アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜番外編 生き様を語る1〜
    3年間のアメリカ遠征から帰還して数ヵ月後。ヴェアデュラを育てつつ、他の女性陣から
   アプローチを受けている。それでも心から俺を好いて慕ってくれている。6人の女傑は正しく
   俺の愛しい人達だ。

    また数ヶ月前にダークを助け、そしてディルヴェズLKと知り合った。この2人も自分達の
   生き様を貫き通している。思いの丈を俺に向けているのが何とも言えないが・・・。



ミスターT「ホームルームをですか・・・。」
    本店レミセンのカウンターでナツミYUと語る。それは臨時の教師を担って欲しいという
   内容だった。
ナツミYU「高校3年の最終課程にね、未来へ向けて語り合うという項目があるんだけど。今も伝説
      の生き様を刻み続けている貴方なら、適任かなと思って。」
ミスターT「生き様を、か・・・。」
   ナツミYUの言葉で改めて振り返る。俺自身の生き様はどうだったのかと。人に誇れるような
   存在になったのだろうか。ただ単に惰性に走り、何も得ぬまま今に至ってしまったのか。
   周りからは偉大だと語ってくれているが、俺自身は本当に誇れるような生き方をしてきたので
   あろうか・・・。

ミスターT「・・・俺は、周りに誇れるような生き方をしてきたのですかね・・・。」
ナツミYU「何を言うのよ、貴方の生き様は本物よ。躯屡聖堕チームの一件や、地域や社会に貢献
      してきたのは紛れもない事実よ。今も貴方を慕う数多くの人々がいる。それは貴方自身
      が勝ち得た何よりの生き様そのものじゃない。」
ミスターT「・・・そう言って頂けると嬉しい限りです。」
    ああ、周りはしっかりと見ていてくれていた。俺自身は意識せずに今に至るが、その生き様
   は周りをも変えるほどのものだったようだ。これは失言をしてしまった・・・。

ミスターT「申し訳ない、弱みがでてしまって。」
ナツミYU「気にしないの。誰が何と言おうが、貴方は貴方の生き様を今に刻んでいる。これからも
      貴方の生き様は刻み続けるのだから。」
    元シークレットサービス故に、俺の据わった心構えと生き様は鋭く見抜いてくれている。
   ナツミYUも地元の学校全体を統括する校長だ。それに生徒の立場になって行動している。
   彼女も俺と同じ不動たる生き様を胸中に抱き、今を生きる女傑なのだから。
ミスターT「了解です、担いますよ。」
ナツミYU「ありがとう。」
   満面の笑みを浮かべて喜ぶ彼女。この笑顔はアサミとアユミにそっくりである。流石は双子の
   母親だろう。



    俺はナツミYUと共に女子高の校長室で打ち合わせをしている。高校のホームルームでの
   臨時教師役とあったため、普通の高校を想像していた。だが・・・地元の高校は女子高しか
   存在しない。つまり生徒は全員女性だという事だ・・・。

ミスターT「これしか正装がなかったので・・・。」
ナツミYU「フフッ。タキシード姿、冴えているわね。」
    正装を用意したつもりだったが、以前クルーザーで晩餐を楽しんだ時に用いたものを拝借
   している。あの時着用したタキシードがこの上なく着心地がいいのだ。
   まあこれもエリシェの計らいにより、罷り通ったものなのだが。何とも・・・。
ナツミYU「覆面は取らないでね。」
ミスターT「大丈夫ですかね・・・。」
ナツミYU「君の事を知らない生徒はいないわ。もっと胸を張りなさいな。」
   う〜む、覆面を着用する教師か。異様極まりないな・・・。まあ覆面の風来坊はこれからも
   続いていくのだ。これは押し通す方が礼儀と言えるかも知れない。


