アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第8話 魔王と愚者と1〜
    工業都市デハラードから、大都会カルーティアスに移動した俺達。再び大都会を中心に行動
   を開始した。王城を中心に、裏で暗躍する連中の臭いが立ち込めてくる感じである。

    しかし、こちら側もついに第1の奥の手を始動させる。地球から異世界惑星への転送が可能
   となり、続々と支援者が到来して来てくれた。

    運営組のエリシェとラフィナ、単独潜入担当のスミエ、警護者組のウインドとダークH、
   そして守護組のヘシュナとナセリス。適材適所に投入された彼らは、文字通りの必殺兵器と
   言えるだろう。まあ、もっと暴れさせろと待ち構えている人物達もいるが・・・。

    それでも、主役は勇者組たる妹達だ。彼女達が縦横無尽に暴れられるように、こちらが尽力
   するのが重要である。そのための警護者軍団たる俺達だからな。

    一応の役者は揃った。ここからが本当の行動の開始である。



ヘシュナ(全ての準備、完了です。)
ミスターT(ありがとさん。)
    最後の行動となった、シュリーベルの全体防衛。ヘシュナとナセリスが担当し、完璧な防衛
   態勢を整えられた。当然、“奥の手”もしっかり配置してあるという・・・。

    今は冒険者ギルドで待機中だ。シュリーベル・カルーティアス・デハラードの同ギルドとは
   顔が利くため、情報の共有がしっかりできているからだ。

ミスターT(王城はどうよ?)
スミエ(今の所、動きはないですね。)
カネッド(お嬢をすんなり受け入れる時点で、連中の考えが甘っちょろいと思えますよ。)
ミスターT(お嬢ねぇ・・・。)
    姉御肌が強いスミエを、お嬢と語るカネッド。実際に対面はしていないが、その気質からの
   読みであろう。実際には異なるのだが・・・。
ミツキ(ちなみに〜、スミエちゃんの実年齢は86歳わぅ〜。)
妹達(えええっっっーーー!!!)
ミスターT(はぁ・・・案の定の反応と。)
   何ともまあ・・・。スミエは老化が訪れない特異体質なため、35歳頃からその若さを保って
   生きて来ている。実年齢は86歳であり、大正生まれのお祖母様そのものである。
スミエ(一応・・・35歳としてますです、はい。)
ナツミA(本当にクレイジーな概念ですよね・・・。)
シルフィア(うちらも同じ体質なんだけどね・・・。)
   変な溜め息が出てしまった。老化が訪れない特異体質は、俺にも受け継がれている。他には
   ミツキにナツミA、シルフィアに四天王も該当している。一種の呪われた身体であろう。

ミツキ(若さを保つ事は難しくない。大事なのは、プライドを保つ事だ! お分かり?)
ナツミA(それ、何処の海賊長の父と息子。)
ミツキ(酒を飲み干せ〜♪)
シルフィア(はぁ・・・。)
    悪いが、こちらが溜め息を付きたいぐらいだわ・・・。とにかく、隙があればネタを展開
   するミツキには、心の底からタジタジである。これを狙ってやっていないのだから、彼女の
   底力には脱帽するしかない。
エメリナ(と・・とりあえず、スミエ様の方は大丈夫そうですね。)
スミエ(何かありましたら、直ぐにご連絡を差し上げますよ。)
ダリネム(何も起きて欲しくないのが本音なんですけどね。)
   その言葉に、周りがウンウン頷く様子が感じられる。要らぬ争いは避けるに越した事はない。
   しかし、現実は非常に残酷でもある。
キャイス(討伐クエストとか受けていて大丈夫ですかね?)
ミスターT(大丈夫だと思う。大都会の北側のダンジョンで暴れてくれ。その方が守り易い。)
ファイサ(了解です。)
ウインド(私達も同行しますね。)
   掲示板から討伐クエストを選び、受け付けへと向かう妹達。ウインドとダークHが付き添いを
   買って出てくれた。俺は酒場の屋上で獲物の調整と見せ掛けて、周辺の警戒に当たっている。

