アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜番外編 大きな心1〜
    先日はラフィナの後輩であるトモミと過ごした。彼女も奥手なのだが、据われば凄まじい
   力を発揮する女傑でもある。

    ラフィナと同じ境遇で知り合ったトモミも、今となっては大切な人の1人と言えるだろう。
   やはり女性は強い、野郎など足元にも及ばないわ・・・。



    それから数日後、ウインドとダークHからお願いがあると切り出された。それは先月警察官
   になった人物に指導をして欲しいとの事だった。

    過去にライディルからウインドとダークHを育てて欲しいと依頼された時と同じく、今度は
   2人から後輩の面倒を見て欲しいと言われたのだ。

    あの時は新人の2人も、今では立派な警察官の一員だ。関わった者としては、何だか嬉しい
   気分になる・・・。


    ともあれ、彼女達の心からの願いである。こちらも誠心誠意応じねばならない。これも俺の
   生き様の1つである。



ミスターT「・・・・・。」
    本店レミセンのカウンター奥で待ち続ける。俺の性格から待つのは性分に合わない。既に
   何本も煙草を吸い続けているわ・・・。
メルデュラ「今回どなたがいらっしゃるのかはお聞きで?」
ミスターT「いや、まだ聞かされていない。」
メルデュラ「誰がいらっしゃるのでしょうかね・・・。」
   メルデュラが語る通り、誰が訪れるかという事は一切聞かされていない。一種のサプライズと
   言えるだろうが、現状が現状なだけに思えないのも確かである。

ミスターT「・・・メルデュラさ、口紅変えたかい?」
メルデュラ「え・・・わ・・分かります?」
ミスターT「普段以上に女らしくなってるからさ。」
    先程シュームと交代してから、メルデュラとは面と向かって会話はしていなかった。来訪者
   や今後の事などを考え、物思いに耽っていたためだ。今初めてメルデュラの口紅が変わった事
   に気が付いたのだ。
ミスターT「ごめんな、もっと早くに気付くべきだったね・・・。」
メルデュラ「い・・いえ・・・、気付いて頂いただけでも嬉しいです。」
   女性らしさをアピールしている彼女を指摘してあげた事に、頬を赤くさせながら喜んでいる。
   家族内で巨女であるメルデュラだけに、こういった女性的な部分の変化は直ぐに分かった。
   今の場合は俺が見なかっただけであり、一目見ただけで分かるのだから。


    メルデュラと雑談をしながら時間を過ごすが、相手の人物は一向に現れない。こうなると
   遅刻以前に事故などを連想してしまい、非常に遣る瀬無い気分になっていく。
ミスターT「悪い、少し仮眠するわ。来たら直ぐに起こしてくれ。」
メルデュラ「分かりました。」
   ウインドとダークHがデート当日に一睡もできなかった事がある。今度は俺が昨日から一睡も
   していない。それだけ今日の出来事が大きなものになると直感しているのだろうか。
   とりあえずメルデュラに起こして貰う事を確約し、俺はカウンターに伏せて仮眠を取った。



    俺は殆ど夢を見ない。精神的に疲れている場合は、過去の苦節が蘇って来る。エシェラの
   孤児院や本店レミセンでの出来事だ。それ以外では殆ど見るのは希である。

    心から安眠できるという事にも繋がるだろうが、最近はそれ以上の疲労が舞い降りる。6人
   からのアプローチが顕著に値するだろう。

    それでも彼女達が望むなら、誠心誠意応じねば俺の生き様に反する。どの様な行動であれ、
   それは紛れもない激励の1つであろうから。


    いずれ今以上を求めるようになるのは目に見えている。しかしそれらも受け入れられるよう
   になったなら、どれだけ心が楽になるだろうか・・・。

    まあ今は罪悪感に苛まれる事から抜け出せそうにない。これも俺の人生の1つであろう。
   ヴァルシェヴラームが語っていた、無理に変える必要はないという言葉も十分当てはまるか。

    う〜む・・・何とも・・・。



    どれぐらい仮眠していただろうか。不意に肩を軽く叩く衝撃で飛び起きる。それに周りは
   ビックリして目を白黒させていた。
ミスターT「ヤバい、遅刻するわ・・・急がないと・・・。」
メルデュラ「マスター、大丈夫ですから。」
   不意に起こされる場合、過去に何度かあった苦節も蘇る場合もある。風来坊の旅路から戻って
   来た時、気抜けしてマスター業務を遅刻しそうになった。それが蘇ったのだろう。
   そんな俺をメルデュラが落ち着かせてくれた。寝惚けている俺は混乱したかのように辺りを
   見回し、落ち着きを取り戻しだすとグッと疲労感が襲ってくる。
ミスターT「・・・寝惚けたか・・・。」
メルデュラ「ごめんなさい、慌てて起こしてしまいましたね。」
   落ち着くのを待ちながら目覚めの一服をする。それにメルデュラがコーヒーを用意してくれて
   おり、それをゆっくりと啜りだした。