    打ち合わせをしていると、校長室に入室してくる人物がいた。俺はその人物を見て驚いた。
   何とスーツ姿のウィレナだったのだ。
ウィレナ「こんにちは、マスター。」
ミスターT「・・・ウィレナなのか、見違えたよ・・・。」
   以前はショートカットが印象深い女の子だったのが、今は金髪のロングヘアーが似合う美女に
   なっている。そう言えば彼女もラフィナと同じく24歳だっけか。成長したものだ。
ナツミYU「ウィレナさんは今、教育実習生として女子高に勤務しています。直に教師として生まれ
      変わりますよ。」
ミスターT「教師か・・・凄いな。」
ウィレナ「マスターには到底敵いませんよ。」
   恐縮気味に語るウィレナ。それでも肝っ玉がエラい据わっている。身体から滲み出るオーラは
   凄まじいものだ。

ナツミYU「数日間、ウィレナさんと行動をして下さい。3年のクラスのホームルーム全部を担当
      して頂きます。」
ミスターT「ふむ・・・。」
    多くて3クラスぐらいだろうか。それを数日間掛けて回り、俺の生き様をレクチャーして
   いくようだ。複数に分けて、か・・・。う〜む・・・。
ウィレナ「あの・・・私とでは・・・嫌ですか?」
ミスターT「あ、ちゃうちゃう。大凡3クラスぐらいあったとして、そこに数日間掛けて回るのは
      面倒かなと思ってね。ならいっその事、全クラスを相手に語った方がいいかなと思った
      だけだよ。」
ウィレナ「そ・・そうでしたか・・・。」
ミスターT「お前みたいな美女との共闘を蹴るようなら男と言えないさ。こんなに可愛いのに、失礼
      極まりないよ。」
   フォローのつもりで語ったのだが、顔を真っ赤にして俯く彼女。事実そうなのだから仕方が
   ない。エシェラ達に匹敵する美貌を兼ね備える存在だからな。


ナツミYU「相変わらず女性キラー全快ね。」
ミスターT「何なんですかそれは・・・。」
ナツミYU「以前卒業したラフィナさん。貴方がアメリカに行く前から大人気だった彼女が、恋心を
      抱く相手として誰もが知ってるわよ。」
    俺がアメリカに行く前も人気があったラフィナ。行った後の事は知らないが、ナツミYUの
   語る事から大変な事になっていそうだ・・・。
ナツミYU「それに君は知らないだろうけど、ウィレナさんも貴方の事を好いているから。」
ウィレナ「ちょ・・ちょっと校長っ!」
   ウィレナが今まで以上に赤面しながら遮ってくる。う〜む・・・彼女にも惚れられたのか。
   エシェラ達が聞いたら何というか・・・。いや、既に知っているかも知れないな・・・。
ナツミYU「それだけ魅力的だという事よ。ディル君も貴方を心から慕っている。それにアマギH君
      やユリコYさんも同じ。男女問わず人気なのは、貴方の心の広さと優しさがあるから
      なのよ。」
ミスターT「・・・ありがとうございます。」
   俺の生き様はそこにある、か。ナツミYUの語る言葉は、今までの俺の布石を語っている。
   周りを鼓舞し激励する、それが俺の生き様だ。昔も今もこれからも変わりはない。


ナツミYU「合同ホームルームの件は面白そうね。教師からの目線だと考え付かないけど、部外者の
      意見は参考になるわ。」
    ナツミYUとウィレナと一緒に指定の教室へと向かう。今日は3年の全クラスに挨拶だけと
   なる。ホームルームは後日という事になるようだ。
ミスターT「いや、単純に複数のクラスで同じ事を言うのは煩わしいかなと思ったので・・・。」
ナツミYU「こらっ、それじゃ教師失格よ。」
   確かにそうだろう。同じ事の繰り返しをして、生徒達を育むのが教師の役目だ。俺の言葉は
   教師失格の何ものでもない。

ナツミYU「でも、君の言う事には一理あるわね。そのクラスで熱弁したのを、思い出して語るのは
      難しいから。それに君の役目は教科書通りの指導じゃないから。心から相手に語る魂心
      の激励だからね。」
ウィレナ「私もマスターの魂心の激励を聞きたいです。教師として何が必要なのか、それはマスター
     の生き様にあると確信しています。」
ミスターT「魂心、か・・・。」
    憧れの目線で見つめてくるウィレナ。それだけ期待を寄せているという事か。これは簡単な
   激励では首が飛ぶだろう・・・。魂心の激励をするのが、臨時教師の俺の勤めだな。