    ミツキTは現在、カルーティアスの街中を巡回中だ。単独でも一騎当千の力を持つため、
   問題なく行動ができている。やはり、これぐらいの仲間が揃わないと、思うように動けないと
   思わざろう得ない。


オルドラ(しっかし、念話ってマジで凄いわな。)
ミスターT(できれば、あまり使いたくない手法なんだがの。)
    実際は面と向かっての対話が一番いい。それ以外では、何らかの通信手段による会話だ。
   念話は5大宇宙種族の力なため、多用はしたくないのが実状である。
ファイサ(それでも、使ってしまうんですよね。)
ミスターT(これ程、便利なコミュニケーションツールはないからな。)
ルマリネ(思うだけで伝わるというのが凄いですよね。)
キャイス(見た事までも伝わるのが見事ですよ。)
   確かに、これ程までの超効率的なコミュニケーションの力はない。無線などの機器もあるには
   あるが、念話は時間や空間すらも超越して届く。しかもタイムラグ無しのリアルタイムの通話
   である。
ヘシュナ(念話は用いても問題ないと思いますよ。私達宇宙種族では、在住する場所の問題で、念話
     を使わなければ、とても話せる状態にはなりません。)
ナセリス(大宇宙は広大ですからね。それに、油断したら即死する恐れも十分あります。即座の通信
     手段は確立しないと危険極まりません。)
ミツキ(通信手段にビーム、神聖大要塞レッ・・・むぐっ?!)
ナツミA(12.2kmの赤い円盤はいいから・・・。)
ミツキ(な・・何をするニャンコロー!)
ナツミA(誰がニャンコロよ。)
   真面目話からネタの繰り出し、そしてボケにツッコミと・・・。すっかり慣れだした妹達は、
   姉妹のそれに爆笑するのが通例となりだしてきた。これはこれで、雰囲気を明るくするのに
   一役買うのだから皮肉な話である・・・。

オルドラ(一応、武器や防具に関してなら、何時でも言ってくれ。)
ジェイニー(ありがとうございます。)
アーシスト(隕石武具って本当に凄いですよ、刃毀れしませんし。)
    オルドラが自信作、隕石による武器と防具の製造。今では妹達の大切な獲物となっている。
   この異世界惑星での各種強烈な一撃ですら、問題なく弾いたり防いだりするのだ。地球での
   各種鉱物資源や技術力に一切引けを取らない。
ミツキ(これは?! 剣神よ、俺に何をしろと言うのだ?!)
ナツミA(んー、隕石の刀が欲しいわね。)
ミツキ(わたのWPは15わぅ!)
ナツミA(1=ワン、5=コ、と。)
ミツキ(70ないと・・・手に入らねぇんだよぉ〜!)
シルフィア(アッハッハッ!)
   ボケとツッコミの応酬に、ついに耐え切れず大爆笑しだすシルフィア。それに釣られて、周り
   も爆笑していった。ただ、それは元ネタを知っている人物だけであり、知らない人物は仕方が
   ない感じでの笑いに思える・・・。

エメリナ(・・・何時もこんな調子なのですか・・・。)
ミスターT(あー・・まあ・・・。)
フューリス(よく飽きないでいられますよ・・・。)
ミスターT(飽きないねぇ・・・。)
    飽きる所の話ではない。飽きる寸前で更なるボケとツッコミを繰り広げてくるのだ。もはや
   無尽蔵に湧き上がるネタの応酬、留まる所を知らない感じである。
テューシャ(それでも、笑顔でいられるのが良いですよね。)
ミツキ(幸せだから笑顔になるんじゃないんです。笑顔でいるから幸せになれるんですよ。)
ナツミA(そうね、その通りよね。ポチはそれを率先垂範で挑んでくれている。無意識レベルでの
     繰り出しは、とにかく暗い雰囲気を打破するのだと。)
ミツキ(まあ・・・度が過ぎる場合が多いですけど。)
ミスターT(俺は良いと思う。それすらも出なくなり、漠然と行動をしだしたら終わったも当然よ。
      お前さんのその言動には呆れはするが、本当に心から感謝している。)
ミツキ(ありがとです♪)
   どんな状況であろうが、周りを笑わそうとする姿勢のミツキ。それに追随するナツミA。この
   姉妹の言動に、どれだけ救われたか分からない。それだけ、今の俺には大切な力である。
カネッド(私達も肖らないとダメっすよね。)
ミスターT(まあ、節度を保ってならな・・・。)
ミツキT(節度を保つ以前に、誰もお姉様の力には敵いませんよ。)
ミツキ(ウッシッシッ♪)
   ミツキのニヤケ顔が脳裏に広がる。それに笑うよりも、自然と笑顔になってしまうのには、
   実に不思議なものである。本当に凄まじい女傑だわ。


