アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜時の縁・シューム1〜
    妻達や娘達、そしてダーク達と過ごしてから数日後。

    俺はシンシアと共にマンガの作業に明け暮れている。その中で1つのシナリオを思い付いた
   ので、パソコンにストーリーを記載していく。

    内容は、もしこの時代に自分がいたらというものだ・・・。その内容に後ろから見つめる
   シンシアは、食い入るように俺の文面作成を凝視している。





    不思議な事があるものだ。理路整然と解釈できる物事ではない。それを体感する事になる。



    本店レミセンで作業をしていた時、急に目の前が真っ白になる。以前7人や5人から求め
   られた時とは異なり、過労で倒れるというものではない。

    気付いたら建て替える前の本店レミセンに現れたのだ。これには驚愕せざろう得ない。


    しかもこの店舗はレイアウトが全く異なる。慌ててカレンダーを見ると、何と俺が風来坊に
   赴く1年前の日付なのだ。

    シンシアがマンガのネタでタイムワープの作品を書いていたが、間違いなくこれは実際に
   起こったと言える。



トーマスC「あ・・・あんた誰だ・・・。」
    厨房で目を丸くしている人物がいる。俺がいたとされる時間帯から逆算すると、31年前の
   トーマスCがいた。驚くのも無理はない、見ず知らずの覆面男が目の前に現れたのだから。
ミスターT「え〜・・・何と言ったらいいのか・・・。」
トーマスC「う〜む・・・初めて会った気がしないのは偶然か・・・。」
ミスターT「信じて貰えるかどうか分かりませんが・・・。」
   俺は31年前のトーマスCに事の詳細を告げた。というか俺自身もいきなりここに現れて、
   今も混乱を引き起こしているのだが・・・。


トーマスC「今から31年後からねぇ〜・・・。」
ミスターT「もしこれが事実なら、俺が動く事で未来が変わってしまう怖れがあります。実際に31
      年後から現れたという証拠は、何点か提示は出来ますが・・・。」
    トーマスCから窺った、草創期のシークレットサービスの関与などを語る事も出来る。だが
   それをしてしまうと、今現在の彼が変わってしまう怖れがある。
   タイムワープ理論では同じ時間軸に2人の人間は存在できないという事だが、31年前だと
   俺は18でいる筈だ。
トーマスC「分かった、君を信じるよ。それに君の目は嘘を言うものじゃない。俺の恩師でもある
      シェヴ先輩と同じ目をしている。嘘を付く人間じゃないというのが分かるから。」
ミスターT「ありがとうございます。」
   流石はヴァルシェヴラームの弟子たるトーマスCだ。31年後の本人と何ら変わらない人物で
   ある。この彼と10年後に出会う訳なんだが、必然という流れだというのが窺えた。



    今現在は戻る事が出来ないため、トーマスCの喫茶店で厄介になる事にした。この時代の
   ここはまだ「ザ・レミニッセンス」の名前ではない。無名の喫茶店という事である。

    31年後ではバリバリのマスターとして動いているため、ここでも喫茶店の手伝いなどは
   お手の物である。


    しかし31年前か・・・、俺が18で生きる術を学んでいる頃であろう。エシェラは8歳で
   生きている筈だ。シュームは19歳か・・・。

    19・・・、まさか・・・。俺がここへ来た理由が何となく掴めた・・・。



    31年前でも覆面姿で歩いていても何も言われなかった。というか31年前の方が俺がいる
   時代より古い感じがする。

    この時はまだ躯屡聖堕の存在もなければ、三島ジェネカンも強いと言える時代ではない。
   31年後では当たり前の流れという事が、ここでは存在しないのだから・・・。


    それでもその時代に合った人々は、それぞれの生活を成し得ている。ここは素直に驚くしか
   ない。人は適応能力を活かんなく発揮し、それに順応していく。

    未来人と言える自分が手を貸す事はしない方がいいだろう。歴史が変わってしまう怖れが
   十分ある。



トーマスC「いらっしゃい。」
    喫茶店内を掃除していると、来客が訪れる。その人物を見た時、一瞬驚いてしまう。それは
   若々しいシュームが学生服の姿でいるのだ。31年前の彼女とご対面か。
シューム「焼そばお願いします。」
トーマスC「あいよ、少し待ってな。」
   19歳のシュームはショートカットの女の子だったようだ。エシェラに負けずとも劣らない
   可愛さである。しかしどこか落ち着かない雰囲気だ。


