アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第11話 受け継がれし者1〜
    実に不思議だ。今自分が置かれている立場は複数ある。しかしそのどれもが苦とならず、
   己の使命として心から担えている。

    顕著なのが13人の妻達の夫として、そして27人の娘達の父としての存在だろう。端から
   見れば異常そのものだが、それでも今まで周りに役立てて来れたのは紛れもない事実だ。

    そしてこれからも貫き通していかねばならない。その場だけの達成感だけで満足していては
   ならないからだ。


    ヴァルシェヴラームとセルディムカルダートが原点としている、世界から孤児を無くすと
   いう悲願と誓願。それはまだまだ達成には至っていない。

    今後何十年・何百年掛かるか分からないが、諦めなければ0%には決してならないだろう。
   そう・・・諦めなければ何事も叶うのだから・・・。


    何れはこの身も空に帰る時が必ず来る。それは万物全てに終わりがあるように、自分達にも
   死という1つの旅立ちが存在するのだから。

    だが恐れはしない。その死すらも未来への大切な一歩前進の証である。そこに至るまでの
   間に、どれだけ尊い生き様を貫けるかが大事であろう。

    今年70歳を向かえる俺だが、今もその原点は微動だにしていない。むしろより盛んに原点
   不動の心構えがなされていく。


    戦うべき時は明日などではない、今その瞬間からが勝負なのだ。周りの盟友や親友と共に、
   今一歩前進していかねばならない・・・。俺の戦いは始まったばかりだ・・・。



    一服をしながらノートに詩を認める。というかこの場合は己の武勇伝を端的に刻んだとも
   言える。こういった記述は一服時によく行っていた。

シェラ「凄いですね、私では思い付きませんよ。」
    不意に声がする。丁度真後ろに俺の詩の執筆を一部始終見ていたシェラとシェナだ。彼女達
   がいた事すらも分からないほど、この詩の執筆に没頭していたようである。
シェナ「お母さんが心から認めるだけあります。マンガ家としての原点はお父さんにあると。」
ミスターT「ようやく俺の事を認めてくれたという事かな。」
   一服を終えて2人を膝に座らせる。今年35歳になるシェラとシェナだが、家族の中では小柄
   の体格なだけに楽に支えられる。
シェナ「い・・いえ・・・そうではありません。」
シェラ「お父さんの凄さは内外問わず凄まじいものです。お父さんを超える男の人を見た事はまだ
    ありませんから。」
ミスターT「俺を基準にしちゃダメだよ。人それぞれ良し悪しがあるのだから。周りには俺にはない
      強さを持つ熱血漢は沢山いる。それを理解していくのも、マンガ家としての努めだと
      思うよ。事に人物像・人間像を描くなら尚更の事だから。」
   マンガ家ほど人間や全ての物質に対して観察を行う職業はないだろう。自分の世界観をマンガ
   の世界として描いていくのだから。観察力や想像力を駆使しないと成し得るものではない。

ミスターT「シェラとシェナには人を見定める鋭い心がある。シンシアもそうだが、観察力に関して
      右に出る者はいないと思っている。もっと今以上に努力をして人や全てを見抜く力を
      付けていくんだ。」
シェラ「もちろんです。」
シェナ「私達は伝説の覆面の風来坊の娘なのですから。」
    娘達が決意を示す時、決まって述べる言葉がある。それは俺の娘だという事を最大限強調
   している事だ。まるで自分自身に言い聞かせているかのようにも思える。
ミスターT「流石は可愛い自慢の娘達だ。ますます惚れちまうわな。」
シェラ「もうっ・・・。」
シェラ「お父さんったら・・・。」
   軽い口説き文句を語ると、案の定顔を赤くする娘達。しかし表情は優しさに満ち溢れている。
   その2人を優しく抱きしめた。


