アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜番外編 双子の妹2〜
メルデュラ「いらっしゃいませ。」
    暫く雑談に明け暮れていると入店者があった。既に午後4時を回っている。そろそろ夜食所
   であろうか。
   ダークと一緒に雑談に明け暮れていると、背後から抱き付いて来る人物がいるではないか。
   これには驚くのは言うまでもない。
ディルヴェズLK「先程はどうも。」
ミスターT「な・・何だ・・・ディルLKか・・・驚かせるなよ。」
   背後から抱き付いて来たのはディルヴェズLKだった。出で立ちがライダースーツからこちら
   と何ら変わらない長袖長ズボンに変わっている。相変わらず反則的な胸が衣服により一層引き
   立っている。何とも・・・。

    するとディルヴェズLKに抱き付かれたのを見たためか、周りの女性陣の顔が凄まじいまで
   に引きつっている。俺は間隔空けずに午前中の出来事を詳しく語った。そうでもしなければ
   修羅場に発展しかねない・・・。



シューム「へぇ〜・・・ディルちゃんに妹がいたんだ。」
メルデュラ「雰囲気がソックリですね。」
ディルヴェズLK「よく言われます・・・。」
    シュームとメルデュラの前では、流石のディルヴェズLKも赤子当然だ。それに2人や他の
   4人が俺と関係を持ったため、恋路に関してはエラい敏感に反応している程である。
シューム「また彼女の胸ばかり見てる・・・。」
メルデュラ「エッチ・・・。」
ミスターT「お前なぁ・・・。」
   丁度煙草を取ろうとした際、ディルヴェズLKの胸に目がいった。それを直ぐさま察知した
   シュームとメルデュラがヤジを飛ばしてくる。今は見たくて見た訳じゃないのに・・・。完全
   に嫉妬心丸出しだ。

ダーク「ミスターTさんは・・・胸が大きい方が好きなのですか?」
ミスターT「ま・・まあなぁ・・・野郎の性だよ。」
    自分の胸を見つめるダーク。彼女も美乳と呼ばれるほどの胸をしている。しかし他の女性陣
   には敵わない。この事で変なコンプレックスでも抱かなければいいが・・・。
ミスターT「お前にはこっちがあるじゃないか。以前よりも増して美しくなった顔が。」
ダーク「は・・はい・・・。」
   再び傍らにいるダークの頬を優しく撫でる。それに頬を赤くしている彼女。それでも赤面する
   などの表現を難なくこなして見せる。これには嬉しくて仕方がない。

シューム「女は胸も命だけど顔も命よ。まあでも命あっての物種だからね。ダークちゃんが生きて
     いる事の方が遥かに偉大よ。」
ダーク「ありがとうございます。」
    一歩間違えばダークは死んでいたかも知れない。それは紛れもない事実の1つだ。しかし
   偶然が重なり、今は事故前よりも強い存在になっている。実に不思議な事であろう。



    その後他のレミセンが慌ただしくなり、シュームとメルデュラが応援に駆け付ける。本店の
   担当は急遽俺になった。

    臨時のウェイトレスにダークとディルヴェズLKが担ってくれている。もっともバイト感覚
   ではあるが。


    ダークは根っからの負けず嫌いな性格、ディルヴェズLKは本職が警備官とあって出で立ち
   は十分合格点だ。それに爽やかな対応も心懸けている。

    やはりダークの爽やかな表情は癒される。あの苦節を感じさせない程だ。ディルヴェズLK
   も意外な程に爽やかな表情である。これには驚いた。

    今度機会があれば彼女達にも正式なウェイトレスを担って貰うのもいいかも知れない。


ミスターT「一通り終わったね。」
    丁度時間的に閉店の時間だろう、既に午後11時を回っている。ダークとディルヴェズLK
   も本腰入れてウェイトレスを担っていたため、凄まじいまでの疲労感を出している。
ディルヴェズLK「凄いですね・・・、この状態を毎日続けていらっしゃるのですか・・・。」
ダーク「私達ではとても続けられません・・・。」
   完全にグロッキー状態の2人。まあ用は慣れればどうにでもなるが、今の彼女達は初心者的な
   存在だから仕方がないだろう。

ダーク「あ・・明日も担当だったんだ。孤児院に帰りますね。」
ミスターT「一緒に行こうか?」
ディルヴェズLK「ああ、大丈夫ですよ。私が送ります。サイドカーをお借りしますね。」
ダーク「すみません・・・。」
    丁度駐輪場にサイドカーを止めてあったため、それを使うと語るディルヴェズLK。俺は
   店内の掃除などが残っているため、ここは彼女に送迎を依頼する事にした。サイドカーの鍵を
   ディルヴェズLKに手渡すと、ダークと共に本店レミセンを後にした。