メルデュラ「マスター、いらっしゃいましたよ。お隣の方がそうです。」
    ようやく意識がハッキリしてきた所を見計らって、メルデュラが紹介しだした。自分の左隣
   に目をやると、完全に目が覚めるような人物がいたのだ。
ミスターT「・・・リデュアスか・・・いや、違う・・・。お前さんは?」
   メルデュラも類を見ないほどの巨女で見慣れていたと思っていた。しかし寝惚けた状態で隣に
   いる人物を見たので、おそらく混乱を引き起こしたのだろう。隣の人物はメルデュラに匹敵
   するほどの巨女だったからだ。
女性「は・・初めまして・・・。リデュアスの姉の・・・リヴュアスと申します・・・。」
ミスターT「双子か・・・。」
   リデュアスの姉、リヴュアス。メルデュラの銀髪とは異なり、殆ど白髪に近い髪の毛の女性。
   それでいて俺を超える身長を誇っているのだ、威圧感は凄まじいものだろう。
ミスターT「お前さん1人で来たのか?」
リヴュアス「はい。ウインド先輩やダークH先輩にご迷惑を掛けられませんから。」
ミスターT「・・・なるほど、だから時間が掛かった訳か。」
   俺はリヴュアスが遅刻した理由を知った。それは間違いなく身嗜みに気を付けていたからだ。
   彼女の第一声や雰囲気で性格が自ずと分かり、それ故に遅れたのだろうと直感できた。

リヴュアス「初日から遅刻してしまい、本当に申し訳ありませんでした・・・。」
    慌てて謝罪しようと立ち上がろうとするが、その彼女の肩を持ち押し留める。この仕草は
   ウインドやダークHで十分慣れた。
   徹底的な教育により警察官としての基礎が刻まれている。詫びる時は徹底して詫びる、これが
   彼女達の一貫したスタイルだからだ。
ミスターT「事故ったかと思ったが、身嗜みで時間を取っていたんだね。」
リヴュアス「ど・・・どうしてそれを・・・。」
   俺の洞察力による回答に、目を白黒させて驚いている彼女。そんな彼女の頭を優しく撫でる。
   座高でも俺より高いため、幾分か無理をしての頭撫でではあるが・・・。
ミスターT「可愛いよ、それにありがとね。初日に全力を注いでまで対面してくれるのは嬉しいよ。
      ウインド達は警察官としてのスタイルを一切崩そうとしなかったが、お前さんは女性
      としての身嗜みを貫いた。こういう事前の準備は必要なものだよ。」
リヴュアス「は・・はい・・・。」
   赤面する表情も難なくやってみせるリヴュアス。俺が知る女性警察官とは一線を駕したものを
   持っているようだ。

メルデュラ「相変わらず女性キラーですね・・・。」
ミスターT「また言うか・・・。」
    一部始終を見守っていたメルデュラがヤジを飛ばす。無意識に労う姿は相手を揺り動かす
   ものの1つだ。男女問わず初対面での言動が勝負を決すると言える。リヴュアスに口説き文句
   に近い労いをした事に、ヤキモチを妬いているのが彼女だ。
ミスターT「ここまでして徹底的に身嗜みをしてくれたんだ。その彼女を労わずにどうするよ。俺の
      生き様に反するわ。」
メルデュラ「それはそうですけど・・・。」
ミスターT「でも遅刻は問題があるから、以後は十分気を付けてね。これが本庁出社などだったら、
      ライディル達に何を言われるか・・・。」
リヴュアス「い・・以後気を付けます・・・。」
   ライディル達の恐さを知っているのか、青褪めながら頷くリヴュアス。彼らの普段の物腰の
   柔らかさとは別に、怒った時はかなり厳しいと窺っている。彼女も過去に怒られた事がある
   のは十分頷けた。



