アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜 〜第2部・第10話 新しい命1〜 7泊8日の海水浴が過ぎてから、9月中旬へと差し掛かる。まあ長期海水浴は7月中旬から 外出していた。それから約2ヶ月経過という事になるが。 夏休みの期間中は6人に引っ張りだこにされた。海水浴には行かなかったエシュリオスと エフィーシュも休暇を取ったようで、こちらとのスキンシップをしてきた。より一層美しく なる双子には嬉しくなるが、その原因は俺にもあるんだよな・・・。何とも・・・。 暴れに暴れまくった7月中旬から8月一杯。9月に入ってからはグロッキー状態が続いた。 あれだけ動かされればダウンするのも言うまでもない。風邪や病気にまではならなかったが、 暫く休む状態が続いていた。手加減してくれよ・・・まったく・・・。 それはそうと、ヴァルシェヴラームや他の女性陣が予測していた通りになった。つまりは シュームが妊娠したという事だ。彼女自身交わった直後に直感したようで、結果が出た時は この上ない喜びを表現していたのが印象深い。 今は妊娠2ヶ月目に突入している。徐々に腹が膨れてくるシュームは、より一層母親という 姿になっていく。それでいて素体のお淑やかさがあるのだから、怖ろしいまでの一途さを回り に見せ付けていた。 女性の最終形態とも言える姿を目の当たりにしたエシェラ達は、未来の構図を模索している ようだ。関わるこちらの身にもなって欲しいものだが・・・。 エリシェ「戻りました〜。」 バイオリニストとしての道を退いたエリシェ。今は孤児院や福祉業などを一手に引き受ける 存在になった。ヴァルシェヴラームやセルディムカルダートの孤児院も担当しており、関係者 からは大絶賛されている。財政的に強大な力があるのは、この上なく頼りになる存在だ。 ミスターT「それで、どうだった?」 エリシェ「性別はまだ分かりませんが、双子の胎児でしたよ。」 今日は1ヵ月毎の定期検診。この日はエリシェが付き添い、シュームと一緒に産婦人科へと 赴いている。 しかし双子か・・・。ターリュやミュック、アサミやアユミを思い出す。彼女達もこのように して誕生したのだろう。 ミスターT「シュームが言った通りになったね。子供大勢で一緒に暮らすと。」 シューム「うん・・・。」 本当の父親になれないという部分は苦しいが、それでも我が子の成長を聞けば嬉しくなる。 だが彼女の方はどこか浮かない顔だ。 エリシェ「どうしました、浮かない顔をして?」 シューム「い・・いえ・・・その・・・。」 ミスターT「そうか・・・一緒に暮らすとは言えないか・・・。」 彼女の浮かない顔の理由が分かった。つまりはシュームが本命ではないという事に、彼女自身 が違和感を感じているものだ。 ミスターT「ごめんな、お前の気持ちを考えず・・・。」 シューム「ううん、いいのですよ。貴方の大切な子供を身篭れた事が何よりの幸せですから。」 カウンターに座る彼女の頭を優しく撫でる。新しい命を宿した姿がより一層愛おしく見える。 それなのに本気になれないのは失礼極まりない・・・。 ミスターT「やはりシュームと結婚して、しっかりとした家庭を持つべきか・・・。」 複数の女性との関係はまだしも、子供となると話は変わってくる。生まれてくる子供達に 嫌な思いをさせないためにも、これは必然という流れだろうから。 シューム「ダメですよ、貴方は絶対にエシェラと一緒になって下さい。」 ミスターT「だが、シュームに酷いじゃないか・・・。」 シューム「何度も言ったでしょう。貴方を無理矢理犯して妊娠させたのです。責任は私にあります。 貴方は貴方が望むがままに進んで下さい。」 力強く言い切るシューム。だがそれは後から付け加えた言い訳に過ぎない。俺にも責任は十分 存在する。彼女だけの責任では絶対にない。 ミスターT「すまない・・・。」 シューム「もうっ・・・謝らないで下さいよ、謝るのはこちらの方なのですから・・・。」 どうしても謝罪してしまう。原因を作る前に拒否すればできたのに、流れに乗った自分も事実 である。それなのに彼女に全てを押し付けてしまうような結果に、俺は遣る瀬無い気分だ。 リュリア「ただいま〜。」 エリシェ「おかえりなさい。」 暫くしてリュリアが帰宅してくる。と言うのも前の家は売却し、今はここの2階に住んで いるからだ。もちろんエシェラとエシェツもこちらに住んでいる。 またラフィナはエリシェの自宅に、メルデュラはシンシアの自宅に同居している。一緒になる 事で家族としての付き合いを満喫しているのだ。 リュリア「調子の方はどう?」 シューム「大丈夫よ。それとお腹の子だけど双子みたい。」 リュリア「うわぁ〜、凄いじゃんっ!!!」 大喜びするリュリア。シュームの近くに座り込み、彼女のお腹を優しく撫でている。満面の 笑みで喜びを表現するその姿に、先程の罪悪感が薄らいでいくようだ。 リュリア「お兄さんの方もお母さんを支える事だけはしてあげて下さいね。本命はエシェラ姉さん なのだから。」 リュリア自身も事の次第をしっかりと把握している。だがそれは俺に厳しい現実を突き付ける 事にもなる。色々な意味で重苦しい事この上ない・・・。 シューム「ヴェアちゃんも大きくなったね。」 既に母親を経験し、母親に戻っているシューム。母乳もでるようにもなっており、それを ヴェアデュラに飲ませている。今まで購入していた粉ミルクの授乳だったが、自然的な授乳の 方が断然いい。 