ミスターT「こんにちは、シュームさん。」
シューム「あ・・・え・・・?」
    店内の掃除を終えて用具を片し、そのまま一服をする。その際に自然体に動いていたのか、
   何とシュームに語り掛けてしまった。それに目を白黒させて驚いている彼女。
シューム「な・・・何で私の名前を・・知っているのですか?」
ミスターT「ああ・・・風の便りで聞いている。若いながらも努力する姿に、周りは驚きの視線を
      送っていると。」
シューム「そ・・そんな事ありませんよ・・・。」
   俺の言葉に過剰反応を示す彼女。表情はどこか暗く、落ち込んでいるようにも見える。

シューム「・・・愛する人を助けられなかったのです・・・、私なんか強くありません・・・。」
    シュームの一言で全てを把握した。今の彼女は思い人と一夜を過ごし、そして恐女と言える
   存在に殺された直後だと。そして彼女のお腹には、リュリアがいるという事も・・・。
ミスターT「人生の中でね、理不尽な事は日常茶飯事さ。本当に愛しい人を心から支える事ができず
      苦しむ時だってある。それでも人は生きねばならない。その思い人の遺志を継ぎ、君の
      生き様を貫いていかないといけないのだから。」
   自分が未来において今も思い悩んでいる事を打ち明けた。7人の妻への労いと、12人の娘達
   を心から労えなかった事。これは今も俺の胸中に刻まれている苦悩だ。だからこそ前へと進む
   事が出来るのだがな・・・。


ミスターT「マスター、彼女の代金は俺が持つよ。」
トーマスC「いいのかい?」
ミスターT「お節介好きの世話焼きだからね。」
    シュームの隣へ座り一服をし続ける。今気付いたのだが、通貨は通じるのだろうか・・・。
   紙幣の連番などは31年後のものである。それに硬貨の方も今の時代より先の時代の年号が
   記載されているものもある。う〜む・・・動く事すら出来ないか・・・。

    そんな俺の心境を察知してか、トーマスCがレジへ向かい俺を手招く。彼の元に赴くと、
   懐やレジから合計5万もの大金を手渡してきた。
ミスターT「だ・・・大丈夫なのか・・・。」
トーマスC「君の言っている事が事実なら、君が持っている資金を全額預かるよ。それを31年後
      まで保管しておくから。その時になったら返して貰うからさ。」
   凄い発想である。俺の全財産を今現在のトーマスCの資金と交換すると言ってきたのである。
   確かに今現在の紙幣などなら問題なく使えるだろう。それ以前に彼が語った内容にも驚きを
   隠せないでいる。
トーマスC「君の姿は若かりし頃の師匠を見ている気がしてならない。俺に出来る事はこのぐらい
      だろう。」
ミスターT「・・・ありがとうございます。」
   ここは素直に応じるべきだろう。俺を最大限信用してくれているのだ、それに応えねば俺の
   生き様に反する。



ミスターT「その思いの人とは一夜を過ごしたようで?」
シューム「はい・・・、それに・・・。」
    そう語りながら、自分の腹を優しく擦る。彼女の中には新しい命が誕生している。既に何度
   となく悪阻が襲っている筈だ。この時の彼女はまだ未出産であり、この女性最強の難敵である
   悪阻は初対面となる。
ミスターT「今の経験が今後の大きな役割になる。今は辛いだろうが、自分の生き様を刻む事が君に
      とって最善の策だから。」
シューム「そう・・ですね・・・。」
   31年前のシュームは、俺が知る彼女よりも弱いと言える。今のような肝っ玉が据わった存在
   ではなく、ダーク達のような何処にでもいる女の子の雰囲気が強い。
ミスターT「・・・何れ、もう1度幸せを掴む時が来る。その時こそ君にとって本当の幸せと言える
      だろう。今は辛いかも知れないが、全ては未来への布石の1つだ。耐えて生き抜いて
      欲しい。」
シューム「・・・分かりました。」
   今の俺には未来を変えてしまうような行動はできない。激励程度しかできないが、これも未来
   を変えてしまうような切っ掛けにもなるかも知れない。それでも目の前の苦悩する人物を救う
   のが、覆面の風来坊たる俺の生き様だ。


