アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第1話 創生者の願い事2〜
ティルネア「それと、スキルをお持ち下さい。」
ミスターT「ん? 先程与った力以外にか?」
ティルネア「はい。これは私も含め、個人が固有で所有する技となります。」

    そう言いつつ、俺の前に右手を掲げる。すると、その手が淡く輝き出した。その光が俺の
   身体へと吸い込まれていくではないか。変な違和感を感じつつも、不思議と脳内に浮かんだ
   言葉が口から紡がれた。

ミスターT「・・・“金剛不壊”?」
ティルネア「それが貴方のスキルとなるのですね。」
ミスターT「ふむ・・・お前さんでも、俺が何を取得するか分からない訳か。」
ティルネア「ええ、私もそうでしたので。」

    口にしたスキル名“金剛不壊”。効果の方も脳内に自然と湧き上がってくる。どうやら、
   このスキルは瀕死の状態でも“絶対に倒れない”という代物らしい。

    これも実際に効果を試してみたいが、もし俺の予測が正しいなら怖くて試す事ができない。
   ゲームでの体力に当てはめるとするなら、恐らく“体力1で踏み留まる”という効果だろう。
   絶対に壊れない生命、と言う感じである。

ミスターT「・・・身体超再生能力だけでも恐ろしいのに、絶対に倒れないとなると・・・。」
ティルネア「・・・正に化け物ですね・・・。」

    俺が取得したスキルに関しては、流石の創生者ティルネアでも呆れ返っていた。これは先に
   挙げたが、スキルの取得に関しては任意に決められないらしい。創生者たる彼女ですら無理と
   言うのだから、最早どうする事もできない。

    ちなみに、彼女の固有スキルは“創生力”との事だ。それにより、身体超再生能力などの
   能力を編み出したりしたそうだ。つまり、彼女は創生者になるべくして生まれた人物という
   事である。


ティルネア「それと、スキルの受け渡しはできません。」
ミスターT「そりゃあまあ・・・渡せたら大変な事になるしな・・・。」
ティルネア「ええ、実際に試してみましたので・・・。」

    ボソッと恐ろしい事を言い出した・・・。スキルの受け渡しができない事を、実際に彼女は
   試したという。つまり、過去に召喚した人物がスキルを取得した際、受け渡しが可能かどうか
   を試したようだ・・・。

    もし可能だったと仮定すると、彼女特有の創生力のスキルを、一介の個人に渡す事になる。
   その場合、邪な一念を持つ存在だったらどうなるのか、考えただけでゾッとした・・・。

ミスターT「・・・お前さん、創生者に向いてないんじゃないか?」
ティルネア「・・・貴方に是非とも代わって頂きたいものですけど?」

    俺の皮肉を込めた言い回しに、半分正論だと言いつつも、もう半分はエラい怒り気味に語る
   ティルネアである・・・。怒る部分は分からなくもないが、彼女は創生者という己の立場を
   理解して欲しいものだ・・・。

    下手をしたら、異世界自体を破滅させてしまう恐れが出る。天然なのか何なのか・・・。
   となると彼女には悪いが、これは少々考えねばならないかも知れない・・・。


ミスターT「そう言えば、現地人の面々はスキルを持っているのか?」
ティルネア「はい。年齢が5歳に達した方から、自然と発現するように施されています。」
ミスターT「発現するように、か・・・。」

    ゲーム仕様そのものだわ・・・。彼女が挙げるには、生まれてから5歳に達した時、自然と
   固有スキルが発現されるとの事だ。各作品では10歳や15歳などが多いが、この異世界では
   低年齢から発現されるらしい。

    となると、スキルによっては有益かどうかが直ぐに分かる感じか。つまり、低年齢から優者
   であるか劣者であるかが決まってしまうのだ。これは創生者ティルネアも“操作”ができない
   力らしく、それらを踏まえて助け船を望んでいると言っていた。

    個々人が内在する能力でも優劣が決まりそうだが、そこに拍車を掛けるのがスキルだろう。
   異世界ベイヌディートは、相当な優劣社会であると確信できた。

ミスターT「はぁ・・・。」
ティルネア「色々とすみません・・・。」

    色々な意味を込めて、深い溜め息を付いた。そんな俺を見て、再び深々と頭を下げる彼女。
   創生者ティルネアですら、厄介だと思わざろう得ない仕様だ。ただただ詫びるしかないのが
   実状なのだろうな・・・。