    3学年は俺が予測で語った通り、3つのクラスで構成されていた。1クラスに30人、合計
   90人の生徒と相手になる。だが・・・相手は全員女性だ・・・気が持つだろうか・・・。

    まあウィレナが補佐してくれるなら、俺は思う存分戦うのみだな。それが今も続く覆面の
   風来坊たる俺の生き様だ。



    3年1組のクラスの前で待つ。中ではナツミYUとウィレナが生徒に今後の内容を語って
   いる。これはこれで緊張するが、警備の着任よりは甘い程度だろうか。
   まあ警備の着任は命に関わるものだ。ここでは比較対照にならないだろう。何とも・・・。

    それにこの考えは失礼極まりない。生徒達は明日を掴む為の知識を学んでいるのだ。その
   彼女達の生き様を否定するような発言は酷過ぎる。

    ともあれ、どんな戦場であろうが生き様は貫き通す。それが俺の役目なのだから・・・。



ナツミYU「それでは紹介するわ。貴女達もよく知っている人物よ。」
    ナツミYUが語ると、ウィレナが扉を開けてくる。そこに俺はゆっくりと入室していく。
   すると割れんばかりの大歓声が教室に響いた。そんなに有名なのかね・・・。
女子生徒1「すご〜い、伝説のマスターじゃないですかっ!」
女子生徒2「校長を口説き落としたという、あの伝説の風来坊・・・。」
   ・・・何か変な解釈をされている。それに伝説って何なんだ・・・。更にはナツミYUを口説
   き落としたってのは・・・。

ミスターT「え〜・・・数日間の間、君達の未来への礎となるよう激励を任されました。ミスターT
      といいます。至らない所が多く存在しますが、最大限の激励ができればと思います。
      よろしくお願いします。」
    俺なりの自己紹介を行い頭を下げる。以前7年間の風来坊の旅路で、働き先で自己紹介を
   した時の感覚が甦ってくる。実に懐かしいわ・・・。

    自己紹介を終えると割れんばかりの大拍手が教室に響き渡る。う〜む、何だか恥ずかしい。
   それでも第一印象はよく与えられただろう。今後の俺次第だな・・・。


    その後2組・3組へと自己紹介に回る。1組の時のように大歓声で向かえられた。この姿に
   ナツミYUとウィレナは唖然としているのが印象深かった。
   う〜む・・・はたして上手く激励できるだろうか。何だか心配になってきたわ・・・。



    本店レミセンに戻ると、一同が出迎えてくれた。それに何だか頬を染めている。ああ、俺の
   出で立ちを見ての事だろうな。何とも・・・。

    カウンターに座り、一服をしながら紅茶を啜る。今日の喫煙は凄まじく癒される。それだけ
   先の自己紹介が効いたのだろうな・・・。

シューム「ウィレナさんがねぇ〜・・・。」
ミスターT「あの様子からすると・・・嫌な予感がしてならない。」
ラフィナ「何を仰っているのですか。マスターに好意を抱いているのは前々から知っていますよ。」
ミスターT「あらま・・・既に知ってたのか・・・。」
エシェラ「何だかなぁ・・・、女心に疎すぎだよ・・・。」
    やはり既にウィレナの胸中を知っていたようだ。まあ、女性は恋路に関して敏感だからな。
   見事としか言いようがない・・・。
エリシェ「アサミ様とアユミ様も教師に向けて努力していますよ。ナツミYU様みたいに、素晴ら
     しい教師になるようにと。」
ミスターT「あの2人なら達成するよ、間違いなくね。」
   ナツミYUを母に持つアサミとアユミだ。達成しない訳がない。これこそ愚問というものだ。
   ターリュとミュックに勝るとも劣らない心の強さを持っている。実に素晴らしい事だ。

シンシア「マスター、そろそろマンガ家へ向けて動こうと思います。」
ミスターT「そうだな、お前ならできるよ。」
    シンシアの画力は凄まじいものだ。既にマンガ家と言えるレベルにまで至っている。それに
   何度かマンガ雑誌に向けて原稿を投稿している。内容は恋路に走る女性を中心とした内容が
   多いが・・・。
メルデュラ「シンシアさんは凄いですよ。ご自宅の壁に原画を大量に貼って、それを見つつ努力して
      いらっしゃいますから。」
ミスターT「凄いよな・・・。」
シンシア「買い被りですよ、まだまだ未熟です。」
   恐縮気味に語るシンシアだが、彼女の事だから達成させるだろう。それぞれの女性陣が自分の
   生き様を刻んでいる。この姿は実に嬉しいものだ。

