ。
ミスターT「今を生きる人物に憎まれてもいい。後の世代が安穏に過ごせるようになるなら、俺は
      鬼にでも悪魔にでもなってやるわ。」
ミツキT「フフッ、相変わらずの啖呵ですね。そのお心に、最大限ご助力致しますよ。」
ウインド「同じく。警察官であり、警護者でもある手前、悪の概念は絶対に許しません。」
ダークH「人を憎まず、誤った思想や価値観を憎め、ですからね。烏滸がましい部分はあるものの、
     全ては後の世のためですから。」
ミスターT「ああ、本当にそう思うわ。」
   会話の最中に、ミツキTが注いでくれた紅茶。小さく頭を下げて、それを啜る。

    本当に烏滸がましい限りだろう。個々人の一念や価値観は、限りなく尊重されるべきだ。
   その様相を判断し見極めるとか、烏滸がましいにも程がある。しかし、時と場合によっては、
   それらが争い事の火種になりかねない。

    ならば、総意の思いを胸に汲み、誤った思想や価値観を正していく。それが警護者の役目
   である。結成時から、その一念を胸に刻み、貪欲なまでに突き進んできた。

    まあ、最後は己自身の一念と生き様に帰結してくる。誰彼がどうこうじゃない、自分自身が
   どうあるべきか、それが重要なのだ、とな。

ミスターT「憎まれ役は全て任せてくれ。お前さん達は、この戦乱を終息させるための勇者達だ。
      最大限の力を使って、お前さん達を厳守し続ける。」
ミツキT「死守する、じゃない所がミソですよね。」
ミスターT「死守の言葉は好きじゃない。死んでは守るものも守れないしな。厳守、厳しく守る、
      こちらの方が俺には性分に合う。」
ミツキT「小父様らしいです。」
    小さく笑う彼女に、周りの妹達も笑顔になる。彼女達の使命は、この戦乱を終息させるため
   の勇者達に他ならない。それはもう、啓示などの特質的な行為が元ではない、彼女達の生命
   自体が淵源なのだ。この瞬間に集い合うために生まれ出た闘士達である。
ミスターT「貴方達に出逢えたこの瞬間に、心から感謝している。俺の生き様も、無駄ではなかった
      と確信が持てるからな。」
ウインド「頑張らねば張り合いがありませんからね。」
ダークH「ですです。」
   ソッと右手を前に突き出す。そこにウインドとダークHが右手を重ねる。ミツキTの右手が
   が続き、妹達の右手も続いていった。そして、最後に自分の左手で16人の右手を包み込む。

    俺が自然と繰り出した厚意に、涙を流している妹達。しかし、その表情は、今までにない
   程に輝いていた。出逢った頃の幼さなど、微塵も感じさせない力強さである。彼女達なら、
   どんな苦難が舞い降りようが、必ず打破できるわな。

    そして、声には出さなかったが、念話を通して遠方の全員に今の思いが伝わったようだ。
   18の手が重なるそこに、他の面々の右手も重なっていくのが感じられたからだ。

    思いは時として、時間と空間を超越する。それは確実に存在する概念である。

    第8話へ続く。

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