アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第04話 追放の獣人2〜
テネット「あの〜・・・どう見ても、これは“くろからす”パーティーが発端ですよね?」

    ボソッとそう言い放つ彼女。それを聞き、彼女を睨み付けるカス共。だが、テネットの目線
   は全く笑っていない。ニヤついてはいるが、恐ろしいまでの殺気を放ちだしている。

    ノホホンとした雰囲気のテネットだが、その彼女ですらこの怒りの様相だ。連中が起こした
   事変は、それだけ怒りの逆鱗といえる部分に触れてきたとのだと思われる。

冒険者1「・・・冒険者に対して中立である職員が、コイツ等に加担するのか?」
テネット「あらあら? 私は初めから“理不尽・不条理な対応”を受けた方の味方ですけど?」

    カウンターに向けて、右手人差し指をコツコツと叩き出している。相当ご立腹の様子だ。
   ただ、その言動からすれば、相手に対して追撃の手を放ってくれているようだ。

    実際にギルド職員は中立を保たねばならないが、このカス共の言動は常識を逸している。
   しかも、彼女は既に前科を見ているため、それに対しての痛烈な一撃である。

リドネイ「・・・あまり、舐めた真似をしない方が身の為だ・・・。」

    そんな彼女に加わり、更に追撃をするリドネイ。恐ろしくゆっくりと、日本刀を鞘から抜き
   放っていく。それを更にゆっくりと、目の前の連中に向けていった。

    と言うか彼女、この様な言動ができたのか・・・。恐らく、これは悪乗り的な感じだろう。
   ただ、テネットと同様に、目線は全く笑っていない。ニヤついているのはご愛嬌だが・・・。


ミスターT「さて、どうするんだ? 一戦交えたいのなら応じるが?」

    ここは俺の方も悪乗りしてみよう。腰の携帯方天戟を颯爽と展開し、リーダーだと思われる
   愚物に矛先を向けた。何処から長身の戟を出したのかと、驚愕している連中だ。

    この獲物の展開だが、実際にはかなり危ない感じだった。目の前の幼子に当てないように
   抜き放つ事であるが、一応問題なく展開できた。勢いで行ってしまったが、当たらないで本当
   に良かったと思う。

ミスターT「街の外なら問題あるまい。問答無用、貴様等を確実に殺してやる。」
ウェイス「そうだな、発端はコイツ等が先だったしな。」
サイジア「誰が悪党か思い知らせる必要があるかと。」

    俺の過剰なまでの発言に、更に悪乗りしだすはウェイスとサイジアだ。特にウェイスは、
   出逢った時の印象から、非常に寡黙な人物達だと思っていた。だが実際は、かなりの熱血漢の
   ようである。

    と言うか、冒険者ギルドの一角が完全に修羅場そのものだわ。それでも、この流れを黙認
   している周囲を窺えば、それだけこの連中に対して良い印象を持っていないのだろう。


冒険者1「・・・覚えておけ、必ず後悔・・・?!」
ミスターT「要らぬ一念だ。それを抱くぐらいなら、素直に殺し合いをしようと言った筈だが?」

    既に退くしかなくなった連中。だが、リーダー格の愚物が負け惜しみの台詞を口にしだす。
   最早、哀れとしか言い様がない。

    そこに、態とらしくトドメの一撃を放ってみた。携帯方天戟を相手の喉元に突き付け、何時
   でも殺害が可能なのだと叩き付ける。あと一押しすれば、その切っ先が相手の喉を突き刺す
   だろう。無論、“今は”そこまでは行わないが・・・。

    完全にダーティーそのものだが、決して悪役ではない。悪役はこのカス共にくれてやる。
   そもそも誰がどう見ても、何故にこうなったのかは火を見るより明らかだ。

    有無を言わさずの様相に、脱兎の如く去って行く連中。その後を、態とらしく獲物を構え、
   歩いて付いて行く素振りを見せてみる。この手の愚物には、とにかく徹底的な威圧に限る。

    店外に出ても、軽い追撃を見せてみた。留まる所を知らない様相に、流石に怖じだしたの
   だろう。今以上の速度で去って行った。

    その様子を、冒険者ギルド前で仁王立ちをしつつ睨み続けた。何時の間にか傍らには、4人
   やリドネイも身構えていた。中立たるテネットすら、一緒に居る始末である・・・。



テネット「あはー・・・お見苦しい所をお見せしました。」
ミスターT「いや、逆に巻き込んでしまって申し訳ない。」

    愚物事変が終わり、一同してテーブルへと戻って行く。そこにテネットが訪れ、深々と頭を
   下げてきた。先程の言動などの謝罪なのだろう。その彼女に、俺の方も頭を下げる。