    営業中に窺えた事なのだが、ダークもディルヴェズLKも格闘術に精通しているという。
   ダークは柔道・剣道、ディルヴェズLKは柔道・合気道・カンフー。どちらもかなりの腕を
   持つ強者のようだ。

    ボディガードも兼ねて俺が送ろうと思ったが、完全な取り越し苦労である。2人は俺よりも
   断然強い。何ともまあ・・・。



    店内の掃除と食器や調理器具の消毒なども終わり、俺は3階の自室に戻った。2階は休憩場
   として用いているが、殆ど使われていない。それに以前住んでいたアパートがない現在、俺の
   住居はここしかなかった。ちなみに4階もあるが、こちらは全く使っていない。

    俺もダーク・ディルヴェズLKも夜食は済ませており、後は明日へ向けて寝るだけとなる。
   だがまだディルヴェズLKが帰ってきていない。先に休むのは失礼極まりないだろう。



ディルヴェズLK「戻りました。」
ミスターT「お帰り。」
    暇があればプロレスゲームに勤しむ。かれこれ数十年ほどプレイし続けている。エリシェを
   暴漢から守った時や、格闘術大会での俺のスキルはここに精通している。つまり見様見真似と
   いう事だ。

ディルヴェズLK「ヴァルシェヴラームさん、お変わりないですね。」
ミスターT「知っているのか?」
ディルヴェズLK「以前数ヶ月ほど孤児院の警備に着いた事がありまして、その時にお知り合いに。
         貴方の噂はそこでもお伺いしています。」
    なるほどな。俺の情報はディルヴェズからのものではなかったようだ。ヴァルシェヴラーム
   が語ったとなれば、それは洗い浚いという事に繋がる。詳しく知っていても十分肯ける。


    俺はプロレスゲームを止めて片付けようとする。すると不意に背後から抱き付いてきた。
   誰がいようがいまいが、この厚意を平然として行う彼女。その肝っ玉はエラい据わっていると
   言える・・・。
ディルヴェズLK「暖かい背中・・・。」
ミスターT「積極的過ぎるわ・・・。」
ディルヴェズLK「思い立ったら吉日、貴方が先程仰っていたじゃないですか。」
   先程ここぞと思った瞬間がチャンス到来だと2人にアツく語った。それを早速実践しだした
   ディルヴェズLK。この後の展開が怖くて動き難い・・・。
ディルヴェズLK「全て運命ですよ。貴方が偶然ツーリングに出掛けた時、バイクが故障して立ち
         往生している私と出会った。偶然にしては出来すぎています。私はこれが貴方と
         運命的な出会いをしたのだと確信しています。」
   背中を抱き締める手に力が篭る。その瞬間を大切にしている事が窺えた。彼女も若くして世間
   の風に当たっているため、癒しの一時を痛烈に熱望しているのが見て取れる。

ディルヴェズLK「あの・・・今夜、一緒にいさせて下さい。」
ミスターT「・・・分かった。」
    ディルヴェズの肝っ玉の強さは目の当たりにしている。その双子の妹が彼女だ。それに女性
   という性別から、更に上乗せされているのは言うまでもない。
   ここで断ろうものなら、如何なる竹箆返しが来るか分かったものじゃない。それに素直に従う
   事が野郎として誠意ある対応である。


    一応シュームに今の現状を伝えた。するとそれを察知していたらしく、声を引きつらせても
   承諾してくれた。彼女に伝えれば、周りの女性陣も控えるのは言うまでもないからだ。

    ちなみにディルヴェズLKは愛情に飢えているようで、一晩共にしたいというのは一緒に
   寝たいという事だけのようだ。向こうの事を気にしていた俺は実に哀れだわ・・・。



ミスターT「大は小を兼ねるか。」
ディルヴェズLK「少し大きいですけど・・・。」
    お互いシャワーを浴び終え、そのまま下着とパジャマを着こなす。着替えを持参しなかった
   彼女に俺のパジャマを貸した。背丈は一緒なので十分流用できる。
   しかし相変わらず反則的な巨乳には目が釘付けになる。悲しき野郎の性は辛い・・・。
ディルヴェズLK「本当に胸がお好きなのですね・・・。」
ミスターT「あ・・いや・・・何、野郎の性でね・・・。」
ディルヴェズLK「でも女性の部分を見てくれて嬉しいです。殆ど男性と同じ生き方をしてきました
         ので。それに体躯から男性としか扱われませんでしたし。」
ミスターT「そうか・・・。」
   彼女が愛情に飢えている部分は、女性の部分を押し殺していた事もあるのだろう。本来ならば
   女性の姿で過ごすのだろうが、彼女の場合は男性として扱われていたと推測できる。
   メルデュラがその容姿にコンプレックスを感じていたように、ディルヴェズLKもまた同じ
   悩みを抱いているようである。