ミスターT「さて、改めて自己紹介するか。もう知っていると思うが、ミスターTと言う。」
リヴュアス「リヴュアス=ハーズダントと申します。」
    改めて自己紹介をしだす俺とリヴュアス。やはり思うのが、その気さくのよさはウインド達
   を遥かに凌駕する。俺に対して自然体で接してくれているのだ。
ミスターT「ハーズダントって・・・あの人工生命体のか・・・。」
リヴュアス「ああ、シンシア様の件ですね。お書きになられているマンガで、名前に困っている事が
      ありまして。丁度ウインド様やダークH様がシンシア様とお会いになられた時、私の
      セカンドネームをお聞きになられたようです。」
ミスターT「それで使ったという訳か・・・。」
   シンシアならやりそうだ。ネタ不足に陥ると、何でもかんでも材料として使い出すのだから。
   見事というしかないのだろうな・・・。

リヴュアス「趣味は・・・その・・・プロレスを観戦するのと、実演するのが・・・。」
ミスターT「凄いな・・・。」
    恥ずかしそうに切り出すリヴュアス。その言葉に俺の瞳が輝いた。趣味程度にプロレスの
   ゲームをやる事から、今の自身のスキルへと発展している。エセプロレスファンとも言えるの
   だが、それなりにかじっているつもりだ。
リヴュアス「先輩からお聞きしています。マスターもプロレスゲームの発祥から、凄まじい格闘技術
      をお持ちと。」
ミスターT「見様見真似なんだけどねぇ・・・。」
リヴュアス「見様見真似でも、いざ繰り出そうとすると出来るものではありません。マスターの内在
      される格闘センスの素晴らしさが成し得るものだと確信します。」
   趣味が共通しているという部分からか、リヴュアスの表情が更に柔らかくなる。今まで知り
   合った女性陣とは、俺の趣味が合致する存在はいなかった。故に彼女の場合は自分のように
   思えてしまう。

ミスターT「というか気になったんだが、お前さん・・・歳は幾つだ?」
メルデュラ「マスター、それは失礼ですよ。」
    リヴュアスの歳の事を聞き出したら、間隔空けずにメルデュラに制される。確かに女性に
   対して年齢と体重を聞くのは失礼極まりないものである。
   しかし俺が気になったのは、妹のリデュアスもかなりの年齢だ。しかも双子となるなら、俺の
   推測した年齢は正しい事になるだろう。
リヴュアス「構いませんよメルデュラ様。私も妹と同じく32です。」
ミスターT「だ・・だよなぁ・・・。彼女より若く見えたからさ、気になってね。メルデュラとは
      6歳しか離れていないのか。」
   最近の男女問わず、それ相応の年代でも若く見える事が多い。それだけ充実した瞬間を生きて
   いるからだろうか。目的を持ち活き活きと過ごす人物は若々しいからな。
メルデュラ「リヴュアスさんも格闘技をやってらっしゃるからじゃないですかね。」
リヴュアス「メルデュラ様も格闘技に精通なさっているのですか?」
メルデュラ「一応柔道と合気道です。それでもかじった程度なので、シュームさんやナツミYUさん
      の足元にも及びませんが。」
   メルデュラも柔道と合気道を身に付けている。しかし他の女性陣とは異なり、極めるまでには
   至っていない。あくまでも基礎と基本技を覚えた程度だという。

ミスターT「リヴュアスはもちろんプロレスか。」
メルデュラ「プロレスというより、レスリングじゃないでしょうかね。」
ミスターT「あ・・・そう言えばそうだわ・・・。」
リヴュアス「私もメルデュラ様と同じく、柔道と合気道を学んでいます。」
    プロレスはプロフェッショナル・リングの短縮形。そこに所属する人物がプロレスラー。
   殆どがエンターテイメント的な流れなので、いくらなんでも警察官の護身用格闘術がプロレス
   というのは問題があろう。あくまで趣味程度の域として見るのが正論だろうな。
   それにオリンピックでも正式種目でもあるレスリング。こちらの方が正式な格闘術と言えるの
   かも知れない。

    何度も言うように、俺は格闘技には精通していない。人並以上に体格が優れているという
   点と、ゲームによるプロレス技を見続けてきたという部分。これが上手い具合にマッチし、
   現役の人物達に勝るとも劣らない力を発揮できているのだから。
ミスターT「う〜む・・・身内で格闘技に精通していないのは俺だけか・・・。」
リヴュアス「今さっきも述べましたが、護身用として柔道と合気道は学んではいます。ですが私も
      マスターと同じくプロレスが大好きですから。どちらかというとプロレス技を繰り出す
      方が楽ですので。」
ミスターT「いいねぇ・・・。」
   プロレス好きとはいえ、中々共通点として合致する事は希である。シュームもナツミYUも
   プロレスは好きだというが、観戦する程度で実際に行う事はしない。
   故にリヴュアスの本当にプロレス好きという部分は、モグリの俺でも十分理解できる。