    獲物の調整を終えて、一服をしながら周りを見渡す。何時もと同じ大都会の喧騒だが、以前
   よりも各段に嫌な雰囲気が漂っている。まだ、偽勇者共が蔓延っているという意味合いの方が
   気が楽だろう。そして、その雰囲気の出所は、間違いなく王城からとなる。

    まあでも、真の巨悪の目的は、大体が世界征服か総意の屈服だ。それ以外では、完全なる
   破壊などであろう。異世界惑星に住む方々への、マイナス面の力になるのは言うまでもない。

    形はどうあれ、あの女性魔王は、とんでもない大仕事を任せてくれたものだわ・・・。



    カルーティアスに移動して数日後、徐々に暗雲が立ち込めてきた。スミエの情報では、王城
   側でも数多くのならず者や傭兵を集めているとの事だ。これは、各冒険者ギルド・自警団・
   騎士団には極秘裏に動いている。

    悪党の最終目標は大凡見当は付くが、その流れに付いては読めていない。相当な混乱を巻き
   起こすのは確実だが、何処までの被害様相かは掴めなかった。いや、本来なら掴めないで、
   不測の事態として巻き込まれるのが定石だろう。

    地球での警護者での活動は、こうした悪党の全ての行動を予測し、事前に防ぐか規模を縮小
   させるかの対応を取ってきた。この異世界惑星でも、問題なく通用するかどうかは不明だ。

ミスターT(固まって動いていた方がいい、十分気を付けろよ。)
ネルビア(了解です。)
エメリナ(王城より離れた近くでの、雑用的依頼をこなしていますね。)
    直ぐに対処ができるよう、妹達には街中での依頼を受けて貰った。当然、慎重過ぎると思う
   程の完全武装である。ウインドとダークHも護衛として着いて貰っている。
ミツキ(私達も待機していた方が良いですかね。)
ミスターT(デュヴィジェにピンポイントで飛ばして貰う事になると思う。今は完全装備で待機して
      いてくれ。)
ナツミA(了解。)
   何時もならボケをカマすミツキだが、場の雰囲気を察知して緊張した面持ちである。これは
   俺達全員もその状況だ。一際感受性が強い彼女故に、言わば善悪判断センサーの塊とも取れる
   だろう。デュヴィジェが一目置くだけの事はある。

ミスターT(シュリーベルとデハラードはどんな感じだ?)
ヘシュナ(嫌な雰囲気は漂っていますが、そちら程ではないと思います。)
エリシェ(同じく。)
ミスターT(分かった。引き続き様子見を頼む。)
    この緊張感は久し振りである。取り越し苦労で終わってくれれば良いのだが、それでも十分
   気を付けた方がいい。常に最悪の状態を想定しておかねばな。
カネッド(これ、私達だけで抑えられますかね・・・。)
ミスターT(“既存のメカドッグ嬢達”は展開中だが、それ以外の面々は既に待機中。いざとなった
      時には現れて貰う。後方の憂いは全て断つから、お前さん達は通常通りで頼む。)
ダリネム(分かりました。)
   何時になく緊張した雰囲気の妹達。この気質は、彼女達と初めて出逢った頃を思いだすわ。
   ゴブリン達との戦闘前の流れだ。
ウインド(マスター、一応不殺は貫いた方が良いですかね?)
ミスターT(可能な限り、な。しかし、お前さん達の生命の方が遥かに大切だ。危ない場合は、問答
      無用で叩き潰せ。)
ダークH(急所を狙わず、頭を打ち貫け、と。地球では殺人罪に該当しそうですけど。)
ミスターT(警護者は総意の意見を圧殺できる。本来の俺達の役割を担うだけだ。)
シルフィア(はぁ・・・君のギラ付いた殺気、久し振りに拝ませて貰えるわね・・・。)
   不気味に呟くシルフィアに、身内達のニヤリとする表情が何とも言えない。対して、俺の本職
   の姿を知らない妹達は、この上なく怯えている。普段のノホホンな姿からは想像できないの
   だろう。