    ギルド職員という役割から、中立の立場を貫かねばならない。それなのに、今回は一緒に
   共闘した形になった。今後の彼女の立ち位置が大丈夫かと心配になる。

エルフィ「ミスター、テネットさんは副ギルドマスターの1人なので大丈夫ですよ。」
ミスターT「はぁ・・・人は見掛けに寄らない訳か・・・。」

    そんな俺の心情を察してくれたのか、エルフィが補足をしてくれた。何とこの美丈夫は、
   副ギルドマスターの1人だと言うのだ。それなのに、先程の言動やら各種雑用やらを行う姿を
   見ると、普通の職員にしか見えない。

テネット「いえ・・・副ギルドマスターの補佐となります。」
ナディト「どちらも同じ様なものっすよ。」
ミスターT「ハハッ、そうだな。」

    副ギルドマスターではないと語るが、ナディトの言う通り、殆ど変わりないものである。
   肩書きこそ副ギルドマスター補佐であろうが、実際に実働しているのは彼女に変わりはない。

    こうした実務的な役職は、実際に実働した人物ほど真価を発揮している。無論、彼女達を
   纏める存在は必要だ。その纏め役を支えるのが、この美丈夫たるテネットである。

    彼女との初見の時に、何らかの気迫めいた雰囲気を察知した。それがまさか、この様な強者
   だったとは思いもしなかったわ。


ミスターT「一応、今後も警戒してくれ。あの手のカス共は、必ず報復行動をしてくる。」
テネット「そうですね・・・そうした方が良さそうです。」

    今後の事を予測し、テネットに警戒を強めるように打診した。あの手の連中は、必ず報復の
   行動をするのが通例だ。地球でも全く同じ行為が横行している。

    それらを踏まえて、あの場で殺害に至ろうと思ったのが本音なのだが。後々の火種になり、
   それにより被害が拡大するのなら、即座に殺害するに限る。

サイジア「大丈夫だと思いますよ。既に2つのペナルティを喰らっていますし。」
ウェイス「既に、指名手配になっても問題ないしな。」
ミスターT「それこそ油断そのものよ。あそこまで至ったカス共は、即座に始末するに限る。」

    素っ気無く語ると、顔を青褪める一同。警護者では当たり前の行動なため、別段おかしい
   所は一切ない。先にも挙げた通り、後の火種になるぐらいなら、早い段階で消すに限る。

    一応、“4つの武装”は持ち合わせてはいる。実に即効性があり、一撃必殺を放つ獲物だ。
   ただ、パワーバランスを重視するなら、これは最終手段として使うしかないのも実状だが。

    携帯獲物と刀群だけを持参して、異世界へと舞い降りれば良かったのかも知れない。要らぬ
   力は全てを壊しかねないのだから・・・。



リドネイ「ところで、マスター。こちらのお嬢様はどうされるのですか?」

    リドネイの言葉で我に返る。周りの面々も同じ様で、一同してフードを被った幼子の方を
   見る。椅子に腰掛けた彼女は、ただ黙ったまま俯いていた。

ミスターT「改めて、お初にお目に掛かる。俺はミスターT。お嬢さんは?」

    彼女の前に片膝を付き、目線を合わせつつ自己紹介をする。雰囲気からして、とにかく幼子
   としか言い様がない。それでも、彼女に内在する力が凄まじい事を感じ取れる。

    徐にフードを取りつつ、こちらを見つめてくる。露わになった姿に小さく驚いた。頭に犬の
   様な耳が付いていたからだ。所謂、獣人という種族だろう。

幼子「あ・・あの・・・初めまして、トーラと言います・・・。」
ミスターT「トーラさんか、よろしくな。」

    今も怖じている彼女の頭を、右手で優しく撫でてあげた。こちらの一念を察したのか、笑顔
   で見つめてくる。ティルネアやリドネイにも無意識に行ってしまった厚意だ。

    地球でも過去に、こうした厚意を行っていた。周りが言うには、俺は無意識にその行動を
   行っているらしい。気付いた時には行動していた事もザラだ。

    まあ、間違った行動ではないため、別段気に止める必要はないだろう。ただ、失礼に値する
   場合があるので、今後は注意する必要が出てくるが・・・。

テネット「これは・・・トーラさんは狼人族でしょうか?」
トーラ「はい・・・。」
リドネイ「狼人族ですか、珍しいですね。」

    テネットとリドネイにより、トーラの種族が挙げられた。獣人の一種で、狼人族との事。
   となると、頭の犬耳と思ったそれは、狼耳と言った感じか。

    中半2へと続く。

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