シューム「でも・・・貴方の姿を見ると欲情しそう・・・。」
    カウンター越しに流し目を送りながら語るシューム。俺の本来ある魅力とタキシードの姿に
   当てられたのか、今まで見た事がないほどの雰囲気である。そんなに俺の姿は魅力的なのか。
ミスターT「お嬢さん、俺に惚れると・・・火傷するぜ。」
   その雰囲気に悪乗りし、キザったらしい台詞を語る。大体はここで反論が来るのが通例だ。
   しかし今の流れではより一層赤面している。更に他の女性陣も同じである。これには正直驚く
   しかない・・・。
シンシア「う〜ん・・・焦がされてみたいです・・・。」
エシェラ「貴方にならグリルチキンにでもなって、思う存分食べて欲しいものです・・・。」
ミスターT「・・・普通さ、反論ぐらいしろよ・・・。」
   既に俺に対してベタ惚れ状態の6人には、こういった外見と内面を併せた口説きには為す術が
   ないように思える。それでも俺の事を思ってくれるのは嬉しい限りだ。



    明日、学園での生き様を語る事になった。その前日は俺自身の喫茶店運営を休み、明日の
   スピーチに向けて原稿を書く事にした。

    本店レミセンの3階の自室で、テーブルに向かい紙にペンを走らせる。思い付く限りの内容
   を記述していく。当日頭が白くならないようにしないとな・・・。う〜む・・・。


リュリア「こんにちは。」
ミスターT「よう。」
    そこに学生服を着込んだリュリアが現れる。3年振りに会った時よりも大人びいている。
   物事を見定められるような年頃になった証拠だろう。
リュリア「母から聞きました。何だか大変そうですね・・・。」
ミスターT「うむ・・・。」
   手洗いとうがいを済ませると、俺の背中に抱き付いてくる。この愛情表現は3年振りに帰郷
   してから全く変わらない。

ミスターT「リュリアも前と比べて胸があるしな。」
リュリア「もうっ・・・エッチなんだから・・・。」
    頬を染めて恥らうが、態とらしく胸を背中に押し当ててくる。流石はシュームの娘だな。
   油断すると喰われるのは言うまでもない。実に怖ろしい・・・。
リュリア「でも・・・あったかい背中・・・。」
ミスターT「ありがとう。」
リュリア「私もお兄さんに愛されたい・・・。」
ミスターT「か・・勘弁してくれ・・・。ただでさえ6人の相手をして大変なんだから・・・。」
リュリア「フフッ、それだけ大好きだという証拠ですよ。」
   日に日に増していく俺への恋心。今のリュリアが大人びいているのは、俺に対する一念が女性
   へと成長させているのだろう。

ミスターT「でも・・・お前が心から望むなら、何れ向き合う必要があるな。」
リュリア「先ずは母さんや姉さん達を幸せにしてあげて下さい。」
ミスターT「そうだな・・・。」
    リュリアには何度となく助言となるアドバイスを受けている。特に彼女自身がまだ男女関係
   も体験していないのに、まるでそれを分かるかのような的確なものだ。


ミスターT「・・・こんな流れでどうだろう。」
リュリア「いいんじゃないですか。」
    出来上がった原稿をリュリアに聞いて貰った。少し難しい部分があるが、生き様の表現は
   伝わっているみたいである。
リュリア「でも私からすると、原稿なしで話した方がいいかも知れません。」
ミスターT「そうだよなぁ・・・。一応原稿は保険として持っておくか。」
リュリア「お兄さんの熱意なら必ず伝わりますよ。」
ミスターT「フフッ、ありがとな。」
   家族内で2番目に幼いリュリアに激励され、心が幾分か楽になった。こういう場合は大人の
   意見より子供の意見の方が重宝する。やはり子供には敵わないわ・・・。

    後半へと続く。

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