ミスターT(・・・警護者自体、全てにおいての逝去時は、地獄まっしぐらだろうな・・・。)
エリシェ(また自己嫌悪ですか・・・。貴方がその生き様を、喜んで挑んでいるならそうなります。
     ですが、警護者自体の役割は、声無き声を汲み取り、代役として遂行する。総意の無念さ
     を抱き、執行の引き金を引く、これですよ。)
ラフィナ(確かに殺人は大罪ですが、救われる生命があるのも確かかと。もしそれらが嫌ならば、
     初めから警護者の道に進まなければ良いだけです。それに、貴方自身がそうしてお悩みに
     なっている事こそ、不殺の精神を貫こうとする姿勢そのものですよ。)
ミスターT(・・・すまんな。)
    こうして時偶、自己嫌悪に陥る時がある。その時は、即座にエリシェとラフィナからの戒め
   の一撃が放たれる。彼女達が相談に乗ってくれなかったら、今の俺は絶対に存在していない。
エメリナ(・・・貴方が、皆さんから愛される意味合いを痛感しました。常に己自身と対峙し、何が
     正しく何が間違っているかを問い質している。貴方にとって、争いがない時は、多分ない
     のでしょうね。)
ミスターT(そうだな・・・。最後の敵は己自身になるしな。偽勇者共・王城側、それらが真の敵
      ではない。全ての生命に内在する、争いを起こす一念こそが最大の敵だ。)
ナツミA(んー・・・となると、マスターが周りにヤキモチを抱かせるのは、正に要らぬ争いを起こ
     しているようなものでは?)
ミツキ(マスターも隅に措けんのぉ〜、ウッシッシッ♪)
ミスターT(はぁ・・・そうですか・・・。)
   案の定的な、別の戒めの一撃が飛んでくる。ナツミAとミツキによる、茶化しを織り交ぜた
   ものだ。それに身内の女性陣から、痛烈なまでの殺気の一念が飛んできた。しかもこれ、地球
   からも飛んでくるのが分かる。

ミツキ(大丈夫ですよ。マスター1人だけではありません、私達もいます。全て背負い込まなくても
    問題ありません。)
ナツミA(そうね。ポチが生き様、持ちつ持たれつ投げ飛ばす、これですよ。)
シルフィア(ホンッと、君はそうして自己嫌悪に陥るからねぇ・・・。)
ミスターT(はい・・・すみません・・・。)
    最後の一撃は気付けの一撃だ。それに、ただただ謝るしかない。だが、彼女達あっての自分
   である事を、この一撃から痛烈に感じ取れた。本当に感謝に堪えない・・・。
カネッド(何か、ミスターTさんの意外な一面を見れた感じ。)
ダリネム(本当よね。常に冷静沈着で隙がないと思っていたけど。)
キャイス(人だと分かって良かったです。)
ミスターT(お嬢さん方・・・俺をどんな目で見てやがるんだ・・・。)
ミツキ(こーんな目で見てやるわぅ!)
   妹達からの茶化しに反論すると、脳内にミツキの変顔がドアップで映し出されてくる。それに
   堪らず爆笑する一同。見事なまでの一撃である。
ナツミA(何ともまあ・・・。)
シルフィア(はぁ・・・笑いの女神そのものよね・・・。)
ミスターT(色々と悩ましいわ・・・。)
   とにかく、周りを笑わさずにはいられない、そんな気質のミツキである。それに乗ってしまう
   のは、彼女の手の内で踊っているに過ぎないのだろうな・・・。

    その後も、場を和ませる癒しの一撃が飛び交う。その殆どが笑いになるのだが、それでも
   今の様相を打ち消すには特効薬そのものである。本当に素晴らしい女傑だわ・・・。

    中半へと続く。

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