ミスターT「ところで、今度・・・何だっけ・・・。」
シェラ「コミケですね。」
ミスターT「そうそう、それがあるんだっけ?」
シェナ「そうですよ、もう何度も出展はしていますが。」
    東京は幕張メッセにて毎年数回行われているコミックマーケット。プロアマ問わずマンガを
   愛する者達の祭典である。特に既に一般に出回っている版権作品を自分なりにアレンジして
   描く同人誌。それがいち早く出展されるのがここである。
ミスターT「同人誌は秋葉原や通信販売でも入手可能だが、ここは別の意味での新鮮市場と言えるの
      かな。」
シェラ「マンガの聖地ですよ。マニアには堪らない集まりですから。」
シェナ「お母さんは私達が生まれる前からここに足を運んでいるそうです。」
ミスターT「ああ、そうだったわ。」
   シンシアがマンガ家としてデビューする前から、同人誌にも着手している。ユーザーさんとの
   コミュニケーションもそうだが、独創的な創作は自分にはないと喜び勇んで飛び込んだのだ。
   今でもコミックマーケットがあれば、必ず参加しているのが彼女である。
シェラ「13年の地方遠征の時でも、コミケが近いと東京に戻ってましたので。」
シェナ「お母さんは毎回足を運んでいますよ。」
ミスターT「よく頑張るわな・・・。」
   今ではプロのマンガ家として活躍しているシンシア。その娘のシェラとシェナも既にマンガ家
   としてデビューしている。母娘揃ってマンガ家という現実に、ファンからは萌えだと大評判
   だとの事である。

シェラ「コミケは素人さんでも出展できますし。自分達にはない多くの力をお持ちですから、大いに
    参考にさせて頂いています。」
シェナ「まだまだ未熟ですから、皆さんと一緒に成長できれば幸いです。」
ミスターT「お前達はマンガ家の鑑だよ・・・。」
    常に成長し続けるシェラとシェナ。いや、成長する努力を続けていると言うべきか。母親の
   シンシアも人並み以上に努力する事を心懸けてきた。だからこそ今日の彼女が存在しているの
   だから。
シェラ「お父さんは何時の間にか書かなくなってしまいましたよね。」
シェナ「お父さんの画力は一部の方に多大な影響を与えていたのですけど。」
ミスターT「シンシアのアシスタントとしては動いているけど、本流は彼女に受け継いで貰ったと
      言えるしの。」
シェラ「努力しないとダメですよ。」
シェナ「ミツキさんに怒られますよ。」
   他方面のオブザーバーとして活躍している現在。1つの事業に集中する事はできなくなって
   いる。故にその事業のスペシャリストに自分の夢を託したのも事実だ。シンシアに俺のネタの
   セットを託したのと同じように。


シンシア「こらこら、マスターはマスターのままでいいの。何度も言ってるじゃない。貴方達は貴方
     達の生き方があり、マスターにはマスターの生き方があるのだから。」
    遠巻きに話を伺っていたシンシアが介入してくる。それぞれの生き方があるのだから、押し
   付けはよくないと語ってきた。それは理解できるが、シェラとシェナの言い分もよく分かる。
シンシア「それにマスターは縁の下の力持ちよ。マスターがいらっしゃるから私達が最大限戦う事が
     できるのよ。マンガ家としての流れは残念だけど、理は私達と共にあるわ。」
ミスターT「そう言って貰えると嬉しいよ。」
   心は常に一緒と、そうとも感じれる。理は即ち一念でもあろう。生きる道は異なれど、向かう
   先は全く同じなのだから。
シェラ「ごめんなさい・・・。」
シェナ「言い過ぎました・・・。」
ミスターT「こらこら、気にし過ぎだよ。シンシアは決して怒っている訳じゃない。それだけは理解
      して欲しい。」
シンシア「怒るも何も、シェラとシェナは既に全ての答えを知ってるわ。でも不安だから貴方に再度
     確認しているのよ。それが親子というものじゃない?」
ミスターT「ハハッ、そうだわな。」
   この母在りてこの娘達在り、か。気の強さから落ち込む様まで全くもってソックリである。
   そんな親子だからこそ、今もマンガ界に旋風を巻き起こしているのだろうな。

ミスターT「今度3人の絵を書くよ。時間は掛かるけど必ずね。」
シェラ「お父さんの画力は凄いから楽しみにしてます。」
シェナ「お母さんより上手いしねぇ〜。」
シェラ「そうそう〜。」
シンシア「にゃにっ、聞き捨てならん発言っ!」
    俺の画力を誉め称えつつ、シンシアより上手いと語るシェラとシェナ。それに軽く怒った
   シンシアは、2人の首を掴まえて締め上げていく。それに悲鳴を挙げて降参する双子。しかし
   俺の膝に乗っているため、俺の首をも締め上げていった。それに俺も悲鳴を挙げてしまう。