ミスターT「少し出掛けるか。」
シューム「え・・・で・・でも・・・貴方には愛する人がいらっしゃるのでは?」
    流石シュームだ、先程と今に至る言動で愛しい人がいる事を見抜いてきた。しかし今は目の
   前の彼女を癒さねば、俺がこの世界に現れた意味がない。
ミスターT「分かってくれるさ。俺の連れもお前さんみたいに肝っ玉が強い女性でね、目の前の苦悩
      する人物には手を差し伸べろとも言っているから。」
シューム「・・・分かりました。」
   現代のシュームも悩みが薄らぐと凄まじいまでの眼光になる。31年前の若かりし彼女も同じ
   である。据われば怖いものはない、それが今の彼女にも十分当てはまる。

トーマスC「これを使いな。」
    シュームと共に喫茶店を出ようとした時、トーマスCがカギを手渡してくる。それは間違い
   なくバイクのキーだ。この時代の彼も無類のバイク好きだったのだろう。
トーマスC「裏手の駐輪場にハーレーが止めてある。それを使うといい。」
ミスターT「それは嬉しい限りなのですが、免許証が違うので違反になりますよ。」
トーマスC「あ・・ああ、そうか・・・。」
   俺の持っている免許証は31年後のものだ。もし警察官に免許証を提示した時、明らかに問題
   が生じるのだから。よく未来人は過去が分かって楽だと思うが、実際の所は不都合だらけで
   動けないのが実情だろうな。

シューム「あ・・あの・・・大型自動二輪なら昨年取得しましたので・・・。」
ミスターT「へぇ〜・・・何時の間にやら。」
シューム「こちらのマスターのバイクに乗る姿に感銘しまして・・・。」
    シュームが免許証を手渡してくる。それを見ると、18歳になったと同時に取得したようで
   ある。俺が知る彼女は29歳を超えた頃に免許を取得していたのだが、これは未来が変わった
   と言えるのだろうか・・・。
トーマスC「満1年経ってるだろうから大丈夫だね。」
ミスターT「流石警察庁長官だわ。」
トーマスC「・・・どうしてそれを・・・、あ・・ああ・・・なるほどね。」
シューム「どういう意味ですか?」
ミスターT「見定めた千里眼というやつさ。」
   トーマスCは俺が31年後の未来から来たという事は知っている。故に彼の知らない事を述べ
   ても、後々気付くのだから。だがシュームは俺が未来人という事は知らないでいる。そこは
   上手く誤魔化さないと後々大変になるだろう。



    喫茶店を出て裏手に回り、駐輪場に止めてあるハーレーを動かす。免許取得から満1年は
   経過したとは言え、初めて手に触るモンスターマシンに驚きを隠せないシューム。

    はたして運転が出来るかどうか・・・、これはある意味チャレンジャーだろう。

シューム「お・・重たい・・・。」
ミスターT「フフッ、今度からストレッチでもするといい。身近な身体の慣らしでも十分な筋力が
      付くからね。」
シューム「そうですね。」
    重そうにハーレーを押すシューム。この時はまだ筋力が十分じゃないため、こういった行動
   は厳しいように思える。それでもバイクの押す技術に関しては素晴らしいもので、初心者とは
   思えない行動力である。
シューム「あの・・・貴方も免許をお持ちに思えますが?」
ミスターT「ん・・・まあね・・・。」
シューム「免停を喰らっているとか、更新がまだとか?」
ミスターT「・・・君には嘘は付けないな。」
   シュームの真顔による詰め寄りに、嘘や誤魔化しは通用しないと思った。俺が知る彼女も嘘や
   誤魔化しには鋭く反応するため、若い彼女も同じ能力があってもおかしくはない。

