アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜番外編 大きな心2〜
    寝室へと移動する俺達。ベッドの上にある布団類を降ろし、何もない状態にした。また毛布
   などをベッドの端に括り付け、ぶつかった際のガード役にする。

    ベッドに上がり対峙する俺とリヴュアス。先程の表情とは打って変わって、凄まじいまでの
   戦いの表情へと変わっていた。

ミスターT「どうする、俺も何らかの抵抗はした方がいいか?」
リヴュアス「では実戦形式でどうでしょう?」
ミスターT「実戦でいいのか・・・。」
    俺の実戦形式は精神的な威圧である殺気と闘気の放出による攻撃だ。格闘術に精通してない
   俺が相手に対抗できる唯一の手段である。彼女が本気を出すのなら、俺も本気を出さねば失礼
   だろう。

    小さく構え間合いを取るリヴュアス。俺も間合いを取り、ゆっくりと殺気と闘気を出した。
   このドギツイ殺気を初めて目の当たりにする彼女。徐々に表情が恐怖に慄いていく。


    意を決したのか、一気にこちらの間合いに詰め寄るリヴュアス。そのまま俺の身体を掴み、
   思いっ切り放り投げた。軽い技だと思っていたのだが、その技はかなり高度な技術を要する
   ものだったのだ。

    放り投げられた俺を更に掴み、そのままベッドへと叩き付ける。そのまま俺の背後に回り、
   首と身体を締め付けてきた。

    先程の技は駆け足様のジャーマンスープレックスで、ダウンした俺にタズミッションを放つ
   ものだった。プロレスを熟知しているだけに、他の女性陣とは異なる戦い方である。


    対する俺は一旦全身の力を抜き、油断したリヴュアスに反撃しだした。全身で俺の身体を
   押さえ込んでいたため、俺の力抜きで大きくバランスを崩す。

    俺は態と彼女をベッドに押し付ける。これが地面では効果がなく、ただ油断を作ってしまう
   だけだ。頭を押し付ける形で全体重を乗せると、焦った彼女が両手両脚を放してしまう。

    その一瞬を突くと、彼女の身体を抑えながら下半身を真上に持ち上げる。そのまま反対方向
   に倒れ込み、リヴュアスの頭に胸を押し当てた。


    ベッドから降りる形になった俺は、彼女の顔に胸を当てつつ首を締めていく。寝技のヘッド
   ロックはうつ伏せの状態で覆い被さるように放つのだが、この場合は仰向けの相手に技を放つ
   形になる。

    この間にも殺気と闘気を放っており、それに圧迫感による恐怖が合わさり大慌てする彼女。
   起き上がろうにもベッドに対して踏ん張れず、俺の押し当てヘッドロックに為す術がない。

    取り乱したように俺の腕にタップをするリヴュアス。これがシュームやナツミYUなら、
   別の攻略法を考えるだろう。プロレスに精通しすぎている故に、危険と判断したのだろうな。



    僅か数分の出来事だったが、リヴュアスの方は息を切らすほどに至っている。俺はと言うと
   相手の力を利用した形のカウンター技だったため、大して息切れはしていない。

    そういえばアマギHもカウンター技が得意だと言っていた。乱戦などは相手の力を用いて
   戦いを進め、疲労度を出させるのが戦略だという。

    う〜む・・・格闘術はいかに疲労しないで相手を制するか、か・・・。リヴュアスとの一戦
   で改めて教えられたわ・・・。

ミスターT「大丈夫か?」
リヴュアス「あ・・焦りましたよ・・・。」
    今も仰向けで息を整えるリヴュアス。その彼女の脇に頭を寄せて仰向けになった。丁度頭が
   隣同士になる。
リヴュアス「貴方の殺気と闘気に当てられないよう・・・先手必勝で挑んだのです・・・。狙うは
      短期決戦だと思いましたから・・・。」
ミスターT「俺は逆に長期決戦を考えていたよ。相手の力を利用して、疲労度を蓄積させていく。
      それでの長期戦なら、間違いなく相手はダウンするだろうから。」
リヴュアス「さ・・流石です・・・。」
   俺の戦略に脱帽の様子の彼女。というか思い付きの戦略で、これが俺の主体ではないのだが。
   それでもメルデュラ・リデュアスと互角の体格を持つリヴュアス相手に戦えたのは、紛れも
   ない勝因であろう。というか運の要素も大きいのだが・・・。