    う〜む、シンシアの強さは今も幼さも持ち合わせているから強いのだろうな。この点では
   ヴェアデュラの強さに匹敵するだろうか。

    この母娘がこれからも大活躍していくのは目に見えるわ・・・。


    ちなみにこの後の話になるが、シェラとシェナは伝説のマンガ家と謳われるまでに成長する
   事になる。そこに至るまでの死闘とも言える戦いは、数々のマンガ家からはレジェンドとも
   言われている。

    確かにシンシアもそうだが、一度決めた事は徹底的に突っ走るのがこの娘達だ。自分達の
   生き様が何れ大きく評価されていく事、まあこれは近い将来の話である・・・。



    同室内では勉学に勤しむトモナとトモア。またその2人の傍らでは、同じく勉学に勤しむ
   ウィレアとウィレヌ。こちらも教師になるのだと猛勉強中だ。

    その4人を優しく見守りつつ裁縫をしているトモミ。傍らではウィレナが大量の答案の解答
   をチェックしていた。前者は体育教師だが、後者は英語や数学を得意とする教師だ。

ミスターT「お前達のレベルからしたら、既に校長クラスに達していてもおかしくないのにな。」
ウィレナ「ダメですよ、私は最前線で戦うのが性分です。」
トモミ「そうですよね。それに校長にはアサミ様とアユミ様が就いていらっしゃいますし。」
    地元の総合学園の校長は、今もアサミとアユミが担当している。今年60歳という還暦を
   向かえるのだが、生涯現役を貫いているのが双子である。
ミスターT「ナツミYUも今年76歳だしな。流石に現役は退いているが。」
ウィレナ「最近身体が思うように動かないと愚痴のように言ってます。心はまだ若々しいですが、
     月日というのは残酷ですよね。」
ミスターT「・・・俺が異常なだけかもな・・・。」
   外見の話になると、決まって俺をチラ見する妻達。そりゃそうだろう。初めて出会った時から
   全く姿が変わらないのだから。それにヴェアデュラを筆頭に娘達全員も同じ特性だ。自分達の
   老化に違和感を感じずにはいられない筈だ。

ウィレア「心こそ大切にだよ。」
ウィレヌ「そうだよお母さん。お父さんの姿が何よりの証じゃない。」
トモナ「常々日々に強き給え。愚痴などを呟いてしまえば、その分心が老いていってしまいます。」
トモア「自然体でいいのですよ。」
    今年17歳のウィレア・ウィレヌ、16歳のトモナ・トモア。しかしその肝っ玉の据わりは
   母親達を遥かに超えている。それに苦笑いを浮かべるも、その都度奮起するのが妻達だ。
ミスターT「力強い発言だ事。彼女達の方がより教師だわな。」
ウィレナ「そ・・それを言われると何とも・・・。」
トモミ「娘達の方が遥かに力強い生き方をしていますし・・・。」
ミスターT「まあ・・・ミツキ用語で言えば、桜梅桃李わぅ〜だわな。」
   俺の発言に笑い出す娘達。それに妻達の方も笑っている。どうやらミツキ専用語句の“わぅ”
   を使ったためのようだ。
ウィレナ「マスターにミツキさんの“わぅ”は絶対似合わないって・・・。」
トモミ「そうですね・・・。」
   大笑いまでしだしたウィレナ・トモミ親子。そんなにインパクトがあったのかね・・・。まあ
   明るければ何だっていいわな。この笑顔を見れる事こそ幸せなのだから。


ミスターT「アサミとアユミもそうだったが、最近双子の出生率が多いよな。」
トモミ「そうですよね。各レミセンを担当される女性マスターも、双子を出産されていますし。」
ウィレナ「しかもその大多数が女の子だからねぇ。」
    学業は化学にも若干ながら精通している。以前この2人から聞いたのだが、数百万年後には
   男性はいなくなるというのだ。Y染色体云々という事らしいが、俺にはさっぱり理解できん。
   しかし徐々に女児の出生率が高まっているのは事実だから、完全否定はできない。
ウィレナ「それにね、子作りの時の両親の行動次第では性別も調整できるそうよ。」
ミスターT「それ聞いた事があるわ。前座がなく行為に至り妊娠した場合は女児の可能性が高まり、
      前座を長く至って妊娠した場合は男児の可能性が高いだったな。」
ウィレナ「うちらの場合は即答・即決だったからのぉ〜、むしろうちら全員だのぉ〜。」
   子作りの時を振り返り、ニヤケ顔になっていくウィレナ。それにウィレア・ウィレヌの娘達は
   もちろん、トモア・トモナに母親のトモミまでが顔を赤くしていた。ウィレナの天然と言える
   言動は、シュームに近いと言えるだろう。
ウィレナ「まあでも、これが全員男児だったらと思うとゾッとするねぇ・・・。」
ミスターT「全員が全員真逆の道に進み、不良まっしぐらになったらなぁ・・・。」
ウィレナ「それはないと思うけど、グレたり反抗したりと大変そう。」
ミスターT「やっぱ時代は女性だわな・・・。」
   変な部分でウィレナに共感を覚える俺。生まれたのが全員女児だったから、今の流れがあると
   言える。それに母親と親密な絆を深められるのだから、こちらの方がいいだろう。

