アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第04話 追放の獣人 トーラの視点〜
    〜トーラの視点〜

    トーラと言います。目の前の恩人、ミスターTさんを見つつ、今までの流れを振り返って
   います。


    私の生まれは、遥か遠方の狼人族の集落です。まだ見ぬ大地に夢を馳せ、家族と共に旅に
   出たのが発端でした。その後、旅路の途中で家族と離れ離れになってしまったのです。

    私達の力は、多種族を遥かに上回る強さを誇っています。単体でも何ら問題なく活動する
   事も可能でしょう。しかし、私1人で家族を探すとなると、かなり厳しい様相でした。

    そこで、ローブなどを用いて身形を偽り、流浪の旅人と偽りました。その状態で、冒険者に
   加勢を申し出たのです。ですが・・・それが最悪の始まりでした。

    加勢を申し出た冒険者達は、街ではかなり有名の悪党共だったようです。私への悪態も最悪
   とも言える程のものでした。言われなき理不尽な暴言に、ただただ涙を流し耐えました。


    ラフェイドの街、冒険者ギルドに訪れた時です。そこでも暴言を吐かれ、流石に怒ったの
   ですが、今度は武力による威圧でした。その際に、グラスを私に投げ付けてきています。

    泣きながらギルドを出る際、とある人物とぶつかりそうになりました。そう、その方が、
   目の前で煙草を吸われるミスターTさんだったのです。


    翌日は、今まで生きてきた中で最も最悪の日でした。冒険者ギルドに訪れたら、冒険者達に
   一方的に追放を言い渡されました。理不尽の極みそのものです・・・。

    ですが・・・、そこに助け船を出してくれた方がいました・・・。先日、店外でぶつかり
   そうになったミスターTさんです。私の両肩に優しく手を沿えつつ、相手に対して反論して
   いったのです。

    すると・・・、更に助け船が・・・。ミスターTさんのお仲間らしき方々が、顕然と相手に
   反論していくではないですか。流石の冒険者達も、皆さんの凄みある姿に押されていました。

    決め手は、女性メンバーの言動。見た事もない武器を鞘から抜き放ち、その切っ先を相手に
   向けだしていました。そこにミスターTさんも、同じく見た事がない武器を抜き放って応戦
   しています。手足れと言うか何と言うか、凄いとしか言い様がありませんでした・・・。

    その後は言うまでもなく、怖じた冒険者達は去って行きました。しかし、あれで済むとは
   とても思えません。それはミスターTさん達も同じ思いのようでした。


    行く当てもなくなった私を、皆さんの仲間に迎え入れてくれた事も幸運でした。先の冒険者
   達は雲泥の差です。気迫自体が凄いとしか言い様がありません。しかも、新たに武器防具も
   見繕って頂いています。

    不思議だったのが、私に見合う武器を選んで下さった事でした。特大剣という武器が、私に
   合うとは思いもしませんでした。家族達と旅をしていた際は、ナイフなどの軽武器で戦って
   いましたので。そして、大盾にも驚かされました。私に扱えるかどうかと・・・。

    しかし、直ぐに実戦で真価を発揮しました。どうやら、ミスターTさんは私の腕力や体力を
   見定めていたようです。特大剣と大盾が非常に扱い易く、討伐対象となるパワーベアー達を
   何ら問題なく迎撃ができました。

    その後の乱入者たる、ブラックハウンド達と冒険者達には驚かされました。ですが、憎き
   冒険者達は簡単に倒されてもいます。上には上がいるのだと痛感させられました。

    そして、連中を一蹴したブラックハウンドを、ウェイスさん・サイジアさん・リドネイさん
   が簡単に撃破したのにも驚きました。あの4人の冒険者など、実に取るに足らない存在だった
   のだと痛感させられます。

    更には、皆さんの力を思い知ったのか、残りのパワーベアー達も引いていったのです。魔物
   や魔族は、力を持つ存在を明確に見定める能力があります。恐らくそれによるものでしょう。


    不意の襲来者には驚かされましたが、自然と恐怖は出ませんでした。皆さんと一緒なら、
   どんな強大な相手でも問題なく撃退できると信じられましたので。

    今後は、皆さんと共に、離れ離れになった家族を探せればと・・・。利用しようとは思って
   いませんが、今は皆さんのお力をお借りするしかありません。

    無事、家族と再会できたら・・・、引き続き皆さんと旅ができればと思います。そして、
   その切っ掛けを作ってくれたミスターTさん、本当に感謝しています・・・。

    今はとにかく、目指すべき目標に向けて、ただ進むのみです。頑張らねば・・・。

    〜トーラの視点、終了〜

    第5話へ続く。

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