ミスターT「でも咄嗟に判断して動くのは凄いね。以前行った格闘術大会では、他の女性陣は相手の
      出方を見ながら動いていたから。」
リヴュアス「プロレスも他の格闘技も、グラップルによる組み手ですから。必然的に行動は決まって
      しまいますし。」
ミスターT「そうなると心理戦か・・・。」
    殆ど行動パターンが決まってきてしまう格闘術全般。最後の要は心理戦とも言えるだろう。
   格闘での駆け引きをしつつ、心での駆け引きをする。どちらも表裏一体のものだが、心理側が
   有利だと何とかなってしまうものだ。
リヴュアス「貴方は殺気と闘気による心理戦封じを基礎としています。そうなると相手は必然的に
      肉弾戦しか行えなくなってしまう筈です。そこにカウンターによる後手側長期戦闘を
      されると・・・為す術はありません。」
ミスターT「見事な戦略解析だわ・・・。」
   意図的に狙ってはいないのだが、俺の戦略は彼女が言った通りである。生物全てに内在する
   恐怖心を掻き立てる戦略には、同じ戦略を持つ以外に対抗手段はないと思える。しかし俺自身
   が殺気と闘気には免疫があるため、この手の戦略は一切利かないだろう。


ミスターT「まあ1つだけ弱点を挙げるとすれば・・・。」
リヴュアス「異性の色気、ですか?」
ミスターT「・・・鋭いな。」
    俺の言葉に間隔空けずに返す彼女。これには驚いてしまう。まあメルデュラとのやり取りを
   考えれば、自ずと分かってしまうのだろうが・・・。
リヴュアス「バク転する際、私の胸に触るのを躊躇っていました。それに押し当てヘッドロックの
      際も、頭を胸に当てないようにされていましたよ。」
ミスターT「・・・凄いな・・・。」
リヴュアス「戦いに関して全力投球すると意識がいかないものですが、貴方の心遣いが十分感じられ
      ましたので。」
   う〜む・・・俺の内なる思いを見抜かれた形になる。以前格闘術大会では見様見真似である
   マティマティカをダークHに放つ前、彼女の胸を触った経緯がある。あの場合は本気による
   組み手だったため、致し方がなく触れてしまったのだが。

リヴュアス「でも・・・ありがとうございます、女性として見て頂いて・・・。」
ミスターT「・・・お前も男性に見られたクチか。」
リヴュアス「この体躯故に仕方がありません。物心が付いた頃には、大女と言われた事がありました
      ので。」
    至って平然と語るリヴュアス。しかしその過去はメルデュラやディルヴェズLKのそれと
   酷使している。彼女の苦節はかなり大きいものだろうな・・・。


    半仰向けの状態で、リヴュアスの脇腹上を両手で掴む。そしてテコの原理を利用し、俺より
   巨体の彼女を持ち上げた。そのまま俺の方へと倒していく。仰向けバク転とも言えるだろう。
   何が起こったか分からないような表情を浮かべる彼女を、胸の中に抱き寄せた。

リヴュアス「あ・・え・・・そ・・そんな・・・。」
ミスターT「大丈夫、何も言いなさんな。」
    俺に覆い被さり、乗り上げる形で抱き付くリヴュアス。顔は大赤面し、慌てだしてしまう。
   そんな彼女の頭を優しく撫でて、背中を軽く叩いてあげた。
ミスターT「過去がどうあれ、リヴュアスはリヴュアスだ。どんな苦節があろうが、今こうしている
      事実は紛れもないお前自身の勝因の1つだよ。誰彼がどうこうじゃない、お前自身が
      どうあるべきか。それでいいじゃないか。」
リヴュアス「で・・ですが・・・。」
ミスターT「リデュアスの姉で孤児なら分かるだろうが、俺もシェヴが担当する孤児院出身だ。彼女
      からも同じ事を言われただろう。」
   彼女の根底にある悩み、それは紛れもなく過去の苦節によるもの。些細な事であれ、それが
   その人の一生に関わるような大きなトラウマになる怖れがある。