ミスターT「何にせよ、女の子は可愛くていいわな。」
ウィレナ「娘達に欲情しないでね・・・。」
ミスターT「そんな事したら・・・シューム達に何を言われるか・・・。」
    考えただけでも恐ろしい。俺の異性に対しての何げない仕草ですら嫉妬感を顕にするのだ。
   それが娘達だったら確実に殺されるわな・・・。
ウィレア「でもお父さんみたいな男の人なら付き合ってもいいな〜。」
ウィレヌ「悪人心折を超える人物なんか存在しないわよ。」
トモナ「優しさが強ければいいなぁ・・・。」
トモア「そうだねぇ〜。」
ミスターT「何とも・・・。」
   それぞれの未来の旦那様に思いを馳せだす2組の双子。それに呆れ顔になるウィレナとトモミ
   だが、自分達の娘達だから仕方がないといった雰囲気である。そんな彼女達を見つめ、小さく
   笑ってしまった。


    ちなみに教師という部分では、ウィレナとトモミはお互いを信頼し合うまでに仲がいい。
   先駆者はウィレナなのだが、包容力がある部分ではトモミの方が勝っているだろう。

    何よりもウィレナはリヴュアスとエシェラの次に知り合った旧友中の旧友だ。そのざっく
   ばらんな性格から、エシェラ以上に親しい間柄と言える。それに周りの妻達は嫉妬感を顕に
   している。まあそれはヤキモチ程度のものではあるが。

    ムードメーカーという部分でもリュリアに次いで凄まじい力を持っている。教師故に相手の
   心境を読む事が得意であり、数々の生徒達を支えてきたのだ。

    ナツミYUの生徒あっての教師に心から賛同し、彼女を師と仰いで日々戦っている。そんな
   ウィレナを慕うのがトモミであった。


    またこれも先の話になるが、ウィレア・ウィレヌ・トモナ・トモアの4人も恐ろしいまでの
   女教師となっていく。母親のウィレナやトモミをも凌駕する恐さの部分でも有名になるが、
   その生徒を思う献身的な言動に数々の子供達が慕っていくようになる。

    これもウィレナとトモミという先駆者の姿を見て成長したからと言えるだろう。またアサミ
   とアユミという列記としたお手本も存在している。4人の娘達が名教師と謳われるようになる
   のは必然と言えるだろう。・・・俺も親馬鹿だな・・・。

    この2組の親子が活躍すれば、学業に関しては天下無双だわな・・・。まあそれが実現する
   のは数年後という事になるが・・・。



    更に同室内でテレビに向かってゲームに勤しむはティルシェヌとティルシェム。そして2人
   と共に楽しんでいるのがタークェンとタークェナ。前者はディルヴェズLKの娘達で、後者は
   ダークの娘達である。

    ディルヴェズLKは言わずとも知れたバリバリの警察官。13年前の核弾頭事変では狙撃手
   として大活躍しており、国家勲章を受けるに至っている。

    ダークはヴァルシェヴラームとセルディムカルダートの孤児院のオブザーバーを担当して
   いる。後継者がナツミAとミツキに定まったため、肩の荷が降りたようである。


    しかし2人の真面目な母親とは打って変わり、ティルシェヌ・ティルシェム・タークェン・
   タークェナの4人は遊んでばかりという状態である。

    勉学はしっかりと行っているが、今をとにかく楽しむという事を最優先としているようだ。
   今年で19歳のティルシェヌ・ティルシェム、18歳のタークェン・タークェナ。他の娘達と
   一線を駕した遊び人風なタイプと化している。