    俺はソッと彼女を抱き締め、そのままお姫様抱っこの格好にする。それに慌てふためく彼女
   だが、身体の方は満更でもないように委ねてくる。
ディルヴェズLK「は・・恥ずかしいです・・・。」
ミスターT「恥ずかしいも何も、俺以外に誰も見ていないよ。」
   抱きかかえるディルヴェズLKの額に、自分の額を合わせる。ヴァルシェヴラームも行った、
   癒しの行為の1つである。
ミスターT「・・・お前の重さと言っては失礼だが、この重さがお前の全てだ。虚像でも偽りでも
      ない。お前は俺の腕の中に存在している。過去がどうあれ、今を生きるお前自身の大切
      な実証そのものだ。もっと自信を持っていい。」
ディルヴェズLK「・・・ありがとう・・ございます・・・。」
   額を当てながら語り続けた。瞳を閉じながら、相手を包み込むかのように。それに声を出して
   泣き出す彼女。彼女も心の中では泣き続けていたのだから。


    少し腕が疲れてきたため、そのまま彼女をベッドに降ろした。その隣に俺も座り、再び彼女
   を胸に抱く。
ディルヴェズLK「・・・何だか悪い気がしてなりません。」
ミスターT「エシェラ達の事か?」
ディルヴェズLK「はい。殆ど恋仲を通り越して、夫婦に近い間柄と聞いています。それに他の5人
         の方々とも。嫉妬を抱かれてもおかしくないでしょうに・・・。」
ミスターT「う〜ん・・・周りの応対にはもう慣れたよ。それでもシドロモドロになるぐらいの感情
      は抱かないでくれている。お前やダークなど、心の癒しを求めている人物には激励しろ
      とも言っているしね。」
   とは言うものの、激励が終わった後の6人からのアプローチは尋常じゃない。表向きは自由に
   動いてもいいと言うが、内面は嫉妬心剥き出して向かってくる。俺は1人しかいないのに、
   勘弁して欲しいものだ・・・。
ディルヴェズLK「それだけお好きなのですね、貴方の事が。」
ミスターT「だなぁ・・・。俺が言うのも何だが、彼女達には感謝し切れないよ。」
ディルヴェズLK「フフッ、貴方らしいです。」
   彼女とは知り合って数時間しか経っていないのに、まるで長い間の付き合いみたいな感覚に
   陥る。これはやはり兄のディルヴェズと雰囲気が同じために思うのだろう。


    暫く胸に抱いていると、こちらを押し倒してくる彼女。そのまま俺の上に覆い被さり、再び
   胸に頭を埋めてくる。この積極性は6人を遥かに凌駕している。言葉よりは行動で語るのが
   彼女のスタイルだろう。

    見た目はメルデュラクラスの体格を持つ存在なのに、心を許した相手になら徹底的に甘える
   姿には驚くしかない。俺を心から信頼してくれている、これは素直に嬉しい事だと取るべき
   だろうな。



    沈黙した雰囲気が辺りを漂う。聞こえるのはディルヴェズLKの一際大きい鼓動のみだ。
   遠くの道路で走っているだろう、車両の音が微かに聞こえるぐらいである。

    徐に顔を上げるディルヴェズLK。すると俺の顔を両手で掴み、そのまま唇を重ねてきた。
   この積極性は兄のディルヴェズと同じだろう。いきなりで驚くのは言うまでもない。



    長い口づけを終えて、再び胸に顔を埋めてくる。その瞬間を心に刻むかのように、長い抱擁
   が続いた。
ディルヴェズLK「今だけは・・・私だけを見て下さい・・・。」
ミスターT「ああ、分かったよ。」
   俺の言葉に小さく微笑むと、そのまま瞳を閉じるディルヴェズLK。その彼女をソッと抱き
   締め、背中を優しく叩きながら頭を撫でてあげた。



    夜の営みまでにはいかないが、俺にベッタリ抱き付いて眠るディルヴェズLK。その表情は
   見た事がないような穏やかさだ。今の今まで落ち着いて眠れた事がなかったのだろう。

    かく言う俺は寝返りも打てず、ただ抱き枕のようにジッとしているしかなかった。しかし
   彼女の表情を見れば、要らぬ考えなど消え失せていく。心が洗われるようである。


    この愛情表現は愛しい6人とは全く異なるものだ。リュリアでさえベッタリとまでは寄り
   添ってはこない。それだけディルヴェズLKの心に隙間があり、淋しかったと言えるだろう。

    俺にできる事と言えば、こうして彼女の思いをひたすら受け続けるだけだ。今は彼女の思う
   がままにさせてあげよう。それが俺なりの労いの行動なのだから。

    ディルヴェズの双子の妹。その彼女の心の支えになれた事に、俺は心から感謝をした。

    双子の妹・終

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