ミスターT「メルデュラ、暫く任せてもいいか?」
メルデュラ「あ、はい。お任せを。」
ミスターT「リヴュアス、お前さんの実力を見せて貰うよ。」
    喫茶店の運営をメルデュラに任せ、俺はリヴュアスを連れて3階へと向かった。実戦形式
   での実力を見せて貰うよりは、もっといい方法が存在する。俺の推測が的中すれば、彼女は
   間違いなく猛者になれるだろうな・・・。



リヴュアス「・・・これがマスターの強さの秘訣でしたか。」
    俺はリヴュアスに長年遊び続けてきたプロレスゲームを披露した。以前ディルヴェズLKが
   泊まった時も、これに勤しんでいた事があった。俺の見様見真似プロレス技の原点とも言える
   のが、この作品なのだから。
ミスターT「時間が空いている時などで遊んでいるんだが、他の面々は見向きもしないわ・・・。」
リヴュアス「格闘術とプロレス、しいてはプロレスゲームは取っ付き難いですから。」
   リヴュアスもプロレスの意味合いをしっかり把握している。他の総合格闘技よりも取っ付き
   難いのがプロレスでもある。慣れればこれほど面白いものはないのだが・・・。
リヴュアス「あの・・・私にもやらさせて頂いても・・よろしいでしょうか?」
ミスターT「フフッ、そのために呼んだんだよ。是非ともやって慣れてくれ。」
   俺の言葉に瞳を輝かせる彼女。この言動を見れば、彼女が本当にプロレス好きだという事が
   窺える。これは慣れた時が楽しみだ・・・。


    最初は共にプレイし、基礎行動から慣れだした。他の格闘ゲームとは異なり、自由に動き
   回れるのがウリである。

    プロレスゲーム故に飛び道具は凶器を投げ付けるものだが、これは致命傷とは言えない。
   その殆どが肉弾戦であり、近接戦闘の塊とも言える。


    俺が見込んだ通り、数時間もしないうちに慣れだしたリヴュアス。相手との間合いを取る
   行動は現役警察官ならではと言えるだろうか。

    まあゲームと本職とでは天と地との差があるし、命を懸ける戦いが多い警察官には失礼な
   例え方だろうな。



ミスターT「またレフリーに誤爆させたよ・・・。」
リヴュアス「コンピューターが起きる前にフォール掛けらればよかったのに・・・。」
    俺は複数の人物とプレイするゲームでは絶対的なポリシーがある。それは対人戦を極力省く
   というものだ。どうしても本気になれず、その場の雰囲気を崩しがちなのだ。
   しかし相方とタッグを組んでプレイする場合は話が異なる。俺はサポート側になるのが得意な
   性格らしく、この時ばかりは凄まじい力が発揮できた。
   戦闘機などではウイングマンになるのだが、この場合はパートナーと言うべきだろうな。

ミスターT「マズい・・・、あ〜あ・・・取られたわ・・・。」
リヴュアス「ラダーマッチは運の要素が大きく絡みますねぇ・・・。」
    ありとあらゆる試合を行っていく。実力勝負の試合から運が絡む試合など多岐に渡った。
   リヴュアスとの相性は実に凄まじく、話さなくとも意思の疎通ができてしまう程であった。
ミスターT「凄いよなお前は・・・、僅か数時間でこれに慣れたんだから・・・。」
リヴュアス「い・・いえ・・・マスターには遠く及びませんよ・・・。」
   彼女の適応能力は目覚ましい。リヴュアスも生まれ持った潜在能力が凄まじいく、それが色々
   な部分で冴え渡る。ゲームのプロレスであっても、その力は活かんなく発揮されていた。


リヴュアス「あの・・・試してみたい技があるのですが、組み手をお願いできますか?」
ミスターT「ふむ、構わないが・・・。」
    一旦休憩に入り、紅茶を飲みながら雑談する。趣味が共通するとここまでのめり込むという
   のは、実に清々しい気分になる。そんな中、彼女が試したい技があると切り出してきた。
ミスターT「フローリングだと激突した時痛いな・・・寝室使うか。」
リヴュアス「え・・・ここで構いませんよ。」
ミスターT「俺はともかく、お前を怪我されたら周りに怒鳴られるからさ。」
リヴュアス「フフッ、分かりました。」
   俺の言葉に苦笑いを浮かべるリヴュアス。先程のメルデュラとの会話時でも、その一片を目撃
   したのだから。怪我でもさせたら一大事である・・・。

    後半へと続く。

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