    ともあれ、追加で恐ろしい個人スキルを取得する事ができた。ただ、この金剛不壊のスキル
   が活躍する場面には、本当に遭遇したくないものだが・・・。



ティルネア「あの・・・魔法ですが、攻撃魔法は良いのですか?」
ミスターT「うーむ・・・そこまで持つと、賢者とか言われかねないしな。」
ティルネア「そうですか・・・。」
ミスターT「それに俺の存在は、あくまで支援的な存在だ。表立っての行動は良くない。」
ティルネア「まあ確かに・・・。」

    現状でほぼ十分なのに、全ての力を渡そうとする雰囲気の彼女。半ば呆れ返るしかない。
   俺の身を案じてのものと思われるが、そこまで無力な存在ではないしな。

    伊達に数十年、警護者の生き様を貫いてはいない。身内や恩師が挙げるには、俺の戦闘力は
   警護者界でも最強クラスだと言われている。流石にそれはないとは思うが・・・。

ミスターT「それに・・・攻撃魔法自体は、多分・・・。」

    そう言いつつ、初級の回復魔法を右手に込めだす。その状態から、球体を構成するような
   イメージを膨らませると、右手にバスケットボール大の淡い光が出来上がった。

    それを魔力を駆使して前面に放出してみた。言わばヒールボールであろうか。ただし、この
   力は対不死属性モンスターに対しては特効と思われる。それにこのヒールボールは、恐らく
   連射する事も可能だろう。

    戦艦の主砲に近い力が超連射されるとするなら、不死族系の魔物には超絶的な特効薬になる
   と思われる。対不死族系への対策は磐石だろう。

ミスターT「ふむ・・・これなら、ゾンビやスケルトンだったか、それらには効果がありそうだ。」
ティルネア「す・・凄いですね・・・。」
ミスターT「あー・・・これに関しては、身内のネタよ。彼らの知識があったればこそだわ。」

    そう言うしかない・・・。過去に身内が、各作品の魔法を繰り出したりするネタを披露して
   くれていた。その応用となるのだが、まさか実際にできるとは思いもしなかったが・・・。

    不死属系モンスターたるアンデットには、生命体を回復させる回復魔法は超絶的な特効薬
   になる。回復魔法の威力によっては、怖ろしいダメージを与えるとも言われている。

    治癒魔法は生命体には治療となるが、アンデットに対しては逆に状態異常を引き起こすと
   言われている。どちらも空想の産物でしかないため、実際にどうなるかは不明だ。

    これらの情報は、身内の各作品から挙げられるネタである。だが、今はそれが皮肉なまでに
   有益な情報と言えてくる。今はそれを参考にするしかない。


ミスターT「対アンデット群に関しては問題ない。それに、多分だが魔力の渦や球体を相手に放つ
      のも有効だろうし。」
ティルネア「なるほど、言わば無属性の攻撃魔法になりますね。」

    感心した表情を浮かべる彼女。これも身内のネタによるものだが、魔力自体は無属性の力と
   言えるようだ。そこに各属性を付与する事により、火魔法や風魔法などに化けるらしい。

    俺も各作品を窺う限り、属性魔法自体は独立した存在で顕現されていた。実際には、魔力に
   属性を付与する事で化けるのだと言う。万物に混在する、各種の根源的な属性だろう。それを
   増幅して放つのが属性魔法のようだ。

    ティルネアが挙げるには、初歩的な攻撃魔法は誰でも使えるとの事なので、今は得なくても
   大丈夫だろう。あくまで俺の立ち位置は、完全な支援キャラである。

ティルネア「それと・・・地球と異世界とで、かなりの力の差が生じてしまいます。」
ミスターT「ん? 特に問題はないと思うが? 弱体化しなければ問題はないと思う。」
ティルネア「いえ・・・その真逆です・・・。」

    申し訳なさそうに語る彼女に、非常に嫌な予感が脳裏を過ぎった。これも身内が挙げた、
   各作品に描写される超常的な戦闘力の加算だ。

    ティルネア自身、地球と異世界との力量差は分からないらしい。彼女が異世界に介入する
   事は非常に希であり、しかも直接降り立つ事もなかったとの事だ。

    今回は異例中の異例との事もあるため、彼女を含めた俺の戦闘力は相当なものだと挙げて
   いる。これはもう、超チート性能になりかねないだろうな・・・。

    これもそうだが、創生者ティルネアより与った魔力にも加算され、とてつもない力に化けて
   しまっていた。当然、今の俺がそれを知る由もないのだが・・・。

    中半2へと続く。

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