ミスターT「助かりますよ。」 シューム「ヴェアちゃんには悪いけど、来る双子のウォーミングアップには最適ですから。」 育児は任せろをいった雰囲気が強い彼女。知人の中で一番育児時間が長いシューム、最大限 任せ切っても問題ない。もちろん彼女のストレス発散なども行わないといけないが。 メルデュラ「何だか羨ましいです。本当に女としての姿を楽しんでいるようで。」 シューム「それ相応の覚悟は必要ですけどね。でも覚悟さえ決まれば、物凄くやり甲斐があります。 この子達が立派な大人になるために、私も命を張れますから。」 母親だ、完全に母親の言葉だ。我が子を命懸けで育てる、それこそが産みの親だ。今の彼女 は活き活きとしている。この部分は素直に喜べる。 シューム「基礎作りは大切ですが、貴方達も子供を作るべきですよ。一度しかない人生の中で、この 瞬間を体験できない女は悲しいですから。」 これがシュームの原点回帰だろう。俺の子供を身篭った事により、本当の自分を見つける事が できたようだ。この部分に携えた事は非常に嬉しい。 シンシア「これが今度のプランです。」 それから数日後、シンシアが本店レミセンに訪れる。喫茶店のマスターを副職に、今の彼女 はマンガ家として活躍していた。俺の夢見ていた職業だけに、身内から誕生したのは嬉しい。 ミスターT「ふむ・・・フリーダムハートか、いいじゃないか。」 シンシア「マスターが考えていた内容を、私なりにアレンジしてみました。長作になりますが、最後 まで書き終えたいです。」 17から20までの間、絵かきをしながら小説を書いてもいた。大学ノートに記述した内容を シンシアに見せると、ネタにさせてくれと大好評だった。その他にも色々と書いた作品が存在 しており、それら全てを彼女に託したのである。 シンシア「本当にいいのですか?」 ミスターT「俺が成し得なかったマンガ家への道を、シンシアが歩みだしている。なら俺は蓄えて いた夢への材料を、全てお前に託したい。」 俺のもう1つの決意をシンシアに語る。彼女に万感の思いを込めて全財産を託した。これは シンシアを後継者として認めた事にもなるだろう。 シンシア「分かりました。貴方の命を削って作られた作品、私が一生涯掛けて実現させます。」 ミスターT「ありがとう。」 シンシア「でも・・・ご褒美くれたら嬉しいなぁ・・・。」 ニヤケ顔で話すシンシア。これには苦笑いを浮かべるしかない。彼女の活力源となっている のは、俺とのスキンシップだ。まあシュームのような事にならないだけに、まだ気は楽では あるが・・・。 ちなみにシンシアをサポートするアシスタントは、バイトでリュエラ・リュミス・リュヴス を雇っている。俺達がエシュリオスとエフィーシュと親しいという事で、進んでお近づきに なろうとしていた。 まあ癒着という問題が出るが、三つ子の場合は役に立ちたい一念が強い。それに彼女達の 目を見れば、私利私欲で動いていないのが分かってもいる。 他には専属でターリュとミュックがアシスタントを担っている。バイトを転々としていた 双子にこの話を持ちかけた所、熱烈に希望するという流れになった。 双子の方もマンガ家には憧れていたようで、そのための修行の場として利用したいようだ。 アサミとアユミは教師になるために勉強中だ。保育士より道は険しく、夢を掴み取るまでは 時間が掛かりそうだ。それでも直向きに進む姿は、周りを鼓舞し続けている。 シンシア「マスターも一緒にどうですか?」 最近持ち掛けてくるのが、俺にマンガ家への道を歩ませようという流れだ。確かに風景画や 人物画は得意だが、実際にユーザーさんに見せるとなると話は異なる。 ミスターT「俺に担えるかね・・・。」 シンシア「あれだけの画力があって、それを腐らせるのは勿体ないです。マスターが心に秘めた事を ぶつける戦場ですよ。打って付けのものじゃないですか。」 彼女の言う通りだ。自分の思いを絵に込めて見て貰う。それも俺の原点回帰と同じ意味だ。 それに今後は喫茶店のマスターだけでは厳しいのは言うまでもない。今のうちに未来への布石 を磐石にするべきだろう。 ミスターT「先ずはお前のアシスタントからやるよ。」 シンシア「そんな甘い事なんかさせません。第一線で活躍して頂きますから。」 楽はさせないと目を光らせて語る。まあそれも仕方がない事だな。彼女の言う通りにしよう。 その後、俺はシンシア達の総合的なアシスタントの役割となった。第一線で活躍させられる のは言うまでもないが、それ以外の道具の買い出しなどは俺が一手に担っている。 予測した通り、新連載となったフリーダムハートは大絶賛されるようになる。売れっ子の マンガ家であるシンシアが放つ大作に、周りは興味津々のようだ。 この頃から急激に忙しくなりつつあった。画材の買い出しなどが頻繁に行う事から、販売店 の店長さんや店員さんに顔を覚えられてしまう。一番の理由は覆面だろうが・・・。 俺もアシスタントとして動き出している間、ある試みをしだした。シンシアのマンガを連載 する最後のページに、数ページだけ短編マンガを書き出した。 結果だが・・・同じく大絶賛された。シンシアよりも画力が強いだけに、そのクオリティの 高さが大好評になってしまう。 まああくまでもメインはシンシアだ、俺はサポートでいい。他のオファーがあっても、今は アシスタントとしての位置付けを貫き通すだけだ。 後半へと続く。 |
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