    俺はズボンのポケットから免許証を取り出しシュームに見せる。それに驚愕する彼女。記述
   された日付は31年後の未来を指し示しているのだから。


シューム「これは・・・。」
ミスターT「信じる信じないは別として述べるよ。俺は31年後の未来の人間だ。今のこの年代なら
      18歳で過ごしているはず。この免許そのものは、数年後に取得するものだから。」
シューム「そ・・そんな事が・・・。」
    やはり今起きている事を理解できないシューム。トーマスCの場合はそれなりの認知度を
   持っていたため、ある程度は信用できたのだろう。しかしシュームの場合はまだ19歳だ。
   本当に肝っ玉が据わるのはあと数年後の事なのだから。
ミスターT「お前さんの今後を何点か提示できるが、それでは未来が変わってしまう。俺には何も
      言えない。よく未来人が過去において色々と行うSF作品があるが、実際にはこれほど
      制約があるとは思いもしなかったわ。」
シューム「・・・未来の私は・・・生きているのですね。」
ミスターT「それだけは言える。今のお前さん以上に肝っ玉が据わった女傑として生き様を刻んで
      いるよ。」
   傍らにいるシュームの頭を優しく撫でる。19歳時の彼女はエシェラと同じぐらいの身長で、
   俺とは頭1個分の差がある。言わばヴェアデュラ達の頭を撫でるようなものだろう。

シューム「・・・最初は自害も考えました・・・。愛しい人が凶女に殺されて・・・、考えていた
     夢や希望が消えてしまったのです・・・。」
ミスターT「だが、君の中にはリュリアが誕生している。それが自身の夢と希望になったと。」
シューム「ど・・・どうしてリュリアの名前を・・・、あ・・・なるほど・・・。」
ミスターT「悪かった、言ってはいけない事を話したわ・・・。」
    自然体で話していたため、今は生まれもしないリュリアの名前を挙げてしまう。これには
   驚くしかないシュームだろう。未来が変動してしまう可能性も十分ある。
シューム「大丈夫です、この子は必ずリュリアと名付けますから。」
ミスターT「すまないな・・・。」
シューム「謝らないで下さい。話を切り出した私に責任があるのですから。」
   今も俺が住む現代では、妻や娘達に少なからず罪悪感を抱いている。俺が心から育てる事が
   できない現状は続いているのだから。それを若かりし頃のシュームとダブらせてしまった。

ミスターT「お前はお前が思っているほど弱い人間ではない。何れ分かる事だが、身内では右に出る
      者はいないとされるほどの母親となる。今は辛いだろうが、必ず自身が抱く未来像に
      なるから。」
シューム「そう言って頂けると心が楽になります。貴方は既に未来を見ている方ですから、私の今後
     がどうなるかもご存知でしょうし。」
    徐々にだがシュームも現状を理解しだしている。確かに非現実ではあるが、俺の存在と知識
   は事実なのだから。
ミスターT「ありのままの君でいてくれ。そんな君が俺は好きだからさ。」
シューム「は・・はい・・・。」
   赤面するシュームの頭を優しく撫でる。初めて会った頃のエシェラ達を彷彿とさせる仕草には
   懐かしい気分になる。
ミスターT「さて、行きますかの。運転は任せていいか?」
シューム「はい、お任せを。」
   ヘルメットを装着し、ハーレーに跨りエンジンを掛けるシューム。俺もヘルメットを被り、
   後ろへと乗った。まさかヴェアデュラと同じ年代であるシュームからエスコートされるとは
   思いもしなかったわ。

    徐に発進させるシューム。バイクの王様とも言えるハーレーの存在感に圧倒されているが、
   彼女の方も十分据わっていた。

    まあいざとなったら俺が代わって運転すればいいだろう。それは無論非常時という事だが。
   問題は彼女に何時悪阻が訪れるかという事だろうな。こればかりは仕方がない。



    向かおうとした先は、愛しい人達と何度も訪れた葛西臨海公園だ。しかし問題点がある。
   それは31年前ではまだ完成していないのだ。

    完成したのは俺が20歳の誕生日を迎える前後、今はまだ造園中であろう。環七だけは完成
   しているため、いけるとしたら葛西臨海水族園ぐらいだろうか。

    ここは無難に秋葉原にでも赴いた方がよさそうだ・・・。

    後半へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る