ディルヴェズLK「もう・・・ずっと遊んでばかり・・・。」
ダーク「姉妹を見習って欲しいです・・・。」
    ディルヴェズLKとダークは超が付くほど生真面目で熱血漢なだけに、この遊び人と化した
   娘達の姿には苛立ちを隠せないでいる。遊び人風の色が濃いリュアとリュオでさえ、自分の
   見定めた道を突っ走っているのだから。
ティルシェヌ「うちらはうちらでしっかり考えてるから安心してよ。」
ティルシェム「そうだよ。」
タークェン「息抜きをしないとやってられないからね。」
タークェナ「大丈夫大丈夫。」
   う〜む・・・俺でもここまで遊び人の流れはなかったが・・・。子は親に似るというが、一体
   どこでこの道に進んだんだろうか・・・。

ミスターT「好きな生き方をしてはいいが、間違った生き方をしたら・・・どうなるか分かってる
      よな・・・?」
ティルシェヌ「そ・・・それはもちろん・・・。」
ティルシェム「し・・・しっかりと肝に銘じています・・・。」
    殺気と闘気を織り交ぜた発言をすると、顔を青褪めて語るティルシェヌとティルシェム。
   またタークェンとタークェナも同じく顔を青褪めていた。
ミスターT「俺はともかく、母さん達を悲しませたら・・・承知しないよ?」
タークェン「わ・・・分かりました・・・。」
タークェナ「ご・・・ごめんなさい・・・。」
   俺の滅多に出さない凄みの姿勢に恐怖で一杯の表情になっていく4人。その4人に待ったを
   投げ掛けるのがディルヴェズLKとダークの2人だ。
ディルヴェズLK「マスター、もうそのぐらいで・・・。」
ダーク「この子達はしっかりと目標を定めて動いていますから・・・。」
ミスターT「そりゃあ分かるがな・・・。」
   威圧的な発言に震え上がっている4人を慰めるそれぞれの母親。もちろんこれは母親達に意識
   を向かせるための演技でもある。そうでもしないと本当に遊び人になってしまうだろう。


ヴェアデュラ「お父さん、大丈夫よ。4人ともしっかり未来の抱負を持ってるから。」
    ノートパソコンを操作しながら4人の傍に座るヴェアデュラ。彼女達の姉ではあるが、年齢
   からして親子にも見て取れる。
ヴェアデュラ「それにその言動は態とでしょ?」
ミスターT「・・・お前には何時も見抜かれるわな・・・。」
ヴェアデュラ「自分は憎まれ役を演じ、妹達や叔母様達との絆を深ませる。同性だから成し得ると
       いう部分もあるけど、本当に損な役割よね。」
ミスターT「まあな・・・。」
   娘達はもちろん、母親達も知らない俺の心境を語るヴェアデュラ。それに2組の親子は呆気に
   取られている。ヴェアデュラは俺の娘と言うよりは、俺の妹と言えるべき存在だろう。
ヴェアデュラ「4人ともね、遊びは思いっ切りしなさい。でもお母さんを絶対に困らせない事。特に
       一番陰から心配しているのは、お父さんの方なんだから。」
ミスターT「真顔で洗い浚い言うかね・・・。」
ヴェアデュラ「あら、本当は我が娘達が可愛くて仕方がないでしょうに。それでも己の一念を押し
       殺し、冷たくも厳しく接している。リュアちゃんとリュオちゃんの育児の時が一番
       顕著じゃない。」
   俺の内情を知った4人の娘達は泣き出している。確かに今まで俺の育児に関しての内情は一切
   語った事がない。またそれはディルヴェズLKやダークにもしかりだ。長年長女として妹達を
   面倒見ているヴェアデュラだからこそ、見定めた一念とも言えるだろうな。

ヴェアデュラ「それにね、女を舐めちゃだめよ。外見は困らせようと見せても、陰では人一倍努力
       しているのだから。」
リュア「私達もお父さんに厳しく躾て貰ったから、今の自分達があるんだよ。だから13年もの間、
    風来坊として戦い続けて来られた。」
リュオ「まだ成人前なんだから、ドンドン遊んでいいと思う。でないと私達みたいに遊びすら体験
    できない女になっちゃうよ。」
    ヴェアデュラに続き、リュアとリュオまでも乱入して来る。そんな2人の後ろでは、物凄い
   厳しい眼差しで俺を睨んでいるリュリア。この目線はシュームと同じく、娘達を悲しませるな
   というものだ。
ミスターT「・・・悪かった、言い過ぎたよ・・・。」
ヴェアデュラ「じゃないでしょ、ドンドン言っていいのよ。でも一時でもいいから、相手の事を思い
       遣って接してあげて。」
リュア「でないとナイーブなティルシェヌちゃんとティルシェムちゃん、純真なタークェンちゃんと
    タークェナちゃんはグレちゃうよ。」
リュオ「女をなめちゃあかんぜぃ〜。」
ミスターT「仰る通りにします・・・。」
   ヴェアデュラ達の激励で笑顔を取り戻した4人。特にリュアとリュオのムードメーカー的存在
   は凄まじく、泣き顔だった4人を一瞬にして笑顔にしてしまうほどだ。