ミスターT「常々日々に強き給え、過去の賢人が語った魂心の語句。お前の背中にも大きな翼がある
      のだから、恐れずに前に進むべきだよ。」
リヴュアス「・・・そうですよね・・・。」
    俺の言葉に何度も頷く。それだけ自分自身が変わらなければならないと思っているようだ。
   それでも過去の苦節は粘り強く、自身の成長を抑制させてしまう。
   いや・・・自身の成長した姿が怖く、過去の苦節を原因として逃げているに過ぎないのか。
   俺も彼女も同じような悩みで、自らを蟻地獄でもがく蟻の如くの状態にさせているのだろう。

ミスターT「お前はお前が思っているほど弱い人間じゃない。意外とおっちょこちょいだが、誰より
      も人を見る目が優しく暖かいんだよ。そんなお前が弱い筈がない。」
リヴュアス「マスター・・・。」
ミスターT「さっき遊んでいたように、笑顔が輝かしい姿を頼むよ。そんなお前が好きだからさ。」
    最後の言葉で大泣きしだすリヴュアス。その彼女を優しく抱き締めてあげた。彼女の苦悩は
   どのぐらいかは分からないが、少しでも乗り越えられる事を願いつつ・・・。


ミスターT「これはみんなには内緒ね。」
    静かに呟きながら、彼女の顔を右手で持ち上げる。そのまま唇を重ねた。本当に軽い口づけ
   であり、ただ重ねただけに等しい。
   そして額を合わせて瞳を閉じる。ヴァルシェヴラームからもしてくれたであろう、癒しの厚意
   の1つである。それにより一層泣きながら抱き付いてくるリヴュアスであった。



メルデュラ「・・・やはり女性キラーですよ・・・。」
    泣き疲れて寝てしまったリヴュアス。その彼女をベッドに寝かせ、俺は静かに寝室を出た。
   すると壁に寄り掛かっていたメルデュラ。どうやら一部始終を聞かれていたようである。
ミスターT「・・・それでも彼女の苦節を少しでも克服できるなら・・・。」
メルデュラ「そうですよね・・・。」
   寝室の扉を閉めて、真隣の壁に寄り掛かる。メルデュラも同じ事で悩んでいた。体躯の事を
   言われた苦節があるのだ。
メルデュラ「もし・・・私がマスターの立場でリヴュアスさんの悩みを聞いていたら、全く同じ激励
      をしたと思います。」
ミスターT「お前もそうだったからな・・・。」
メルデュラ「はい。」
   同じ苦節で悩む同士、その苦しさは十分理解できるのだろう。しかしメルデュラはそれを糧と
   して乗り越える事を成し遂げたのだ。リヴュアスの未来像がしっかりとここに存在している。

メルデュラ「彼女の中に内在する苦悩は、おそらく私達以上のものだと思います。今後大変な事に
      なるかと思いますが、分け隔てない愛情をこれからも続けて下さい。」
ミスターT「そうだな・・・。」
    シュームによく言われる言葉を口にするメルデュラ。それに頷くと、そのまま喫茶店へと
   戻って行こうとする。その彼女を背後から優しく抱き締める。
ミスターT「ありがとう、メルデュラ。」
メルデュラ「い・・いえ・・・。」
   彼女の方が背丈が大きいため、俺が彼女の背後に抱き付いた形に見える。すると小さく膝を
   折り、胸の中に入れるようにするメルデュラ。その彼女を今度こそ胸の中で抱き締めた。



    その後のリヴュアスは見違えるように強くなった。些細な激励だったのだが、彼女にとって
   凄まじいまでの激励になったようである。そして体躯を最大限活用した行動をしだしたのだ。

    もっとも力仕事では彼女に敵うものは少なく、こういった部分では大活躍している。それは
   喫茶店のマスターとして活躍するメルデュラや、既に警察官として活躍しているリデュアスも
   同じである。


    彼女達が至れたように、リヴュアスもその苦節をも心から誇れるような大きな心を持って
   欲しい。それが俺の心からの願いだ。

    大きな心・終

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