ティルシェヌ「ごめんなさい・・・。」
ティルシェム「今後は迷惑掛けないようにします・・・。」
タークェン「改めて周りに迷惑を掛けていた事を感じました・・・。」
タークェナ「本当にごめんなさい・・・。」
ミスターT「お・・俺より母さん達に、ね・・・。」
    改めて謝罪してくるティルシェヌ・ティルシェム・タークェン・タークェナの4人。だが
   その謝罪先は母親に向けろと語った。それに素直に従い、ディルヴェズLKとダークに謝罪
   する4人。そんな我が子達を優しく抱きしめる母親達だった。


リュリア「マスター・・・あまり女の子を泣かせたら承知しないわよ・・・。」
ミスターT「い・・以後気を付けます・・・。」
    2組の親子を見つめていると、背後から厳しい発言が飛んできた。俺に抱き付き、軽く首を
   締め上げてくるリュリアである。
リュリア「まあでも・・・そのお節介があるから、今のリュアとリュオがあるんだけどね。」
リュア「父ちゃん最高〜っ!」
リュオ「いぇ〜いっ!」
   リュアとリュオも抱き付いてくる。これで26歳なのだが、まだまだ幼さが残るため妹分と
   見られても仕方がない。
   まあでも2人の言動は先程の俺に対しての発言の厳しさを慰めようとしているのだろうな。
   そんな2人を優しく抱きしめてあげた。
ミスターT「・・・父親は辛いわ・・・。」
リュリア「何弱音吐いてるのよ。これから大変になるんだから、覚悟してよね。」
ミスターT「ハハッ、そうだな・・・。」
   母親の中で一番怖いのはリュリアだろう。それに微笑ましい視線を向ける2組の親子だった。
   また何げない会話のやり取りでも、見事に原点回帰へと結び付けるヴェアデュラ。遠巻きに
   俺らを見つめる彼女に、小さく頭を下げた。それに笑顔で応えてくる。


    この時の一件が切っ掛けで、ティルシェヌ・ティルシェムはアミューズメントパークの運営
   に携わっていくとは誰が予想できようか。

    自分達の趣味にも通じている娯楽をワイフワークに結び付けるという部分は、メルデュラ
   などのコンピュータースキルの部分と同じであろう。目の前に先駆者が数多くいるのだから、
   恐れるものなど何もないわな・・・。

    娯楽関係では身内で最強と謳われるほどの強者となっていく。またそれはアミューズメント
   の関係者からして、男女問わず恋愛の達人と呼ばれるにも至っていく。この双子により、数々
   のカップルが誕生していくのだから驚きであろう。


    タークェンとタークェナは地元にある有名模型玩具店を運営する事になる。ここのオーナー
   のおばあちゃんと親しくなり、まるで孫のように可愛がられるようになる。

    俺もヴァルシェヴラームの影響でおばあちゃん子の流れを汲んでいるため、最大限サポート
   をし続けた。何時の間にかプラモデル作成では右に出るものがいないと表されるほどの凄腕
   プロモデラーに至るタークェンとタークェナだった。

    まあそれが実現するのは数年後の話ではあるが・・・。


    またリュアとリュオは真面目そうな風格だが、その後は国内や国外を転々とする風来坊と
   なっていく。更に海外ではトレジャーハンターという職業もあり、未踏査の土地などに足を
   踏み入れて財宝を入手するという職業にも至っていくのだ。

    この2人によって発見された未踏査の地は大々的に発表され、遺跡調査の第一人者という
   事になっていく。それでいて報酬は最低限しか受け取らないというのだから、リュアとリュオ
   の真の探求心という部分は純粋極まりないだろう。

    こちらも先の2組の双子と同じく、実現するのは数年先になるのだがな・・・。

    後半へと続く。

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